事案(チェック・オフに関する部分のみ)は、「Xは、本件病院を含む医療機関等を設置して社会福祉事業を行うものである。病院には、Xの従業員が組織するZ組合の支部組合Z’と訴外A組合がある。Z及びZ’組合は都労委にX及び病院を被申立人として、病院がZ’組合ないし組合員に対してチェック・オフの中止が支配介入に該当するとする不当労働行為救済の申立をした。 都労委は支配介入を認め、中労委もこれを維持したので、X及び病院が中労委(Y)を相手として再審査棄却命令の取消を求める行政訴訟を提起したもの」である。

(注) チェック・オフとは、通常、使用者が労働者の賃金から組合費を天引して、それらを一括して組合に交付することをいい、法的には、労働組合と組合員とが使用者に対し組合費の取立てと弁済を委任し、使用者がこれを履行することと解されています。

 これは、済生会事件であるが、最高裁(最判H元、12,11)は次のように判示した。

1 労基法24条1項本文は、賃金はその全額を労働者に支払わなければならないとしているが、その趣旨は、労働者の賃金はその生活を支える重要な財源で日常必要とするものであるから、これを労働者に確実に受領させ、その生活に不安のないようにすることが労働政策の上から極めて必要なことである、というにある・・・・・。これを受けて、同項但書は、(ア)当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者が使用者との間で賃金の一部を控除して支払うことに合意し、かつ、(イ)これを書面による協定とした場合に限り、労働者の保護に欠けるところはないとして、同項本文違反が成立しないこととした。しかして、いわゆるチェック・オフも労働者の賃金の一部を控除するものにほかならないから、同項但書の要件を具備しない限り、これをすることができないことは当然である。たしかに、原審のいうようにチェック・オフは労働組合の団結を維持、強化するものであるが、その組合員すなわち労働者自体は賃金の一部を控除されてその支払いを受けるのであるから、チェック・オフをする場合には右の(ア)(イ)の要件を具備する必要がないということはできない。

2 本件の場合、チェック・オフを中止した頃、Z’組合が病院の従業員の過半数で組織されていたといえるかどうかは極めて疑わしいといわなければならないし、また、本件チェック・オフは、過去15年余にわたってされたものであるが、これにつき書面による協定がなかったことも原審の適法に確定するところである。そうすると、本件チェック・オフの中止が労基法24条1項違反を解消するものであることは明らかであるところ、これに加えて、病院が・・・・・・・・・チェック・オフをすべき組合員(従業員)を特定することが困難である(これが特定されればチェック・オフをすることにやぶさかではない)として本件チェック・オフを中止したこと、及び病院が実際に・・・チェック・オフ協定案を提示したこと等を併せ考えると、本件チェック・オフの中止は、病院・・・・・・・の不当労働行為意思に基づくものともいえず、結局、不当労働行為に該当しないというべきである。

 判旨は、(ア)(イ)の形式的判断で処理していますが、そもそもチェック・オフに労基法24条1項但書が適用されるのかという問題があります。

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07年07月06日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「X会社は、参加人全港湾労働組合X分会(以下、参加人組合という)との間で、「X会社に所属する海上コンテナトレーラー運転手は、すべて参加人組合の組合員でなければならない。X会社は、X会社に所属する海上コンテナトレーラー運転手で、参加人組合に加入しない者及び参加人組合を除名された者を解雇する。」旨のユニオン・ショップ協定を締結していた。 Xに勤務する海上コンテナトレーラー運転手のYらは、参加人組合に脱退届を提出して同組合を脱退し、即刻、全日本運輸一般労働組合神戸支部に加入するとともに、同X分会を結成し、その旨をXに通告した。参加人組合は、同日、Xに対し、ユニオン・ショップ協定に基づくYらの解雇を要求し、Xは、右協定に基づきYらを解雇した。 そこで、Yらは、ユニオン・ショップ協定締結組合を脱退した直後に他組合に加入した場合には協定の効力は及ばないとして、右解雇の無効確認と賃金支払いを求めて訴えを提起したもの」である。

