口下手でもいい、経営者は「一言(ひとこと)」を大切にしよう!(H21.3月号の記事)

 ここ近年、労使紛争が激増しています。不幸にして労働組合に加入されたり、訴訟沙汰になったり深刻なケースに発展することも少なくありません。中にはやくざまがいの恫喝をもって、威圧的に迫ってくることすらあり、その度に「もう人を使うのが怖くなる」という心情を吐露される経営者もおられます。
 本当に人を使うのが難しい時代になりました。でも人を使わずして、経営を行ってゆくことはできません。どうしたらもう少しスムーズな労使関係が築けるようになり、100%紛争を回避することは不可能だとしても、その確率を減らすことができないものでしょうか。
 私がこの問題を考えるとき、大きな視点では①如何に不良社員の入社を水際で防ぐか、②今いる社員に不満が鬱積しない労務管理を如何に行うか、にかかっていると思うのです。それには以下3つのポイントがあると考えています。そのポイントとは、
1.経営者も労働法に無頓着ではいられないこと(ある程度労働法を知る必要がある)
2.人の感情や心理に配慮した人間関係を心がけること(場合によっては演じる役者のセンスがいる)
3.おざなりにしている手続きや仕組みをきちんと整備すること(特に雇い入れのルールを曖昧にしない)ということです。以下それぞれ解説します。

1.経営者も労働法に無頓着ではいられないこと(ある程度労働法を知る必要がある)について

 今の労働者は、今までのように会社にも非があるけれども、自分も足りないところがあるから文句を差し控えよう、なんて謙譲の心を示す人の割合が、相対的に少なくなっています。ある労働基準監督官と話をしていても、「今の労働者には問題がある人が多いですね。他の事は棚に上げて、労働基準法上の権利だけは主張される。諌めようとするとある労働組合からは、労働基準監督署は経営者寄りだと非難を受けている始末です」とおっしゃています。
 経営者に悪意がある場合は論外として、知らずに法違反を犯し、それを知っている労働者から指摘を受けるケースがあります。今の時代は知らなかったでは許されない不寛容な時代になっています。せめて専門書とは行かなくとも実務書レベルの労働基準法に関する書物は一度お読みいただければと思います。その上で、我々社会保険労務士とか弁護士とか専門家を傍において、使いこなしてもらえれば、相当程度の紛争は未然に回避できます。自ら勉強し身近な相談相手を作ることは是非行って欲しいものです。

2.人の感情や心理に配慮した人間関係を心がけること(場合によっては演じる役者のセンスがいる)について

 私はかねてより、労務は感情、労務は心理学と訴えてきております。これは現在働いている従業員との関係において、むしろ前述の法律よりも非常に重要な観点です。にもかかわらず、総論的に申し上げて経営者の方が苦手にしている分野ではないかと推察するのです。例えば人を褒めることの効用は誰でも聞いたことがあるはずですし、感謝する心が大事だとか、相手の話を否定せずよく聞くだとかは良好なコミュニケーションにはいいことだ!!とものの本には書いてあります。でもコーチングだとか実際やるのはちょっと難しい。だったらもっと簡単な方法はないものでしょうか。そこで思いついたのはたった一言の癖付けです。
 例えば・・・・
褒めるというのに抵抗があるなら一言         「さすがやね」「すごいわ」
ありがとうと感謝するのが気恥ずかしいなら一言  「すまん」「助かるわ」「わるいなあ」
期待を込めるのが上手く言えないなら一言     「ほな、頼むわな」
相手の人格を認めるのが苦手なら一言  (話しかけるとき)「ちょとええかな」(話を聞き終わったとき)「よし分かった」

 関西弁は非常に便利です。いかがでしょう。これくらいならすっと言えないでしょうか。すでに自然に出来る方や、これ以上のコミュニケーションを取れている方には蛇足だったかもしれませんが、もしご参考なるなら是非お試しください。その際一番良いのは心から言うことですが、せめて必死に演じる努力はしたいものです。
3つ目のポイント「おざなりにしている手続きや仕組みをきちんと整備すること」については次回以降に譲りたいと思います。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月24日 | Category: General
Posted by: nishimura
中小企業緊急雇用安定助成金(H21.2月号の記事)
従業員をしばらく休業させれば、ピンチを乗り切れる可能性がある企業へ!!

