07年05月30日
住民票の写し取得厳格化に
30日、個人情報保護のため、住民票の写しなどの交付手続を厳格化することを柱とする改正住民基本台帳法が成立した。
6月上旬に公布され、1年以内に施行される。
改正法は、住民票の写しなどの交付を請求できる場合を明示するだけでなく、交付の請求や転出・転入などの届出があった場合、市区町村長に住基カードなどで本人確認を行うよう義務付けた。
本人への成り済ましといった不正行為に対する制裁措置も強化している。
これらは、先月下旬に成立した改正戸籍法が、戸籍謄抄本の取得を厳格化し、罰則を強化しているのと同じ流れにある。
職務上請求書の体裁も変わるかもしれない。
6月上旬に公布され、1年以内に施行される。
改正法は、住民票の写しなどの交付を請求できる場合を明示するだけでなく、交付の請求や転出・転入などの届出があった場合、市区町村長に住基カードなどで本人確認を行うよう義務付けた。
本人への成り済ましといった不正行為に対する制裁措置も強化している。
これらは、先月下旬に成立した改正戸籍法が、戸籍謄抄本の取得を厳格化し、罰則を強化しているのと同じ流れにある。
職務上請求書の体裁も変わるかもしれない。
07年05月29日
懲戒権濫用の基準
事案は、「Xは、デモに参加し凶器準備集合罪等の嫌疑で現行犯逮捕・勾留され、その間会社を欠勤した。その後、出勤して勝手に従前の職場に割り込んで作業を行い、事情聴取のため労務課への出頭命令も無視し続けたので、Y会社は自宅待機を命じた。しかし、Xは連日入構しようとして、警士とトラブルを繰り返したので、YはXを20日間の第一次出勤停止処分に処した。Xは、その後も入構しようとして警士ともみ合い、週2,3回会社前で抗議のビラの配布を続けたので、YはXを20日間の第二次出勤停止処分に処した。Yは第二次処分満了日に、Xの働く適当な職場がないとして、無期限の自宅待機命令を行ったが、Xは、工場ゲリラと称する17名の者らとともに工場内に入り、ベルトコンベアを停止させたり、警士に打撲傷を与えたりしたので、YはXを懲戒解雇したというもの」である。
これは、ダイハツ工業事件であるが、1審及び2審は、懲戒権の濫用に当たり無効としたが、最高裁(最判S58,9,16)は、原判決を破棄し、自判した。
1 「使用者の懲戒権の行使は当該具体的状況の下において、それが客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合に初めて権利の濫用として無効になる」と解するのが相当である。
2 原審が、「第二次出勤停止処分の対象行為は、第一次出勤停止処分の対象行為とその目的、態様等において著しく異なることはなく、その続きに過ぎないから、第二次処分は不当に苛酷な処分であって無効である」としたのに対し、最高裁は、「・・・・・目的、態様等において著しく異なるところはないにしても、より一層激しく悪質なものとなり、警士が負傷するに至っていることと、一次処分を受けたのに何らその態度を改めようとせず、執拗に反発し、ビラ配布という挙に出たこととを併せ考えると、本件第二次出勤停止処分は、必ずしも合理的理由を欠くものではなく、社会通念上相当として是認できないものではないといわなければならず、これを目して権利の濫用であるとすることはできない。」とした。
3 また、Xは、自己の主張を貫徹するため執拗かつ過激な実力行使に終始し、警士の負傷、ベルトコンベアの停止等による職場の混乱を再三にわたり招いているのであって、その責任は重大であるとした上で、「Xとしては、自己の立場を訴え、その主張をするにしても、その具体的な手段については企業組織の一員としておのずから守るべき限度があるにもかかわらず、本件懲戒解雇の対象となったXの行為は、その性質、態様に照らして明らかにこの限度を逸脱するものであり、その動機も身勝手なものであって同情の余地は少なく、その結果も決して軽視できないものである。」 そして、「Yが、Xをなお企業内にとどめ置くことは企業秩序を維持し、適切な労務管理を徹底する見地からしてもはや許されないことであり、事ここに至ってはXを企業外に排除するほかないと判断したとしても、やむをえないことというべきであり、これを苛酷な措置であるとして非難することはできない。」
4 以上のようなXの行為の性質、態様、結果及び情状並びにこれに対するYの対応等に照らせば、「YがXに対し本件懲戒解雇に及んだことは、客観的にみても合理的理由に基づくものというべきであり、本件懲戒解雇は社会通念上相当として是認することができ、懲戒権を濫用したものと判断することはできない。」
結局、懲戒権の行使は、対象行為の性質、態様、結果等と会社の対応等からして、(1)客観的に合理的理由があり、(2)社会通念上相当として是認することができる、のであれば権利の濫用とはならないということです。
メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。
これは、ダイハツ工業事件であるが、1審及び2審は、懲戒権の濫用に当たり無効としたが、最高裁(最判S58,9,16)は、原判決を破棄し、自判した。
1 「使用者の懲戒権の行使は当該具体的状況の下において、それが客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合に初めて権利の濫用として無効になる」と解するのが相当である。
