18年03月29日
如何にして求人広告の応募効果をアップさせるかを考える その2
~バブル期を超える求人難時代の到来!!~
●如何にして求人広告の応募効果をアップさせるかを考える その2 (2018.4月号)
多様な雇用形態が求人市場に登場してきています。従来の典型的な勤務シフトである日勤フルタイム勤務(例 平日9時~18時など)が静かに崩壊し出しているのです。
これからは好むと好まざるに拘わらず、求職者の多様な就労ニーズ、言いかえると「わがまま」に応えて行けるかどうかが求人の成否を分けることとなる可能性が高いのです。今まで企業は顧客のニーズ(わがまま)に対しては対応をしてきましたが、今後は求職者を顧客と見立てて、そのニーズに応えて行ける企業が、求人活動で生き残る企業になって行くのかもしれません。
企業の論理としては、毎日決まった時間に決まった人が働いてくれる方が、何かと都合が良いのは明らかです。しかし現代の多様化した求人ニーズに応えていかなければ、競り負けることとなってしまいかねません。
そこで今回は、今、静かに進行している多様な働き方をご紹介すると共に、求人広告とリンクさせることを考えてみたいと思います。
取り上げる柔軟な働き方のバリエーション
1.週休3日制
2.短時間正社員
3.兼業・副業
4.テレワーク
1.週休3日制
ユニクロや佐川急便などが先駆けて導入し、新聞紙上でも報道されました。特に日曜日や祝日など、通常多くの人が休日である日に労働者を確保したいサービス関係業種は検討に値する求人方法です。
その仕組みは簡単で、法で認められた変形労働時間制(1ヵ月または1年単位)を活用して、以下のような設計にします。
(1)1日の所定労働時間を10時間とする。
(2)1週に3日の休日を与える。
(3)出勤日に必ず土日祝の日を入れる。
(4)就業規則を変更する。
これだけです。つまり人が集まり難い休日に出てもらう代わりに、週3日の休日を約束するのです。しかも1日10時間までは残業代もかかりません。
おそらく家族と休日を合わす必要の薄い独身層や、休日の確保を重視する求職者には訴求力があるでしょう。こういった人の立場で考えれば、1回出勤すれば、10時間も8時間もさして変わりはなく、それなら休日が多い方を選択するはずです。しかも総労働時間は通常フルタイム勤務者と同じですから、給与体系を変更する必要もありません。
【求人広告記載例】
◎完全週休3日制社員募集!!1日10時間ですが、毎週必ず3日休めます!!
~給与水準は通常の正社員と同じです~
2.短時間正社員
正社員は毎日8時間で皆と同じ、という先入観に囚われる必要はありません。役割や人材活用の仕組みが同じなら、正社員であっても1日6時間勤務など、変化を付けても構わないのです。
例えば小さな子どもを持つ女性労働者を例に考えて見ましょう。保育所への送り迎え、子どもの晩御飯の支度等々、通常の始業終業時刻で拘束されることは躊躇するでしょう。
そもそも現在の育児介護休業法では、1日6時間とする育児のための短時間勤務制度があり、既に義務付けられているのです。従って、フルタイム勤務には制約があるが、正社員として働きたいと考える層にとっては、この短時間正社員制度は魅力的に映るでしょう。但し、給与体系は通常の正社員と同じとはならず、削減される時間に比例して逓減させることとなります。
【求人広告規制例】
◎1日6時間 短時間正社員制度 あります!!
※小さなお子さんをお持ちの方、家庭や趣味と両立をしたい方に最適!!
※給与水準以外は、全てフルタイム正社員と同待遇です。
3.兼業・副業
従来は多くの企業で、兼業・副業は認めて来ませんでした。しかし政府では、この兼業・副業を企業に普及させる方向で考えており、今までは原則禁止にしていた厚生労働省のモデル就業規則でも、原則容認で改訂がなされています。モデル就業規則では以下のようになっています。
(副業・兼業)
第○条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
(1)労務提供上の支障がある場合
(2)企業秘密が漏洩する場合
(3)会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
(4)競業により、企業の利益を害する場合
本年1月にはガイドラインを発出しています。
(副業・兼業の促進に関するガイドライン)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
昨今、残業削減の影響で、実質賃金が目減りする人たちが発生しています。残業削減の中で、もっと稼ぎたいと思う方にとって、ちょこっと副業で稼げるのは魅力的でしょう。兼業副業には、労働時間の通算方法や、災害時の補償のあり方などで、まだ法的に未整備な部分もありますが、週2,3日とか、夕方以降だけでもシフトに入ってもらえれば助かるような企業には、検討の余地が有るかと思います。
【求人広告規制例】
兼業・副業をお考えの方、大歓迎!!
※本業の他に、ちょこっと収入を増やしませんか?
※配偶者控除の関係、生活保護の関係、兼業先との関係でたくさんは働けないけれど、ちょこっと働きたい方にも最適!!
4.テレワーク
情報通信機器が発達し、企画や製作など事務関係の仕事では、会社を離れて仕事ができる環境が整ってきました。スカイプやチャットワークなどにより、遠隔地でも無料でビデオ通話ができ、電話とFAXだけの時代では不可能だったことが、出来る時代となったのです。テレワークとひと言で言っても、その形態は在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務とありますが、その中でも在宅勤務は有力な検討候補の一つです。
看護や介護と仕事を両立させたいと考える人、通勤が困難な地域に居住する人などには、魅力的は働き方として映るでしょう。
これについては本年2月に労務管理上留意すべき事項がガイドラインとして発出されています。
(情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html)
【求人広告規制例】
◎事務員募集、テレワーク(在宅勤務)もOK!