景気が本格的に悪化してきました。昨年秋までは、まだ顕著な影響はみられませんでしたが、年が明けて、急速に受注量が落ち込む企業が散見されるようになっています。そんな時、どうしても考えてしまいますのが、希望退職の募集、整理解雇などのリストラです。しかし、もし解雇を回避するために、しばらく従業員に休んでもらって賃金を減額して皆で痛みを分かち合い、交代でワークシェアすることにより乗り切れる可能性があるなら、「中小企業緊急雇用安定助成金」を活用する方策があります。この助成金は従来からある同趣旨の雇用調整助成金を昨年12月から中小企業向けに要件を大幅に緩和して、実施されているものです。

その概略は以下の通りです。
◎概要
景気変動により企業業績が悪化したために生産量が減少し、事業活動の縮小を余儀なくされた中小事業が労働者を一時的に休業させた場合に、その間に支払う休業手当の一部を助成する制度(労基法では会社都合で休業させると、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが義務となっている)

◎支給要件(1または2のいずれかを満たすこと)
1.最近3か月間の月平均生産高(売上)が前年同期に比べ減少していること(前期決算等の経常利益が赤字であることが必要)
2.同期間の生産量が5%以上減少していること(赤字であることの確認は不要)

◎支給額
休業手当に相当する額の5分の4(ただし、1名1日当たり7,730円が限度)
助成対象は雇用保険被保険者に限る

◎受給期間
原則1年以内で雇用保険被保険者数×100日までが限度

◎事前計画の届出
休業を開始する給与締め切り期間の初日までに実施計画を提出することが必要

◎その他原則的に必要なこと
1.就業規則及び賃金規程を作成していること
2.完全週休2日制でなければ変形時間労働制の協定を労基署へ届け出ていること
3.従業員をきちんと雇用保険に加入させており、労働保険料も納めていること
4.賃金台帳、出勤簿、決算書、生産高(売上高)集計票などの帳簿がきちんと整備されていること

※もちろんこれらのほかにも細かな要件があります。

なおこの助成金関連の資料のアドレスは以下の通りです。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/pdf/koyouiji.pdf
(中小企業緊急雇用安定助成金パンフレット)
http://www.worknavi.niigata-roudoukyoku.go.jp/sanjo/雇用調整助成金パンフ.pdf
(拡充前雇用調整助成金のパンフだが、大枠は同じで、具体的書き方見本など参考になる)

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com


10年03月24日 | Category: General
Posted by: nishimura
大企業のリストラをまねするな!中小企業は社員を雇う品格を保持しよう。(H21.1月号の記事)

 あけましておめでとうございます。旧年中はご愛読いただきましてありがとうございました。本年も出来うる限るみなさまのお役に立てる情報を提供すべく、このメルマガを発信してゆきたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。
さて昨年は、トヨタやソニーを始めとする多くの大企業の人員削減報道がなされました。派遣や請負、期間従業員の打ち切りだけでなく、正社員にもその影響が出だしています。今年はさらに追い討ちをかけて、製造業の派遣可能期間が法定上限の3年を迎えるいわゆる2009年問題も控えており、更なる失業者が溢れることが見込まれています。
私は普段、経営者の味方を標榜する使用者側の社会保険労務士として仕事をさせていただいておりますが、昨今の人を雇うということに関する世情を見ておりますと、経営側に強い違和感を覚えざるをえません。いつから日本企業の経営者は従業員を、物品経費の一部と考えるようになったのでしょうか?
もちろん労働者側にも大きな原因があることは承知のうえでのことです。

 この問題に限らず、中小企業においても、経営者の人を雇うということに対するモラルが、劣化しているのではないかと感ずることがよくあります。例えば、経営理念を作成している会社は数多くあると思いますが、その理念に、そして社長の言葉の中に、従業員の幸せが見られないのです。批判を恐れずに直言すると、会社を経営するということの意味をとことん突き詰めれば、
1.お客さんに幸せを提供すること
2.従業員を幸せにすること 
の2点に集約され、あとは枝葉だと思うのです。非常にシンプルに考えています。大企業ならこれに株主利益が加わるのでしょうか。

