08年03月11日
<消費生活センター>相談員95%が非常勤 契約年数制限も
毎日新聞 2008年3月10日 東京朝刊
福田康夫首相の肝いりで組織見直しが進む消費者行政。だが、検討は国レベルの課題に偏っている。最前線となる地方の消費生活センターでは、財政悪化のあおりで予算・人員の削減が続き、非常勤の相談員に依存する運営、雇用年数を制限する「雇い止め」−−などの問題を抱えているが、いまの見直し論議では置き去りにされたままだ。【板垣博之、亀田早苗】
◇最短3年で雇い止め 交通費、勉強会も自腹
「市民の皆さん、消費生活センターの経験ある相談員がやめさせられないよう応援してください」。みぞれ舞う2月、兵庫県のJR姫路駅前で、自治労兵庫県本部のメンバーらがビラを配り訴えた。
姫路市では、06年に非常勤の消費生活相談員が雇い止めを通告され組合を結成した。しかし、市は「多くの市民に機会を提供しなければならない」と、3年の期限を崩さない。6人いた相談員は2人がやめ、残った4人のうち3人も今月末に期限が切れる。
相談員の資格には「消費生活専門相談員」など三つある。資格がなくても相談は受けられるが、相談員は使える法律や制度を検討、時に業者に直接連絡する「あっせん」で解決を図る。被害の広がりや悪質性を判断し、都道府県や各省庁、警察などに情報提供する役割もある。
姫路市で相談員を務めて16年の50代の女性は「知識以上にセンスや勘が必要。先輩の電話を聞いて交渉の仕方を覚えるので、経験や蓄積は大事」と話す。関係者は「一人前になるのに5年かかる」と言う。しかし市は「資格があればできる」とにべもない。
毎日新聞の調査で、雇い止めを設けていたのは15都県と5政令市。一般の自治体まで含めると、雇い止めは相当数に膨らむとみられる。
労働条件も劣悪だ。全国消費生活相談員協会の調査(2月)では、年収150万円未満の相談員が全体の約45%を占めた。
兵庫県明石市は05年、5年を期限とする雇い止めを通告し、その後、再任用は容認したが、日給は9310円と5%カットされた。交通費はつかず、専門書を買うのも自腹。新しい手口や製品事故に対応するための研修会の出席も多くは休日を充てているという。
同市の相談員の一人は「相談者に『ありがとう』と言われると3年は頑張れる」と話す。だが、「相談員が正義感で支える現場」(労組関係者)にもろさは否めない。
業務委託の動きも相談員の足元を脅かす。毎日新聞の調査で、12道府県と10政令市が一部または全部の業務を委託していた。
委託を検討中の宮城県に慎重な対応を求める仙台弁護士会の鈴木裕美弁護士は「委託で雇い止めがなくなっても、競争入札になる場合もあり、長期的にみれば相談員の雇用は安定しない。委託費をどんどん削られている例もある」と指摘。さらに「行政機関が相談窓口を持つのは、集まった情報を行政処分や政策に反映し、消費者保護を図るためだ。本来、民間に委託する話ではない」と批判する。
◇「地方」抜けた国の議論
「地方自治体関係者も巻き込んだ議論をすべきだ。次の内閣で急に衰退するようなものにはしてほしくない」(広島市消費生活センター)▽「消費者行政を直接担う、県、市町村との役割のあり方なども議論すべきだ」(愛媛県同)▽「自治体に対する財政的支援が必要」(北海道生活局)−−。
毎日新聞の調査で、国の一元化の検討について聞いたところ、こんな意見が出た。
国は消費者庁設置を含め消費者行政一元化の検討作業を急ピッチで進めているが、地方の消費者行政は、具体的な協議がほとんど行われていない。
一元化については、2月に有識者11人で発足した首相直轄の「消費者行政推進会議」のほか、首相の諮問機関の国民生活審議会の総合企画部会と消費者政策部会でも昨年末から議論が続いている。
会議は毎週のように開催され、一元化の組織のあり方に加え、悪質商法による違法な利益をはく奪して被害者を救済する仕組みなども議論されている。だが、三つの会議で、地方消費者行政関係者と言えるのは消費者政策部会の千葉県担当課長だけ。地方の声も、同部会で、大阪府消費生活センターと青森県消費者協会から意見を聞いた程度だ。
会議では「国と地方の連携や支援が必要」などとの声が上がるが、議論は進んでいない。ギョーザ中毒事件を受け、一元化の結論は前倒しされたが、これでかえって、地方の問題まで手が回らなくなっている。
大阪府消費生活センターの小谷良信所長は「国だけの体制強化にとどまっていては意味がない。消費者と現場でつながる地方の消費者行政の具体的強化策を打ち出さなければ、絵に描いた餅になる」と指摘する。
総合企画、消費者政策の両部会は3月中に報告書をまとめる。推進会議はこれを踏まえ、4月にも結論を出す方針。推進会議のメンバーで、日弁連の吉岡和弘・消費者問題対策委員長は「消費者の相談窓口は全国にあるが、さび付いている。地方の消費者行政を活性化させるのにどんなカンフル剤が必要か真剣に考えなければならない」と話している。
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消費生活センターの存在意義は私も認めるところですが、どうも対応が後手後手だというのはこのブログでも書きました。
その背景にはこんなこともあったのですね。
被害が起きてからでは遅い。
予防が大事と常に訴えている私としては複雑な心情の記事です。
