昨年5月施行の新会社法により、有限会社は廃止され(勿論旧有限会社は特例有限会社として存続します)、持分会社の一つとして「合同会社」が新設されました。合同会社は、出資者の全員が有限責任であり、会社の内部関係は民法上の組合と同様の規律が適用される会社です。

 そこで、従来からほとんど利用されることのない合名会社・合資会社はさておき、起業者の方は、株式会社にするべきか、それとも合同会社にした方がいいのか、悩まれると思われますので、その違いを見てみましょう。

 1 最も関心があるのは、歴史が浅い合同会社よりも、株式会社の方が社会的信用度が高いのではないかという点でしょう。確かに、何億という資本金を有する大会社は、それだけで社会的信用度が高いということも言えるでしょう。しかし、社会的信用度は、会社設立から日々の会社経営の態度によって積み上げられていくものであり、生産管理の怠慢により折角築き上げた社会的信用を一挙に喪失してしまったYやFのことは、記憶に新しい。実際わが国にある会社のほとんどは、公開会社でない株式会社(全部株式譲渡制限付株式会社)と旧有限会社であります。旧会社法の下において、株式会社の方が有限会社よりも社会的信用度が高いように思えていたのは、一つには、株式会社は1000万円、有限会社は300万円という最低資本金制度があり、この差によるものだと思います。ところが、新会社法では、この最低資本金制度は撤廃され、株式会社も理論上は1円で設立できるようになりました。勿論、合同会社も理論上は1円で設立できます。こうなってくると、社会的信用度は株式会社・合同会社という会社形態ではなく、どれだけ消費者に受け入れられるすばらしいものを創り出していくか、という会社の中身に左右されていくようになるのではないかと考えられます。

 2 株式会社も合同会社も、その株主又は社員は株式の引受け価額・出資の価額を限度とする有限責任であり、会社の債権者に対して、自己固有の財産を投げ打ってまでという無限の責任を負うことはありません。

 3 株式会社と合同会社で大きく異なるのは、会社内部関係の規律の強行規定性(法の規定に反することができないことをいう)です。新会社法では、株式会社においては、最低限、意思決定機関として「株主総会」と、業務執行機関として「取締役」を設置することが規定され、強行規定とされています。ただ、従来と異なり、取締役会を設置しなければ、取締役は3人以上もいる必要はなく、1人で十分なのです。また、監査役を置くかどうかも、原則として自由なのです。これに対して、合同会社においては、組合と同様に、広く契約自由の原則が妥当するため、業務執行等については強行規定がほとんどなく、定款で自由に定めることができます。

 4 次に、設立費用の違いを見てみると、株式会社の設立登記の登録免許税は、例えば資本金の額が500万円とすれば、15万円であるのに対し、合同会社では同じ資本金の額だとすれば、6万円であります。また、株式会社では、定款について公証人の認証を受けることが必要であるため、認証手数料として5万円、公証人が保存する定款原本についての印紙税が4万円、合計9万円少々が必要となります。これに対して、合同会社では、定款の認証は不要です。結局、法定費用だけで、株式会社は24万円なのに対し、合同会社は6万円で済みます。それに、類似商号の調査や定款の作成等を含めた会社設立支援報酬も、当事務所では、株式会社が10万円なのに対し、合同会社は7万円としております。

 5 このように見てくると、設立費用や手続からすると、合同会社に軍配が上がりますが、何せ新会社法が施行されて間がないため、合同会社の認知度が低い点が気になるかもしれません。しかし、新会社法は、専門知識やノウハウを持った少数の出資者が集まり、その知識などを活用して自らが経営を行う会社の設立を企図しているようです。ともあれ、最初は合同会社を設立しておいて、経営が順調になってきたら株式会社に組織変更をする、というのも一つの手かもしれません。

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 今回はこの辺で。