~自宅に居ながら、好きな時間にお仕事可能。通信機器は貸与します~
短時間正社員・兼業副業、テレワークを導入する場合は、規程の作成や書式の整備が必要となります。弊社でも導入支援を致します。
また、今回は割愛しますが、これらの他にも以下のような働き方が広まりつつあります。
5.限定正社員(配置転換のない勤務地限定、職種変更のない職務限定、時間外労働のない時間限定)
6.時差出勤(全員一律出社に拘らず、段階的に出勤時間をずらす)
7.勤務インターバル(終業後から一定時間を空けること。例えば夜遅くまで残業した場合に、始業時刻をずらす)
8.フレックスタイム
9.裁量労働制
こういった制度を求人広告にきちっと書き込み、柔軟な働き方ができる企業であることをアピールして行くのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
●如何にして求人広告の応募効果をアップさせるかを考える その2 (2018.4月号)
多様な雇用形態が求人市場に登場してきています。従来の典型的な勤務シフトである日勤フルタイム勤務(例 平日9時~18時など)が静かに崩壊し出しているのです。
これからは好むと好まざるに拘わらず、求職者の多様な就労ニーズ、言いかえると「わがまま」に応えて行けるかどうかが求人の成否を分けることとなる可能性が高いのです。今まで企業は顧客のニーズ(わがまま)に対しては対応をしてきましたが、今後は求職者を顧客と見立てて、そのニーズに応えて行ける企業が、求人活動で生き残る企業になって行くのかもしれません。
企業の論理としては、毎日決まった時間に決まった人が働いてくれる方が、何かと都合が良いのは明らかです。しかし現代の多様化した求人ニーズに応えていかなければ、競り負けることとなってしまいかねません。
そこで今回は、今、静かに進行している多様な働き方をご紹介すると共に、求人広告とリンクさせることを考えてみたいと思います。
取り上げる柔軟な働き方のバリエーション
1.週休3日制
2.短時間正社員
3.兼業・副業
4.テレワーク
1.週休3日制
ユニクロや佐川急便などが先駆けて導入し、新聞紙上でも報道されました。特に日曜日や祝日など、通常多くの人が休日である日に労働者を確保したいサービス関係業種は検討に値する求人方法です。
その仕組みは簡単で、法で認められた変形労働時間制(1ヵ月または1年単位)を活用して、以下のような設計にします。
(1)1日の所定労働時間を10時間とする。
(2)1週に3日の休日を与える。
(3)出勤日に必ず土日祝の日を入れる。
(4)就業規則を変更する。
これだけです。つまり人が集まり難い休日に出てもらう代わりに、週3日の休日を約束するのです。しかも1日10時間までは残業代もかかりません。
おそらく家族と休日を合わす必要の薄い独身層や、休日の確保を重視する求職者には訴求力があるでしょう。こういった人の立場で考えれば、1回出勤すれば、10時間も8時間もさして変わりはなく、それなら休日が多い方を選択するはずです。しかも総労働時間は通常フルタイム勤務者と同じですから、給与体系を変更する必要もありません。
【求人広告記載例】
◎完全週休3日制社員募集!!1日10時間ですが、毎週必ず3日休めます!!
~給与水準は通常の正社員と同じです~
2.短時間正社員
正社員は毎日8時間で皆と同じ、という先入観に囚われる必要はありません。役割や人材活用の仕組みが同じなら、正社員であっても1日6時間勤務など、変化を付けても構わないのです。
例えば小さな子どもを持つ女性労働者を例に考えて見ましょう。保育所への送り迎え、子どもの晩御飯の支度等々、通常の始業終業時刻で拘束されることは躊躇するでしょう。
そもそも現在の育児介護休業法では、1日6時間とする育児のための短時間勤務制度があり、既に義務付けられているのです。従って、フルタイム勤務には制約があるが、正社員として働きたいと考える層にとっては、この短時間正社員制度は魅力的に映るでしょう。但し、給与体系は通常の正社員と同じとはならず、削減される時間に比例して逓減させることとなります。
【求人広告規制例】
◎1日6時間 短時間正社員制度 あります!!
※小さなお子さんをお持ちの方、家庭や趣味と両立をしたい方に最適!!
※給与水準以外は、全てフルタイム正社員と同待遇です。
3.兼業・副業
従来は多くの企業で、兼業・副業は認めて来ませんでした。しかし政府では、この兼業・副業を企業に普及させる方向で考えており、今までは原則禁止にしていた厚生労働省のモデル就業規則でも、原則容認で改訂がなされています。モデル就業規則では以下のようになっています。
(副業・兼業)
第○条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
(1)労務提供上の支障がある場合
(2)企業秘密が漏洩する場合
(3)会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
(4)競業により、企業の利益を害する場合
本年1月にはガイドラインを発出しています。
(副業・兼業の促進に関するガイドライン)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
昨今、残業削減の影響で、実質賃金が目減りする人たちが発生しています。残業削減の中で、もっと稼ぎたいと思う方にとって、ちょこっと副業で稼げるのは魅力的でしょう。兼業副業には、労働時間の通算方法や、災害時の補償のあり方などで、まだ法的に未整備な部分もありますが、週2,3日とか、夕方以降だけでもシフトに入ってもらえれば助かるような企業には、検討の余地が有るかと思います。
【求人広告規制例】
兼業・副業をお考えの方、大歓迎!!
※本業の他に、ちょこっと収入を増やしませんか?
※配偶者控除の関係、生活保護の関係、兼業先との関係でたくさんは働けないけれど、ちょこっと働きたい方にも最適!!
4.テレワーク
情報通信機器が発達し、企画や製作など事務関係の仕事では、会社を離れて仕事ができる環境が整ってきました。スカイプやチャットワークなどにより、遠隔地でも無料でビデオ通話ができ、電話とFAXだけの時代では不可能だったことが、出来る時代となったのです。テレワークとひと言で言っても、その形態は在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務とありますが、その中でも在宅勤務は有力な検討候補の一つです。
看護や介護と仕事を両立させたいと考える人、通勤が困難な地域に居住する人などには、魅力的は働き方として映るでしょう。
これについては本年2月に労務管理上留意すべき事項がガイドラインとして発出されています。
(情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html)
【求人広告規制例】
◎事務員募集、テレワーク(在宅勤務)もOK!
~自宅に居ながら、好きな時間にお仕事可能。通信機器は貸与します~
短時間正社員・兼業副業、テレワークを導入する場合は、規程の作成や書式の整備が必要となります。弊社でも導入支援を致します。
また、今回は割愛しますが、これらの他にも以下のような働き方が広まりつつあります。
5.限定正社員(配置転換のない勤務地限定、職種変更のない職務限定、時間外労働のない時間限定)
6.時差出勤(全員一律出社に拘らず、段階的に出勤時間をずらす)
7.勤務インターバル(終業後から一定時間を空けること。例えば夜遅くまで残業した場合に、始業時刻をずらす)
8.フレックスタイム
9.裁量労働制
こういった制度を求人広告にきちっと書き込み、柔軟な働き方ができる企業であることをアピールして行くのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
18年02月27日
●如何にして求人広告の応募効果をアップさせるかを考える その1
~バブル期を超える求人難時代の到来!!~
●如何にして求人広告の応募効果をアップさせるかを考える その1 (2018.3月号)
求人情勢が逼迫しています。リーマンショックの2009年8月を底として以降、一貫して右肩上がりで上昇し続けてきた有効求人倍率も、2017年12月には1.59倍となり、バブル期のピークであった1990年7月の1.46倍を超えました。労働録人口はこの動きに反比例して、既に右肩下がりで減少し続けています。
今後の景気動向と共に、AIがどの程度人間の仕事を代替できるか、或いは外国人労働者への門戸どこまで開放するのかにより、不確定要素はありますが、いずれにしても求人難の基調は当分の間、続くものと思われます。
そこでこれから以下3回にわたり、求人広告(紙媒体、ネット媒体を問わない)において、如何に応募数を増やすか?ということに焦点を当てて、考えてみたいと思います。
今後の予定
第1回 コンプライアンスや労務管理に自信のある企業向き 求人広告の出し方
第2回 “グリコのおまけ”を侮らないこと
第3回 キャリア志向の人物を求めたいとき
第4回 柔軟な勤務シフトが可能な企業向き 求人広告の出し方
第1回 コンプライアンスや労務管理に自信にある企業向き 求人広告の出し方
~当たり前の労務管理をきちんと応募者に伝えるよう~
当たり前の労務管理をきちんと応募者に伝えるとは?
