17年10月26日
2018年4月からいよいよ発生! あと半年!!無期転換権、迫る
●2018年4月からいよいよ発生! あと半年!!無期転換権、迫る!(H29.11月号)
有期契約労働者の「無期転換権」につきましては、本年1月号において触れました。今回は本制度の解説は割愛し、あと半年と迫った中で、企業が対応を検討すべき具体的事項に絞ってお話しいたします。
無期転換の概要をご存知になりたい方は、1月号を御覧頂くか、HPで「無期転換ルール」と検索して「無期転換ルール 厚生労働省」http://muki.mhlw.go.jp/
を御覧ください。
■まず、会社の基本方針を明確にする
これは「無期転換」を、
(1)会社として是として積極的に取り込んでゆくのか、
(2)やはり無期は困る、有期で使い続けたい、と考えるのか
の選択ということです。
5年前にこの制度が出来たときは、景気動向もかなり低調だったため、どちらかといえば、雇用調整がやりにくくなる「無期転換、それは困るな・・・・」という感覚の企業が多かったように感じます。
しかし、現在では空前の人手不足時代の到来ということもあり、中堅以上の企業では人材確保及び引き留め策として、積極的に制度化して活用して行こうという動きが見られます。
まず、企業としてどちらのスタンスを採るのか、によって施策は自ずと変わってくるということです。
その上で、この紙面では、後者の感覚、つまり「無期転換、それは困るな・・・・」という感覚がまだまだ多い中小企業に絞って、具体策を検討してみたいと思います。
1.次の更新時に更新の有無をはっきりさせる
平成25年4月1日段階で在籍している有期労働者の契約更新がこれからあり、その期間の終期が3月31日までにある場合、次の更新時が「5年を超えない」最後の更新時期となります(※但し例外あり 巻末に記載)。つまり5年以内で収まる最後であり、その次の更新では既に5年を超えてしまうため、「無期転換権」が発生します。
企業の対応方法として有期労働者で使い続けたいというのであれば、来年3月までの更新時に、「本契約をもって最終とする」として更新する必要があります。
2.5年を超える契約はしないことを明示する
今後、有期契約を締結するときには、「通算5年を超えて更新しない」という文言を入れた雇用契約書を交わしておく必要があります。この場合、期限管理をきちんとして、何人も例外なく5年で雇止めする厳格なルール運用が求められます。
うっかり、5年を超えてしまう、或いは人により延長を認めることは望ましくありません。
3.事後放棄
「無期転換権」を行使させないために、事前に放棄を迫ることは無効とされています。仮に自由な意思表示で放棄した場合でも強行法規の性格上、事前放棄は不可能と考えます。
しかし、事後放棄については可能となる余地があります。事後放棄とは、一旦5年超となって無期転換権が発生した後に、自由な意思表示で労働者自らが放棄するというものです。
この場合、私見として、放棄に対しては有利な労働条件を用意する方が望ましく、
A 放棄した場合のメリットとデメリット
B 放棄しない場合のメリットとデメリット
をきちんと説明して、放棄を強要せず、充分な考える時間を設けた上で、自発的に合意書が取れるのであれば可能と考えます。例えば放棄した場合は、雇止めもあり得るが、メリットとして賃金をアップするとか、希望する職務や勤務場所から動かさない特約を結ぶことなどが考えられます。
4.法人間の転籍
無期転換権は同一の使用者(つまり企業単位)で発生するものです。言い換えるなら、事業主体(つまり会社)が変われば、法文上は5年を超えても通算されないことになります。つまりA会社で5年勤務のあと、B会社で有期契約を結んでも、A会社の期間は通算されないのです。但し、この場合、転籍に本人の同意があり、かつB会社に経営の実態が必要です(ペーパーカンパニーはダメ)。
但し、無期転換権を免れる目的で、このような雇用管理をした場合、司法がどのように判断するかは現時点では不明です。
5.無期転換した後の労働条件
上記1から4は、無期転換権を制御する対策ですが、何らかの事情で無期転換者が発生した場合に備えた対策も必要です。
(1)無期転換者の就業規則はどうなるのか
有期契約であることを前提に就業規則を適用している場合は注意を要します。例えば、「この規則は有期契約者に適用する」とか、正社員の定義が「無期で雇用する社員とする」のような文言となっている場合です。前者の場合ですと、有期で無くなる無期転換者は一体どの規程の適用を受けるのかが不明です。
後者の場合では、無期転換者が正社員として処遇される可能性が出て来てしまいます。退職金規程が無期転換者にも適用になるなどの影響が広がることもあり得るでしょう。
無期転換者は、原則、いままでの就業規則の適用を受けるという文言の見直しが必要です。就業規則の「社員の定義」、「適用範囲」の条項のチェックが不可欠です。
(2)定年は適用されるのか
今まで有期社員であったときは、定年を意識する必要はありませんでした。しかし無期社員になっても正社員になるわけではありませんから、正社員の定年制はそのまま適用されません。無期社員にも新たに定年制を設ける必要があります。
(3) 定年退職者も無期転換権があることになる
無期転換権は定年退職して継続雇用されている社員にも適用があります。つまり、一旦定年退職で有期社員になっている方も、5年を超えれば無期転換があり得るのです。しかも高齢者雇用安定法により、現在は原則65歳まで継続される仕組みとなっています。65歳できちんと雇止めした場合は別ですが、65歳を超えて継続すると5年超となり、無期に戻る可能性があるのです。
これを回避するためには、68歳第二定年や、70歳契約期間の上限という規定を新設しておく必要があります。
但し、平成28年4月より定年退職者に限り、無期転換権を発生させないことが可能な有期契約特別措置法ができており、認定を受けた企業は除外されます。
(4)別段の定め
無期転換した場合でも、契約期間がなくなるだけで、その他の労働条件は同一のなるのが原則です。
しかし、就業規則において「別段の定め」をした場合は、従来と異なる労働条件にすることも可能とされています。具体的には以下のようなケースが考えられます。
A.有期であったことで優遇されていた条件をどう考えるか
有期契約であることから、特別に優遇されている条件(慣行)がある場合は、それをどうするかを検討する必要があります。例えば、有期社員は地域限定採用とか、職務を限定しているとか、時間有給を認めているような場合です。こういった場合に、無期になることで、他の無期社員と同様に配転や職務変更に応じてもらうこととするのか、といったようなことです。
そうであるなら、無期転換後には有期であることで享受していた有利な条件がなくなることを規定化しておくべきです。
B.無期後の新たな労働条件の設定
これは有期のときと、無期後の労働条件に明確な違いをらかじめ規定しておく場合があるということです。
具体例で申しますと、
有期時代 無期転換後
a. 週3日 18時間の勤務(社会保険なし) → 週5日 30時間の勤務(社会保険加入)
b. 勤務地限定 → 勤務場所の変更(転勤)あり
c. ショップ販売員(限定) → 事務社員や倉庫業務への変更あり
C.定期的に労働条件の変更を行いたい場合
有期契約のときには、更新時に賃金や労働時間など、期間以外の労働条件を見直していたことがあると思います。このような場合、無期転換後は、退職までずっと無期転換時の労働条件をそのまま継続しなければならないことはありません。つまり、無期ですので期間の話はできませんが、その他の労働条件を従来通り定期的に見直すことは可能です。
但し、これをする場合は、就業規則に定期的に見直すことを定めた規定を設ける必要があります。
D. 無期転換者は制度上は新規雇用として規定する