 かつてホリエモンのころ、会社は誰のものか、なんて論争がありましたが、そんなこと議論するまでもなく、そこで働いている人(役員を含む)のものに決まっています。確かに会社法上はそうはなっていませんが、現実的にそうなのです。
しかしです。最近経営者とお話しすると、この従業員の幸せという視点があまり感じられなくなりました。雇った以上は責任があり、ウチの会社で幸せになってもらうという強い意志が伝わってこないのです。ウチの会社で結婚し、子供を作り、家を建て、車を買う・・・・・。そうやって世間並みに幸せになって欲しいと願う志が希薄に感ずるのです。創業者なら思い出してください。かつて初めて人を募集し、ウチの小さなオンボロ会社に果たして来てくれるだろうか、とやきもきした気持ちを。面接後、本当に出社して来てくれたときの喜びを。後継者の方もそうです。人は最初から「ある」のではないことを。

 ここ5,6年の間に個人と会社の紛争が激増しました。中小企業が労働法を完璧に守るのは困難で、それはあたかも法定速度を必ずしも守れない道路交通法のようなものです。でもそこだけ見れば、違反は違反です。それを突っ込まれると、現実世界が成り立ちません。しかし、経営者に悪気がなく、従業員の幸せを願う心があれば、表面化しない紛争もあるのです。経営者の従業員を思うその人間観は、やはり普段の言葉遣い、表情、行い、処遇に出ると思うのです。それは従業員に微妙に伝わることになるでしょう。鏡の法則です。

 大企業には大企業の論理があるのかも知れません。それは私には分かりません。でも中小企業は中小企業らしく、従業員の幸せを家族の幸せとして感じましょう。大企業のリストラをまねするな!中小企業は社員を雇う品格を保持しようではありませんか。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月19日 | Category: General
Posted by: nishimura
簡単、「あした やるべき 順番シート」を活用して、効率を少しだけアップしよう!(H20.12月号の記事)
~景気後退局面だからこそ取り組めることがある~


 景気の先行きが非常に怪しくなってきました。今まで好景気に沸いてきた東京や名古屋圏、大企業、金融機関、中国などいずれも不透明感が増しています。大阪でずっと仕事をしている者として、この不況は今に始まったことではなく、もともとずっと悪いというのが率直な実感ですが、今後これらの外部要因により、ますます厳しくなって行くと警戒する経営者が増えています。 私どもがコンサルさせていただく労務管理は、このような景気後退局面にある場合、どうしても経営上劣後におかれることが多く、経営に余裕がないと、なかなか本腰を入れて取り組みしにくい分野と言えます。
 ここ最近、私は時間外労働を削減しようという趣旨のメルマガを発信しておりますが、今回のテーマもこれに通ずるところがあり、かつ景気悪化局面だからこそ、無駄な残業代を削減して経費を圧縮し、むしろこれをチャンスとして業務効率のアップを図り、しかも簡単にできる方法はないものかを模索しました。今回ご提案するのは、「あした やるべきこと 順番シート」の活用です。
 
 これは以下のアドレスからダウンロードできます。
http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5

 ご覧になっていただければ分かりますが、前日にあしたやるべき業務を列記し、優先順位をつけましょう、というただそれだけのことです。極めて簡単、無理なく継続でき、無茶苦茶成果が出るというわけではないにしても、確実にステップアップできるものと考えております。仕事が出来る人は、朝その日の業務を頭で考えるのではなく、紙に書き出して視覚化し、意識にインプットしていることが多く、それはメモ程度の紙に書き出していることもあるでしょう。はなから自己管理が出来ている人は不必要ですが、どうもそうでない人で仕事の段取りが悪い人にはいいでしょう。こういう人は自分で工夫するのが苦手ですから、このような簡単に継続できる仕掛けは有効だと思います。

 あまり過度に残業を抑制すると、残業でしか稼ぎしろがない会社の従業員には不満が溜まることがありますので、適度なバランス感覚が必要です。しかし割増賃金を支払って製品やサービスをお客様に提供したとしても、売値に割り増し分を転嫁することは出来ません。またもともと残業しなくても、処理が可能な分量であるにもかかわらず、段取りや優先度管理が悪いため、非効率な処理になっていることもあります。不況期こそ体質強化をするチャンスと捉え、簡単なことから始めて行きませんか?

