07年07月04日
外国人実習生で人件費を節減してどうするの
厚生労働省は、3日までに、外国人研修・技能実習制度で実習生を受け入れている事業所に対する監督指導結果をまとめた。
06年に労働基準法や労働安全衛生法などへの違反件数は、前年比約65%増の1209件に上り、実習生が低コストの労働者として酷使されている実態が浮き彫りになった。
06年は、調査件数自体が1633件と80%増加した。これは、申告制度に対する問題意識の高まりで、法違反に関する報告が多かったためと考えられる。また、実習生の数も約4万人と3割近く増えている。
違反内容は、労働協定を結ばずに残業などをさせるケースが573件で1位、次いで、残業代の不払い・減額が499件、賃金不払いが355件と続く。
確か、アメリカの担当者だったと思うけど、日本の外国人研修・実習制度は見直すのではなく、廃止すべきであるという趣旨のことを述べていた。
諸外国に、「研修」「実習」に名を借りた労働力搾取とみられても仕方がないのではないか。
すばらしい伝統と文化を有するわが国で、このようなことが行われていることは、恥ずかしい限りである。
06年に労働基準法や労働安全衛生法などへの違反件数は、前年比約65%増の1209件に上り、実習生が低コストの労働者として酷使されている実態が浮き彫りになった。
06年は、調査件数自体が1633件と80%増加した。これは、申告制度に対する問題意識の高まりで、法違反に関する報告が多かったためと考えられる。また、実習生の数も約4万人と3割近く増えている。
違反内容は、労働協定を結ばずに残業などをさせるケースが573件で1位、次いで、残業代の不払い・減額が499件、賃金不払いが355件と続く。
確か、アメリカの担当者だったと思うけど、日本の外国人研修・実習制度は見直すのではなく、廃止すべきであるという趣旨のことを述べていた。
諸外国に、「研修」「実習」に名を借りた労働力搾取とみられても仕方がないのではないか。
すばらしい伝統と文化を有するわが国で、このようなことが行われていることは、恥ずかしい限りである。
07年07月03日
代替勤務者の確保と時季変更権の適法な行使
事案は、「Xは、テレビ中継回線の運用・保全等を行うYの職員である。昭和53年9月11日、第一整備課に勤務するXは、同月16日(土)につき年次休暇の時季指定をしたが、同課課長は業務に支障が生ずるとして時季変更権を行使した。しかし、Xは当日欠務したため、Yはこれを欠勤として扱い懲戒(戒告)処分に処するとともに、賃金カットを行った。これに対して、Xが右懲戒処分の無効確認、未払い賃金と付加金の支払、ならびに右違法な処分に対する損害賠償を求めたもの」である。 なお、第一整備課の業務運営には最低2名の人員を配置することが必要であり、この2名しか配置されていない土曜日に一般職員が年次休暇を取ったため要員不足を生じたとしても、従前の労使間交渉の経過から、週休予定者に対し勤務割を変更して出勤が命じられることはありえず、当該欠務の補充の責任は全て管理者側にあるという認識が労使間に定着していた。そこで、Yは、こうした場合に備えて、管理者2名を隔週交替で半日勤務させることによって欠務の補充に当てることとしていた。ところが、Xが時季指定をした日は、過激派集団による成田空港開港反対百日闘争の最終日が間近に迫り、無差別的破壊活動が行われる可能性があったため、Yは管理者による特別保守体制を取ることを余儀なくされており、管理者による欠務補充の方法はできない状況にあった。こうした経過から、課長は、右時季指定に対し勤務割を変更して代替勤務者を確保することは考慮しなかった。
これは、電電公社関東電気通信局事件であるが、最高裁(最判H元、7,4)は、次のように判示した。
1 時季変更権行使の要件である「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かの判断において、代替勤務者確保の難易は、その判断の一要素であって、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であるというべきである。こうした事業場において労働者が時季指定した場合に、「使用者としての通常の配慮をすれば代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしなかった結果、代替勤務者が配置されなかったときは、必要配置人員を欠くことをもって事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできない」と解するのが相当である。
2 使用者としての通常の配慮をすれば、代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況であったか否かについては、(1)当該事業場において、年次休暇の時季指定に伴う勤務割の変更が、どのような方法により、どの程度行われていたか、(2)年次休暇の時季指定に対し使用者が従前どのような対応の仕方をしてきたか、(3)当該労働者の作業の内容、性質、欠務補充要員の作業の繁閑などからみて、他の者による代替勤務が可能であったか、また、(4)当該年次休暇の時季指定が、使用者が代替勤務者を確保しうるだけの時間的余裕のある時期にされたものであるか、更には、(5)当該事業場において週休制がどのように運用されてきたかなどの諸点を考慮して判断されるべきである。「右の諸点に照らし、使用者が通常の配慮をしたとしても代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況になかったと判断しうる場合には、使用者において代替勤務者を確保するための配慮をしたとみうる何らかの具体的行為をしなかったとしても、そのことにより、使用者がした時季変更権の行使が違法となることはない。」
3 本件の事実関係においてこれをみると、Xの時季指定日に休暇を与えると最低配置人員を欠くことになること、一般職員の週休予定日に勤務割変更のうえ出勤が命じられることはおよそありえないとの認識が労使間に定着していたこと、さらには当時は異常事態にあり管理者による欠務補充も困難であったこと、などの諸点から、「使用者としての通常の配慮をしたとしても代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にはなかった」ものと判断するのが相当である。
このようにして時季変更権の行使を適法としたものであるが、年休時季指定自由の原則からすれば、当時は異常事態にあり管理者による欠務補充が困難であった点が重視されるべきで、極めて例外的なケースと解するべきである。
メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。
これは、電電公社関東電気通信局事件であるが、最高裁(最判H元、7,4)は、次のように判示した。
1 時季変更権行使の要件である「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かの判断において、代替勤務者確保の難易は、その判断の一要素であって、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であるというべきである。こうした事業場において労働者が時季指定した場合に、「使用者としての通常の配慮をすれば代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしなかった結果、代替勤務者が配置されなかったときは、必要配置人員を欠くことをもって事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできない」と解するのが相当である。
2 使用者としての通常の配慮をすれば、代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況であったか否かについては、(1)当該事業場において、年次休暇の時季指定に伴う勤務割の変更が、どのような方法により、どの程度行われていたか、(2)年次休暇の時季指定に対し使用者が従前どのような対応の仕方をしてきたか、(3)当該労働者の作業の内容、性質、欠務補充要員の作業の繁閑などからみて、他の者による代替勤務が可能であったか、また、(4)当該年次休暇の時季指定が、使用者が代替勤務者を確保しうるだけの時間的余裕のある時期にされたものであるか、更には、(5)当該事業場において週休制がどのように運用されてきたかなどの諸点を考慮して判断されるべきである。「右の諸点に照らし、使用者が通常の配慮をしたとしても代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況になかったと判断しうる場合には、使用者において代替勤務者を確保するための配慮をしたとみうる何らかの具体的行為をしなかったとしても、そのことにより、使用者がした時季変更権の行使が違法となることはない。」
3 本件の事実関係においてこれをみると、Xの時季指定日に休暇を与えると最低配置人員を欠くことになること、一般職員の週休予定日に勤務割変更のうえ出勤が命じられることはおよそありえないとの認識が労使間に定着していたこと、さらには当時は異常事態にあり管理者による欠務補充も困難であったこと、などの諸点から、「使用者としての通常の配慮をしたとしても代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にはなかった」ものと判断するのが相当である。
このようにして時季変更権の行使を適法としたものであるが、年休時季指定自由の原則からすれば、当時は異常事態にあり管理者による欠務補充が困難であった点が重視されるべきで、極めて例外的なケースと解するべきである。
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07年07月02日
組合の企業施設利用拒否は不当労働行為か
事案は、「Y会社は、都内大田区池上の本社工場のほか、川崎等に工場を有する従業員約1300人の株式会社であり、電機労連傘下の企業内組合があった。会社は、組合が毎回出す工場食堂使用許可願は拒否していたが、某日組合副執行委員長で川崎工場勤務のAは、社外での電機労連幹事会議に有給休暇をとって出席後、許可なく川崎工場食堂で開催予定の合同集会に出席するため、会社の入構拒否を無視して川崎工場に立ち入った。会社は、Aに対し、川崎工場内従業員食堂における組合集会に参加したことは服務規律違反であるから今後規律を乱すことのないよう警告する旨の文書を交付した。組合が地労委に救済申立。X地労委は、会社の食堂使用拒否を労組法7条3号違反、Aへの警告を同1号・3号違反として救済命令を発した。その取消を求めて会社が行政訴訟を提起したもの」である。
これは、池上通信機事件であるが、最高裁(最判S63,7,19)は、原審の判断を無修正で支持した。原審の判旨は次のとおりである。
1 本来企業施設は企業がその企業目的を達成するためのものであって、労働組合又は組合員であるからといって、使用者の許諾なしに当然に企業施設を利用する権限を有するものではないし、使用者において労働組合又は組合員が組合活動のため企業施設を使用するのを受忍すべき義務を負うというものではないことはいうまでもなく、このことは、当該組合がいわゆる企業内組合であって、労働組合又は組合員において企業施設を組合活動のために使用する必要性がいかに大であっても、いささかも変わるところがない。
2 このように解すべきことは、労働組合法が使用者の労働組合に対する経費援助等を不当労働行為として禁止し、ただ最小限の広さの事務所の供与等を例外的に許容しているに過ぎない(同法7条3号)ところの法の趣旨に適合する当然のことである。労働組合又は組合員による企業施設の利用関係は、この点において、企業が労働安全衛生法70条の規定に基づいて労働者の体育活動、レクリェーションその他の活動のために企業施設の使用を認める場合とは、基本的に性格を異にするものといわなければならない。
3 そして、使用者は、企業目的に適合するように従業員の企業施設の利用を職務規律として確立する一方、企業目的の達成に支障を生じさせ秩序を乱す従業員の企業施設使用行為を禁止又は制限しあるいは違反者を就業規則等違反を理由として懲戒処分に付するなどにより、企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制し排除することができるのはいうまでもないところである。
この判例は、会社の施設管理権と企業秩序を重視した判断になっています。
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これは、池上通信機事件であるが、最高裁(最判S63,7,19)は、原審の判断を無修正で支持した。原審の判旨は次のとおりである。
1 本来企業施設は企業がその企業目的を達成するためのものであって、労働組合又は組合員であるからといって、使用者の許諾なしに当然に企業施設を利用する権限を有するものではないし、使用者において労働組合又は組合員が組合活動のため企業施設を使用するのを受忍すべき義務を負うというものではないことはいうまでもなく、このことは、当該組合がいわゆる企業内組合であって、労働組合又は組合員において企業施設を組合活動のために使用する必要性がいかに大であっても、いささかも変わるところがない。
2 このように解すべきことは、労働組合法が使用者の労働組合に対する経費援助等を不当労働行為として禁止し、ただ最小限の広さの事務所の供与等を例外的に許容しているに過ぎない(同法7条3号)ところの法の趣旨に適合する当然のことである。労働組合又は組合員による企業施設の利用関係は、この点において、企業が労働安全衛生法70条の規定に基づいて労働者の体育活動、レクリェーションその他の活動のために企業施設の使用を認める場合とは、基本的に性格を異にするものといわなければならない。
3 そして、使用者は、企業目的に適合するように従業員の企業施設の利用を職務規律として確立する一方、企業目的の達成に支障を生じさせ秩序を乱す従業員の企業施設使用行為を禁止又は制限しあるいは違反者を就業規則等違反を理由として懲戒処分に付するなどにより、企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制し排除することができるのはいうまでもないところである。
この判例は、会社の施設管理権と企業秩序を重視した判断になっています。
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07年06月30日
不当労働行為における使用者の範囲
事案は、「Yは飲食店営業を目的とする会社であり、キャバレーY1を経営している。Y1で演奏する楽団の一員であったX1は、その楽団の解散に伴い、Yから新たな楽団編成・演奏の依頼を受け、8人編成のX1バンドを作り、昭和44年6月からY1でダンス音楽の演奏をしている。X2は、Yがショーの伴奏をする楽団を探しているので楽団を編成して応募するようX1に勧められ、9人編成のX2バンドを作り、同年8月からX1バンドと30分ずつ交互にY1で演奏をしている。 昭和47年2月、休日の廃止や演奏料引き上げの問題をきっかけに、X2バンドの全員とX1は補助参加人X合同労組(大阪芸能労働組合)に加入し、分会を結成した。XがYの団交拒否と支配介入につき救済を申し立てたところ、YはX1、X2と請負契約を結んでいるに過ぎず、各楽団員との間に労使関係は存在しないとして不当労働行為は成立しないと主張した。 大阪地労委は労使関係の存在を認め、中労委もこれを支持したため、Yが中労委を被告に行政訴訟を提起したもの」である。
これは、阪神観光事件であるが、最高裁(最判S62、2,26)は次のように判示した。
バンドマスターであるX1及びX2も含めて両楽団の楽団員は、グループで年間を通じYの経営するY1に必要な楽団演奏者としてその営業組織に組み入れられ、Y1の営業に合わせYの指定する時間にその包括的に指示する方法によって長年月継続的に演奏業務に従事してきたものであり、また、Yから支払われる演奏料は楽団演奏という労務の提供それ自体の対価とみられるのであって、これらの諸点に照らせば、両楽団の楽団員は対価を得てその演奏労働力をYの処分にゆだね、Yは右演奏労働力に対する一般的な指揮命令の権限を有していたものというべきである。そうすると、Yは、X1及びX2を含む両楽団の楽団員に対する関係において労働組合法7条にいう使用者に当たると解するのが相当である。
「使用者」概念は、「労働者」概念に対応するものであるが、一般的判断基準を示すことを避け、個別的具体的判断をなすにとどめている。
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バンドマスターであるX1及びX2も含めて両楽団の楽団員は、グループで年間を通じYの経営するY1に必要な楽団演奏者としてその営業組織に組み入れられ、Y1の営業に合わせYの指定する時間にその包括的に指示する方法によって長年月継続的に演奏業務に従事してきたものであり、また、Yから支払われる演奏料は楽団演奏という労務の提供それ自体の対価とみられるのであって、これらの諸点に照らせば、両楽団の楽団員は対価を得てその演奏労働力をYの処分にゆだね、Yは右演奏労働力に対する一般的な指揮命令の権限を有していたものというべきである。そうすると、Yは、X1及びX2を含む両楽団の楽団員に対する関係において労働組合法7条にいう使用者に当たると解するのが相当である。
「使用者」概念は、「労働者」概念に対応するものであるが、一般的判断基準を示すことを避け、個別的具体的判断をなすにとどめている。
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07年06月29日
ストライキ不参加労働者の賃金請求権・休業手当
事案は、「Xらは、Y航空会社の日本支社従業員であり、その従業員らで組織する労働組合に所属し、本件ストライキ当時は大阪、沖縄の各営業所に勤務していた。組合は、羽田地区におけるY社従業員と派遣会社の派遣する下請従業員との混用を職業安定法44条に違反すると主張。Y社もその要求の一部を受け入れ、一定部門における正社員化の方針などを回答したが、組合はこれを承服せず、あくまで下請従業員の直傭化を要求して、1ヵ月半にわたり東京地区の組合員をもってストライキを決行、同組合員らは羽田空港内のY社の業務用機材約70台をハンガー(格納家屋)に持ち去り、これを占拠した。その結果、Y社飛行便の大部分が欠航を余儀なくされ、大阪および沖縄営業所の従業員各12名(計24名)が就労を必要としなくなったとして休業を命じられた。 そこで、Xら19名は、主位的には休業期間中の未払い賃金の支払を、予備的には同期間中の休業手当の支払を求めて訴えを提起したもの」である。
これは、ノースウェスト航空事件であるが、最高裁(最判S62,7,17)は次のように判示した。
1 労働者の一部によるストライキが原因で、ストライキに参加しなかった労働者が労働をすることが社会観念上不能又は無価値となり、その労働義務を履行することができなくなった場合、不参加労働者が賃金請求権を有するか否かについては、当該労働者が就労の意思を有する以上、その個別の労働契約上の危険負担の問題として考察すべきである。このことは、当該労働者がストライキを行った組合に所属していて、組合意思の形成に関与し、ストライキを容認しているとしても、異なるところはない。