議論のあるところですが、無期転換者は今までの契約の延長線上で労働条件を変更したと考えるのではなく、新たな労働契約(新規雇用)をしたとして明示しておくことが望ましいと考えています。
これは労働条件を変更した場合に、労働契約法のどの条文が適用されるかという、法学的に難しい理論ですので割愛しますが、新たな雇用関係が始まると理解すべきです。但し、引き継がれない労働条件と引き継ぐ労働条件を明確にしておく必要があります。例えば有給休暇の勤続年数は引き継ぎ、通算しなければなりません
以上、これら別段の定めをする場合には、無期転換者が発生する前に、就業規則を変更しておかなければなりません。発生後でも変更が出来ないことはありませんが、法的にハードルが高くなってしまうからです。
※
また一般的には少ないと思われますが、無期転換は来年の4月以降でないと発生しないとも限らないケースがあります。それは、平成25年に在籍している有期労働者で、契約期間が一定でなく、バラバラであったり途中で変更されているケースです。
例えば、平成25年4月1日に6ヶ月の有期契約を結び、その後1年契約に変更している場合、平成29年の10月1日時点の更新において無期転換権が発生していることになります。
何故なら、5年を歴日数で超えるのは来年の4月1日以降ですが、この10月1日の更新で必ず4月1日を超えて、つまり5年を超えることが確実な契約を結んでいるからです。つまり5年を超えた時から無期転換権が生じるのではなく、あくまでも5年を超える契約の始期から権利が生じることに注意しなければなりません。
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
有期契約労働者の「無期転換権」につきましては、本年1月号において触れました。今回は本制度の解説は割愛し、あと半年と迫った中で、企業が対応を検討すべき具体的事項に絞ってお話しいたします。
無期転換の概要をご存知になりたい方は、1月号を御覧頂くか、HPで「無期転換ルール」と検索して「無期転換ルール 厚生労働省」http://muki.mhlw.go.jp/
を御覧ください。
■まず、会社の基本方針を明確にする
これは「無期転換」を、
(1)会社として是として積極的に取り込んでゆくのか、
(2)やはり無期は困る、有期で使い続けたい、と考えるのか
の選択ということです。
5年前にこの制度が出来たときは、景気動向もかなり低調だったため、どちらかといえば、雇用調整がやりにくくなる「無期転換、それは困るな・・・・」という感覚の企業が多かったように感じます。
しかし、現在では空前の人手不足時代の到来ということもあり、中堅以上の企業では人材確保及び引き留め策として、積極的に制度化して活用して行こうという動きが見られます。
まず、企業としてどちらのスタンスを採るのか、によって施策は自ずと変わってくるということです。
その上で、この紙面では、後者の感覚、つまり「無期転換、それは困るな・・・・」という感覚がまだまだ多い中小企業に絞って、具体策を検討してみたいと思います。
1.次の更新時に更新の有無をはっきりさせる
平成25年4月1日段階で在籍している有期労働者の契約更新がこれからあり、その期間の終期が3月31日までにある場合、次の更新時が「5年を超えない」最後の更新時期となります(※但し例外あり 巻末に記載)。つまり5年以内で収まる最後であり、その次の更新では既に5年を超えてしまうため、「無期転換権」が発生します。
企業の対応方法として有期労働者で使い続けたいというのであれば、来年3月までの更新時に、「本契約をもって最終とする」として更新する必要があります。
2.5年を超える契約はしないことを明示する
今後、有期契約を締結するときには、「通算5年を超えて更新しない」という文言を入れた雇用契約書を交わしておく必要があります。この場合、期限管理をきちんとして、何人も例外なく5年で雇止めする厳格なルール運用が求められます。
うっかり、5年を超えてしまう、或いは人により延長を認めることは望ましくありません。
3.事後放棄
「無期転換権」を行使させないために、事前に放棄を迫ることは無効とされています。仮に自由な意思表示で放棄した場合でも強行法規の性格上、事前放棄は不可能と考えます。
しかし、事後放棄については可能となる余地があります。事後放棄とは、一旦5年超となって無期転換権が発生した後に、自由な意思表示で労働者自らが放棄するというものです。
この場合、私見として、放棄に対しては有利な労働条件を用意する方が望ましく、
A 放棄した場合のメリットとデメリット
B 放棄しない場合のメリットとデメリット
をきちんと説明して、放棄を強要せず、充分な考える時間を設けた上で、自発的に合意書が取れるのであれば可能と考えます。例えば放棄した場合は、雇止めもあり得るが、メリットとして賃金をアップするとか、希望する職務や勤務場所から動かさない特約を結ぶことなどが考えられます。
4.法人間の転籍
無期転換権は同一の使用者(つまり企業単位)で発生するものです。言い換えるなら、事業主体(つまり会社)が変われば、法文上は5年を超えても通算されないことになります。つまりA会社で5年勤務のあと、B会社で有期契約を結んでも、A会社の期間は通算されないのです。但し、この場合、転籍に本人の同意があり、かつB会社に経営の実態が必要です(ペーパーカンパニーはダメ)。
但し、無期転換権を免れる目的で、このような雇用管理をした場合、司法がどのように判断するかは現時点では不明です。
5.無期転換した後の労働条件
上記1から4は、無期転換権を制御する対策ですが、何らかの事情で無期転換者が発生した場合に備えた対策も必要です。
(1)無期転換者の就業規則はどうなるのか
有期契約であることを前提に就業規則を適用している場合は注意を要します。例えば、「この規則は有期契約者に適用する」とか、正社員の定義が「無期で雇用する社員とする」のような文言となっている場合です。前者の場合ですと、有期で無くなる無期転換者は一体どの規程の適用を受けるのかが不明です。
後者の場合では、無期転換者が正社員として処遇される可能性が出て来てしまいます。退職金規程が無期転換者にも適用になるなどの影響が広がることもあり得るでしょう。
無期転換者は、原則、いままでの就業規則の適用を受けるという文言の見直しが必要です。就業規則の「社員の定義」、「適用範囲」の条項のチェックが不可欠です。
(2)定年は適用されるのか
今まで有期社員であったときは、定年を意識する必要はありませんでした。しかし無期社員になっても正社員になるわけではありませんから、正社員の定年制はそのまま適用されません。無期社員にも新たに定年制を設ける必要があります。
(3) 定年退職者も無期転換権があることになる
無期転換権は定年退職して継続雇用されている社員にも適用があります。つまり、一旦定年退職で有期社員になっている方も、5年を超えれば無期転換があり得るのです。しかも高齢者雇用安定法により、現在は原則65歳まで継続される仕組みとなっています。65歳できちんと雇止めした場合は別ですが、65歳を超えて継続すると5年超となり、無期に戻る可能性があるのです。
これを回避するためには、68歳第二定年や、70歳契約期間の上限という規定を新設しておく必要があります。
但し、平成28年4月より定年退職者に限り、無期転換権を発生させないことが可能な有期契約特別措置法ができており、認定を受けた企業は除外されます。
(4)別段の定め
無期転換した場合でも、契約期間がなくなるだけで、その他の労働条件は同一のなるのが原則です。
しかし、就業規則において「別段の定め」をした場合は、従来と異なる労働条件にすることも可能とされています。具体的には以下のようなケースが考えられます。
A.有期であったことで優遇されていた条件をどう考えるか
有期契約であることから、特別に優遇されている条件(慣行)がある場合は、それをどうするかを検討する必要があります。例えば、有期社員は地域限定採用とか、職務を限定しているとか、時間有給を認めているような場合です。こういった場合に、無期になることで、他の無期社員と同様に配転や職務変更に応じてもらうこととするのか、といったようなことです。