予防の方に多くの予算がかけられて、消費者の味方のFPの活躍する場面が増えれば・・・とも思います。
福田康夫首相の肝いりで組織見直しが進む消費者行政。だが、検討は国レベルの課題に偏っている。最前線となる地方の消費生活センターでは、財政悪化のあおりで予算・人員の削減が続き、非常勤の相談員に依存する運営、雇用年数を制限する「雇い止め」−−などの問題を抱えているが、いまの見直し論議では置き去りにされたままだ。【板垣博之、亀田早苗】
◇最短3年で雇い止め 交通費、勉強会も自腹
「市民の皆さん、消費生活センターの経験ある相談員がやめさせられないよう応援してください」。みぞれ舞う2月、兵庫県のJR姫路駅前で、自治労兵庫県本部のメンバーらがビラを配り訴えた。
姫路市では、06年に非常勤の消費生活相談員が雇い止めを通告され組合を結成した。しかし、市は「多くの市民に機会を提供しなければならない」と、3年の期限を崩さない。6人いた相談員は2人がやめ、残った4人のうち3人も今月末に期限が切れる。
相談員の資格には「消費生活専門相談員」など三つある。資格がなくても相談は受けられるが、相談員は使える法律や制度を検討、時に業者に直接連絡する「あっせん」で解決を図る。被害の広がりや悪質性を判断し、都道府県や各省庁、警察などに情報提供する役割もある。
姫路市で相談員を務めて16年の50代の女性は「知識以上にセンスや勘が必要。先輩の電話を聞いて交渉の仕方を覚えるので、経験や蓄積は大事」と話す。関係者は「一人前になるのに5年かかる」と言う。しかし市は「資格があればできる」とにべもない。
毎日新聞の調査で、雇い止めを設けていたのは15都県と5政令市。一般の自治体まで含めると、雇い止めは相当数に膨らむとみられる。
労働条件も劣悪だ。全国消費生活相談員協会の調査(2月)では、年収150万円未満の相談員が全体の約45%を占めた。
兵庫県明石市は05年、5年を期限とする雇い止めを通告し、その後、再任用は容認したが、日給は9310円と5%カットされた。交通費はつかず、専門書を買うのも自腹。新しい手口や製品事故に対応するための研修会の出席も多くは休日を充てているという。
同市の相談員の一人は「相談者に『ありがとう』と言われると3年は頑張れる」と話す。だが、「相談員が正義感で支える現場」(労組関係者)にもろさは否めない。
業務委託の動きも相談員の足元を脅かす。毎日新聞の調査で、12道府県と10政令市が一部または全部の業務を委託していた。
委託を検討中の宮城県に慎重な対応を求める仙台弁護士会の鈴木裕美弁護士は「委託で雇い止めがなくなっても、競争入札になる場合もあり、長期的にみれば相談員の雇用は安定しない。委託費をどんどん削られている例もある」と指摘。さらに「行政機関が相談窓口を持つのは、集まった情報を行政処分や政策に反映し、消費者保護を図るためだ。本来、民間に委託する話ではない」と批判する。
◇「地方」抜けた国の議論
「地方自治体関係者も巻き込んだ議論をすべきだ。次の内閣で急に衰退するようなものにはしてほしくない」(広島市消費生活センター)▽「消費者行政を直接担う、県、市町村との役割のあり方なども議論すべきだ」(愛媛県同)▽「自治体に対する財政的支援が必要」(北海道生活局)−−。
毎日新聞の調査で、国の一元化の検討について聞いたところ、こんな意見が出た。
国は消費者庁設置を含め消費者行政一元化の検討作業を急ピッチで進めているが、地方の消費者行政は、具体的な協議がほとんど行われていない。
一元化については、2月に有識者11人で発足した首相直轄の「消費者行政推進会議」のほか、首相の諮問機関の国民生活審議会の総合企画部会と消費者政策部会でも昨年末から議論が続いている。
会議は毎週のように開催され、一元化の組織のあり方に加え、悪質商法による違法な利益をはく奪して被害者を救済する仕組みなども議論されている。だが、三つの会議で、地方消費者行政関係者と言えるのは消費者政策部会の千葉県担当課長だけ。地方の声も、同部会で、大阪府消費生活センターと青森県消費者協会から意見を聞いた程度だ。
会議では「国と地方の連携や支援が必要」などとの声が上がるが、議論は進んでいない。ギョーザ中毒事件を受け、一元化の結論は前倒しされたが、これでかえって、地方の問題まで手が回らなくなっている。
大阪府消費生活センターの小谷良信所長は「国だけの体制強化にとどまっていては意味がない。消費者と現場でつながる地方の消費者行政の具体的強化策を打ち出さなければ、絵に描いた餅になる」と指摘する。
総合企画、消費者政策の両部会は3月中に報告書をまとめる。推進会議はこれを踏まえ、4月にも結論を出す方針。推進会議のメンバーで、日弁連の吉岡和弘・消費者問題対策委員長は「消費者の相談窓口は全国にあるが、さび付いている。地方の消費者行政を活性化させるのにどんなカンフル剤が必要か真剣に考えなければならない」と話している。
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消費生活センターの存在意義は私も認めるところですが、どうも対応が後手後手だというのはこのブログでも書きました。
その背景にはこんなこともあったのですね。
被害が起きてからでは遅い。
予防が大事と常に訴えている私としては複雑な心情の記事です。
予防の方に多くの予算がかけられて、消費者の味方のFPの活躍する場面が増えれば・・・とも思います。