 これは、三井倉庫港運事件であるが、最高裁(最判H元、12,14)は次のように判示した。

1 ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるが、他方、労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないというべきである。

2 したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法90条の規定によりこれを無効と解すべきである。そうすると、使用者が、ユニオン・ショップ協定に基づき、このような労働者に対してした解雇は、同協定に基づく解雇義務が生じていないのにされたものであるから、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、解雇権の濫用として無効であるといわざるをえない。

 労働者の組合選択の自由と他の労働組合の団結権を尊重して、ユニオン・ショップ協定の限界を判示したものといえる。

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07年07月05日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 厚生労働省は、3日までに、外国人研修・技能実習制度で実習生を受け入れている事業所に対する監督指導結果をまとめた。

 06年に労働基準法や労働安全衛生法などへの違反件数は、前年比約65%増の1209件に上り、実習生が低コストの労働者として酷使されている実態が浮き彫りになった。

 06年は、調査件数自体が1633件と80%増加した。これは、申告制度に対する問題意識の高まりで、法違反に関する報告が多かったためと考えられる。また、実習生の数も約4万人と3割近く増えている。

 違反内容は、労働協定を結ばずに残業などをさせるケースが573件で1位、次いで、残業代の不払い・減額が499件、賃金不払いが355件と続く。

 確か、アメリカの担当者だったと思うけど、日本の外国人研修・実習制度は見直すのではなく、廃止すべきであるという趣旨のことを述べていた。

 諸外国に、「研修」「実習」に名を借りた労働力搾取とみられても仕方がないのではないか。

 すばらしい伝統と文化を有するわが国で、このようなことが行われていることは、恥ずかしい限りである。

07年07月04日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「Xは、テレビ中継回線の運用・保全等を行うYの職員である。昭和53年9月11日、第一整備課に勤務するXは、同月16日(土)につき年次休暇の時季指定をしたが、同課課長は業務に支障が生ずるとして時季変更権を行使した。しかし、Xは当日欠務したため、Yはこれを欠勤として扱い懲戒(戒告)処分に処するとともに、賃金カットを行った。これに対して、Xが右懲戒処分の無効確認、未払い賃金と付加金の支払、ならびに右違法な処分に対する損害賠償を求めたもの」である。 なお、第一整備課の業務運営には最低2名の人員を配置することが必要であり、この2名しか配置されていない土曜日に一般職員が年次休暇を取ったため要員不足を生じたとしても、従前の労使間交渉の経過から、週休予定者に対し勤務割を変更して出勤が命じられることはありえず、当該欠務の補充の責任は全て管理者側にあるという認識が労使間に定着していた。そこで、Yは、こうした場合に備えて、管理者2名を隔週交替で半日勤務させることによって欠務の補充に当てることとしていた。ところが、Xが時季指定をした日は、過激派集団による成田空港開港反対百日闘争の最終日が間近に迫り、無差別的破壊活動が行われる可能性があったため、Yは管理者による特別保守体制を取ることを余儀なくされており、管理者による欠務補充の方法はできない状況にあった。こうした経過から、課長は、右時季指定に対し勤務割を変更して代替勤務者を確保することは考慮しなかった。

 これは、電電公社関東電気通信局事件であるが、最高裁(最判H元、7,4)は、次のように判示した。

1 時季変更権行使の要件である「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かの判断において、代替勤務者確保の難易は、その判断の一要素であって、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であるというべきである。こうした事業場において労働者が時季指定した場合に、「使用者としての通常の配慮をすれば代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしなかった結果、代替勤務者が配置されなかったときは、必要配置人員を欠くことをもって事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできない」と解するのが相当である。

2 使用者としての通常の配慮をすれば、代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況であったか否かについては、(1)当該事業場において、年次休暇の時季指定に伴う勤務割の変更が、どのような方法により、どの程度行われていたか、(2)年次休暇の時季指定に対し使用者が従前どのような対応の仕方をしてきたか、(3)当該労働者の作業の内容、性質、欠務補充要員の作業の繁閑などからみて、他の者による代替勤務が可能であったか、また、(4)当該年次休暇の時季指定が、使用者が代替勤務者を確保しうるだけの時間的余裕のある時期にされたものであるか、更には、(5)当該事業場において週休制がどのように運用されてきたかなどの諸点を考慮して判断されるべきである。「右の諸点に照らし、使用者が通常の配慮をしたとしても代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況になかったと判断しうる場合には、使用者において代替勤務者を確保するための配慮をしたとみうる何らかの具体的行為をしなかったとしても、そのことにより、使用者がした時季変更権の行使が違法となることはない。」

3 本件の事実関係においてこれをみると、Xの時季指定日に休暇を与えると最低配置人員を欠くことになること、一般職員の週休予定日に勤務割変更のうえ出勤が命じられることはおよそありえないとの認識が労使間に定着していたこと、さらには当時は異常事態にあり管理者による欠務補充も困難であったこと、などの諸点から、「使用者としての通常の配慮をしたとしても代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にはなかった」ものと判断するのが相当である。

 このようにして時季変更権の行使を適法としたものであるが、年休時季指定自由の原則からすれば、当時は異常事態にあり管理者による欠務補充が困難であった点が重視されるべきで、極めて例外的なケースと解するべきである。

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07年07月03日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「Y会社は、都内大田区池上の本社工場のほか、川崎等に工場を有する従業員約1300人の株式会社であり、電機労連傘下の企業内組合があった。会社は、組合が毎回出す工場食堂使用許可願は拒否していたが、某日組合副執行委員長で川崎工場勤務のAは、社外での電機労連幹事会議に有給休暇をとって出席後、許可なく川崎工場食堂で開催予定の合同集会に出席するため、会社の入構拒否を無視して川崎工場に立ち入った。会社は、Aに対し、川崎工場内従業員食堂における組合集会に参加したことは服務規律違反であるから今後規律を乱すことのないよう警告する旨の文書を交付した。組合が地労委に救済申立。X地労委は、会社の食堂使用拒否を労組法7条3号違反、Aへの警告を同1号・3号違反として救済命令を発した。その取消を求めて会社が行政訴訟を提起したもの」である。

 これは、池上通信機事件であるが、最高裁(最判S63,7,19)は、原審の判断を無修正で支持した。原審の判旨は次のとおりである。

1 本来企業施設は企業がその企業目的を達成するためのものであって、労働組合又は組合員であるからといって、使用者の許諾なしに当然に企業施設を利用する権限を有するものではないし、使用者において労働組合又は組合員が組合活動のため企業施設を使用するのを受忍すべき義務を負うというものではないことはいうまでもなく、このことは、当該組合がいわゆる企業内組合であって、労働組合又は組合員において企業施設を組合活動のために使用する必要性がいかに大であっても、いささかも変わるところがない。

2 このように解すべきことは、労働組合法が使用者の労働組合に対する経費援助等を不当労働行為として禁止し、ただ最小限の広さの事務所の供与等を例外的に許容しているに過ぎない(同法7条3号)ところの法の趣旨に適合する当然のことである。労働組合又は組合員による企業施設の利用関係は、この点において、企業が労働安全衛生法70条の規定に基づいて労働者の体育活動、レクリェーションその他の活動のために企業施設の使用を認める場合とは、基本的に性格を異にするものといわなければならない。

3 そして、使用者は、企業目的に適合するように従業員の企業施設の利用を職務規律として確立する一方、企業目的の達成に支障を生じさせ秩序を乱す従業員の企業施設使用行為を禁止又は制限しあるいは違反者を就業規則等違反を理由として懲戒処分に付するなどにより、企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制し排除することができるのはいうまでもないところである。

 この判例は、会社の施設管理権と企業秩序を重視した判断になっています。

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07年07月02日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
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