そうであるなら、無期転換後には有期であることで享受していた有利な条件がなくなることを規定化しておくべきです。
B.無期後の新たな労働条件の設定
これは有期のときと、無期後の労働条件に明確な違いをらかじめ規定しておく場合があるということです。
具体例で申しますと、
有期時代 無期転換後
a. 週3日 18時間の勤務(社会保険なし) → 週5日 30時間の勤務(社会保険加入)
b. 勤務地限定 → 勤務場所の変更(転勤)あり
c. ショップ販売員(限定) → 事務社員や倉庫業務への変更あり
C.定期的に労働条件の変更を行いたい場合
有期契約のときには、更新時に賃金や労働時間など、期間以外の労働条件を見直していたことがあると思います。このような場合、無期転換後は、退職までずっと無期転換時の労働条件をそのまま継続しなければならないことはありません。つまり、無期ですので期間の話はできませんが、その他の労働条件を従来通り定期的に見直すことは可能です。
但し、これをする場合は、就業規則に定期的に見直すことを定めた規定を設ける必要があります。
D. 無期転換者は制度上は新規雇用として規定する
議論のあるところですが、無期転換者は今までの契約の延長線上で労働条件を変更したと考えるのではなく、新たな労働契約(新規雇用)をしたとして明示しておくことが望ましいと考えています。
これは労働条件を変更した場合に、労働契約法のどの条文が適用されるかという、法学的に難しい理論ですので割愛しますが、新たな雇用関係が始まると理解すべきです。但し、引き継がれない労働条件と引き継ぐ労働条件を明確にしておく必要があります。例えば有給休暇の勤続年数は引き継ぎ、通算しなければなりません
以上、これら別段の定めをする場合には、無期転換者が発生する前に、就業規則を変更しておかなければなりません。発生後でも変更が出来ないことはありませんが、法的にハードルが高くなってしまうからです。
※
また一般的には少ないと思われますが、無期転換は来年の4月以降でないと発生しないとも限らないケースがあります。それは、平成25年に在籍している有期労働者で、契約期間が一定でなく、バラバラであったり途中で変更されているケースです。
例えば、平成25年4月1日に6ヶ月の有期契約を結び、その後1年契約に変更している場合、平成29年の10月1日時点の更新において無期転換権が発生していることになります。
何故なら、5年を歴日数で超えるのは来年の4月1日以降ですが、この10月1日の更新で必ず4月1日を超えて、つまり5年を超えることが確実な契約を結んでいるからです。つまり5年を超えた時から無期転換権が生じるのではなく、あくまでも5年を超える契約の始期から権利が生じることに注意しなければなりません。
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
17年10月02日
社内コミュニケーションを考える
社内コミュニケーションを考える(H29.10月号)
皆様こんにちは、西村社会保険労務士事務所の坂口です。
事業所様を日々訪問させて頂いている中で、必ず最近話題になるのが「求人募集において苦労されていること」、「社員の社内コミュニケーションのこと」、「昨今頻繁に取り上げられている長時間労働の問題のこと」です。
求人募集においては売手市場なこともあり、中々求人を出しても応募がないのが悩みでありハローワークだけで求人募集されている事業所様はほとんどなく、他の有料媒体を併用して活用されております。長時間労働についても電通事件があり、長時間労働防止対策の延長で盛り込まれることになった「時間外労働の絶対的上限規制」など改正労働基準法の話もよく出ます。今回のテーマは必ず話題になる一つの社内コミュニケーションについてで以前のメルマガでも視点は違えど何度か取り上げさせて頂いておりますが、各事業所様で感じておられること、また実際に行っておられる社内コミュニケーションについてご紹介させて頂ければと思います。
その前にコミュニケーション以前の問題にはなりますが、挨拶が出来ない従業員が増えているとよく聞きます。昨今は挨拶がないこともあってか隣近所ですら誰が住んでいるかわからないといったことがあり、隣近所ですら挨拶もなくそういった環境の中で育ち、広い社会に出ていきまず挨拶が出来るのかといったことです。環境が人を育てるといいます。挨拶のない職場では社内が暗く、休憩時間中も各々が携帯をさわりコミュニケーションを取るといったことがあまりありません。そういったことは業務中も当然にあり同じ部署間、他部署間でも仕事のやり取りについての連携が作用せず、自分の仕事が終われば帰社する、周りの人の仕事が残っていても声掛けが出来ない、他の従業員への配慮が出来ないなどといったことが挙げられます。ひいてはコミュニケーションが取れないことは長時間労働にも繋がり、コミュニケーションの円滑化は長時間労働の抑制にも大きく効果を発揮します。
昨今大手では所定労働時間の短縮を実施されている企業が増えてきておりますが、中小企業には難しいのが現状です。所定労働時間を短縮すると生産性がどうしても下がります。生産性を下げない為にいかに効率よく作業を行うか社内で議論し、それが社内コミュニケーションの活発化に繋がり生産性を落とさず、かつ社内コミュニケーションがよくなったということもあるようです。
ではその社内コミュニケーションについて事業所様に色々お話を伺い実際実践されていることをご紹介させて頂きますので、ご参考にして頂ければと思います。
・懇親手当(管理職等に従業員間のコミュニケーションの円滑の為の懇親手当を支給する)
・誕生日パーティ(必ずしも各人ごとではないが従業員の誕生日に店を予約してお祝いをする)
・社長自ら従業員の誕生日を把握してのプレゼント
・休憩時間の際に休憩場所を設けてお茶菓子を提供し従業員が集まりやすい環境を作る
・社長、専務自ら時間を見てはお茶菓子を従業員へ配っての話しかけをおこなう
・慰安旅行(最近また実施されている企業が増えてきているように感じます)
・ウォーキングの会(定期的に社長、従業員で場所を決めてウォーキングし、その後昼食を共にする)
・会社施設を利用してのバーベキュー(家族、子供、取引先も呼んでの)
・家族旅行の為の資金援助(家族に対しても感謝の気持ちを込めて)
・社内木鶏会(人間学を学ぶ雑誌「致知」を読んで、感想を言い合う会です。「致知」はひとの体験談を主に書いております)
・社歌をつくる(最近ブームになってきているようで社歌コンテストも開催されるなど、メディアにも頻繁に取り上げられています)
・目安箱(意見を直接言いにくい場合に設ける投書箱のようなもの)
・提案、表彰制度
・伝達制度(社長へは直接言いにくい場合など間に入ってもらう人を選任し意見を聞く)
各社様々なことをされておりますが、最終的に私が感じることはコミュニケーションについては上司同僚部下、部署間と様々あるかと思いますが、上司にまかせっきりにならず、経営者自らがいかにこの問題を考え積極的に取り組んでいるかによると感じます。会話の多い事業所様は親睦行事等の会社行事も多く、また参加者も多いと聞きます。企業の規模やそれ以外にも多くの仕事も抱えておられる経営者様にとっては難しい事ではありますが、求人募集の現状、今後の労働力人口の減少を考えると、現有社員とのコミュニケーションについての問題も重要なのでは感じる次第です。
(文責 社会保険労務士 坂口 将)
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
皆様こんにちは、西村社会保険労務士事務所の坂口です。
事業所様を日々訪問させて頂いている中で、必ず最近話題になるのが「求人募集において苦労されていること」、「社員の社内コミュニケーションのこと」、「昨今頻繁に取り上げられている長時間労働の問題のこと」です。
