今回から暫く会社設立に関する記事とします。

 初回はまず、個人事業で行くべきか、それとも会社形態にすべきか、悩んでいる起業家の方もおられると思うので、個人事業と会社とはどのように違うのか、そのメリット・デメリットを考えてみましょう。

 1 法は、権利義務の帰属主体として自然人と法人を予定しています。ですから、個人事業の場合、契約などをしたときに生じる権利義務は、個人の事業主に帰属します。これに対して、会社の場合、たとえ一人会社であったとしても、法律行為をした代表取締役ではなく、会社自身に帰属します。この点が、両者の根本的な違いであり、メリット・デメリットも多くはここから生じているものと思われます。

 2 会社にするメリットは、よく言われるように、社会的信用の違いです。個人事業の場合、社会的信用は事業主個人の人格や資産に依存するため、概して低いと思われるのに対して、会社の場合、個人とは離れて莫大な会社自身の資産やネームヴァリュウがあるため、社会的信用が高いのです。取締役の業務執行の適正を確保するため、会社法により様々な規制を受けることも、社会的信用を引き上げる要因となっているものと思われます。

 3 また、会社にすると、事業の継続性がある点もメリットとなります。すなわち、会社では、代表取締役や株主が代わっても、会社自身には何の変わりもなく継続しますが、個人事業では、事業主が亡くなると、事業は終了します。これは、例えば、息子が事業を継いだとしても、同じことです。息子さんは新たに事業を始めることになり、税務署に事業廃止届と事業開始届を提出することになるのです。親父さんの事業を息子さんが継ぐと、社会通念上は事業が継続しているようにも思えますが、法律上は一代で終わりなのです。

 4 株式会社や新会社法で設けられた合同会社では、株主や社員は有限責任であり、会社債権者に対して、出資の価額の限度でしか責任を負わないという点も、メリットでしょう。個人事業主は、事業用財産だけでなく、自己固有の財産をもってしても、債権者に対して責任を無限に負います。

 5 会社形態にすると、税法上の利点もあります。例えば、社長は会社から給料をもらいますが、会社はこれを必要経費に計上できるだけでなく、社長自身は給与所得控除を受けることができます。個人事業では、事業主に給料を出すことはできず、したがって、必要経費に計上することもできません。また、青色申告での損失の繰越控除ができる期間についても差があります。個人事業の場合は3年であるのに対し、会社の場合は5年ですから、当初の赤字を5年間繰り越して黒字から差し引くことができるのです。

 6 会社形態にすることがすべてメリットだとは限りません。例えば、会社を作るのに他の人に出資をしてもらったら、原則として、出資の割合で利益の配分をしなければいけないでしょうし、会社の意思決定においても、彼らの意思を尊重しなければならないことになると思われます。この点、個人事業の場合は、利益はすべて事業主のものだし、意思決定も事業主が自由に決定することができます。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ。

 今回はこの辺で。

07年03月17日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
 皆さんご存知のとおり、この4月から離婚時の厚生年金(公務員等の共済年金は置いときます)の分割制度が始まります。この制度は、平成19年4月1日以後に離婚等をした場合において、当事者の合意や調停・審判・訴訟手続により按分割合を定めたときには、当事者の一方からの請求によって、「婚姻期間中」の「保険料納付記録」を分割することができる制度です。保険料納付記録とは、厚生年金保険料の算定の基礎となった標準報酬(標準報酬月額と標準賞与額)のことを指します。この標準報酬を基礎として、厚生年金の年金額を計算します。

 従来も、離婚時の財産分与の一部として、「年金額」を分割していました。しかし、一旦別れた夫から月々振り込んでもらうことの後ろめたさや、振込みが途絶えた場合のトラブルなどを回避するため、新しい制度として、「保険料納付記録」を分割することにしました。これにより、「夫」(通常分割する方は夫であることを前提とします。)に受給権が発生してからもらえるのではなく、「妻」に受給権が発生してからもらえる制度である、ことに注意を要します。したがって、従来、夫が亡くなるともらえなかったのが、4月以降は夫が亡くなっても、自分自身の権利として生涯もらえることになりますが、妻自身に年金の受給資格がないと、分割された年金をもらえないことには留意する必要があります。老齢年金をもらうためには、国民年金・厚生年金等の公的年金に原則として25年以上加入することが必要なのです。

 この年金分割制度を睨んでなのか、離婚件数が、平成14年度の約29万件をピークに、15年度約28万件、16年度約27万件、17年度約26万件と減少しています。それでも2分に一組の夫婦が離婚している計算になるようです。昨年の10月から、按分割合を定めるのに必要な分割の対象となる期間や、その期間における当事者それぞれの標準報酬総額、按分割合の範囲等の情報の提供を、住所地の社会保険事務所に請求することができることになりました。そのせいか、昨年の暮れに私が某社会保険事務所を訪れた時、年金相談の部署だけがヤケに混雑していました。

 それはさておき、私が、年金分割制度を念頭に離婚を考えている方に注意を促したいのは、(1)夫がもらう年金はすべて分割できるのではなく、「婚姻期間中」の保険料納付記録に限るということと、(2)分割で夫の年金の一部がすぐにもらえるのではなく、自分の年金受給権が発生してからもらえるということ、の2点です。(1)について言えば、婚姻期間が短いと分割される額もビビたるものとなるし、婚姻期間が長くても、例えば仮に年金額が月20万円として、夫婦であれば何とか暮らしていけるのに、分割により折半して10万円ずつということになれば、共倒れになる可能性があるのです。(2)について言えば、夫が年金をもらっていても、妻自身が受給年齢前ならばまだもらえないだけでなく、自分自身に年金の受給資格がなければ、分割された年金をもらえないことになるのです。