応募者が求人広告を見る目には、二つの視点があり、一つは現在同時に出稿されている企業との比較という視点、もう一つは自分がかつて勤めた企業との比較という視点です。盲点なのは、この二つ目の過去との比較とう視点です。
中小企業の求人募集は中途採用が主流です。中途採用ということは、応募者の多くは過去に数社の会社勤務を経験していることになります。そしてその転職動機には前職の労働条件や労務管理に不満があって転職する層が少なからずいるのです。そして世間では、意外?にも、当たり前の労務管理が行われていない実態が多くあり、労働者はそういった現実を経験しています。例えば…、
○限度を超えて長時間労働になっている・・・・・。
○残業代が出ない・・・・・。
○正社員にすら健康診断を行っていない、ましてやパートなど・・・・・。
○労働条件は社長の意のままで、勝手に変更されることも。契約を交わすという発想がない・・・・。
○そもそも有給休暇など、うちの会社にはないと言われた・・・・・・。
○社会保険は認められた者だけしか入れない・・・・・・。
○休憩時間がまともに取れない・・・。
こういった思いを持っている求職者層がかなりいると推測できます。彼らが以下の募集要項を見たとき、どう思うでしょうか?
時間:9時~18時(休憩1H) →本当に1時間休めるの?本当に18時が定時、本当は何時までかかるの?
賃金:月給25万円 →残業代は別に支払ってもらえるの?これは残業を含んでいるの?
休日:日曜日、会社指定土曜日 →シフトがころころ変わるのでは?ちゃんと決まった日に休めるの?
休暇:有給休暇、慶弔休暇 →有給休暇って書いてあるだけじゃない?
待遇:各種社会保険完備 →試用期間中も入れてくれるの?
残念ながらこれが多くの中小企業の労務管理の実態なのです。ですから特別魅力的で有利な労働条件を提示できなくとも、こういった疑問に丁寧に答えられるだけでも武器となり得るのです。中小企業で特別有利な労働条件を提示できることの方が少ないはずですから、当たり前の労務管理ができている会社は、そのことをきちんとアピールするのです。「ここは労務管理をちゃんとしている会社」ということがアピールできれば、それだけで他社より相対的に有利になります。この当たり前の労務管理は、自社では気づきにくいので、外部からチェックしてもらうのが良いでしょう。
ポイントは、応募要項を無味乾燥に並べるだけでなく、それらにひと言説明を加えること(以下記載例の※印の部分)なのですが、以下、いくつか具体例をあげて説明します。
■労働時間に関すること
1.残業が少ない会社の場合
(記載例1) 9時~18時 ※残業はありません。18時きっかりに帰社できます。
(記載例2) 9時~18時 ※平均残業時間1ヵ月30時間(36協定内であり、長時間残業はありません)
2.休憩時間はきちんと休める会社の場合
(記載例) 休憩時間12時から13時 ※休憩時間はきちんと自由に過ごすことができます。仮眠、マンガOK!
3.早出がない会社の場合
(記載例) 9時~18時 ※9時前にお入りいただければ結構です。早出はありません。
■休日休暇に関すること
1.休日出勤はない会社の場合
(記載例) 日曜祝日、隔週土曜日 夏季年末年始(年間休日105日) ※会社休日に出勤をお願いすることはありません。
2.有給休暇を取れる会社の場合
(記載例1) 有給休暇あり ※有給休暇は法定日数を自由に取得すること可
(記載例2) 有給休暇あり ※有給休暇取得率50%超。パートも取得可。短時間パートも比例付与あり。
■賃金に関すること
1.残業代はきちんと支払う会社の場合
(記載例1) 月25万円 ※18時を過ぎた場合は、きちんと残業代お支払いします。
(記載例2) 月25万円 ※基本給に残業代は含まれていません。別途支給します。
■社会保険に関すること
1.入社初日(試用期間中)から加入する会社の場合
(記載例) 各種社会保険(労災・雇用・健保・厚生年金)完備 ※社会保険は入社初日からご加入頂けます。
■その他
1.就業規則は開示している会社の場合
(記載例) 就業規則完備 ※就業規則は全社員に公開しています。
2.労働契約は文書で交わす会社の場合
(記載例) 労働契約書完備 ※労働条件は、きちんと文書で交わしますから安心です。
3.健康診断はしている会社の場合
(記載例) 健康診断あり ※健康診断は毎年7月に実施。全員(パートも)が受診できます。
3.分煙禁煙
(記載例) ※事務所内は全面禁煙です。喫煙者は専用スペースあります。
4.服装(特に女性)
(記載例1) 制服貸与(無償) ※毎日服装で悩むことはありません。
(記載例2) ※ジーパン、Tシャツ以外なら服装自由。個性を発揮できます。
■できれば表に出したい数字に関すること
1.勤続年数(10年以上なら定着性の良い会社として安心)
2.男女の割合(女性割合が多い場合)
3.平均残業時間(36協定以内の時間なら可)
4.有給取得率(平均が45%くらいなので、それ以上であれば有利)
5.年収平均(ボーナスや平均残業代を加算して 初任給で400万円以上あれば有利)
6.昇給額・率(平均1.5% 4000円位なので、これ以上であれば有利)
■キャッチフレーズ
(記載例)
私どもは小さな会社ですが、自社の労務管理は、きちんと行っております。
大したことはできませんが、愚直なまでに「ちゃんとすること」を心がけています。
年間105日は休めて、休憩時間もしっかり取り、残業は一切ありません。仮に残業があってもきちんと割増賃金は支払いますし、有給も取れます。
就業規則も開示、労働条件は文書で交わします。研修や勉強会もよく行っていますし、社員の健康にも充分配慮しています。
とにかく真面目で誠実な社風の会社だと思っております。
当たり前の労務管理を当たり前に行っている企業は、こういったことも検討してみてください。蛇足ながら、こういったことは広告プランナー任せに求人を出すと絶対に出てこないアプローチです。必ず、主体的にアピールして、記載してもらう必要があります。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
●如何にして求人広告の応募効果をアップさせるかを考える その1 (2018.3月号)
求人情勢が逼迫しています。リーマンショックの2009年8月を底として以降、一貫して右肩上がりで上昇し続けてきた有効求人倍率も、2017年12月には1.59倍となり、バブル期のピークであった1990年7月の1.46倍を超えました。労働録人口はこの動きに反比例して、既に右肩下がりで減少し続けています。
今後の景気動向と共に、AIがどの程度人間の仕事を代替できるか、或いは外国人労働者への門戸どこまで開放するのかにより、不確定要素はありますが、いずれにしても求人難の基調は当分の間、続くものと思われます。
そこでこれから以下3回にわたり、求人広告(紙媒体、ネット媒体を問わない)において、如何に応募数を増やすか?ということに焦点を当てて、考えてみたいと思います。
今後の予定
第1回 コンプライアンスや労務管理に自信のある企業向き 求人広告の出し方
第2回 “グリコのおまけ”を侮らないこと
第3回 キャリア志向の人物を求めたいとき
第4回 柔軟な勤務シフトが可能な企業向き 求人広告の出し方
第1回 コンプライアンスや労務管理に自信にある企業向き 求人広告の出し方
~当たり前の労務管理をきちんと応募者に伝えるよう~
当たり前の労務管理をきちんと応募者に伝えるとは?
