旧有限会社は、会社法・整備法施行日以後は、会社法の規定による「株式会社」として存続するものとされ、その商号中に「有限会社」という文字をを用いなければなりません。これが「特例有限会社」です。注意しなければいけないのは、「有限会社」という名前がついていても、新会社法上は「株式会社」であるということです。

 1 この特例有限会社の機関設計や任期、決算広告の要否等は、旧有限会社の場合と同じです。例えば、役員の任期については、新法の規定を適用しませんから、元々任期の定めがなかったのであれば、任期の定めなしということになります。また、監査役を設置していても、会計監査権限しかないことになります。さらに、決算広告の義務もないことになります。

 2 特例有限会社は、株式会社でありますから、旧有限会社の定款・社員・持分及び出資1口は、それぞれ特例有限会社の定款・株主・株式及び1株とみなされます。また、会社法・整備法の施行日における特例有限会社の発行可能株式総数及び発行済株式の総数は、旧有限会社の資本の総額を当該旧有限会社の出資1口の金額で除して得た数となります。

 3 特例有限会社は、「定款」を変更して、その商号中に「株式会社」という文字を用いる商号の変更をすることによって、会社法上の通常の株式会社に移行することができます。そして、登記をすることによりその効力を生じます。この場合、組織変更ではありませんが、登記手続きは組織変更に準じます。すなわち、当該特例有限会社については解散の登記をし、商号変更後の株式会社については設立の登記をするのです。登録免許税は、解散の登記が3万円、設立の登記が、増資をしないのであれば、資本金の額が2000万円までは3万円であり、合計6万円です。当事務所の報酬額は、7万円と致しております。

 4 では、特例有限会社のままがいいのか、それとも株式会社にすべきなのか。この判断はかなり難しい。確かに、特例有限会社は役員の変更登記をしないでいいし、決算広告の義務もないからメリットがあるようにも思われる。しかし、あらゆる場面で情報公開が叫ばれる中で、目先のコストだけでそのままにしておいていいものだろうか。新会社法の下では、有限会社は新設できないので、いずれは消え行く組織形態であるが、それをそのまま維持することは、何もしない会社というレッテルを貼られはしないだろうか。実際、新会社法の下での銀行融資実務も厳しくなるものと思われます。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。

 今回はこの辺で。

07年03月22日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
 株式会社を設立する方法として、発起設立と募集設立の二つがあります。発起設立は、発起人が設立時発行株式数の全部を引き受ける方法であり、募集設立は、発起人が引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法です。募集設立では、発起人以外に株主を募集する手続や、株式引受人による創立総会開催の手続という、発起設立にはない複雑な手続が必要となるため、今ではほとんど発起設立となっています。そのため、ここでも発起設立(取締役会設置会社でなく、また監査役設置会社でもない会社)に絞ってその流れを見ていくことにします。

 1 商号・本店・目的などの会社設立の基本となる事項を決定します。商号はいわば会社の顔ですから、慎重に決める必要があります。他の商人と誤認される虞のある商号は、禁止されているだけでなく、不正競争防止法上の問題も生じるため、あまりありそうにない商号を考えるべきです。平成14年11月から商号にローマ字等を使用することができるようになりました。

   目的の適格性として、適法性・営利性・明確性が求められますが、登記できるかどうか事前に必ず登記官に確認を取っておきましょう。でないと、登記の段階で不受理となり、設立の予定が狂ってしまうことがあります。

 2 次に、類似商号の調査をします。新会社法の下では、同一の所在場所における同一の商号の登記のみ禁止されましたから、類似商号の調査は不要であるようにも思えますが、万が一ということがありますから、やはり類似商号の調査はしておくべきです。

 3 会社の印鑑を作ります。代表者印・銀行印・角印の三つです。代表者印は、会社成立の際、登記所に届出る会社の実印であり、印影が3センチの正方形からはみ出さず、かつ、1センチの正方形に収まらないものでなければなりません。角印は、会社が発行する契約書や請求書などに用いられるもので、いわば会社の認印です。ゴム印も作っておくと便利です。