 離婚を決意した方に、それを思い止まりなさいという資格は私にはありませんが、年金分割制度を過度に評価しないで、慎重に考える必要があります。まずは、社会保険事務所に、情報の提供を請求してみては如何でしょう。その際、請求者自身の年金手帳(国民年金手帳)と戸籍謄本(抄本)が必要となります。

 今回はこの辺で。
07年03月16日 | Category: 年金
Posted by: marutahoumuj
07年03月12日

融資お断り

 最近、消費者金融の店舗閉鎖や人員削減が報じられていると思っていたら、今日は、「融資お断り」が急増している旨が報じられている。何と、1月には7万6千人だというから驚きである。

 この「貸し渋り」ならぬ「融資お断り」は、昨年12月13日に成立した改正貸金業規制法・改正出資法の影響を受けていることは言うまでもない。いわゆる「グレーゾーン金利」と言われていた貸金業の上限金利が、2009年中に廃止の見通しであり、現行の29,2%から利息制限法の水準に引き下げられるのである。

 このため、経営環境が厳しくなることを予測し、消費者金融業者各社とも融資の審査を厳格にして、いわゆる「不良債権」化を未然に防止しようとしているものと思われます。

 問題は、消費者金融から融資を断られた人は、どこで資金を調達するのであろうか。ヤミ金に走らないことを願うのみである。

 今回はこの辺で。

07年03月12日 | Category: つぶやき
Posted by: marutahoumuj
 民法734条は、直系血族又は三親等内の傍系血族間の婚姻を禁止している。近親婚の禁止は、その範囲に広狭があるとはいえ、各国に共通している。この「血族」には、自然血族だけでなく法定血族をも含み、前者は優生学上の配慮に基づき、後者は倫理的観念に基づくものとされている。

 また、厚生年金保険法は、遺族厚生年金を受けることができる遺族としての「配偶者」には、婚姻届をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むと規定している。

 ここにおいて、民法の近親者間の婚姻禁止規定に違反する内縁関係が、遺族厚生年金の受給権に影響を及ぼすのかどうか、という問題が生じてきます。

 この点に関して、42年間に亘って叔父と内縁関係にあった女性が、「近親婚は民法で禁止されている」との理由で不支給処分をした社会保険庁を相手取り、その処分の取消しを求めた訴訟の最高裁判決が、8日ありました。判決は、「親子のような直系血族間や兄弟のような傍系血族間では、反倫理性、反公益性が大きく受給権は認められない。このことは、三親等の傍系血族間の内縁関係も基本的には変わらない。」とした上で、「叔父と姪のような三親等間の内縁関係については、経緯や周囲の受け止め方、期間や子供の有無などに照らし、反倫理性や反公益性が著しく低いと認められるような特段の事情があれば、受給権が認められる。」として、請求を棄却した二審判決を破棄し、受給資格を認めた一審判決を支持したのです。

 最高裁の判決は、叔父と姪のような三親等間の内縁関係であれば、常に受給権が認められるとしたのではなく、反倫理性・反公益性が著しく低いと認められるような特段の事情があれば、受給権が認められるとしたことに注意を要します。

 一般に、法の解釈適用は、法的安定性と具体的妥当性との調整にあると解されていますが、概して法的安定性を重視すれば具体的妥当性に欠け、逆に具体的妥当性を重視すれば法的安定性に欠ける、という結果をもたらします。最高裁は、具体的妥当性を選択したものと思われますが、今後、社会保険庁はどのような事情があれば、受給権が認められる「特段の事情」に当たるのかという判断を迫られることになります。

 今回はこの辺で。
07年03月10日 | Category: 年金
Posted by: marutahoumuj
 最近、出生届が受理されず、戸籍がない状態になっている人からのパスポート申請が、ニュースになっています。戸籍謄本(抄本)がないため、何度申請しても、旅券の発給がなされないからです。

 その原因となっているのは、民法772条の嫡出の推定規定です。それによれば、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定」され、「婚姻成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定」されます。そのため、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定され、たとえ新しい夫との間にできた子であっても、前夫の戸籍に入ることになります。このような事例は、婚姻関係がすでに破綻しているのに、夫が離婚に応じないため、離婚協議が長引くなどした場合に起こりうるし、あるいは、離婚してから懐胎したが、早産のため300日以内に出産した場合などに起こり得ます。

 この民法772条は、戦後間もなく規定され、その趣旨は、生まれた子の父親を制度上確定し、扶養責任を負わせることにあります。つまり、生まれた子の保護が目的だったのです。ところが、この嫡出推定規定があるので、新しい夫を父親として出生届を出しても、行政側は原則として受理しないため、逆に子が、戸籍謄本や住民票が必要な行為をしようとするときに、保護されない結果になるのです。

 そのため、この規定について、国会で見直しの議論が始まっているし、安倍首相も国会答弁で、「今は、DNA鑑定などで親子関係はすぐ分かるから、実態を考慮しながら検討を進める」、という前向きの姿勢です。長勢法相も、「改正」には時間がかかるだろうから、「運用」を見直す考えを明らかにしています。

 この問題は、対応が早ければ早いほどいいので、「運用」の見直しを急ぐべきでしょう。「改正」については、私個人としては、嫡出推定の規定は残し、例外規定を設けるべきではないかと思っています。それは、嫡出推定規定の本来の趣旨を全うしながら、その弊害もなくすことができるのではないかと考えるからです。

 ともあれ、一市民としては、どのように改正されるか、改正の動向を見守っていく必要があります。

 今回はこの辺で。

07年03月09日 | Category: つぶやき
Posted by: marutahoumuj
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