応募者が求人広告を見る目には、二つの視点があり、一つは現在同時に出稿されている企業との比較という視点、もう一つは自分がかつて勤めた企業との比較という視点です。盲点なのは、この二つ目の過去との比較とう視点です。
中小企業の求人募集は中途採用が主流です。中途採用ということは、応募者の多くは過去に数社の会社勤務を経験していることになります。そしてその転職動機には前職の労働条件や労務管理に不満があって転職する層が少なからずいるのです。そして世間では、意外?にも、当たり前の労務管理が行われていない実態が多くあり、労働者はそういった現実を経験しています。例えば…、
○限度を超えて長時間労働になっている・・・・・。
○残業代が出ない・・・・・。
○正社員にすら健康診断を行っていない、ましてやパートなど・・・・・。
○労働条件は社長の意のままで、勝手に変更されることも。契約を交わすという発想がない・・・・。
○そもそも有給休暇など、うちの会社にはないと言われた・・・・・・。
○社会保険は認められた者だけしか入れない・・・・・・。
○休憩時間がまともに取れない・・・。
こういった思いを持っている求職者層がかなりいると推測できます。彼らが以下の募集要項を見たとき、どう思うでしょうか?
時間:9時~18時(休憩1H) →本当に1時間休めるの?本当に18時が定時、本当は何時までかかるの?
賃金:月給25万円 →残業代は別に支払ってもらえるの?これは残業を含んでいるの?
休日:日曜日、会社指定土曜日 →シフトがころころ変わるのでは?ちゃんと決まった日に休めるの?
休暇:有給休暇、慶弔休暇 →有給休暇って書いてあるだけじゃない?
待遇:各種社会保険完備 →試用期間中も入れてくれるの?
残念ながらこれが多くの中小企業の労務管理の実態なのです。ですから特別魅力的で有利な労働条件を提示できなくとも、こういった疑問に丁寧に答えられるだけでも武器となり得るのです。中小企業で特別有利な労働条件を提示できることの方が少ないはずですから、当たり前の労務管理ができている会社は、そのことをきちんとアピールするのです。「ここは労務管理をちゃんとしている会社」ということがアピールできれば、それだけで他社より相対的に有利になります。この当たり前の労務管理は、自社では気づきにくいので、外部からチェックしてもらうのが良いでしょう。
ポイントは、応募要項を無味乾燥に並べるだけでなく、それらにひと言説明を加えること(以下記載例の※印の部分)なのですが、以下、いくつか具体例をあげて説明します。
■労働時間に関すること
1.残業が少ない会社の場合
(記載例1) 9時~18時 ※残業はありません。18時きっかりに帰社できます。
(記載例2) 9時~18時 ※平均残業時間1ヵ月30時間(36協定内であり、長時間残業はありません)
2.休憩時間はきちんと休める会社の場合
(記載例) 休憩時間12時から13時 ※休憩時間はきちんと自由に過ごすことができます。仮眠、マンガOK!
3.早出がない会社の場合
(記載例) 9時~18時 ※9時前にお入りいただければ結構です。早出はありません。
■休日休暇に関すること
1.休日出勤はない会社の場合
(記載例) 日曜祝日、隔週土曜日 夏季年末年始(年間休日105日) ※会社休日に出勤をお願いすることはありません。
2.有給休暇を取れる会社の場合
(記載例1) 有給休暇あり ※有給休暇は法定日数を自由に取得すること可
(記載例2) 有給休暇あり ※有給休暇取得率50%超。パートも取得可。短時間パートも比例付与あり。
■賃金に関すること
1.残業代はきちんと支払う会社の場合
(記載例1) 月25万円 ※18時を過ぎた場合は、きちんと残業代お支払いします。
(記載例2) 月25万円 ※基本給に残業代は含まれていません。別途支給します。
■社会保険に関すること
1.入社初日(試用期間中)から加入する会社の場合
(記載例) 各種社会保険(労災・雇用・健保・厚生年金)完備 ※社会保険は入社初日からご加入頂けます。
■その他
1.就業規則は開示している会社の場合
(記載例) 就業規則完備 ※就業規則は全社員に公開しています。
2.労働契約は文書で交わす会社の場合
(記載例) 労働契約書完備 ※労働条件は、きちんと文書で交わしますから安心です。
3.健康診断はしている会社の場合
(記載例) 健康診断あり ※健康診断は毎年7月に実施。全員(パートも)が受診できます。
3.分煙禁煙
(記載例) ※事務所内は全面禁煙です。喫煙者は専用スペースあります。
4.服装(特に女性)
(記載例1) 制服貸与(無償) ※毎日服装で悩むことはありません。
(記載例2) ※ジーパン、Tシャツ以外なら服装自由。個性を発揮できます。
■できれば表に出したい数字に関すること
1.勤続年数(10年以上なら定着性の良い会社として安心)
2.男女の割合(女性割合が多い場合)
3.平均残業時間(36協定以内の時間なら可)
4.有給取得率(平均が45%くらいなので、それ以上であれば有利)
5.年収平均(ボーナスや平均残業代を加算して 初任給で400万円以上あれば有利)
6.昇給額・率(平均1.5% 4000円位なので、これ以上であれば有利)
■キャッチフレーズ
(記載例)
私どもは小さな会社ですが、自社の労務管理は、きちんと行っております。
大したことはできませんが、愚直なまでに「ちゃんとすること」を心がけています。
年間105日は休めて、休憩時間もしっかり取り、残業は一切ありません。仮に残業があってもきちんと割増賃金は支払いますし、有給も取れます。
就業規則も開示、労働条件は文書で交わします。研修や勉強会もよく行っていますし、社員の健康にも充分配慮しています。
とにかく真面目で誠実な社風の会社だと思っております。
当たり前の労務管理を当たり前に行っている企業は、こういったことも検討してみてください。蛇足ながら、こういったことは広告プランナー任せに求人を出すと絶対に出てこないアプローチです。必ず、主体的にアピールして、記載してもらう必要があります。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
18年01月30日
大手企業で行われている働き方改革の中味とは(2018.2月号)
●大手企業で行われている働き方改革の中味とは(2018.2月号)
前回1月号におきまして、「今年は労働生産性の向上を経営課題としよう」と題する記事を配信いたしました。今後経営課題として取り組むべき4つの切り口として、
1.社内風土と役員・従業員の意識改革、
2.社内の仕組みの改革、
3.業務システムの改革、
4.人事制度の改革
をご提案いたしましたが、実際、世間の大手企業ではどのような取り組みが行われているのでしょうか?
