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 事案は、「Y会社は、石油等の輸送・販売を業としているが、Xは、業務上タンクローリーを運転中、追突事故を起こした。そのため、Y会社は、使用者責任に基づき、追突された車両の所有者に対し、車両の損害賠償として約7万円を支払い、また、破損したY会社のタンクローリーの修理費及び修理のための休車期間中の逸失利益として約33万円の損害を被った。そこで、Y会社は、X及びその身元保証人に対し、被害者への損害賠償分の求償とY会社が直接被った損害に対する賠償を請求したもの」である。

 これは、茨石事件であるが、原審は、損害額のうち4分の1を超える部分についての賠償及び求償の請求は信義則上許されないと判断したので、Y会社が上告した。これに対し、最高裁(最判S51,7,8)は、次のように判示した。

1 使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し、右損害の賠償または求償の請求をすることができる」ものと解すべきである。

2 (1)Y会社の、資本金800万円、従業員約50名、業務用車両20台、経費節減のため、右車両につき対人賠償責任保険にのみ加入し、対物賠償責任保険及び車両保険には未加入という事実、(2)Xは、主として小型貨物自動車の運転業務に従事し、タンクローリーには特命により臨時的に乗務するに過ぎず、事故当時、Xは、重油をほぼ満載したタンクローリーを運転して交通の渋滞し始めた国道上を進行中、車間距離不保持及び前方注視不十分等の過失により、急停車した先行車に追突したという事実、(3)事故当時、Xの月給は4万5000円であり、勤務成績は普通以上であったという事実を認定し、「これらの事実関係の下においては、Yがその直接被った損害及び被害者に対する損害賠償義務の履行により被った損害のうち、Xに対して賠償及び求償しうる範囲は、信義則上右損害額の4分の1を限度とすべきであり」として、原審の判断を是認した。

 要するに、会社が被用者に対して賠償及び求償しうる範囲は、「全額」ではなく、会社の規模や労働条件等に照らして、「損害の公平な分担」という見地から「信義則上相当と認められる限度」、においてしか認められないということです。

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07年05月31日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 労働関係の記事については、難しいという意見が寄せられていますので、事案・判旨ともに分かりやすさを心掛けていきたいと思っています。

 事案は、「反物、毛皮、宝石の販売等を営む会社の新入社員が、一人で宿直中に、窃盗の目的で来訪した元従業員に殺害された事件に関して、新入社員の親が会社に対して損害賠償の請求をしたもの」である。

 これは、川義事件であるが、最高裁(最判S59,4,10)は次のように判示した。

1 雇用契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、「使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示の下に労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている」ものと解するのが相当である。

2 本件の場合、「宿直勤務の場所である本件社屋内に、宿直勤務中に盗賊等が容易に侵入できないような物的設備を施し、かつ、万一盗賊が侵入した場合は盗賊から加えられるかもしれない危害を免れることができるような物的施設を設けるとともに、これら物的施設等を十分に整備することが困難であるときは、宿直員を増員するとか宿直員に対する安全教育を十分に行うなどし、もって右物的施設等と相まって労働者の生命、身体等に危険が及ばないように配慮する義務があった」ものと解すべきである。

3 そして、本件では、右義務の不履行があり、かつ、義務の履行があれば殺害という事故の発生を未然に防止しえたとして因果関係を認め、会社の損害賠償責任を肯定した。

 安全配慮義務違反による損害賠償責任は、労働契約に基づく債務不履行責任でありますから、不法行為に基づく損害賠償責任と異なり、落ち度がないことを債務者たる会社の方で立証しなければならないことに注意しましょう。

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07年05月30日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
07年05月29日