求人募集においては売手市場なこともあり、中々求人を出しても応募がないのが悩みでありハローワークだけで求人募集されている事業所様はほとんどなく、他の有料媒体を併用して活用されております。長時間労働についても電通事件があり、長時間労働防止対策の延長で盛り込まれることになった「時間外労働の絶対的上限規制」など改正労働基準法の話もよく出ます。今回のテーマは必ず話題になる一つの社内コミュニケーションについてで以前のメルマガでも視点は違えど何度か取り上げさせて頂いておりますが、各事業所様で感じておられること、また実際に行っておられる社内コミュニケーションについてご紹介させて頂ければと思います。
その前にコミュニケーション以前の問題にはなりますが、挨拶が出来ない従業員が増えているとよく聞きます。昨今は挨拶がないこともあってか隣近所ですら誰が住んでいるかわからないといったことがあり、隣近所ですら挨拶もなくそういった環境の中で育ち、広い社会に出ていきまず挨拶が出来るのかといったことです。環境が人を育てるといいます。挨拶のない職場では社内が暗く、休憩時間中も各々が携帯をさわりコミュニケーションを取るといったことがあまりありません。そういったことは業務中も当然にあり同じ部署間、他部署間でも仕事のやり取りについての連携が作用せず、自分の仕事が終われば帰社する、周りの人の仕事が残っていても声掛けが出来ない、他の従業員への配慮が出来ないなどといったことが挙げられます。ひいてはコミュニケーションが取れないことは長時間労働にも繋がり、コミュニケーションの円滑化は長時間労働の抑制にも大きく効果を発揮します。
昨今大手では所定労働時間の短縮を実施されている企業が増えてきておりますが、中小企業には難しいのが現状です。所定労働時間を短縮すると生産性がどうしても下がります。生産性を下げない為にいかに効率よく作業を行うか社内で議論し、それが社内コミュニケーションの活発化に繋がり生産性を落とさず、かつ社内コミュニケーションがよくなったということもあるようです。
ではその社内コミュニケーションについて事業所様に色々お話を伺い実際実践されていることをご紹介させて頂きますので、ご参考にして頂ければと思います。
・懇親手当(管理職等に従業員間のコミュニケーションの円滑の為の懇親手当を支給する)
・誕生日パーティ(必ずしも各人ごとではないが従業員の誕生日に店を予約してお祝いをする)
・社長自ら従業員の誕生日を把握してのプレゼント
・休憩時間の際に休憩場所を設けてお茶菓子を提供し従業員が集まりやすい環境を作る
・社長、専務自ら時間を見てはお茶菓子を従業員へ配っての話しかけをおこなう
・慰安旅行(最近また実施されている企業が増えてきているように感じます)
・ウォーキングの会(定期的に社長、従業員で場所を決めてウォーキングし、その後昼食を共にする)
・会社施設を利用してのバーベキュー(家族、子供、取引先も呼んでの)
・家族旅行の為の資金援助(家族に対しても感謝の気持ちを込めて)
・社内木鶏会(人間学を学ぶ雑誌「致知」を読んで、感想を言い合う会です。「致知」はひとの体験談を主に書いております)
・社歌をつくる(最近ブームになってきているようで社歌コンテストも開催されるなど、メディアにも頻繁に取り上げられています)
・目安箱(意見を直接言いにくい場合に設ける投書箱のようなもの)
・提案、表彰制度
・伝達制度(社長へは直接言いにくい場合など間に入ってもらう人を選任し意見を聞く)
各社様々なことをされておりますが、最終的に私が感じることはコミュニケーションについては上司同僚部下、部署間と様々あるかと思いますが、上司にまかせっきりにならず、経営者自らがいかにこの問題を考え積極的に取り組んでいるかによると感じます。会話の多い事業所様は親睦行事等の会社行事も多く、また参加者も多いと聞きます。企業の規模やそれ以外にも多くの仕事も抱えておられる経営者様にとっては難しい事ではありますが、求人募集の現状、今後の労働力人口の減少を考えると、現有社員とのコミュニケーションについての問題も重要なのでは感じる次第です。
(文責 社会保険労務士 坂口 将)
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
17年09月05日
育児休業取得者が発生する企業への助成金
育児休業取得者が発生する企業への助成金(H29.9月号)
~両立支援等助成金 育児休業等支援コース~ (H29.9月号)
育児休業を取得される従業員が増えています。かつては中小企業においては女性ですら、非常にその数が少なかったのですが、近年は中小企業でも増加傾向にあり、弊社でも育児休業に関する事務手続きを代行させていただく機会が増えました。
そこで今回は、育児休業の取得や復帰を円滑にする環境整備をした企業に支給される助成金をご紹介したいと思います。
◎両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
■内容■
育児復帰支援プランを作成し、プランに基づく措置を実施し、育児休業の取得・職場復帰させた事業主、及び育児休業取得者の代替要員を確保すると共に、育児休業者を原職復帰させた事業主に対して助成するもの。
育児休業の取得前から職場復帰までにノウハウを構築し、労働者が安心して育児休業を取得でき、職場に復帰しやすい環境整備を図ることを目的とする。
■基本的な流れ■
(1)労働者から出産、育児休業に関する報告及び面談
↓
(2)育児復帰支援プランを実施する規定の整備・周知
↓
(3)最新法令に基づく育児介護休業規程の届出・周知
↓
(4)次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」(育児環境改善などの取組みを宣言するもの)の策定・届け出・公表
↓
(5)支援プラン作成のための上司との面談
↓
(6)育児復帰支援プランの作成(業務の引継ぎに関すること、休業中の情報提供に関することを纏めたもの)
↓
(7)支援プランに基づく業務の整理・引継ぎ
↓
(8)産後休業・育児休業の取得(最低3ヶ月以上)
↓
(9)休業中の労働者に職場の状況などを情報や資料の提供
↓
(10)上司による復帰前面談
↓
(11)原職への職場復帰
↓
(12)上司による復帰後面談
■助成額■
1.育児休業取得後 1人28.5万円(生産性要件アップ時は36万円)
2.職場復帰後 1人28.5万円(生産性要件アップ時は36万円)
3.代替要員確保後 1人47.5万円(生産性要件アップ時は60万円)
※代替要員確保とは、育児休業取得者の休業中の穴埋めのために派遣労働者等を新たに受け入れた場合。
■その他留意すべきこと
1.お金を目的にすべきではない
助成金は確かに返済の必要がない純利であり、魅力的なお金かもしれませんが、お金を目的にしてはいけません。良い労務管理により企業の改善活動を行うのが本筋であり、お金はおまけです。お金が目的なら、本業で頑張るか、融資に頼るべきです。
2.倫理感を維持する
助成金は人間のモラルを低下させる副作用があります。公金を扱うのですから、間違っても倫理観の低い行いをしてはいけません。無かった事実をあったことにする、事実を捻じ曲げるようなことは、絶対にあってはなりません。
3.長い目で考える
助成金は単年度予算で行われることもあり、政策課題が実現すれば廃止されることもあります。しかし助成金に併せて策定した人事制度(正社員転換とか、定年延長とか)はずっと残ります。助成は終了しても、人事制度は残ることを肝に銘じるべきです。
4.法令を遵守する
助成金に限らず当たり前なのですが、就業規則の作成や社会保険への加入、公租公課の納入、残業代の支払いなど、やるべきことをきちんとやっていることが大前提です。
助成金にはパンフレットには載っていない細かな要件や制約事項がありますが、従業員から出産育児の相談がありましたら、一度検討してみては如何でしょうか?