 4 定款を作成する。定款は、会社の組織・運営に関する根本規則であり、いわば会社の憲法ともいうべきものです。新会社法は、定款に絶対に記載しなければならない事項として、目的・商号・本店の所在地・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額・発起人の氏名又は名称及び住所の五つを挙げています。したがって、この中の一つでも欠けば、定款自体が無効となります。定款にはこの絶対的記載事項だけでなく、会社にとって重要な事項を記載するのが通常です。中には、発行可能株式総数の定め等のように定款で定めることによって、発起人全員の同意があったことを証する書面などが、登記に際して不要となることもあります。

 5 定款の認証を受ける。株式会社の定款は、公証役場において公証人の認証を受けなければ効力を生じません。本店を置こうとしている法務局または地方法務局に所属する公証人の認証を受ける必要があります。公証役場には、定款3通、発起人全員の印鑑証明書、収入印紙代4万円、認証手数料5万円、代理人が行く場合は委任状、代理人の印鑑証明書等を持参しなければなりません。

 6 出資の履行をする。発起設立の場合は、募集設立の場合のように、銀行等の株式払込金保管証明書までは必要ではなく、払込金受入証明書で足りるものとされ、それも、設立時代表取締役が作成した払込金額を証明する書面に、預金通帳の写しを合綴したものでもよいものとされました。これにより、残高証明を取れば、すぐに引き出してもかまわないことになり、会社の経営がスムーズに行くようになりました。

 7 取締役が調査をする。出資の履行が完了しているかや、設立手続が法令・定款に違反していないか等を調査します。

 8 登記申請書類を作成し、登記の申請をする。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ。

 今回はこの辺で。

07年03月20日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
 昨年5月施行の新会社法により、有限会社は廃止され(勿論旧有限会社は特例有限会社として存続します)、持分会社の一つとして「合同会社」が新設されました。合同会社は、出資者の全員が有限責任であり、会社の内部関係は民法上の組合と同様の規律が適用される会社です。

 そこで、従来からほとんど利用されることのない合名会社・合資会社はさておき、起業者の方は、株式会社にするべきか、それとも合同会社にした方がいいのか、悩まれると思われますので、その違いを見てみましょう。

 1 最も関心があるのは、歴史が浅い合同会社よりも、株式会社の方が社会的信用度が高いのではないかという点でしょう。確かに、何億という資本金を有する大会社は、それだけで社会的信用度が高いということも言えるでしょう。しかし、社会的信用度は、会社設立から日々の会社経営の態度によって積み上げられていくものであり、生産管理の怠慢により折角築き上げた社会的信用を一挙に喪失してしまったYやFのことは、記憶に新しい。実際わが国にある会社のほとんどは、公開会社でない株式会社(全部株式譲渡制限付株式会社)と旧有限会社であります。旧会社法の下において、株式会社の方が有限会社よりも社会的信用度が高いように思えていたのは、一つには、株式会社は1000万円、有限会社は300万円という最低資本金制度があり、この差によるものだと思います。ところが、新会社法では、この最低資本金制度は撤廃され、株式会社も理論上は1円で設立できるようになりました。勿論、合同会社も理論上は1円で設立できます。こうなってくると、社会的信用度は株式会社・合同会社という会社形態ではなく、どれだけ消費者に受け入れられるすばらしいものを創り出していくか、という会社の中身に左右されていくようになるのではないかと考えられます。

 2 株式会社も合同会社も、その株主又は社員は株式の引受け価額・出資の価額を限度とする有限責任であり、会社の債権者に対して、自己固有の財産を投げ打ってまでという無限の責任を負うことはありません。

 3 株式会社と合同会社で大きく異なるのは、会社内部関係の規律の強行規定性(法の規定に反することができないことをいう)です。新会社法では、株式会社においては、最低限、意思決定機関として「株主総会」と、業務執行機関として「取締役」を設置することが規定され、強行規定とされています。ただ、従来と異なり、取締役会を設置しなければ、取締役は3人以上もいる必要はなく、1人で十分なのです。また、監査役を置くかどうかも、原則として自由なのです。これに対して、合同会社においては、組合と同様に、広く契約自由の原則が妥当するため、業務執行等については強行規定がほとんどなく、定款で自由に定めることができます。