懲戒権濫用の基準

 事案は、「Xは、デモに参加し凶器準備集合罪等の嫌疑で現行犯逮捕・勾留され、その間会社を欠勤した。その後、出勤して勝手に従前の職場に割り込んで作業を行い、事情聴取のため労務課への出頭命令も無視し続けたので、Y会社は自宅待機を命じた。しかし、Xは連日入構しようとして、警士とトラブルを繰り返したので、YはXを20日間の第一次出勤停止処分に処した。Xは、その後も入構しようとして警士ともみ合い、週2,3回会社前で抗議のビラの配布を続けたので、YはXを20日間の第二次出勤停止処分に処した。Yは第二次処分満了日に、Xの働く適当な職場がないとして、無期限の自宅待機命令を行ったが、Xは、工場ゲリラと称する17名の者らとともに工場内に入り、ベルトコンベアを停止させたり、警士に打撲傷を与えたりしたので、YはXを懲戒解雇したというもの」である。

 これは、ダイハツ工業事件であるが、1審及び2審は、懲戒権の濫用に当たり無効としたが、最高裁(最判S58,9,16)は、原判決を破棄し、自判した。

1 「使用者の懲戒権の行使は当該具体的状況の下において、それが客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合に初めて権利の濫用として無効になる」と解するのが相当である。

2 原審が、「第二次出勤停止処分の対象行為は、第一次出勤停止処分の対象行為とその目的、態様等において著しく異なることはなく、その続きに過ぎないから、第二次処分は不当に苛酷な処分であって無効である」としたのに対し、最高裁は、「・・・・・目的、態様等において著しく異なるところはないにしても、より一層激しく悪質なものとなり、警士が負傷するに至っていることと、一次処分を受けたのに何らその態度を改めようとせず、執拗に反発し、ビラ配布という挙に出たこととを併せ考えると、本件第二次出勤停止処分は、必ずしも合理的理由を欠くものではなく、社会通念上相当として是認できないものではないといわなければならず、これを目して権利の濫用であるとすることはできない。」とした。

3 また、Xは、自己の主張を貫徹するため執拗かつ過激な実力行使に終始し、警士の負傷、ベルトコンベアの停止等による職場の混乱を再三にわたり招いているのであって、その責任は重大であるとした上で、「Xとしては、自己の立場を訴え、その主張をするにしても、その具体的な手段については企業組織の一員としておのずから守るべき限度があるにもかかわらず、本件懲戒解雇の対象となったXの行為は、その性質、態様に照らして明らかにこの限度を逸脱するものであり、その動機も身勝手なものであって同情の余地は少なく、その結果も決して軽視できないものである。」 そして、「Yが、Xをなお企業内にとどめ置くことは企業秩序を維持し、適切な労務管理を徹底する見地からしてもはや許されないことであり、事ここに至ってはXを企業外に排除するほかないと判断したとしても、やむをえないことというべきであり、これを苛酷な措置であるとして非難することはできない。」

4 以上のようなXの行為の性質、態様、結果及び情状並びにこれに対するYの対応等に照らせば、「YがXに対し本件懲戒解雇に及んだことは、客観的にみても合理的理由に基づくものというべきであり、本件懲戒解雇は社会通念上相当として是認することができ、懲戒権を濫用したものと判断することはできない。」

 結局、懲戒権の行使は、対象行為の性質、態様、結果等と会社の対応等からして、(1)客観的に合理的理由があり、(2)社会通念上相当として是認することができる、のであれば権利の濫用とはならないということです。

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07年05月29日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
07年05月26日

懲戒処分の適法性

 事案は、「Y会社は、訴外A.Bが就業時間中に上司に無断で職場を離脱し、就業中の他の労働者に対して、原水爆禁止の署名を求める等の就業規則違反の事実を明確に把握するため、Xに対しても事情聴取を行ったが、Xは反問し、あるいは返答を拒否した。そこで、Yは、Xが右調査に協力しなかったことは、「従業員は上長の指示に従い・・・・・職場の秩序を守り、・・・・・努めなければならない。」と定める就業規則の規定、また、「従業員は秩序を維持するため、会社の諸規則、命令を守らなければならない。」と定める就業規則の規定に該当するとして、Xを懲戒譴責処分に付したもの」である。