2 原審が、「第二次出勤停止処分の対象行為は、第一次出勤停止処分の対象行為とその目的、態様等において著しく異なることはなく、その続きに過ぎないから、第二次処分は不当に苛酷な処分であって無効である」としたのに対し、最高裁は、「・・・・・目的、態様等において著しく異なるところはないにしても、より一層激しく悪質なものとなり、警士が負傷するに至っていることと、一次処分を受けたのに何らその態度を改めようとせず、執拗に反発し、ビラ配布という挙に出たこととを併せ考えると、本件第二次出勤停止処分は、必ずしも合理的理由を欠くものではなく、社会通念上相当として是認できないものではないといわなければならず、これを目して権利の濫用であるとすることはできない。」とした。
3 また、Xは、自己の主張を貫徹するため執拗かつ過激な実力行使に終始し、警士の負傷、ベルトコンベアの停止等による職場の混乱を再三にわたり招いているのであって、その責任は重大であるとした上で、「Xとしては、自己の立場を訴え、その主張をするにしても、その具体的な手段については企業組織の一員としておのずから守るべき限度があるにもかかわらず、本件懲戒解雇の対象となったXの行為は、その性質、態様に照らして明らかにこの限度を逸脱するものであり、その動機も身勝手なものであって同情の余地は少なく、その結果も決して軽視できないものである。」 そして、「Yが、Xをなお企業内にとどめ置くことは企業秩序を維持し、適切な労務管理を徹底する見地からしてもはや許されないことであり、事ここに至ってはXを企業外に排除するほかないと判断したとしても、やむをえないことというべきであり、これを苛酷な措置であるとして非難することはできない。」
4 以上のようなXの行為の性質、態様、結果及び情状並びにこれに対するYの対応等に照らせば、「YがXに対し本件懲戒解雇に及んだことは、客観的にみても合理的理由に基づくものというべきであり、本件懲戒解雇は社会通念上相当として是認することができ、懲戒権を濫用したものと判断することはできない。」
結局、懲戒権の行使は、対象行為の性質、態様、結果等と会社の対応等からして、(1)客観的に合理的理由があり、(2)社会通念上相当として是認することができる、のであれば権利の濫用とはならないということです。
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07年05月28日
社会保険庁改革関連法案の目指すもの
現在の社会保険庁は、厚生労働省の「外局」として置かれている。
「外局」は、特殊な事務を掌理させるために、府・省に置かれる国の行政機関であり、国家行政組織法上、庁と委員会がある。
外局も各大臣の所轄の下に属するが、通常の本省内部部局と異なり、これと併立する。
条文上も、「各庁の長官は、その機関の事務を統括し、職員の服務についてこれを統督する」と規定されている。
社会保険庁の一連の不祥事の責任追及に関して、安倍首相が、歴代の「厚生労働大臣」ではなく、「社会保険庁長官」の責任追及の検討を指示したのは、以上に理由に基づくのである。
ところで、社会保険庁改革関連法案は、社会保険庁を廃止し、新たに非公務員型の法人として「日本年金機構」を設立するとともに、併せて、サービスの向上、保険料の収納対策の強化等を推進するために提出されている。
すなわち、社会保険庁長官が行うと定められている業務は、厚生労働大臣が行うことに改めるとともに、厚生労働大臣は、法人に権限の委任及び事務の委託をして行わせることとするのである。
したがって、厚生労働大臣が公的年金に係る財政責任・管理運営責任を担うことにする一方、法人は厚生労働大臣の直接的な監督の下で、一連の運営業務を担うことになるのである。
この法案が成立すると、年金に関する不祥事が発覚したら、その責任は「厚生労働大臣」が負うことになる。
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条文上も、「各庁の長官は、その機関の事務を統括し、職員の服務についてこれを統督する」と規定されている。
社会保険庁の一連の不祥事の責任追及に関して、安倍首相が、歴代の「厚生労働大臣」ではなく、「社会保険庁長官」の責任追及の検討を指示したのは、以上に理由に基づくのである。
ところで、社会保険庁改革関連法案は、社会保険庁を廃止し、新たに非公務員型の法人として「日本年金機構」を設立するとともに、併せて、サービスの向上、保険料の収納対策の強化等を推進するために提出されている。
すなわち、社会保険庁長官が行うと定められている業務は、厚生労働大臣が行うことに改めるとともに、厚生労働大臣は、法人に権限の委任及び事務の委託をして行わせることとするのである。
したがって、厚生労働大臣が公的年金に係る財政責任・管理運営責任を担うことにする一方、法人は厚生労働大臣の直接的な監督の下で、一連の運営業務を担うことになるのである。
この法案が成立すると、年金に関する不祥事が発覚したら、その責任は「厚生労働大臣」が負うことになる。
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07年05月26日
懲戒処分の適法性
事案は、「Y会社は、訴外A.Bが就業時間中に上司に無断で職場を離脱し、就業中の他の労働者に対して、原水爆禁止の署名を求める等の就業規則違反の事実を明確に把握するため、Xに対しても事情聴取を行ったが、Xは反問し、あるいは返答を拒否した。そこで、Yは、Xが右調査に協力しなかったことは、「従業員は上長の指示に従い・・・・・職場の秩序を守り、・・・・・努めなければならない。」と定める就業規則の規定、また、「従業員は秩序を維持するため、会社の諸規則、命令を守らなければならない。」と定める就業規則の規定に該当するとして、Xを懲戒譴責処分に付したもの」である。
