中野区保育園争議 高裁判決

・雇い止めに関する代表判例について。

≪(2)私法上の期間雇用の場合に,期間終了とともに雇用契約が終了しているはずであるのに,判例が雇用の継続があったものと認めている根拠を検討する。最高裁判所は,上記東芝柳町工場事件判決においては,期間の定めの条項の存在にかかわらず,当事者の合理的な意思解釈としては実質的に期間の定めのない契約を締結していたと原審が認定したことを是認した上で,雇止めの意思表示は実質的に解雇の意思表示に当たるから解雇権濫用の法理の類推適用が可能であるとしており,雇用の継続の根拠を当事者双方の意思に求め,他方,日立メディコ事件判決では,従前の労働契約の更新に根拠を求めているものの,契約更新の理由について説明をしているわけではないが,この点は,雇用の更新推定に関する民法629条1項を根拠とするものと解されよう。≫

いずれも解雇権濫用法理であるが、東芝柳町工場事件では「期間の定めなき雇用」とみなされ、日立メディコ事件では「期間雇用の更新」である。ただし、区事業なので民間と異なり、当法理は適用できないとしている。
雇い止めのトラブルに関し、採用時の雇用契約で更新の有無、更新基準についての明示は最低限しないと。


・慰謝料について

期待させる言辞
説明不足
更新の形式性
不誠実態度
急な告知
などによって、期待権侵害の不法行為として、「報酬の1年間分に相当する程度の慰謝料額」としている。
当事件は本来地位確認請求ができないものであるから、1年とされていることから、民間の場合には地位確認もしくはやや少な目の慰謝料額となると思われる。
いずれにせよ、「非正規雇用」は今度のパート労働法もそうだが、強い判断で保護される傾向にある。
尤も、「正社員」は残業なし、有休なし、労災認めず、という民間も多く、どちらがいいということでもない。