 これは富士重工業事件であるが、最高裁(最判S52,12,13)は次のように判示した。

1 企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のため必要不可欠のものであり、企業はこの企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則をもって一般的に定め、あるいは具体的に労働者に指示、命令することができ、また、「企業秩序に違反する行為があった場合には、その違反行為の内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができる」ことは、当然のことといわなければならない。

2 しかしながら、企業が企業秩序違反事件について調査をすることができるということから直ちに、「労働者が、これに対応して、いつ、いかなる場合にも、当然に、企業の行う調査に協力すべき義務を負っているものと解することはできない。」けだし、労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、「企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできない」からである。

3 この観点すれば、「当該労働者が他の労働者に対する指導、監督ないし企業秩序の維持などを職責とする者であって、右調査に協力することがその職務の内容となっている場合」には、右調査に協力することは労働契約上の基本的義務である労務提供義務の履行そのものであるから、調査に協力すべき義務を負うものといわなければならないが、「右以外の場合」には、調査対象である違反行為の性質、内容、当該労働者の右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、「右調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り、右調査協力義務を負うことはない」ものと解するのが、相当である。

4 以上を前提に、右調査に協力すべきことがXの職務内容となっていたことは、原審の認定しないところであり、また、Xが右調査に協力することがXの労務提供義務の履行にとって必要かつ合理的であったとはいまだ認めがたいとして、Xには本件調査に協力すべき義務はなく、したがって、右義務のあることを前提としてされた本件懲戒処分は違法無効である、とした。

 要するに、社内調査における協力義務の有無は、(1)調査協力が職務の内容となっているか、(2)調査協力が労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的といえるか、という観点から判断しなければならないということです。

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07年05月26日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
  事案は、「Xは、Y会社において勤務中、過去に行われたデモに参加し、公務執行妨害罪及び凶器準備集合罪に当たる行為をした嫌疑をもって逮捕され、約6ヶ月勾留され欠勤を余儀なくされた。本件欠勤について、Yは、最初の40日間についてはXが保有していた有給休暇を振り替えて休暇扱いとし、次の1ヶ月間を「事故欠勤」として扱い、その満了時翌日には事故欠勤が引き続き30日以上に及ぶときは休職させることがあると定める就業規則に基づき、Xを休職に付した。さらに、30日後翌日には、事故欠勤休職の期間を30日と定め、かつ、休職期間満了時にはその従業員は退職するものとする旨定める就業規則の規定に基づき、その旨をXに通告した。これに対し、Xは、本件休職処分は無効で、自分には雇用契約上の地位があると主張したもの」である。

 これは、石川島播磨重工業事件であるが、最高裁(最判S57,10,8)は次のように判示した。

1 原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

2 (原判決)

(1) Xの、通常解雇事由がある場合に限り「事故欠勤休職」処分ができると解さなければ「事故欠勤休職」   制度が解雇の制約を免れるために利用される虞があるとの主張に対し、「仮に本件「事故欠勤休職」制度が条件付解雇の性格を帯びるとしても、解雇の制限に関する労基法19条の規定と抵触するものでないことは明らかであるのみならず、労基法20条との関係においてこれを見ても、その期間内に限り復職を可能とする1ヶ月の解雇猶予期間を設定しているのであるから、同条所定の予告解雇よりも従業員にとって有利となる場合もあり得るのであって、これをもって同条に違反するものとすることができない。」とした。

(2) Xの、本件欠勤のごとく刑事事件によって逮捕勾留されたことによる欠勤は、他の自己都合による欠勤と区別して取り扱うべきとの主張に対し、「本件「事故欠勤休職」制度は、就労意思の有無はともかく、一定期間にわたる労務の不提供それ自体をもって休職事由とするものであり、この点においては他の自己都合による欠勤と何ら区別すべき点がない。」とした。

(3) 「事故欠勤休職」処分は、その実質において解雇猶予処分に当たるとみられなくはないが、当該就業規則の規定は通常解雇に関する就業規則の規定とは別に、独立した雇用契約終了事由としてこれを規定したものであることが、その規定の文理に照らして明らかであるし、通常解雇とは別の雇用契約終了事由を就業規則上設定することが許されないとする理はない。

