日本で未成年の子どものいる家庭で、離婚の際、養育費の取り決めをしているかたは3割程度に過ぎません。それをしっかりとした書面にする方は、ごくわずかのようです。
 昨年、離婚後の親子関係についてのアンケート調査を実施しました。その中で、養育費の取り決めをどのような形でしたかという質問を設けました。また、取り決めかたとその後の支払い状況についての質問も設けました。その結果として、意外なことに裁判所の調停などを経て決められたケースでもあまり守られていないことがわかりました。一番、確実に守られていたのが取り決めた事を公正証書にしたケースでした。

 公正証書を作成するためには、基本的に話し合って合意ができたことが前提になります。取り決めた事を書面にして公証役場に持っていき、そこで公正証書という強制執行力をすぐに付けることができる文書にします。お互いが納得した形での取り決めですから、守られる率が高い事もうなずけます。また、執行力が協議書や口約束などに比べ強いことから、約束に対する責任感も強く持ち続けることができるようです。

 厚生労働省のお話では、取り決めた養育費が支払われなくなったケースでの平均支払期間は2年以内とのことでした。また、その後、受け取る側から支払いの請求をしないケースも結構多いとのことでした。離婚した相手と再び話をする事に躊躇が働くと同時にいわば諦めの心境に陥るかたも多いようです。

 養育費は子どもの権利ではないかと思います。金額の問題もさることながら、離れて暮らす親からも愛情を受け続けていることの証でもあります。養育費を支払ってもらえなかったり、途中でストップされた時、子どもは「もう愛されていない!」と感じてしまう事も多いようです。
 養育費の支払を継続することに関しては民事執行法の改正など法律面からも援護があります。しかし法律に心はありません。子どもたちが将来、両親から愛されて続けていた事に自信を持てるように、しっかりした取り決めをする事が大切のようです。そして、受取る側は、ただ権利があるからといって請求するだけではなく、それに付随する義務、あるいは心についてもよく考えていくことが、養育費支払いの確実な継続につながるものと思います。
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