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
~両立支援等助成金 育児休業等支援コース~ (H29.9月号)
育児休業を取得される従業員が増えています。かつては中小企業においては女性ですら、非常にその数が少なかったのですが、近年は中小企業でも増加傾向にあり、弊社でも育児休業に関する事務手続きを代行させていただく機会が増えました。
そこで今回は、育児休業の取得や復帰を円滑にする環境整備をした企業に支給される助成金をご紹介したいと思います。
◎両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
■内容■
育児復帰支援プランを作成し、プランに基づく措置を実施し、育児休業の取得・職場復帰させた事業主、及び育児休業取得者の代替要員を確保すると共に、育児休業者を原職復帰させた事業主に対して助成するもの。
育児休業の取得前から職場復帰までにノウハウを構築し、労働者が安心して育児休業を取得でき、職場に復帰しやすい環境整備を図ることを目的とする。
■基本的な流れ■
(1)労働者から出産、育児休業に関する報告及び面談
↓
(2)育児復帰支援プランを実施する規定の整備・周知
↓
(3)最新法令に基づく育児介護休業規程の届出・周知
↓
(4)次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」(育児環境改善などの取組みを宣言するもの)の策定・届け出・公表
↓
(5)支援プラン作成のための上司との面談
↓
(6)育児復帰支援プランの作成(業務の引継ぎに関すること、休業中の情報提供に関することを纏めたもの)
↓
(7)支援プランに基づく業務の整理・引継ぎ
↓
(8)産後休業・育児休業の取得(最低3ヶ月以上)
↓
(9)休業中の労働者に職場の状況などを情報や資料の提供
↓
(10)上司による復帰前面談
↓
(11)原職への職場復帰
↓
(12)上司による復帰後面談
■助成額■
1.育児休業取得後 1人28.5万円(生産性要件アップ時は36万円)
2.職場復帰後 1人28.5万円(生産性要件アップ時は36万円)
3.代替要員確保後 1人47.5万円(生産性要件アップ時は60万円)
※代替要員確保とは、育児休業取得者の休業中の穴埋めのために派遣労働者等を新たに受け入れた場合。
■その他留意すべきこと
1.お金を目的にすべきではない
助成金は確かに返済の必要がない純利であり、魅力的なお金かもしれませんが、お金を目的にしてはいけません。良い労務管理により企業の改善活動を行うのが本筋であり、お金はおまけです。お金が目的なら、本業で頑張るか、融資に頼るべきです。
2.倫理感を維持する
助成金は人間のモラルを低下させる副作用があります。公金を扱うのですから、間違っても倫理観の低い行いをしてはいけません。無かった事実をあったことにする、事実を捻じ曲げるようなことは、絶対にあってはなりません。
3.長い目で考える
助成金は単年度予算で行われることもあり、政策課題が実現すれば廃止されることもあります。しかし助成金に併せて策定した人事制度(正社員転換とか、定年延長とか)はずっと残ります。助成は終了しても、人事制度は残ることを肝に銘じるべきです。
4.法令を遵守する
助成金に限らず当たり前なのですが、就業規則の作成や社会保険への加入、公租公課の納入、残業代の支払いなど、やるべきことをきちんとやっていることが大前提です。
助成金にはパンフレットには載っていない細かな要件や制約事項がありますが、従業員から出産育児の相談がありましたら、一度検討してみては如何でしょうか?
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
17年09月05日
小規模企業は、社長がストレスを感じない性格傾向の人物を採用しよう
小規模企業は、社長がストレスを感じない性格傾向の人物を採用しよう(H29.8月号)
~小さな会社の人材募集の一つの考え方~
●社長がストレスを感じない性格傾向の人物を採用しよう
私は中小企業の人材確保は、社長がストレスを感じない人物をまず優先すべきだと考えています。
ただ、一口に中小企業といってもその規模には、かなりの開きがあります。中小企業基本法によるとその規模の定義は以下の通りです。
○製造業 資本金3億円以下、または従業員数が300人以下
○卸売業 資本金1億円以下、または従業員数が100人以下
○小売業 資本金5千万円以下、または従業員数が50人以下
○サービス業 資本金5千万円以下、または従業員数が100人以下
この規模以下であれば、法律上は中小企業と定義されます。
しかし、私共が20年にわたり、中小企業の労務管理のお手伝いをさせいただいている実感からすると、この規模はかなり大きなものです。
50人以上の従業員を抱える企業に出会うことは、実は非常に少ないのです。
別の統計があります。
平成27年版経済センサスによると、日本にある民営事業所の従業員数ごとの割合は以下の通りとなっています。
○「1~4人」が322万5千事業所(事業所全体の58.2%)
○「5~9人」が109万事業所(同19.7%)、
○「10~19人」が65万事業所(同11.7%)
従業者数10人未満の事業所が全体の約8割を占めているのです。20人未満だと約9割となります。この実感は、私共の皮膚感覚に非常に近いものがあります。
つまり、一口に中小企業といっても、その実態のほとんどが、小規模事業者なのです。そしてその経営の多くは、オーナー家系による同族経営で行われています。
こういった背景の下、経営者の大部分を占める10人未満の小規模事業者は、「自分のエコひいきで人材を採用するのが基本」だと考えています。つまり社長が好む性格傾向の人材、ストレスを感じない人材を優先すべきだと思うのです。
私は日常、経営者の方から従業員のことで、様々なご相談を承りますが、その多くの類型が「社長から見て困った社員」に関するご相談なのです。困った社員といっても、法的には、解雇や懲戒処分などできない案件がほとんどです。法的に問題なのではなく、社長と合わない、のです。
その合わない社員は、毎日、目の前にいます。どこか遠くの支店で働く名前も顔も知らない社員ではありません。何百何千人といる中の一人でもないのです。
そうであるならば、経歴、保有資格、スキルに注目する前に、まず「自分と合うかどうか」を判断の機軸に据えた方が良いと思うのです。いくら仕事ができても、社長と合わなければ、その後ストレスが貯まるだけで、会社へ行くのも億劫になってしまいます。特に、創業間もない小規模企業であれば、社長と合う人材を集めて、自社の社風を確立することが先決でしょう。
仕事は、多少、習熟に時間の長短はあっても、大抵教えればできるものです。後からでもいいのです。しかし、合わない性格傾向を合わす事は、ほぼ不可能と考えた方が良いでしょう。教える以前の問題となります。
ただ、そうすると同じ傾向の人材ばかりが集まり、多様性がなくなり、組織として活力を発揮できないのではないか?と考えられる方もおありでしょう。「ウチは10人未満だが、今回の募集は従来の我が社にはない気風の人材を、意図的に採りに行く」という、強い動機のある場合はそれで結構だと思います。そのような異色の人材を採りに行くという、積極的動機がない限り、社長の好き嫌いを優先した方が、結果的には安定した労務管理ができるというのが、現在の私の結論です。
そうすると、社長と合う人材とは、どのようにして見分ければ良いのでしょうか?