(4) 以上のとおり、本件「事故欠勤処分」の無効を前提とするXの本訴請求は、既に他の争点について判断するまでもなく理由がないから、これを失当として棄却する。

 合理的な就業規則は、使用者にとっても、労働者にとっても、紛争解決の基準となります。10人以上の労働者がいる場合に就業規則の作成が義務付けられていますが、10人未満でも就業規則を作成しておくと、未然に労働紛争を回避することができます。

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07年05月25日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「Xは、Y会社の横浜工場の従業員であったが、Y会社が系列会社であるZ会社に転属させる意向をXに対して伝えたところ、Xはこれを了承した。しかし、Z会社はXに対して雇うことができない旨の通知をし、また、Y会社も、Xを退職したものとして取り扱い、Xが横浜工場の従業員であることを否定しているというもの」である。

 これは、日立製作所横浜工場事件であるが、最高裁(最判S48,4,12)は次のように判示した。

1 原審が、「労働者であるXの承諾があってはじめて転属の効力が生ずる」ものとした判断は、相当として是認することができる。

2 原判決の要旨を述べると、「本件転属がY会社のXとの間の労働契約上の地位の譲渡であり、Y会社とZ会社との間の本件転属に関する合意が成立した以上、Xがこれを承諾すれば、Y会社のXとの間の労働契約上の地位は直ちにZ会社に移転する」から、「XはY会社の従業員たる地位を失うと同時に、当然Z会社の従業員たる地位を取得するものというべく、その間に改めてZ会社との間に労働契約を結ぶ余地のないことは明白である。」ということになる。

3 そして、Z会社で支障なく就労できることが本件転属承諾の要素となっていたことは明白であるところ、XはZ会社で就労させてもらえるものと信じて本件転属を承諾したのに、当時すでにZ会社ではその就労拒否を決定していたのであるから、「右承諾は要素に錯誤があり、無効」といわざるを得ない。

 Xの、「本件転属はZ会社がXを雇うことを条件とするY会社とXとの間の労働契約の合意解約」である旨の主張を退けて、「Xの承諾があってはじめて転属の効力が生じるが、その承諾は要素に錯誤があるから無効」として、転属の効力は生じないとしたものです。

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07年05月24日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
  事案は、「X らは、Y会社に入社し、製鉄所内の構内鉄道輸送業務に従事していた。Yは業界全体の不況に際し、業務委託と出向を内容とする再構築計画を策定し、各対象者に承諾を求めるという方法で出向者を決定した。しかし、X らは同意しなかったが、Y は組合の了解を得た上で、X らに出向を命令したもの」である。

 これは、新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件であるが、最高裁(最判H15,4,18)は次のように判示した。

1 (1)本件各出向命令は、委託される業務に従事していたXらにいわゆる「在籍出向」を命ずるものであること、(2)Yの就業規則には、「会社は従業員に対し、業務上の必要によって社外勤務させることがある。」という規定があること、(3)労働協約にも社外勤務条項として同旨の規定があり、労働協約である社外勤務協定において、社外勤務の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金、各種の出向手当て、昇格・昇給等の査定その他処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられていること、という事情の下においては、YはXらに対し、「その個別的合意なしに」、Yの従業員としての地位を維持しながら出向先の会社においてその指揮監督の下に労務を提供することを命ずる本件各出向命令を発令することができるというべきである。

2 (1)鉄道輸送部門の一定の業務を委託することとした経営判断の合理性、(2)委託される業務に従事していたYの従業員につき出向措置を講ずる必要性、(3)出向措置の対象となる者の人選基準の合理性及び具体的人選についての不当性をうかがわせる事情の欠如、(4)本件各出向命令によって、Xらの労務提供先は変わるものの、その従事する業務内容や勤務場所には何らの変更はなく、上記社外勤務協定の規定等を勘案すれば、Xらがその生活関係、労働条件等において著しい不利益を受けるものとはいえないこと、(5)本件各出向命令の発令手続に不相当な点があるともいえないこと、等の事情に鑑みれば、本件各出向命令が権利の濫用に当たるということはできない。