今回は、2016年度に労務行政研究所が調査した調査結果をもとに、その内容の一部をご紹介したいと思います。
1.長時間労働削減に向けて実施している施策の内容 ベスト10
(1)管理職層に対する意識啓発への取り組み 76.9%
(2)一般社員に対する意識啓発への取り組み 67.0%
(2)ノー残業デーの設定 67.0%
(4)自分の労働時間数が簡単に分かる仕組み 55.7%
(5)時間外労働の事前届出制・許可制の導入 53.8%
(6)経営層から社内に向けて長時間労働是正へのッセージを発信 44.8%
(7)社内イントラネット、パンフレットの作成、掲示物による長時間労働是正の啓発 37.1.%
(8)会議を減らす等、業務の進め方への改善の取り組み 35.7%
(9)間接部門の合理化、IT化の推進 34.8%
(10)要員増、配置の適正化 33.9%
こうして概観してみると、やはり4つの切り口に集約できるのではないかと思いますが、その中でも「社内風土と役員・従業員の意識改革」に関するものが多く、しかも上位を占めており、大手企業でも意識改革を重視していることが伺えます。
2.現在実施している施策のうち、2016年以降に導入したもの ベスト10
(1)長時間労働削減に向けた社内プロジェクトの設置 61.0%
(2)36協定の協定時間の短縮 55.0%
(3)勤務間インターバル制度の導入 50.0%
(4)労働時間削減に対する顧客、取引先等への理解促進に向けた働きかけ 40.0%
(5)時間外労働の削減状況を人事考課により賃金や賞与に反映 37.5%
(6)総労働時間の目標を設定 35.5%
(7)36協定とは別途にこれを下回る「原則限度時間」の設定 32.4.%
(8)会議を減らす等、業務の進め方への改善の取り組み 30.4%
(9)経営層から社内に向けて長時間労働是正へのメッセージを発信 30.3%
(10)一定の時間になると強制的に消灯 27.6%
やはり大手企業ですから、いち早く経営課題と認識し、長時間労働削減のためのプロジェクト(おそらく特別委員会のようなものと考えられる)を立ち上げ、本腰を入れていることが分かります。
ここには収録しておりませんが、これらの施策のうち、取り組みの効果を尋ねている質問もあるのですが、「大いに効果がある」「ある程度効果がある」を併せて5割を超えていない施策は、「勤務間インターバル制度の導入」くらいで、おおよそ全ての施策で効果が実感されているようです。
3.その他、自由回答で出てきた必要と考える主な施策
◎業務プロセスの見直し、無駄な労働慣行や業務の廃止
◎アウトソーシング、外注化の促進
◎省力化のための設備投資、社内手続きのシステム化
◎情報共有できる環境整備
◎属人化、一極集中をを平準化、多能工化
◎顧客への過剰サービスの見直し
◎AI導入
◎人事が全社員の残業時間を定点観測のよるデータ化と現場への定期報告
◎巡回パトロール
◎管理職に対する原因・対策書を求める
これら自由回答の中で、効果が得られているとして多く感じられているのが、「人事が全社員の残業時間を定点観測のよるデータ化と現場への定期報告」に類する施策です。やはり時間外労働の現状をデータ化、見える化して現場、特に管理者に突きつけるのが効果的と考えられているように思われます。
如何だったでしょうか?好むと好まざるに拘わらず、世の中は、一斉にこういった方向へ梶を切ったのです。もう後戻りはしないでしょう。中小企業だから無理、●●業だから無理、こんなことやってたら経営なんてできない、潰れる、なんて言い訳は、逃げの何ものでもありません。働き方改革、待ったなしなのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
前回1月号におきまして、「今年は労働生産性の向上を経営課題としよう」と題する記事を配信いたしました。今後経営課題として取り組むべき4つの切り口として、
1.社内風土と役員・従業員の意識改革、
2.社内の仕組みの改革、
3.業務システムの改革、
4.人事制度の改革
をご提案いたしましたが、実際、世間の大手企業ではどのような取り組みが行われているのでしょうか?
今回は、2016年度に労務行政研究所が調査した調査結果をもとに、その内容の一部をご紹介したいと思います。
1.長時間労働削減に向けて実施している施策の内容 ベスト10
(1)管理職層に対する意識啓発への取り組み 76.9%
(2)一般社員に対する意識啓発への取り組み 67.0%
(2)ノー残業デーの設定 67.0%
(4)自分の労働時間数が簡単に分かる仕組み 55.7%
(5)時間外労働の事前届出制・許可制の導入 53.8%
(6)経営層から社内に向けて長時間労働是正へのッセージを発信 44.8%
(7)社内イントラネット、パンフレットの作成、掲示物による長時間労働是正の啓発 37.1.%
(8)会議を減らす等、業務の進め方への改善の取り組み 35.7%
(9)間接部門の合理化、IT化の推進 34.8%
(10)要員増、配置の適正化 33.9%
こうして概観してみると、やはり4つの切り口に集約できるのではないかと思いますが、その中でも「社内風土と役員・従業員の意識改革」に関するものが多く、しかも上位を占めており、大手企業でも意識改革を重視していることが伺えます。
2.現在実施している施策のうち、2016年以降に導入したもの ベスト10
(1)長時間労働削減に向けた社内プロジェクトの設置 61.0%
(2)36協定の協定時間の短縮 55.0%
(3)勤務間インターバル制度の導入 50.0%
(4)労働時間削減に対する顧客、取引先等への理解促進に向けた働きかけ 40.0%
(5)時間外労働の削減状況を人事考課により賃金や賞与に反映 37.5%
(6)総労働時間の目標を設定 35.5%
(7)36協定とは別途にこれを下回る「原則限度時間」の設定 32.4.%
(8)会議を減らす等、業務の進め方への改善の取り組み 30.4%
(9)経営層から社内に向けて長時間労働是正へのメッセージを発信 30.3%
(10)一定の時間になると強制的に消灯 27.6%
やはり大手企業ですから、いち早く経営課題と認識し、長時間労働削減のためのプロジェクト(おそらく特別委員会のようなものと考えられる)を立ち上げ、本腰を入れていることが分かります。
ここには収録しておりませんが、これらの施策のうち、取り組みの効果を尋ねている質問もあるのですが、「大いに効果がある」「ある程度効果がある」を併せて5割を超えていない施策は、「勤務間インターバル制度の導入」くらいで、おおよそ全ての施策で効果が実感されているようです。
3.その他、自由回答で出てきた必要と考える主な施策
◎業務プロセスの見直し、無駄な労働慣行や業務の廃止
◎アウトソーシング、外注化の促進
◎省力化のための設備投資、社内手続きのシステム化
◎情報共有できる環境整備
◎属人化、一極集中をを平準化、多能工化
◎顧客への過剰サービスの見直し
◎AI導入
◎人事が全社員の残業時間を定点観測のよるデータ化と現場への定期報告
◎巡回パトロール
◎管理職に対する原因・対策書を求める
これら自由回答の中で、効果が得られているとして多く感じられているのが、「人事が全社員の残業時間を定点観測のよるデータ化と現場への定期報告」に類する施策です。やはり時間外労働の現状をデータ化、見える化して現場、特に管理者に突きつけるのが効果的と考えられているように思われます。
如何だったでしょうか?好むと好まざるに拘わらず、世の中は、一斉にこういった方向へ梶を切ったのです。もう後戻りはしないでしょう。中小企業だから無理、●●業だから無理、こんなことやってたら経営なんてできない、潰れる、なんて言い訳は、逃げの何ものでもありません。働き方改革、待ったなしなのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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18年01月06日
今年は労働生産性の向上を経営課題としよう(H30.1月号)
~働き方改革に対応できる企業が生き残る時代へ入った~
●今年は労働生産性の向上を経営課題としよう(H30.1月号)
経営者の皆様は、ほとんど日経新聞を購読しておられると思いますが、昨年、見出しで多かったなあと思い出されることは何ですか?
