『社会保険労務士法詳解』という本がある。
社会保険労務士資格の沿革、法改正史、条文逐次解説、通達等が載っている。法律というのは固い表現で威厳を示しているので、深く理解するにはこうした詳しい本で見るに限るわけだが、なかなか自分では買う勇気が出ず、そこで借りることにしてみたが、案外誰も持っていないものである(自分で買えば済む話であるが)。しかしようやく借りることが叶い、読み始めてみるとまんざらでもない。

社会保険労務士業務というのは複雑であるが、沿革を読むとその経緯が把握できる。その経緯から視点が定まり、次の態勢がとれる。ただ、複雑なだけに、社会保険労務士であるといっても、実際にはよくわかっていないのである。オール オア ナッシング というものでもないが、社会保険労務士が社会保険労務士たりうる自制は資格者間で相当な相違がある。当資格についての唯一の権威書籍たるこの本の所有者を探すのに苦労するくらい-。この相当な相違は次に見解の相違に移り、意見の相違となり、なかなか総員の目指す方向の舵取りが難しくもあるわけであるが、現実問題として、資格や業務に関する基礎的理解については地固めをしておくのに頃合の時期と思われる。近年の国民事情より業務が拡がるのみならず詳細で的確な処理が求められる一方で、治外法権的な面もあることは何ら変っておらず、無論答えという答えがない世界とはいえ、社会保険労務士が関与する対象は相当な幅をもち、複雑である。こうした事情のなかで、内部より渦を巻かせ、波紋を拡げるにはあらためて社会保険労務士法に取り組むことが肝要であろうと考えた。果たして何か成果があるのかはこれから読み進めていくうちにわかるが、いずれにせよ、そういうことをやろうとする珍しい者も必要であろう。