弁護士で社労士会へ登録する者が増えている。
理由はそれぞれであり、分析する必要があるが、第一番目は社労士業務を行いたいというものであろう。弁護士は社労士試験を受ける必要は無いが、社労士業務(労働社会保険諸法令に基く書類の作成や届出、行政への陳述)を行うには社労士会(連合会)への登録をしなければならない。

次に労働関係がメインの社労士業においては、常にその情報が蠢いている。まともに対応するならば脳ミソがパンクするはずだか、十中八九まともに社労士業をするつもりはないようである。
弁護士の労働に関する世界は大きく「労働者側」「使用者側」に分かれ、それぞれ派閥というか内部の任意団体に所属して活動している。ただ、弁護士業務における労働事案は比較的小さいのが普通である。したがって、ボス弁から「お前は労働担当」という業務命令で担当しているのが今日のよくある実情のようだ。
上記のようにどちらかに属すというのは、それなりに理由がある。訴訟代理という業務から由来するもので、双方代理の禁止がそのドンツキにある。ある相談を以前受けたが、今度はその相手方が相談したいと言ってきた場合、代理業務においては相手方から相談を受けてはいけないことになっている。契約にいくかどうかは未知としても職業倫理上無理な話なのである。したがって、相談者名簿を相談業務が発生する都度調べる必要があり、その手間は大変なのである。事務所規模によってはたいした事は無いが、もしかしてということはある。そういう手間を省くには一方だけの相談に乗るとした方がまちがいがないというわけである。
社労士業務においても個別紛争解決業務がある。訴訟代理は弁護士業務とバッティングするため外されている。ただ、これをしたければ弁護士のままでいいわけであるから、社労士登録の理由にはならない。
社労士の場合、労務管理がメインである。労働時間制度管理、賃金制度管理、組織開発と経営面でのサポートが大きい。事務手続きをすることによって原データに接しているため、上手く進めやすい。さすがに労務管理業務を弁護士ができるとは思わないが、肝腎なのは労働側とか使用者側という区分けがないという点であろう。(尤も、ブラック士業と称される者は使用者側となるが…)このおよそ紛争解決とは離れた労務業務に関心をもたれているのではないかとも思う。

特定社労士制度のため労務管理相談(人間関係や組織、人事規定の有り方を修復したり行政通達や判例を紹介するなど)から法律相談(具体的な争い方の検討など)の道ができたことで、社労士のイメージがやや変化しつつある。労働審判も実際は本人ではなかなか進めにくいため、裁判同様利用されているものではない。裁判に比べれば、という程度である。また何よりもこうした公的メニューの利用の仕方について、まだ国民は未熟である。ユニオンによる団交も含めて、紛争解決の仕方についての研究が必要であるし、斯界も変化を見せつつある。先日では、「本人の記憶以外には何ら事実を認める証拠は提出されなかった」という判決が報道されたが、争い方というのはなかなか難しいのである。
社労士会のなかで、労務管理に関心を寄せる弁護士と法律相談に関心を寄せる社労士との融解によってどのような化学反応が生れるかが楽しみである。