私個人的には、「AI」がその一つですが、もう一つ、というよりもう一テーマあったように感じています。それが「労働生産性」とか「長時間労働の是正」とか、或いは「働き方改革」といった言葉です。皆様も印象に残っているのではないでしょうか?
今、政府ではこれらに関し、どういった法整備を準備しているかご存知でしょか?まずはその概略をご紹介し、その後、企業が取り組むべき方向性を考えて行きたいと思います。
■今後、予定されている法整備(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱)抄
1.長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
(1) 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法)
・時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定。
・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。
・使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。
(2) 勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)
・事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととする。
2. 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
(1) 不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
・短時間・有期雇用労働者、派遣労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、ガイドラインの根拠規定を整備。
(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等 )
(2) 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
・短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。
3.施行予定日
・1は平成31年4月1日(中小企業における割増賃金率の見直しは平成34年4月1日) 、2は平成32年4月1日)
これらの改正法案は、この1月から始まる通常国会で成立する見込みの高いものです。
また、これとは別に、昨年、「働き方改革実行計画」が纏められ、その概要は以下の通りとなっており、今後、この方向性で法律案が出てくるものと思われます。
1.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
2.賃金引上げと労働生産性向上
3.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
4.柔軟な働き方がしやすい環境整備(テレワーク、副業・兼業の推進など)
5.女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
6.病気の治療と仕事の両立
7.子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
8.高齢者の就業促進
9.外国人材の受入れ
ここでもお分かりの通り、ちゃんと2に今回のテーマでもある「労働生産性向上」が入ってきています。今後、世の中はこういった方向性で進んで行くこととなるのです。
■これから企業が具体的に取り組むべき方向性
以上の概況を理解した上で、企業はどこから手を付けて行けば良いのでしょうか?もし暗中模索の状況なら、以下の切り口で考えてみてください。
1.社内風土と役員・従業員の意識改革
2.社内の仕組みの改革
3.業務システムの改革
4.人事制度の改革
以下、順に簡単に解説いたします。
1.社内風土と役員・従業員の意識改革
今後、社会が長時間労働による非効率な働き方を許さない時流になって行くとの理解をもち、時間を掛けて仕事をすることは悪であるという社風を作り上げていく改革です。残業は当たり前、夜遅くまで頑張っている、なんて感覚を撲滅して行きます。
2.社内の仕組みの改革
そもそも労働生産性とは、次の算式で表すことができます。 労働生産性=インプット(成果)↑÷アウトプット(総労働時間)↓
つまり成果を落さずに(むしろ上げて)、投入時間を減らすことなのです。このためには社内のマネジメントの改革が必要です。仕事の取り方、流し方、処理の仕方など、今までのやり方を疑ってかかります。
3.業務システムの改革
典型的にはITやAIの更なる活用です。前記2がソフト改革だとすると、こちらはハード改革です。飲食店が各テーブルにタッチパネルを置くのもその典型例でしょう。日進月歩の世界、より効率化できるIT機器への情報収集と設備投資が欠かせません。
4.人事制度の改革
残業が減って給料も減る。こうなると中々実効性が上がりません。良い思いをするのは会社だけという冷ややかな反応になってしまいます。従って、アウトプット(成果)を上げながらインプット(投入量)を下げた従業員を高く評価し、待遇に反映させる人事制度が考えられます。
また、リモートワークや在宅勤務など、勤務形態を多様化させることで投入量を減らすことも検討します。
今のままでもあと10年は逃げ切れるかもしれません。しかしその先は・・・・・・・・。
待ったなしの働き方改革!!単なる労務問題ではなく、経営課題となってきています。まだ経営課題として取り組んでいない企業は、今年から取り組んで行きませんか?
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
●今年は労働生産性の向上を経営課題としよう(H30.1月号)
経営者の皆様は、ほとんど日経新聞を購読しておられると思いますが、昨年、見出しで多かったなあと思い出されることは何ですか?
私個人的には、「AI」がその一つですが、もう一つ、というよりもう一テーマあったように感じています。それが「労働生産性」とか「長時間労働の是正」とか、或いは「働き方改革」といった言葉です。皆様も印象に残っているのではないでしょうか?