 4 次に、設立費用の違いを見てみると、株式会社の設立登記の登録免許税は、例えば資本金の額が500万円とすれば、15万円であるのに対し、合同会社では同じ資本金の額だとすれば、6万円であります。また、株式会社では、定款について公証人の認証を受けることが必要であるため、認証手数料として5万円、公証人が保存する定款原本についての印紙税が4万円、合計9万円少々が必要となります。これに対して、合同会社では、定款の認証は不要です。結局、法定費用だけで、株式会社は24万円なのに対し、合同会社は6万円で済みます。それに、類似商号の調査や定款の作成等を含めた会社設立支援報酬も、当事務所では、株式会社が10万円なのに対し、合同会社は7万円としております。

 5 このように見てくると、設立費用や手続からすると、合同会社に軍配が上がりますが、何せ新会社法が施行されて間がないため、合同会社の認知度が低い点が気になるかもしれません。しかし、新会社法は、専門知識やノウハウを持った少数の出資者が集まり、その知識などを活用して自らが経営を行う会社の設立を企図しているようです。ともあれ、最初は合同会社を設立しておいて、経営が順調になってきたら株式会社に組織変更をする、というのも一つの手かもしれません。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ。

 今回はこの辺で。 

07年03月19日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
  今回から暫く会社設立に関する記事とします。

 初回はまず、個人事業で行くべきか、それとも会社形態にすべきか、悩んでいる起業家の方もおられると思うので、個人事業と会社とはどのように違うのか、そのメリット・デメリットを考えてみましょう。

 1 法は、権利義務の帰属主体として自然人と法人を予定しています。ですから、個人事業の場合、契約などをしたときに生じる権利義務は、個人の事業主に帰属します。これに対して、会社の場合、たとえ一人会社であったとしても、法律行為をした代表取締役ではなく、会社自身に帰属します。この点が、両者の根本的な違いであり、メリット・デメリットも多くはここから生じているものと思われます。

 2 会社にするメリットは、よく言われるように、社会的信用の違いです。個人事業の場合、社会的信用は事業主個人の人格や資産に依存するため、概して低いと思われるのに対して、会社の場合、個人とは離れて莫大な会社自身の資産やネームヴァリュウがあるため、社会的信用が高いのです。取締役の業務執行の適正を確保するため、会社法により様々な規制を受けることも、社会的信用を引き上げる要因となっているものと思われます。

 3 また、会社にすると、事業の継続性がある点もメリットとなります。すなわち、会社では、代表取締役や株主が代わっても、会社自身には何の変わりもなく継続しますが、個人事業では、事業主が亡くなると、事業は終了します。これは、例えば、息子が事業を継いだとしても、同じことです。息子さんは新たに事業を始めることになり、税務署に事業廃止届と事業開始届を提出することになるのです。親父さんの事業を息子さんが継ぐと、社会通念上は事業が継続しているようにも思えますが、法律上は一代で終わりなのです。

 4 株式会社や新会社法で設けられた合同会社では、株主や社員は有限責任であり、会社債権者に対して、出資の価額の限度でしか責任を負わないという点も、メリットでしょう。個人事業主は、事業用財産だけでなく、自己固有の財産をもってしても、債権者に対して責任を無限に負います。

 5 会社形態にすると、税法上の利点もあります。例えば、社長は会社から給料をもらいますが、会社はこれを必要経費に計上できるだけでなく、社長自身は給与所得控除を受けることができます。個人事業では、事業主に給料を出すことはできず、したがって、必要経費に計上することもできません。また、青色申告での損失の繰越控除ができる期間についても差があります。個人事業の場合は3年であるのに対し、会社の場合は5年ですから、当初の赤字を5年間繰り越して黒字から差し引くことができるのです。

 6 会社形態にすることがすべてメリットだとは限りません。例えば、会社を作るのに他の人に出資をしてもらったら、原則として、出資の割合で利益の配分をしなければいけないでしょうし、会社の意思決定においても、彼らの意思を尊重しなければならないことになると思われます。この点、個人事業の場合は、利益はすべて事業主のものだし、意思決定も事業主が自由に決定することができます。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ。

 今回はこの辺で。

07年03月17日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
ページ移動 前へ 1,2 Page 2 of 2
新規顧客開拓 FAXのdm faxdm