医院開業物語の第2回目は開業地についてです。
開業動機から診療方針や建築・設備の構想がある程度決定すると、次に開業立地の選定を行っていきます。物件をどこの場所に建てるかということは、その診療所の運命を左右するほど重要なことですが、先生方がある程度の開業候補地を既に決めている場合と決めていない場合の2パターンに分かれてきます。既に決めている場合ではその場所で診療圏分析を行い、見込患者数がどれくらいになるのか算定していきます。開業候補地を決めていない場合では、大まかなエリアと物件・駐車場の広さ・購入価格等の範囲を決めた上で探していき、開業立地が見つかれば診療圏分析を行い、見込患者数を算定し、最終的にはその場所で資金繰りが回せるのかどうかを判断していきます。
ただし、この項目については以前にも書いたことがありますが、決して机上の数字だけにとらわれないということが大事なポイントです。実際に開業地に行き、周囲の環境を調査し、生活動線はどうなっているのか、他にも競合医院を調べたりしながら精度の高い診療圏分析をおこないますが、ここまで調べても近年の開業ブームにより競合医院が増えすぎて診療圏分析の結果通りにならない場合もでてきます。
そういった意味でも診療圏分析で予測される患者数というのは最大値で考えるべきものであり、開業当初から、算定された患者が来院されるものではないということを知っておかないといけません。最近では、競合医院が多い中で差別化を図るため、専門の標榜科目を掲げ、個々の特色を出している診療所も見受けられます。

開業立地の選定とともに重要なことがもう一つあります。それが不動産の所有状況です。一戸建ての場合にしても土地を購入するのか、借地にするのか、またはビルテナントで開業するのか、資金と診療コンセプトや診療科目をもとに開業形態を決定していかなければなりません。ビルテナントで開業を考えられている先生がいらっしゃる場合、ビルテナントの2F以上で内科や整形外科など開業することはデメリットとなりますが、心療内科や婦人科などはデメリットとはなりません。また、土地を購入するために無理な借入をしてしまうと開業当初のコストが大きな負担になりかねません。自己資金や予定借入金額を考慮しながら先生方のコンセプトに合った建築を行うことが望ましいでしょう。

文責 医業部
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