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月19日 | Category: General
Posted by: nishimura
タイムカードは小切手と同じ、だから管理を厳格にしよう(H20.11月号の記事)

 相変わらず長時間労働が常態化している会社があります。労働基準監督署は毎年、年度方針として、長時間労働による健康障害を防止することを基本方針に掲げており、20年度においても「長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害防止対策の推進」と標題で、最重点項目のトップに挙げています。
よく世間でサービス残業の摘発に関する新聞報道がなされますが、先般発表された厚生労働省の統計によると、その未払い額は企業平均では1,577万円、労働者平均では15万円となっています。http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1024-1.html
 これらはいわゆる長時間労働を抑制するためには、ただ単に「時間を減らせ」と口だけで音頭を取っても効果が薄いので、残業代とセットになれば痛みが相当伴うことから、方便として行われている側面があります。

 ここからが本題です。タイムカードを労働者の自主性に任せてガチャガチャと打刻させるのは、あたかも白紙の小切手を従業員に委ねているようなものです。あとで打刻されている入社から退社までの時間分を請求されても、会社はほとんど反証できません。つまり出るところへ出れば、打刻時間帯分を1分単位で支払うはめになりかねないのです。本来タイムカードは入社退社の時刻でなく、始業終業の時刻を管理するものですが、現実的には会社へ入った時刻と会社を出た時刻で打刻されていることがほとんどではないでしょうか。

 ただ始業時に、全員が業務開始時刻に押すのは無理です。これは仕方がありません。しかし終わりの時刻は退社時刻ではなく、きちんと業務終了時刻で押してもらいましょう。また無駄な残業が常態化している場合は、事業所内に「残業削減ポスター」を貼り、タイムカードの傍にはだらだら押しをしないように喚起する「張り紙」をしましょう。どうしても会社の指示によらない残業を行う場合は、事前に「申請書」を出さして、本当に必要な残業なのかどうか監督者が管理しましょう。雛形は以下のアドレスからダウンロードできます。
http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5
対象文書名  (ノー残業デーポスター)(残業削減ポスター)(タイムカード打刻のお願い)(時間外・休日・深夜勤務届出書)(時間外申請書 1ヶ月方式)


 少なくとも会社が主体的に長時間残業を黙認していない社風を醸成することが肝要です。また特に現場作業員などは残業しなければ給料が上がらない仕組みのため、長く働いて給料を稼ぐ習慣が体質に染み込んでいることがあります。例えば毎日2時間残業する人に、「2時間分残業がなくても払うから、早く帰るようにしてくれ」と言うと、今まで定時で終了していなかった仕事を定時で完了させることがあります。これなどは正に8時間で本来出来る仕事を10時間でこなすリズムになっている証です。しかし従業員の自主残業は、法律上も実はおかしなことなのです。なぜなら労基法では使用者に原則時間外労働を禁止し、就業規則や労働契約書に残業命令の根拠があり、事前に労基署へ時間外労働の限度範囲を届け出て(36協定)、はじめて可能であり、しかもその対価には最低25%(休日は35%)の割り増しを義務付け、刑罰も担保されているのです。つまりもともと使用者が手続きを踏んだ上で命ぜられるものであり、勝手残業はありえません。それはあたかも使用者が注文していない商品の代金が、後から代引きで請求されるようなものです。

 以下、残業による少々怖い話を列記しておきます。
1.冒頭のように労基署へ申告されると、2年間に遡って差額分を支払わされる。その額が一人平均15万円ですと、×人数分・・・・
2.1ヶ月80時間を超える残業が常態化していると、脳心臓疾患で倒れたとき、業務が有力な原因とみなされ、労災請求となり調査を受けるはめになる・・・・
3.2の場合で労災だけで終わればまだしも、家族などから民事上の不法行為もしくは安全配慮義務違反を問われ、訴訟になることも。その金額は億単位もある・・・・
4.旦那の帰りが遅いと、本人とは問題なくても奥さんに慢性的に不満がたまっており、転職を勧めたり、会社にモンスター的クレームをつけてくる・・・・
5.労働条件が劣悪だということで、問題のある合同労組(ユニオン)に駆け込み、半ばやくざまがいの交渉が始まる・・・・

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月19日 | Category: General
Posted by: nishimura
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