 として、原審の判断を正当として是認しました。

 やはり出向に関しても、労働協約や就業規則にチャンと規定しておくべきなのです。勿論、「合理的内容」を有するものでなければなりません。

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07年05月23日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「二度にわたり転勤の内示があった者が、母が高齢(71歳)であり、保母をしている妻も仕事を辞めることが難しく、子供も幼少である(2歳)という家庭の事情により転居を伴う転勤には応じられないとして、これを拒否したところ、二度目には本人の同意がえられないままに転勤が発令された。しかし、これに応じなかったところ、就業規則所定の懲戒事由に該当するとして懲戒解雇されたもの」である。

 これは、東亜ペイント事件であるが、最高裁(最判S61,7,14)は次のように判示した。

1 会社の労働協約及び就業規則には、業務上の都合により従業員に転勤を命ずることができる旨の定めがあり、現に従業員、特に営業担当者の転勤を頻繁に行っており、・・・・・・・・、両者の間で労働契約が成立した際にも勤務地を大阪に限定する旨の合意はなされなかったという事情の下においては、「会社は個別的同意なしに勤務場所を決定し、これに転勤を命じて労務の提供を求める権限を有する」ものというべきである。

2 転勤命令権を濫用することは許されないが、「当該転勤命令について業務上の必要性が存しない場合、または業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない」というべきである。

3 そして、業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務能率の増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである。

4 本件転勤命令については、業務上の必要性が優に存在し、本件転勤が与える家庭生活上の不利益は、転勤に伴い通常甘受すべき程度のものであるので、本件転勤命令は権利の濫用には当たらない。

 通常、会社は転勤命令を出すことができるが、業務上の必要性がない場合や他の不当な目的でなされるとか、転勤により通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合などには、権利の濫用になり転勤命令は認められないということです。

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07年05月22日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「旧就業規則を変更した新就業規則を実施した後に、旧就業規則時代の言動に対して、会社は新就業規則の懲戒解雇規定を適用して懲戒解雇にしたが、旧就業規則は事業場に備え付けられていなかったというもの」である。

 これは、フジ興産事件であるが、最高裁(最判H15,10,10は、次のように判示した。

1 旧就業規則時代の言動については、旧就業規則における懲戒解雇事由が存するか否かについて検討すべきである(原審と同様)。

2 原審は、「旧就業規則は、労働者代表の同意を得た上で労働基準監督署長に届出ていたという事実が認められる以上、事業場に備え付けられていなかったとしても、労働者に効力を有しないと解することはできない。」としたのに対し、

  最高裁は、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくこと要する。」 そして、「就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する」ものというべきであるとして、原判決を破棄し、原審に差し戻した。

 法律も国会で成立しただけでは効力を生じません。効力を生じさせようと思えば、「公布」が必要なのです。これと同様に、就業規則も労働者に「周知」させないと法的拘束力が生じないのです。

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07年05月21日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「Xら6名は、少数組合の組合員でいずれも当時55歳以上の管理職にあり、60歳定年制を採用するY銀行の銀行員であった。Yは、賃金制度の2度の見直しの際、労組(従業員の73%が加入)の同意は得たが、少数組合の同意を得ないまま実施した。これにより、Xらは管理職の肩書きを失うとともに賃金が減額した。そこで、Xらは、就業規則の変更は同意をしていないXらには効力が及ばないとして、差額賃金の支払等を請求する訴えを起こしたもの」である。

 これは、みちのく銀行事件であるが、最高裁(最判H12,9,7)は次のように判示した。

1 就業規則が「合理的」なものでなければならないことについては、以前度々述べているので、ここでは割愛する。

2 就業規則等の変更は、Yにとって、高度の経営上の必要性があったということはできる。

3 就業規則等のの変更に伴う「賃金の減額」を除けば、その対象となる行員に格別の不利益を与えるものとは認められないから、「職階及び役職制度」に限ってみれば、その合理性を認めることが相当である。