1回の面接でその人の性格傾向を全て知覚することは不可能ですが、雇用契約を締結するまでにいくつかのハードルを設けることで、合わないリスクを減らすことは可能だと考えています。キットを使用して、性格検査を行うのも一つのハードルですが、工夫すれば幾らでもハードルを設置できます。
参考までに・・・・
一例です。
好きなタイプ:控えめで、常識があり、慎重で真面目で努力家。
嫌いなタイプ:イケイケ、破天荒で、猪突猛進、要領の良い人。
一つのハードル=時間
約束時間少し前に来る ○
遅れてくる ×
早く来過ぎ ?→×
解説
時間通りに来るのは当たり前。遅れてくるのはもってのほか。では早く来過ぎは?
上記の性格タイプが好きなら、×にすべきです。約束時間までは何も予定がないのであり、時間を潰して入ってくることができるはず、自分が早く着いたから早く入ってくるのは、自分の都合であり、自己中心的。相手は準備をしているかも知れないとの配慮や、早く行き過ぎて失礼と思われるかもしれないとの、相手を慮る想像力が欠落している可能性があるから。
世の中のほとんどの経営者が小規模事業者です。最終責任(リスク)は自らが引き受けるのですから、社長の好き嫌いをもっともっと、表に出して行きませんか?
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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~小さな会社の人材募集の一つの考え方~
●社長がストレスを感じない性格傾向の人物を採用しよう
私は中小企業の人材確保は、社長がストレスを感じない人物をまず優先すべきだと考えています。
ただ、一口に中小企業といってもその規模には、かなりの開きがあります。中小企業基本法によるとその規模の定義は以下の通りです。
○製造業 資本金3億円以下、または従業員数が300人以下
○卸売業 資本金1億円以下、または従業員数が100人以下
○小売業 資本金5千万円以下、または従業員数が50人以下
○サービス業 資本金5千万円以下、または従業員数が100人以下
この規模以下であれば、法律上は中小企業と定義されます。
しかし、私共が20年にわたり、中小企業の労務管理のお手伝いをさせいただいている実感からすると、この規模はかなり大きなものです。
50人以上の従業員を抱える企業に出会うことは、実は非常に少ないのです。
別の統計があります。
平成27年版経済センサスによると、日本にある民営事業所の従業員数ごとの割合は以下の通りとなっています。
○「1~4人」が322万5千事業所(事業所全体の58.2%)
○「5~9人」が109万事業所(同19.7%)、
○「10~19人」が65万事業所(同11.7%)
従業者数10人未満の事業所が全体の約8割を占めているのです。20人未満だと約9割となります。この実感は、私共の皮膚感覚に非常に近いものがあります。
つまり、一口に中小企業といっても、その実態のほとんどが、小規模事業者なのです。そしてその経営の多くは、オーナー家系による同族経営で行われています。
こういった背景の下、経営者の大部分を占める10人未満の小規模事業者は、「自分のエコひいきで人材を採用するのが基本」だと考えています。つまり社長が好む性格傾向の人材、ストレスを感じない人材を優先すべきだと思うのです。
私は日常、経営者の方から従業員のことで、様々なご相談を承りますが、その多くの類型が「社長から見て困った社員」に関するご相談なのです。困った社員といっても、法的には、解雇や懲戒処分などできない案件がほとんどです。法的に問題なのではなく、社長と合わない、のです。
その合わない社員は、毎日、目の前にいます。どこか遠くの支店で働く名前も顔も知らない社員ではありません。何百何千人といる中の一人でもないのです。
そうであるならば、経歴、保有資格、スキルに注目する前に、まず「自分と合うかどうか」を判断の機軸に据えた方が良いと思うのです。いくら仕事ができても、社長と合わなければ、その後ストレスが貯まるだけで、会社へ行くのも億劫になってしまいます。特に、創業間もない小規模企業であれば、社長と合う人材を集めて、自社の社風を確立することが先決でしょう。
仕事は、多少、習熟に時間の長短はあっても、大抵教えればできるものです。後からでもいいのです。しかし、合わない性格傾向を合わす事は、ほぼ不可能と考えた方が良いでしょう。教える以前の問題となります。
ただ、そうすると同じ傾向の人材ばかりが集まり、多様性がなくなり、組織として活力を発揮できないのではないか?と考えられる方もおありでしょう。「ウチは10人未満だが、今回の募集は従来の我が社にはない気風の人材を、意図的に採りに行く」という、強い動機のある場合はそれで結構だと思います。そのような異色の人材を採りに行くという、積極的動機がない限り、社長の好き嫌いを優先した方が、結果的には安定した労務管理ができるというのが、現在の私の結論です。
そうすると、社長と合う人材とは、どのようにして見分ければ良いのでしょうか?
1回の面接でその人の性格傾向を全て知覚することは不可能ですが、雇用契約を締結するまでにいくつかのハードルを設けることで、合わないリスクを減らすことは可能だと考えています。キットを使用して、性格検査を行うのも一つのハードルですが、工夫すれば幾らでもハードルを設置できます。
参考までに・・・・
一例です。
好きなタイプ:控えめで、常識があり、慎重で真面目で努力家。
嫌いなタイプ:イケイケ、破天荒で、猪突猛進、要領の良い人。
一つのハードル=時間
約束時間少し前に来る ○
遅れてくる ×
早く来過ぎ ?→×
解説
時間通りに来るのは当たり前。遅れてくるのはもってのほか。では早く来過ぎは?
上記の性格タイプが好きなら、×にすべきです。約束時間までは何も予定がないのであり、時間を潰して入ってくることができるはず、自分が早く着いたから早く入ってくるのは、自分の都合であり、自己中心的。相手は準備をしているかも知れないとの配慮や、早く行き過ぎて失礼と思われるかもしれないとの、相手を慮る想像力が欠落している可能性があるから。
世の中のほとんどの経営者が小規模事業者です。最終責任(リスク)は自らが引き受けるのですから、社長の好き嫌いをもっともっと、表に出して行きませんか?
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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17年09月05日
労働時間となる時間、ならない時間とは
労働時間となる時間、ならない時間とは(H29.7月号)
~どんな時間が労働時間となるのか、今一度おさらいしてみよう~
昨今、「働き方改革」に関する報道が連日行われており、社会全体が労働時間(特に長時間残業)の短縮に向かって動き出した感があります。中小企業もこの時流に乗り遅れると、これからの企業経営において後塵を配することとなって行くでしょう。
ところで、そもそも労働時間とは一旦どんな時間を言うのでしょうか?