今、政府ではこれらに関し、どういった法整備を準備しているかご存知でしょか?まずはその概略をご紹介し、その後、企業が取り組むべき方向性を考えて行きたいと思います。
■今後、予定されている法整備(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱)抄
1.長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
(1) 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法)
・時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定。
・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。
・使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。
(2) 勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)
・事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととする。
2. 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
(1) 不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
・短時間・有期雇用労働者、派遣労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、ガイドラインの根拠規定を整備。
(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等 )
(2) 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
・短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。
3.施行予定日
・1は平成31年4月1日(中小企業における割増賃金率の見直しは平成34年4月1日) 、2は平成32年4月1日)
これらの改正法案は、この1月から始まる通常国会で成立する見込みの高いものです。
また、これとは別に、昨年、「働き方改革実行計画」が纏められ、その概要は以下の通りとなっており、今後、この方向性で法律案が出てくるものと思われます。
1.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
2.賃金引上げと労働生産性向上
3.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
4.柔軟な働き方がしやすい環境整備(テレワーク、副業・兼業の推進など)
5.女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
6.病気の治療と仕事の両立
7.子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
8.高齢者の就業促進
9.外国人材の受入れ
ここでもお分かりの通り、ちゃんと2に今回のテーマでもある「労働生産性向上」が入ってきています。今後、世の中はこういった方向性で進んで行くこととなるのです。
■これから企業が具体的に取り組むべき方向性
以上の概況を理解した上で、企業はどこから手を付けて行けば良いのでしょうか?もし暗中模索の状況なら、以下の切り口で考えてみてください。
1.社内風土と役員・従業員の意識改革
2.社内の仕組みの改革
3.業務システムの改革
4.人事制度の改革
以下、順に簡単に解説いたします。
1.社内風土と役員・従業員の意識改革
今後、社会が長時間労働による非効率な働き方を許さない時流になって行くとの理解をもち、時間を掛けて仕事をすることは悪であるという社風を作り上げていく改革です。残業は当たり前、夜遅くまで頑張っている、なんて感覚を撲滅して行きます。
2.社内の仕組みの改革
そもそも労働生産性とは、次の算式で表すことができます。 労働生産性=インプット(成果)↑÷アウトプット(総労働時間)↓
つまり成果を落さずに(むしろ上げて)、投入時間を減らすことなのです。このためには社内のマネジメントの改革が必要です。仕事の取り方、流し方、処理の仕方など、今までのやり方を疑ってかかります。
3.業務システムの改革
典型的にはITやAIの更なる活用です。前記2がソフト改革だとすると、こちらはハード改革です。飲食店が各テーブルにタッチパネルを置くのもその典型例でしょう。日進月歩の世界、より効率化できるIT機器への情報収集と設備投資が欠かせません。
4.人事制度の改革
残業が減って給料も減る。こうなると中々実効性が上がりません。良い思いをするのは会社だけという冷ややかな反応になってしまいます。従って、アウトプット(成果)を上げながらインプット(投入量)を下げた従業員を高く評価し、待遇に反映させる人事制度が考えられます。
また、リモートワークや在宅勤務など、勤務形態を多様化させることで投入量を減らすことも検討します。
今のままでもあと10年は逃げ切れるかもしれません。しかしその先は・・・・・・・・。
待ったなしの働き方改革!!単なる労務問題ではなく、経営課題となってきています。まだ経営課題として取り組んでいない企業は、今年から取り組んで行きませんか?
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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17年11月28日
●中小企業でヘッドハンティング採用をする場合の留意点
●中小企業でヘッドハンティング採用をする場合の留意点(H29.12月号)
中小企業の社内風土で欠落しがちなものに、適度な「上昇志向」と「競争原理」があります。大企業のようにゼネラリスト(管理監督者層)やスペシャリスト(高度技術者)が社内から育ちにくい社内風土の中で、こうった人材を外部に求めて、採用をすることがあります。大手企業の管理職クラスの方、或いは親企業や取引銀行からの再就職者が典型的な例ですが、これが上手く行かないことが実に多いのです。これらを仮に「ヘッドハンティング採用者」といいますが、私の20年に渉る社労士としての企業サポートの経験から、上手く機能した事例は非常に少ないというのが正直な印象です。
この原因は色々推測されるのですが、大別すると以下3点に絞られるのではないかと考えています。
◎そもそも社長とソリが合わなかった
◎中小企業の「あれもこれも」に合わなかった
◎ミッションをはっきり伝えていなかった
どういうことでしょう?
1.そもそも社長とソリが合わなかった
これはひと言で言うと、社長の価値観や感性に合わないことから来るもので、結局ミスマッチを起こし、それが社長のストレスとなってしまうケースです。最悪の場合は喧嘩別れのような事態に陥ることもあり、退職後も感情的なもつれから、トラブルが長期化することがあります。
中小企業の一般社員の採用方針の鉄則に、知識・能力よりも、社長の好みを優先するということがあります。要するに社長が好きな性格傾向の方をまず優先すべきで、スキルはその次ということです。よく2:6:2の法則と言われますが、上位2割の人材は最初から来ないと思った方がよく、また狙うべき人材でもありません。仮に運よくスキルの高い人材を採用出来ても、結局、受け入れる企業にその体制がなければ早期退職されるだけです。
特に社長が全社に目の届く範囲の規模であれば、社長の好みに合うかどうか、自分の会社の社風に馴染むかどうかを優先し、その人物が下位2割でなければ、採用するべき人材と言えるでしょう。これを仮に「合う人優先採用」とします。
ところが、「ヘッドハンティング採用者」の場合は、どうしてもこの「合う人優先採用」の法則から外れます。つまり社長に合うかどうかは二の次で、まずスキルや知識を優先します。ここに落とし穴があるのです。一目惚れしたがために判断が鈍り、付き合いだしてみたものの、一緒に居ると嫌な面が見えてくる、そんな感じでしょうか?
ですからここでいえる事は、
a.合わない可能性のあることを承知の上で覚悟をもって採用するか、
b.やはり「合う人優先採用」を貫くか、
の選択が必要だと思うのです。
2.中小企業の「あれもこれも」に合わなかった
これは図に書いてみると視覚的に分かり易いのですが、まず円グラフを思い描いてください。大企業の力量を表す円グラフは直径10メートルもある大きな円です。一方、あなたの企業は直径10センチだとします。とっても小さな円になるはずです。
大企業は10メートルもある大きな円ですが、そこに働く一人一人の占める面積は、恐らく棒線程度の面積しかありません。外周円から中心点まで長い線にはなりますので、非常に深いのですが、面積的には棒線くらいにしかならない。
しかしあなたの企業は小さな10センチの円ですが、僅か4名しかいません。これを円グラフの面積にすると90度の角度、つまり4分の1の面積を占めることとなります。
イメージ出来たでしょうか?
中小企業では、一人一人の面積は深くはないけれども、幅が非常に広いことになります。これはどういうことを意味するのかと言うと、つまり中小企業は「あれもこれも」やらなければ行けないのです。例えば事務職だからと言って、経理だけに特化することはなく、総務も、人事も、庶務も、或いは財務もやる。人手が足りなければ、倉庫も手伝うし、検品もやる。つまり「あれもこれも」なのです。
この根本的な働き方の違いが大企業の風土しか知らない「ヘッドハンティング採用者」には理解し難いものと思われ、結局、その専門知識を深く活かせることもなく、周囲から浮いてしまい、居場所が無くなって行くような気がします。
ですからここでいえる事は、
a.「あれもこれも」やって欲しいのか、
b.本当にその深い専門知識だけ提供してくれれば良いのか、
の腹積もりが必要だと思うのです。
3.ミッションをはっきり伝えていなかった
後から「ヘッドハンティング採用者」のことで悩んでいるとして、ご相談を受けたとき、お尋ねします。「そもそもこの方に、何を期待して来てもらったのですか?」。
そうすると答えに窮されるのです。社長としては採用すると良いことがあるだろうと期待して来てもらったはずですが、そもそも何を期待していたのでしょうか?
その思いが明確に伝わっていないのです。社長としては思いがあったはずです。「ウチの息子であるまだ年若い専務に、色々と教えてやって欲しい」とか、「前職の経験を活かして欲しい」とか。
でもちょっと待った!!です。その色々と教えるとか、経験を活かすとか、一体何なのでしょうか?阿吽の呼吸で理解してくれるものなのでしょうか?結局、漠然とした期待は分かるのですが、それを「ヘッドハンティング採用者」にきちんと伝えていないのです。通常、「ヘッドハンティング採用者」は自社の初任給相場より、うんと高い給与で招聘します。その割には期待はずれ、となりモヤモヤ感が生じてしまう。
ですからここでいえる事は、
a.最初に何を期待しており、何を成果として出して欲しいのか、誓約文書できちんと伝える
b.万が一、期待はずれだったときに、給与を再改定し易いように「特別保障手当」を入れた雇用契約書を結ぶ
※誓約文書の例は、弊社HPの「各書類のダウンロードコーナー」において、労働契約関係のカテゴリーの中から、「高度管理職誓約書」をご参照ください。
http://www.nishimura-roumu.com/jyosei-roumu-sho/download.html
※特別保障手当については、過去メルマガ「出来ると思って雇ったら期待はずれ・・・そんな時、特別保障手当を活用しよう!(H18.5月号)」をご参照ください。
http://www.nishimura-roumu.com/information/18-1-12/456-2016-04-20-13-21-107.html
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
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中小企業の社内風土で欠落しがちなものに、適度な「上昇志向」と「競争原理」があります。大企業のようにゼネラリスト(管理監督者層)やスペシャリスト(高度技術者)が社内から育ちにくい社内風土の中で、こうった人材を外部に求めて、採用をすることがあります。大手企業の管理職クラスの方、或いは親企業や取引銀行からの再就職者が典型的な例ですが、これが上手く行かないことが実に多いのです。これらを仮に「ヘッドハンティング採用者」といいますが、私の20年に渉る社労士としての企業サポートの経験から、上手く機能した事例は非常に少ないというのが正直な印象です。
この原因は色々推測されるのですが、大別すると以下3点に絞られるのではないかと考えています。
◎そもそも社長とソリが合わなかった
◎中小企業の「あれもこれも」に合わなかった
◎ミッションをはっきり伝えていなかった
どういうことでしょう?
1.そもそも社長とソリが合わなかった
これはひと言で言うと、社長の価値観や感性に合わないことから来るもので、結局ミスマッチを起こし、それが社長のストレスとなってしまうケースです。最悪の場合は喧嘩別れのような事態に陥ることもあり、退職後も感情的なもつれから、トラブルが長期化することがあります。
中小企業の一般社員の採用方針の鉄則に、知識・能力よりも、社長の好みを優先するということがあります。要するに社長が好きな性格傾向の方をまず優先すべきで、スキルはその次ということです。よく2:6:2の法則と言われますが、上位2割の人材は最初から来ないと思った方がよく、また狙うべき人材でもありません。仮に運よくスキルの高い人材を採用出来ても、結局、受け入れる企業にその体制がなければ早期退職されるだけです。
特に社長が全社に目の届く範囲の規模であれば、社長の好みに合うかどうか、自分の会社の社風に馴染むかどうかを優先し、その人物が下位2割でなければ、採用するべき人材と言えるでしょう。これを仮に「合う人優先採用」とします。
ところが、「ヘッドハンティング採用者」の場合は、どうしてもこの「合う人優先採用」の法則から外れます。つまり社長に合うかどうかは二の次で、まずスキルや知識を優先します。ここに落とし穴があるのです。一目惚れしたがために判断が鈍り、付き合いだしてみたものの、一緒に居ると嫌な面が見えてくる、そんな感じでしょうか?
ですからここでいえる事は、
a.合わない可能性のあることを承知の上で覚悟をもって採用するか、
b.やはり「合う人優先採用」を貫くか、
の選択が必要だと思うのです。
2.中小企業の「あれもこれも」に合わなかった
これは図に書いてみると視覚的に分かり易いのですが、まず円グラフを思い描いてください。大企業の力量を表す円グラフは直径10メートルもある大きな円です。一方、あなたの企業は直径10センチだとします。とっても小さな円になるはずです。
大企業は10メートルもある大きな円ですが、そこに働く一人一人の占める面積は、恐らく棒線程度の面積しかありません。外周円から中心点まで長い線にはなりますので、非常に深いのですが、面積的には棒線くらいにしかならない。
しかしあなたの企業は小さな10センチの円ですが、僅か4名しかいません。これを円グラフの面積にすると90度の角度、つまり4分の1の面積を占めることとなります。
イメージ出来たでしょうか?
中小企業では、一人一人の面積は深くはないけれども、幅が非常に広いことになります。これはどういうことを意味するのかと言うと、つまり中小企業は「あれもこれも」やらなければ行けないのです。例えば事務職だからと言って、経理だけに特化することはなく、総務も、人事も、庶務も、或いは財務もやる。人手が足りなければ、倉庫も手伝うし、検品もやる。つまり「あれもこれも」なのです。
この根本的な働き方の違いが大企業の風土しか知らない「ヘッドハンティング採用者」には理解し難いものと思われ、結局、その専門知識を深く活かせることもなく、周囲から浮いてしまい、居場所が無くなって行くような気がします。
ですからここでいえる事は、
a.「あれもこれも」やって欲しいのか、
b.本当にその深い専門知識だけ提供してくれれば良いのか、
の腹積もりが必要だと思うのです。
3.ミッションをはっきり伝えていなかった
後から「ヘッドハンティング採用者」のことで悩んでいるとして、ご相談を受けたとき、お尋ねします。「そもそもこの方に、何を期待して来てもらったのですか?」。
そうすると答えに窮されるのです。社長としては採用すると良いことがあるだろうと期待して来てもらったはずですが、そもそも何を期待していたのでしょうか?
その思いが明確に伝わっていないのです。社長としては思いがあったはずです。「ウチの息子であるまだ年若い専務に、色々と教えてやって欲しい」とか、「前職の経験を活かして欲しい」とか。
でもちょっと待った!!です。その色々と教えるとか、経験を活かすとか、一体何なのでしょうか?阿吽の呼吸で理解してくれるものなのでしょうか?結局、漠然とした期待は分かるのですが、それを「ヘッドハンティング採用者」にきちんと伝えていないのです。通常、「ヘッドハンティング採用者」は自社の初任給相場より、うんと高い給与で招聘します。その割には期待はずれ、となりモヤモヤ感が生じてしまう。
ですからここでいえる事は、
a.最初に何を期待しており、何を成果として出して欲しいのか、誓約文書できちんと伝える
b.万が一、期待はずれだったときに、給与を再改定し易いように「特別保障手当」を入れた雇用契約書を結ぶ
※誓約文書の例は、弊社HPの「各書類のダウンロードコーナー」において、労働契約関係のカテゴリーの中から、「高度管理職誓約書」をご参照ください。
http://www.nishimura-roumu.com/jyosei-roumu-sho/download.html
※特別保障手当については、過去メルマガ「出来ると思って雇ったら期待はずれ・・・そんな時、特別保障手当を活用しよう!(H18.5月号)」をご参照ください。
http://www.nishimura-roumu.com/information/18-1-12/456-2016-04-20-13-21-107.html
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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