4 本件就業規則等変更は、変更の対象層、賃金減額幅及び変更後の賃金水準に照らすと、高年層の行員につき雇用の継続や安定化等を図るものではなく、逆に、高年齢層の行員の労働条件をいわゆる定年後在職制度ないし嘱託制度に近いものに一方的に切り下げるものと評価せざるを得ない。

5 就業規則の変更によってこのような制度の改正を行う場合には、一方的に不利益を受ける労働者について不利益性を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ図るべきであり、それがないままに右労働者に大きな不利益のみ受忍させることには、相当性がないものというほかはない。

6 したがって、不十分な経過措置の下においては、Xらとの関係で「賃金面」における本件就業規則等変更の内容の相当性を肯定することはできない。

7 そして、X らの被る不利益の程度や内容を勘案すると、賃金面における変更の合理性を判断する際に、「労組」の同意を大きな考慮要素と評価することは相当ではない。

8 以上のことから、本件就業規則等変更のうち「賃金減額の効果を有する部分」は、Xらにその効力を及ぼすことができない。

 少し長くなりましたが、従業員の73%を組織する労組の同意があっても、就業規則の「合理性」が否定される場合があるということには、注意する必要があります。

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07年05月19日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 16日の厚生労働省の発表によれば、長時間労働やストレスなどによる過労自殺として労災の認定がなされたものは、06年度は前年度の57%増え、過去最多の66人だという。50代21人、30代19人、40代12人と続く。

 うつ病などの精神疾患が認定された人も、前年比61,4%増え、205人で過去最多である。年代別には、30代が異常に多く83人、20代38人、40代36人、50代33人であり、2,30代の若年労働者に多いのが特徴となっている。

 また、過労で脳出血や心筋梗塞などを発症した脳・心疾患の認定者も355人で、過去最多となっている。50代が一番多く141人、40代104人、30代64人と続く。

 珍しいものでは、職場での「セクハラやいじめ」によってうつ病になった労働者に対して、昨年7月小田原労基署が労災を認定している。

 そして、画期的なものは、出版社2社で編集の「アルバイト」をしていた労働者が自殺した事案に対して、労災を認定したものである。17日、東京労働者災害補償保険審査官は、労災と認めなかった新宿労基署の決定を取消し、過労による自殺として労災認定をした。両社での勤務時間を合算し、相当程度の長時間労働があったと指摘している。パート・アルバイトでの兼業者には朗報である。

 労働者災害補償保険は、「業務上の事由」(通勤)による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して、必要な保険給付を行うものであるが、そのためには、(1)業務遂行性と、(2)業務起因性が認められなければならない。

 業務遂行性は労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態を指し、業務起因性は業務と疾病等との間に一定の因果関係が存在することであるが、パソコンを長時間使用しなければならない労働環境の下では、特に精神疾患において、この因果関係の認定が困難となってくる事案が多くなってくるものと思われる。

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07年05月18日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「高校卒業予定の者が、入社試験を受け、採用通知を受領した。採用通知を受領する 直前に、反戦青年委員会の一員として集会に参加したが、無届デモとして規制を受け、逮捕され執行猶予処分を受けたが、会社はこの事実を知らないで、採用通知をしたものであるが、後日、知るところとなり、採用取消通知をなしたもの」である。

 これは、電電公社近畿電通局事件であるが、最高裁(最判S55,5,30)は次のように判示した。

1 社員公募に応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する採用通知はこの申し込み に対する承諾であって、これにより、両者の間に、いわゆる採用内定の一態様として、労働契約 の効力発生の始期を右採用通知に明示された昭和45年4月1日とする労働契約が成立したと 解するのが相当である。