実はこれを明確に定義した法律は存在しません。長い裁判例の中でおおよそ以下のように理解されています。
(1)使用者の指揮命令下に置かれている時間
(2)使用者が業務を黙認している時間
(3)使用者の黙示の指示がある時間
(1)使用者の指揮命令下に置かれている時間
通常の所定労働時間や残業命令によって業務に従事している時間はもとより、実作業に従事していなくとも、指揮監督下あると評価されれば労働時間となります。例えば、倉庫作業員がトラックが到着するまでさしたる作業がなくぶらぶらしていても、トラックが着き次第、直ぐに荷下ろし、積み込みするために待機しているような時間のことで、通常、手待ち時間と言っています。
(2)使用者が業務を黙認している時間
明確に指示命令したわけではないが、その作業を黙認している時間のことで、例えば自発的に居残って残業している場合、それを特段禁止や注意もせずに、結果としてその労働を受領しているようなケースです。よく後から会社が、「それは従業員が勝手にやった仕事だ!」「仕事が遅いからこうなる!!」と主張しますが、黙認状態であればこれは通りません。
(3)使用者の黙示の指示がある時間
明確な指示命令はないけれども、通常の時間帯では到底こなせないような業務を与えて時間外に作業している場合のことで、例えば週末の帰宅前に「月曜の朝一までに仕上げておいて!」などと指示した場合、結局居残るか、自宅へ持ち帰って仕事せざるを得ない状況が典型的なケースです。
また、これらの考え方は客観説を採用しており、会社の取り決めより、実態を重視します。つまり会社が就業規則で「●●時間は労働時間としない」などと規定していても、実態が上記(1)から(3)に該当すれば、法的には労働時間とされます。
これに対して、休憩時間という言葉があります。これは拘束時間内にはあるが、労働から完全に解放され、自由に時間の処分ができる時間のことです。但し自由利用といっても、拘束範囲内ですから、規律保持上、一定の制限を加えることは可能です。例えば、外出許可制にするとか、賭け事を禁止するのは構いません。
この原則を押さえて頂いた上で、具体的に色々なケースを概観してみましょう。
1.準備・後片付け
一般的には労働時間と解されています。使用者の気持ちとしては、始業前に準備を完了し、始業時刻から実作業を開始して欲しいかもしれません。後片付けは実作業が終了してから行って欲しいかもしれません。しかしこれらの付随行為は実作業と密接に関連しており、準備作業や後片付けがないと、仕事が回らないことからも、やはり労働時間と解さざるを得ません。
2.朝礼やミーティング
労働時間になります。よく始業10分前に朝礼を行い、始業時刻から実作業開始としている企業もありますが、通常、朝礼やミーティングに参加することは明示的にも黙示的にも強制されているはずで、そうであれば指揮命令下にありますので、労働時間となります。
3.着替え、保護具の装着
通常、作業服の着用は義務付けられていることが多いはずで、そうであれば準備行為として原則的には労働時間となります。ただ、一般事務員の制服の行為時間まで含めて考えるかは、正直、微妙なところです。
安全衛生上必要な保護具(ヘルメットなど)の装着は、作業に必要不可欠なことから労働時間となります。
4.昼休憩時の電話当番
休憩時間に来客や電話当番として待機させていれば、指揮命令下にあると評価されるため、原則的には労働時間となります。但し実際には、来客等に対応することが極めて僅少で、かつ自由に時間を使える(昼寝、漫画OKとか)状況であれば、休憩時間と解して良いと思われます。
5.掃除・清掃
従業員らが、自発的に「金曜日の始業前に皆で掃除をやろう!」などとして始められ、使用者が特に関与していなければ労働時間とする必要はありません。しかし会社から当番制として割り当てられている場合など、会社の管理がある場合は労働時間となるでしょう。
6.研修・勉強会・QC活動
参加が強制されていれば労働時間ですが、従業員同士が自主的に集まって行う勉強会は労働時間となりません。自主性が担保されているかどうかについては、ア)参加しないと制裁処分や評価が下がるなどの措置が行われていない、イ)業務との密接な関連性がない(それに参加しないと通常業務の遂行に支障が出るものではない)、ウ)参加するかどうかは本人が自由に決められる、とうい要素で判断されると思われます。
7.宿直時の仮眠
おおよそ次のような要素があれば、労働時間となります。ア)外出が禁止されている、イ)警報、機械トラブル、来訪、賊の侵入に直ぐに対応しなければならない、ウ)飲酒など嗜好的行為が禁止されている。但し昼休憩の電話当番と同じく、実務が極めて僅少で、かつ自由に時間を使える状況であれば、労働時間とならない余地があります。
8.出張時の移動
出張時の移動時間は、一般的に通勤に費やす時間と同じと考えれれており、労働時間となりません。出張中の休日に移動をする場合も同様です。但し、移動中にも具体的な指示を受けているとか、物品や病人の監視、運搬すること自体が移動の目的であるような場合は、労働時間となる余地があります。
9.直行・直帰
始めに用務に付く場所が直行時の業務開始時であり、最後の用務を終了したときが直帰時の業務終了時刻と解されています。ちなみに労災保険の通勤災害も同様の見解を取っています。従って移動の最中(自宅から最初の用務先、最後の用務先から自宅)は、通常、時間の処分を自由に行えるはずであり、労働時間とはなりません。
10.飲み会・接待・ゴルフ
一般的には労働時間となりません。但し厚生部員が準備や幹事役を務めている場合や、会社の命令による場合は労働時間となります。また外形から、ア)会社が経費負担している、イ)会社を代表して参加している、ウ)代休が与えられている、エ)賃金や手当が支払われている場合は、労働時間性を補強する材料と成り得ます。
11.待機・車の横乗り
待機については、前述、倉庫作業員の手待ち時間の例で説明しましたが、直ぐに仕事に取り掛からねばならない状態であれば、労働時間となります。また車の同乗者については自由に休息できそうなものですが、行政解釈では労働時間と解していますが、議論の余地があると考えます。
12.健康診断
定期健康診断の受診にかかる時間は労働時間となりません。従って健康診断受診時間分の賃金を控除することは可能です。但し有機溶剤など、有害化学物質を取り扱うことにより行う特殊健康健康診断は、労働時間になるとされていますので、これが時間外に行われた場合は割増賃金の対象となります。
13.ヘルパーの移動・待機
介護ヘルパーが、利用者住居から次の利用者住居を移動する時間や待機、引継ぎに要する時間は、労働時間となります。
14.飛行機・新幹線・フェリー乗船
これも出張時の移動時間と同様に考えるべきで、乗り物に乗っている時間内に特段の指示命令を受けていない限り、時間の自由利用が保障されておれば、労働時間とはなりません。
15.自宅持ち帰り
会社が自宅で仕事をすることを黙認したり、自宅に持ち帰らないと所定時間内では処理できないような業務命令(黙示の指示)を行っていない限り、労働時間とはなりません。
16.テレワーク
一般的には労使で合意した「みなし時間」を所定労働時間とする場合が多いかと思います。この場合、みなした時間分のみを労働時間とします。これを超える超過労働や休日、深夜の労働は禁止し、もし発生する場合でも必ず許可制にすべきでしょう。
但し、ア)その業務が、自宅で行われていない場合、イ)その業務に用いる情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置かれている場合、ウ)その業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われている場合は、みなし労働時間の対象とはできません。
以上のように、労働時間といっても色々あるわけですが、賃金支払い義務が発生するのはこの労働時間についてです。仕事をしたかどうか、成果はどうだったかは関係がないのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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~どんな時間が労働時間となるのか、今一度おさらいしてみよう~
昨今、「働き方改革」に関する報道が連日行われており、社会全体が労働時間(特に長時間残業)の短縮に向かって動き出した感があります。中小企業もこの時流に乗り遅れると、これからの企業経営において後塵を配することとなって行くでしょう。
ところで、そもそも労働時間とは一旦どんな時間を言うのでしょうか?