これは富士重工業事件であるが、最高裁(最判S52,12,13)は次のように判示した。
1 企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のため必要不可欠のものであり、企業はこの企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則をもって一般的に定め、あるいは具体的に労働者に指示、命令することができ、また、「企業秩序に違反する行為があった場合には、その違反行為の内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができる」ことは、当然のことといわなければならない。
2 しかしながら、企業が企業秩序違反事件について調査をすることができるということから直ちに、「労働者が、これに対応して、いつ、いかなる場合にも、当然に、企業の行う調査に協力すべき義務を負っているものと解することはできない。」けだし、労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、「企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできない」からである。
3 この観点すれば、「当該労働者が他の労働者に対する指導、監督ないし企業秩序の維持などを職責とする者であって、右調査に協力することがその職務の内容となっている場合」には、右調査に協力することは労働契約上の基本的義務である労務提供義務の履行そのものであるから、調査に協力すべき義務を負うものといわなければならないが、「右以外の場合」には、調査対象である違反行為の性質、内容、当該労働者の右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、「右調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り、右調査協力義務を負うことはない」ものと解するのが、相当である。
4 以上を前提に、右調査に協力すべきことがXの職務内容となっていたことは、原審の認定しないところであり、また、Xが右調査に協力することがXの労務提供義務の履行にとって必要かつ合理的であったとはいまだ認めがたいとして、Xには本件調査に協力すべき義務はなく、したがって、右義務のあることを前提としてされた本件懲戒処分は違法無効である、とした。
要するに、社内調査における協力義務の有無は、(1)調査協力が職務の内容となっているか、(2)調査協力が労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的といえるか、という観点から判断しなければならないということです。
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これは富士重工業事件であるが、最高裁(最判S52,12,13)は次のように判示した。
1 企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のため必要不可欠のものであり、企業はこの企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則をもって一般的に定め、あるいは具体的に労働者に指示、命令することができ、また、「企業秩序に違反する行為があった場合には、その違反行為の内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができる」ことは、当然のことといわなければならない。
2 しかしながら、企業が企業秩序違反事件について調査をすることができるということから直ちに、「労働者が、これに対応して、いつ、いかなる場合にも、当然に、企業の行う調査に協力すべき義務を負っているものと解することはできない。」けだし、労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、「企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできない」からである。
3 この観点すれば、「当該労働者が他の労働者に対する指導、監督ないし企業秩序の維持などを職責とする者であって、右調査に協力することがその職務の内容となっている場合」には、右調査に協力することは労働契約上の基本的義務である労務提供義務の履行そのものであるから、調査に協力すべき義務を負うものといわなければならないが、「右以外の場合」には、調査対象である違反行為の性質、内容、当該労働者の右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、「右調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り、右調査協力義務を負うことはない」ものと解するのが、相当である。
4 以上を前提に、右調査に協力すべきことがXの職務内容となっていたことは、原審の認定しないところであり、また、Xが右調査に協力することがXの労務提供義務の履行にとって必要かつ合理的であったとはいまだ認めがたいとして、Xには本件調査に協力すべき義務はなく、したがって、右義務のあることを前提としてされた本件懲戒処分は違法無効である、とした。
要するに、社内調査における協力義務の有無は、(1)調査協力が職務の内容となっているか、(2)調査協力が労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的といえるか、という観点から判断しなければならないということです。
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07年05月25日
休職期間満了と雇用契約の終了
事案は、「Xは、Y会社において勤務中、過去に行われたデモに参加し、公務執行妨害罪及び凶器準備集合罪に当たる行為をした嫌疑をもって逮捕され、約6ヶ月勾留され欠勤を余儀なくされた。本件欠勤について、Yは、最初の40日間についてはXが保有していた有給休暇を振り替えて休暇扱いとし、次の1ヶ月間を「事故欠勤」として扱い、その満了時翌日には事故欠勤が引き続き30日以上に及ぶときは休職させることがあると定める就業規則に基づき、Xを休職に付した。さらに、30日後翌日には、事故欠勤休職の期間を30日と定め、かつ、休職期間満了時にはその従業員は退職するものとする旨定める就業規則の規定に基づき、その旨をXに通告した。これに対し、Xは、本件休職処分は無効で、自分には雇用契約上の地位があると主張したもの」である。
これは、石川島播磨重工業事件であるが、最高裁(最判S57,10,8)は次のように判示した。
1 原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
2 (原判決)
(1) Xの、通常解雇事由がある場合に限り「事故欠勤休職」処分ができると解さなければ「事故欠勤休職」 制度が解雇の制約を免れるために利用される虞があるとの主張に対し、「仮に本件「事故欠勤休職」制度が条件付解雇の性格を帯びるとしても、解雇の制限に関する労基法19条の規定と抵触するものでないことは明らかであるのみならず、労基法20条との関係においてこれを見ても、その期間内に限り復職を可能とする1ヶ月の解雇猶予期間を設定しているのであるから、同条所定の予告解雇よりも従業員にとって有利となる場合もあり得るのであって、これをもって同条に違反するものとすることができない。」とした。
(2) Xの、本件欠勤のごとく刑事事件によって逮捕勾留されたことによる欠勤は、他の自己都合による欠勤と区別して取り扱うべきとの主張に対し、「本件「事故欠勤休職」制度は、就労意思の有無はともかく、一定期間にわたる労務の不提供それ自体をもって休職事由とするものであり、この点においては他の自己都合による欠勤と何ら区別すべき点がない。」とした。
(3) 「事故欠勤休職」処分は、その実質において解雇猶予処分に当たるとみられなくはないが、当該就業規則の規定は通常解雇に関する就業規則の規定とは別に、独立した雇用契約終了事由としてこれを規定したものであることが、その規定の文理に照らして明らかであるし、通常解雇とは別の雇用契約終了事由を就業規則上設定することが許されないとする理はない。
(4) 以上のとおり、本件「事故欠勤処分」の無効を前提とするXの本訴請求は、既に他の争点について判断するまでもなく理由がないから、これを失当として棄却する。
合理的な就業規則は、使用者にとっても、労働者にとっても、紛争解決の基準となります。10人以上の労働者がいる場合に就業規則の作成が義務付けられていますが、10人未満でも就業規則を作成しておくと、未然に労働紛争を回避することができます。
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これは、石川島播磨重工業事件であるが、最高裁(最判S57,10,8)は次のように判示した。
1 原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
2 (原判決)
(1) Xの、通常解雇事由がある場合に限り「事故欠勤休職」処分ができると解さなければ「事故欠勤休職」 制度が解雇の制約を免れるために利用される虞があるとの主張に対し、「仮に本件「事故欠勤休職」制度が条件付解雇の性格を帯びるとしても、解雇の制限に関する労基法19条の規定と抵触するものでないことは明らかであるのみならず、労基法20条との関係においてこれを見ても、その期間内に限り復職を可能とする1ヶ月の解雇猶予期間を設定しているのであるから、同条所定の予告解雇よりも従業員にとって有利となる場合もあり得るのであって、これをもって同条に違反するものとすることができない。」とした。
(2) Xの、本件欠勤のごとく刑事事件によって逮捕勾留されたことによる欠勤は、他の自己都合による欠勤と区別して取り扱うべきとの主張に対し、「本件「事故欠勤休職」制度は、就労意思の有無はともかく、一定期間にわたる労務の不提供それ自体をもって休職事由とするものであり、この点においては他の自己都合による欠勤と何ら区別すべき点がない。」とした。
(3) 「事故欠勤休職」処分は、その実質において解雇猶予処分に当たるとみられなくはないが、当該就業規則の規定は通常解雇に関する就業規則の規定とは別に、独立した雇用契約終了事由としてこれを規定したものであることが、その規定の文理に照らして明らかであるし、通常解雇とは別の雇用契約終了事由を就業規則上設定することが許されないとする理はない。
(4) 以上のとおり、本件「事故欠勤処分」の無効を前提とするXの本訴請求は、既に他の争点について判断するまでもなく理由がないから、これを失当として棄却する。
合理的な就業規則は、使用者にとっても、労働者にとっても、紛争解決の基準となります。10人以上の労働者がいる場合に就業規則の作成が義務付けられていますが、10人未満でも就業規則を作成しておくと、未然に労働紛争を回避することができます。
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