2 そして、右労働契約においては、再度の健康診断で異常が会った場合又は誓約書等を所定の期日までに提出しない場合には採用を取消しうるものとしているが、解約権の留保は右の場合に 限られるものではなく、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実 であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に 合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができる場合」をも含むと解するのが相当 であり、本件採用取消の通知は、右解約権に基づく解約申入れとみるべきである。

3 以上を前提に、会社が、現行犯逮捕、起訴猶予処分を受けるような違法行為を積極的に敢行し た者を見習社員として雇用することは相当でなく、見習社員としての適格性を欠くと判断し、本件 採用の取消をしたことは、「解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当」として是認する ことができるから、解約権の行使は有効と解すべきである。

  ここで注意しなければならないのは、採用内定を取消すことができるのは、採用通知や誓約書等 に記載された取消事由に限定されないということです。

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07年05月17日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
07年05月16日

採用内定の取消

 事案は、「大学卒業予定の者が、入社試験に合格し、採用内定の通知を受けて、会社の求めに応じて所要事項を記載した誓約書を提出し、就職を予定していたところ、卒業直前に突然採用内定取消しの通知を受けたもの」である。

 これは、大日本印刷事件であるが、最高裁(最判S54,7,20)は次のように判示した。

1 採用内定の法的性格については、一義的に論断することは困難として、具体的に検討する。すなわち、会社の募集に対して応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する採用内定通知は、その申込みに対する承諾であり、本件誓約書の提出とあいまって、これにより両者間に、就労の始期を大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の5項目の採用内定取消事由に基づく「解約権を留保した労働契約」が成立した解するのが相当である。

2 わが国の雇用事情に照らすとき、大学新規卒業予定者で、一旦特定企業との間に採用内定の関係に入った者は、解約権留保付であるとはいえ、卒業後の就労を期して、他企業への就職の機会と可能性を放棄するのが通例であるから、就労の有無という違いはあるが、採用内定者の地位は、「一定の試用期間を付して雇用関係に入った者の試用期間中の地位」と基本的に異なるところはない。

3 したがって、試用期間中の留保解約権の行使の判例(前に記事にした三菱樹脂事件の判例を参照)理論が同様に妥当するので、採用内定の取消事由は、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実」であって、これを理由として採用内定を取消すことが「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的」と認められ、「社会通念上相当」として是認することができるものに限られると解するのが相当である。

4 本件では、グルーミーな印象であることは当初から分かっていたことであるから、会社としてはその段階で調査を尽くせば、従業員としての適格性の有無を判断することができたはずであり、「内定後にその印象、つまり不適格性を打消す材料が出なかったことを内定取消の理由とすること」は、社会通念上相当とは認められない。

 結局、解約権留保の趣旨・目的に照らして社会通念上相当として是認することができないから、解約権の濫用であるとしたのですね。

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07年05月16日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「定年を55歳とするが、その後3年間定年後在職が認められていた銀行において、定年を60歳に延長する代わりに、給与等の減額が就業規則に定められたため、従来の55歳から58歳までの賃金総額が新定年制の下での55歳から60歳までの賃金総額と同程度となった。そこで、60歳で定年退職した者が、就業規則の変更は既得権を侵害するから自己には効力を生じないとして、銀行に対して賃金の差額の支払等を求めたもの」である。

 これは、第四銀行事件であるが、最高裁(最判H9,2,28)は次のように判示した。

1 新たな就業規則の作成又は変更によって労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が「合理的なもの」である限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されない。

2 そして、合理性の有無は、(1)変更により労働者が被る不利益の程度、(2)変更の必要性、(3)変更の社会的相当性、(4)変更手続の相当性等、を総合考慮して判断すべきであるとしている。

3 その上で、実質的な不利益が、賃金という労働者にとって重要な労働条件に関するものであるから、本件就業規則の変更は、これを受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合に、その効力を生じると解し、諸事情に照らし必要性と相当性を肯定し、当該就業規則の「合理性」を認定した。