実はこれを明確に定義した法律は存在しません。長い裁判例の中でおおよそ以下のように理解されています。
(1)使用者の指揮命令下に置かれている時間
(2)使用者が業務を黙認している時間
(3)使用者の黙示の指示がある時間
(1)使用者の指揮命令下に置かれている時間
通常の所定労働時間や残業命令によって業務に従事している時間はもとより、実作業に従事していなくとも、指揮監督下あると評価されれば労働時間となります。例えば、倉庫作業員がトラックが到着するまでさしたる作業がなくぶらぶらしていても、トラックが着き次第、直ぐに荷下ろし、積み込みするために待機しているような時間のことで、通常、手待ち時間と言っています。
(2)使用者が業務を黙認している時間
明確に指示命令したわけではないが、その作業を黙認している時間のことで、例えば自発的に居残って残業している場合、それを特段禁止や注意もせずに、結果としてその労働を受領しているようなケースです。よく後から会社が、「それは従業員が勝手にやった仕事だ!」「仕事が遅いからこうなる!!」と主張しますが、黙認状態であればこれは通りません。
(3)使用者の黙示の指示がある時間
明確な指示命令はないけれども、通常の時間帯では到底こなせないような業務を与えて時間外に作業している場合のことで、例えば週末の帰宅前に「月曜の朝一までに仕上げておいて!」などと指示した場合、結局居残るか、自宅へ持ち帰って仕事せざるを得ない状況が典型的なケースです。
また、これらの考え方は客観説を採用しており、会社の取り決めより、実態を重視します。つまり会社が就業規則で「●●時間は労働時間としない」などと規定していても、実態が上記(1)から(3)に該当すれば、法的には労働時間とされます。
これに対して、休憩時間という言葉があります。これは拘束時間内にはあるが、労働から完全に解放され、自由に時間の処分ができる時間のことです。但し自由利用といっても、拘束範囲内ですから、規律保持上、一定の制限を加えることは可能です。例えば、外出許可制にするとか、賭け事を禁止するのは構いません。
この原則を押さえて頂いた上で、具体的に色々なケースを概観してみましょう。
1.準備・後片付け
一般的には労働時間と解されています。使用者の気持ちとしては、始業前に準備を完了し、始業時刻から実作業を開始して欲しいかもしれません。後片付けは実作業が終了してから行って欲しいかもしれません。しかしこれらの付随行為は実作業と密接に関連しており、準備作業や後片付けがないと、仕事が回らないことからも、やはり労働時間と解さざるを得ません。
2.朝礼やミーティング
労働時間になります。よく始業10分前に朝礼を行い、始業時刻から実作業開始としている企業もありますが、通常、朝礼やミーティングに参加することは明示的にも黙示的にも強制されているはずで、そうであれば指揮命令下にありますので、労働時間となります。
3.着替え、保護具の装着
通常、作業服の着用は義務付けられていることが多いはずで、そうであれば準備行為として原則的には労働時間となります。ただ、一般事務員の制服の行為時間まで含めて考えるかは、正直、微妙なところです。
安全衛生上必要な保護具(ヘルメットなど)の装着は、作業に必要不可欠なことから労働時間となります。
4.昼休憩時の電話当番
休憩時間に来客や電話当番として待機させていれば、指揮命令下にあると評価されるため、原則的には労働時間となります。但し実際には、来客等に対応することが極めて僅少で、かつ自由に時間を使える(昼寝、漫画OKとか)状況であれば、休憩時間と解して良いと思われます。
5.掃除・清掃
従業員らが、自発的に「金曜日の始業前に皆で掃除をやろう!」などとして始められ、使用者が特に関与していなければ労働時間とする必要はありません。しかし会社から当番制として割り当てられている場合など、会社の管理がある場合は労働時間となるでしょう。
6.研修・勉強会・QC活動
参加が強制されていれば労働時間ですが、従業員同士が自主的に集まって行う勉強会は労働時間となりません。自主性が担保されているかどうかについては、ア)参加しないと制裁処分や評価が下がるなどの措置が行われていない、イ)業務との密接な関連性がない(それに参加しないと通常業務の遂行に支障が出るものではない)、ウ)参加するかどうかは本人が自由に決められる、とうい要素で判断されると思われます。
7.宿直時の仮眠
おおよそ次のような要素があれば、労働時間となります。ア)外出が禁止されている、イ)警報、機械トラブル、来訪、賊の侵入に直ぐに対応しなければならない、ウ)飲酒など嗜好的行為が禁止されている。但し昼休憩の電話当番と同じく、実務が極めて僅少で、かつ自由に時間を使える状況であれば、労働時間とならない余地があります。
8.出張時の移動
出張時の移動時間は、一般的に通勤に費やす時間と同じと考えれれており、労働時間となりません。出張中の休日に移動をする場合も同様です。但し、移動中にも具体的な指示を受けているとか、物品や病人の監視、運搬すること自体が移動の目的であるような場合は、労働時間となる余地があります。
9.直行・直帰
始めに用務に付く場所が直行時の業務開始時であり、最後の用務を終了したときが直帰時の業務終了時刻と解されています。ちなみに労災保険の通勤災害も同様の見解を取っています。従って移動の最中(自宅から最初の用務先、最後の用務先から自宅)は、通常、時間の処分を自由に行えるはずであり、労働時間とはなりません。
10.飲み会・接待・ゴルフ
一般的には労働時間となりません。但し厚生部員が準備や幹事役を務めている場合や、会社の命令による場合は労働時間となります。また外形から、ア)会社が経費負担している、イ)会社を代表して参加している、ウ)代休が与えられている、エ)賃金や手当が支払われている場合は、労働時間性を補強する材料と成り得ます。
11.待機・車の横乗り
待機については、前述、倉庫作業員の手待ち時間の例で説明しましたが、直ぐに仕事に取り掛からねばならない状態であれば、労働時間となります。また車の同乗者については自由に休息できそうなものですが、行政解釈では労働時間と解していますが、議論の余地があると考えます。
12.健康診断
定期健康診断の受診にかかる時間は労働時間となりません。従って健康診断受診時間分の賃金を控除することは可能です。但し有機溶剤など、有害化学物質を取り扱うことにより行う特殊健康健康診断は、労働時間になるとされていますので、これが時間外に行われた場合は割増賃金の対象となります。
13.ヘルパーの移動・待機
介護ヘルパーが、利用者住居から次の利用者住居を移動する時間や待機、引継ぎに要する時間は、労働時間となります。
14.飛行機・新幹線・フェリー乗船
これも出張時の移動時間と同様に考えるべきで、乗り物に乗っている時間内に特段の指示命令を受けていない限り、時間の自由利用が保障されておれば、労働時間とはなりません。
15.自宅持ち帰り
会社が自宅で仕事をすることを黙認したり、自宅に持ち帰らないと所定時間内では処理できないような業務命令(黙示の指示)を行っていない限り、労働時間とはなりません。
16.テレワーク
一般的には労使で合意した「みなし時間」を所定労働時間とする場合が多いかと思います。この場合、みなした時間分のみを労働時間とします。これを超える超過労働や休日、深夜の労働は禁止し、もし発生する場合でも必ず許可制にすべきでしょう。
但し、ア)その業務が、自宅で行われていない場合、イ)その業務に用いる情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置かれている場合、ウ)その業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われている場合は、みなし労働時間の対象とはできません。
以上のように、労働時間といっても色々あるわけですが、賃金支払い義務が発生するのはこの労働時間についてです。仕事をしたかどうか、成果はどうだったかは関係がないのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com