2 ストライキは労働者に保障された争議権の行使であって、使用者がこれに介入して制御することはできず、また、団体交渉において組合側にいかなる回答を与え、どの程度譲歩するかは使用者の自由であるから、団体交渉の決裂の結果ストライキに突入しても、そのことは、一般に使用者に帰責さるべきものということはできない。したがって、労働者の一部によるストライキが原因でストライキ不参加労働者の労働義務の履行が不能となった場合は、使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもってことさらストライキを行わしめたなどの特別の事情がない限り、右ストライキは民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」には当たらず、当該不参加労働者は賃金請求権を失うと解するのが相当である。
3 休業手当の制度は、・・・・・・・・労働者の生活保障という観点から設けられたものではあるが、賃金の全額においてその保障をするものではなく、しかも、その支払義務の有無を使用者の帰責事由の存否にかからしめていることからみて、・・・・・・・・・・使用者の立場をも考慮すべきものとしていることは明らかである。そうすると、労基法26条の「使用者の責に帰すべき事由」の解釈適用に当たってはいかなる事由による休業の場合に労働者の生活保障のために使用者に(平均賃金の6割)の限度での負担を要求するのが社会的に正当とされるかという考量を必要とするといわなければならない。このようにみると、右の「使用者の責に帰すべき事由」とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであって、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するのが相当である。
本件では、ストライキは組合が自らの主体的判断とその責任において行ったものであるとして、使用者の帰責性を認めず、賃金も休業手当も否定されています。ただ、判決は、賃金請求権と休業手当請求権とは競合しうるとの前提に立っていることに注意を要します。
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これは、ノースウェスト航空事件であるが、最高裁(最判S62,7,17)は次のように判示した。
1 労働者の一部によるストライキが原因で、ストライキに参加しなかった労働者が労働をすることが社会観念上不能又は無価値となり、その労働義務を履行することができなくなった場合、不参加労働者が賃金請求権を有するか否かについては、当該労働者が就労の意思を有する以上、その個別の労働契約上の危険負担の問題として考察すべきである。このことは、当該労働者がストライキを行った組合に所属していて、組合意思の形成に関与し、ストライキを容認しているとしても、異なるところはない。
2 ストライキは労働者に保障された争議権の行使であって、使用者がこれに介入して制御することはできず、また、団体交渉において組合側にいかなる回答を与え、どの程度譲歩するかは使用者の自由であるから、団体交渉の決裂の結果ストライキに突入しても、そのことは、一般に使用者に帰責さるべきものということはできない。したがって、労働者の一部によるストライキが原因でストライキ不参加労働者の労働義務の履行が不能となった場合は、使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもってことさらストライキを行わしめたなどの特別の事情がない限り、右ストライキは民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」には当たらず、当該不参加労働者は賃金請求権を失うと解するのが相当である。
3 休業手当の制度は、・・・・・・・・労働者の生活保障という観点から設けられたものではあるが、賃金の全額においてその保障をするものではなく、しかも、その支払義務の有無を使用者の帰責事由の存否にかからしめていることからみて、・・・・・・・・・・使用者の立場をも考慮すべきものとしていることは明らかである。そうすると、労基法26条の「使用者の責に帰すべき事由」の解釈適用に当たってはいかなる事由による休業の場合に労働者の生活保障のために使用者に(平均賃金の6割)の限度での負担を要求するのが社会的に正当とされるかという考量を必要とするといわなければならない。このようにみると、右の「使用者の責に帰すべき事由」とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであって、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するのが相当である。
本件では、ストライキは組合が自らの主体的判断とその責任において行ったものであるとして、使用者の帰責性を認めず、賃金も休業手当も否定されています。ただ、判決は、賃金請求権と休業手当請求権とは競合しうるとの前提に立っていることに注意を要します。
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