 ここでお分かりのように、就業規則はただ作ればいいというものではなく、「合理的な内容」を有するものでなければならないというところが、ポイントです。

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07年05月15日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「頸肩腕症候群と診断された電話交換作業従事職員に対して、会社は頸肩腕症候群の精密検査を受診するよう、二度にわたって業務命令を発したが、当該従業員がこれを拒否したため、就業規則の「上長の命令に服さないとき」という懲戒事由に該当するとして、懲戒処分をしたもの」である。

 電電公社帯広局事件であるが、最高裁(最判S61,3,13)は次のように判示した。

 業務命令の根拠は、「労働者がその労働力の処分を使用者に委ねることを約する労働契約にある」と解すべきであるとした上で、個々の労働契約と就業規則との関係を以下のように述べている。

 就業規則が労働者に対し、一定の事項につき使用者の業務命令に服従すべき旨を定めているときは、そのような「就業規則の規定内容が合理的なものである」かぎりにおいて、「当該具体的労働契約の内容をなしている」ものということができる。

 そして、当該就業規則の合理性を認定して、当該労働契約の内容をなしているとして、懲戒処分を適法なものとした。

 ちなみに、就業規則と労働契約の規範的効力関係は、就業規則が労働契約に優先し、したがって、就業規則に定める基準に達しない労働契約は、その部分については無効となることに注意を要します。

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07年05月14日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「就業規則を変更し、これまでの定年制度を改正したため、それまで定年制の適用がなかった者が定年制の対象となり、解雇されたもの」である。

 これは、秋北バス事件であり、最高裁(最判S43,12,25)は次のように判示した。

 就業規則の法規範性を認めた上で、「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されない」と解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、「当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」と解するべきであるとしました。

 つまり、就業規則が合理的なものであれば、労働者は、就業規則の存在・内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるということです。

 使用者は、就業規則の作成・変更をする場合、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の「意見」を聴かなければなりませんが、「同意」までは必要ないということには、注意する必要があります。

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07年05月12日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「3ヶ月の試用期間を設けて採用された者が、採用試験の際に提出を求めた身上書の所定の記載欄に虚偽の記載をし、または記載すべき事項を秘匿し、面接試験における質問に対しても虚偽の回答をしたことを理由として、試用期間の満了直前に、本採用を拒否されたもの」である。

 有名な三菱樹脂事件であるが、最高裁(最判S48,12,12)は次のように判示した。

1 企業者は、経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するに     当たり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであって、企業者が特定の思想・信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。

2 また、当該雇用契約を解約権留保付の雇用契約と認め、採用拒否は雇入れ後における解雇に当たるとし、当該留保約款の合理性を肯定した上で、留保解約権に基づく解雇と通常の解雇とを区別し、前者の場合は後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものとした。

3 そして、企業者が、採用決定後における調査により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨・目的に徴して、「客観的に相当であると認められる場合」には、さきに留保した解約権を行使することができる。

 この判例については、様々な憲法上の論点を孕む上に、企業者の裁量を広く認めすぎているきらいもあるが、「客観的相当性」がない場合には留保解約権を行使することができない、という点には注意しなければならない。

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07年05月09日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 今回から、労働関係に関するものも記事にしたいと思っています。

 まず手始めは、試行雇用契約と試用期間の違いです。

 試行雇用契約は、「試用を目的とする有期労働契約」であって、企業が労働者の適性や能力を見極めた上で本採用にするか否かを決めるものです。

 これに対し、試用期間というのは、「期間の定めのない労働契約」であることを前提に、試用期間を設けるものです。

 この両者は、概念的には「契約存続期間」と「試用期間」と明確に区別することができるのですが、具体的ケースでは問題になることがあります。

 そこで、最高裁は、「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は「契約の存続期間」ではなく、「試用期間」であると解するのが相当である。」と判示しています(最判H2・6・5)。

 つまり、このような場合、原則として期間の定めのない契約における「試用期間」であって、例外的に期間満了で当然に雇用契約が終了するとの明確な合意がなされているような特段の事情があるときに限って、「契約存続期間」となる、というものです。

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07年05月08日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj