事案は、「郵政省と全逓との労働協約によって、計画年休制度が定められ、前年度及び前々年度で未取得の年休について、年度当初に労使間で話合い労働者の希望の月日を所属長が決定することになっている。Xらは高知郵便局集配課(局長Y)に勤務し、昭和46年度当初において、X1は6月26日、X2は6月24日が計画休暇付与予定日と決定されたが、集配課長はX1に対しては6月24日に、X2に対しては23日にそれぞれ休暇予定日を変更する旨通知した。しかし、X1とX2はいずれも予定日に欠勤したため、Yは2名を戒告処分としたもの」である。

 これは、高知郵便局事件であるが、最高裁(最判S58,9,30)は、時季変更権の行使を適法とし、処分も有効とした原判決を破棄し、差戻した。

1 年休と協約による協定年休について                                                      上告人ら及び被上告人の双方共に、休暇付与計画の変更が許されるのは、右計画を実施することが法39条3項但書き(現同条4項但書き)にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られるとの解釈を採っていることが明らかである。また、本件労働協約等は、法内休暇、協定休暇の区別を問わず、休暇を法39条所定の基準により一律に取り扱うこととしているものと解するのが相当である。

2 時季変更権行使の時期について                                             「年度の途中において時季変更権を行使し、右計画の休暇付与予定日を変更することができるのは、計画決定時においては予測できなかった事態発生の可能性が生じた場合に限られる。」「その場合においても、時季変更により職員の被る不利益を最小限にとどめるため、所属長は、右事態発生の予測が可能になってから合理的期間内に時季変更権を行使しなければならず、不当に遅延した時季変更権の行使が許されないものと解する。」

3 本件の休暇変更は、6月予定日の直前になされており、また、変更の理由も、同月27日の参議院議員選挙投票日を控えての配達郵便物数が平常より増加することが見込まれることを理由としているが、もしこの接した時期になって初めて右事態発生の予測が可能となったものであり、本件休暇付与予定日の変更が不当に遅延してなされたものでないというのであれば、右変更をもって有効なものと認めることができる。しかしながら、原審は、高知郵便局集配課においては年度途中の予測できない病気休暇や職員の希望による計画休暇の変更が従来少なくなく、また、郵便集配業務の特殊性として郵便物数を前もって把握することが困難であるという一般的事情に触れるのみで、右事態の発生がいつの時点において予測可能となったかについて何ら確定することなく、殊に参議院議員選挙投票日が相当以前から明らかになっているものであることとの関係について説明せず、本件計画休暇付与予定日の変更を有効としているのであって、原判決にはこの点において審理不尽、理由不備の違法があるといわざるをえない。

 この判例は、時季変更権を行使できる場合とその行使時期について厳格に解しており、年休の権利性を強化するものであろう。

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07年06月15日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「ホテルオークラの従業員で組織する労働組合は、賃上げ闘争の一環として、就業時間中にリボンを着用するいわゆるリボン闘争を2回にわたり実施し、各回とも当日就業した従業員の一部の者が参加した。胸に着用したリボンは、布地により紅白の花もしくは桃の花をあしらいそこから幅2,5センチメートル、長さ6〜11センチメートルの白布地を垂らしたもので、その白布地の部分に「要求貫徹」あるいはそれに加えて「ホテル労連」の文字が黒色もしくは朱色スタンプで印されていた。会社は、リボン闘争を実施しないよう警告したが組合がそれを無視して実施したので、組合幹部5人の幹部責任を問い、減給及び譴責の懲戒処分を行った。 処分を受けた組合幹部が懲戒処分は不当労働行為に該当するとして救済の申立を行ったところ、都労委は救済を認容し、処分の取消と減給にかかる賃金相当分の支払を命じた。そこで、会社は、命令の取消を求める行政訴訟を起こしたもの」である。

 これは、大成観光事件であるが、最高裁(最判S57,4,13)は、原審の判断を是認し、上告を棄却した。

 第1審の東京地裁は、「一般にリボン闘争は、組合活動の面においては経済的公正を欠き誠実に労務に服すべき労働者の義務に違背するが故に、また争議行為の面においては労働者に心理的二重構造をもたらし、また、使用者はこのような戦術に対抗しうる争議手段をもたないが故に、違法であること、また、ホテル業におけるリボン闘争は、業務の正常な運営を阻害する意味合いが強いので、特別の違法性を有することを理由として、本件懲戒処分は不当労働行為に該当しないものと判断し、救済命令を取消した。」

 第2審の東京高裁は、一部理由を修正したほか第1審判決を支持し、控訴を棄却した。これに対して、都労委が上告したものである。

 この最高裁の判決は、およそリボン闘争はすべて正当性を欠くとの立場に立つのか、それとも本件事案のようなホテル業におけるリボン闘争に限って正当性を否定する趣旨なのか、明確でないことに注意する必要があります。

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07年06月14日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「Xらは、Y(三菱重工長崎造船所)の従業員で、訴外三菱重工長崎造船所労働組合(以下長船労組)の組合員である。長船労組は昭和47年7月、8月ストライキを実施した。このため、Yは賃金支払日の各20日にストライキ期間中の時間割賃金をカットし、家族手当も例外としなかった。この家族手当は、Yの就業規則(社員賃金規則)に基づき従業員の扶養家族数に応じて支払われていたものである。Xらは、(1)家族手当は労働者の仕事量、勤務時間に関係なく支払われる生活補助的賃金であり、(2)また、家族手当を時間外労働等の割増賃金算定の基礎にしていない労基法37条の法意からも、右手当を時間割してストライキ期間相当額をカットすることは違法であると主張し、カット分の支払いを請求したもの」である。

 これは、三菱重工長崎造船所事件であるが、最高裁(最判S56,9,18)は、Xらの請求を認容した原判決を破棄し、次のように判示した。

 長崎造船所においては、ストライキの場合における家族手当の削減が昭和23年頃から昭和44年10月までは就業規則(賃金規則)の規定に基づいて実施されており、その取扱いは、同年11月賃金規則から右規定が削除されてからも、細部取扱のうちに定められ、Y従業員の過半数で組織された三菱重工労働組合の意見を徴しており、その後も同様の取扱いが引続き異議なく行われてきたというのであるから、ストライキの場合における家族手当の削減は、YとXらの所属する長船労組との間の労働慣行となっていたものと推認することができるというべきである。また、右労働慣行は、家族手当を割増賃金の基礎となる賃金に算入しないと定めた労基法37条2項及び本件賃金規則25条の趣旨に照らして著しく不合理であると認めることもできない。

 家族手当については、就業規則ではなく労働協約等に別段の定めがあるとか、その旨の労働慣行がある場合のほかは例外的取扱は許されないとする下級審の判決例があることには、注意を要します。

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07年06月13日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「Xらは、一般放送事業を営むY会社の従業員であり、訴外AはXらにより組織された労働組合である。Aは、Yに対し、賃上げ等を含む春闘要求を行ったが、決着をみないまま、3月に入って新たにYは、新番組編成に伴うテレビ放送時間の延長を計画し、これに伴う人事異動計画を組合に提示した。これらの問題につき、YとAとは30数回にわたって団交を行ったが、妥結に至らなかった。この間、Aは時限ストをはじめとして十数波にわたるストライキをした他、現に人事異動が実施された4月下旬以降は新勤務拒否ないし配転拒否闘争、さらには法定外休日出勤拒否闘争を行った。しかし、これらの闘争によって、具体的な放送業務の障害又は放送事故は発生せず、また、このような事故等の発生する具体的な緊迫した危険性もなかった。ところが、Yは、5月6日、Aに対しロックアウトに入る旨通告して、本社社屋の重要部分をバリケードし、有刺鉄線で囲んでXら組合員の立入りを禁止し、以後ロックアウトが解除された7月4日まで非組合員を使って放送業務を遂行した。この間、何度か団交がもたれたが、不調に終わり、Aが地労委に斡旋を申請し、7月4日、労使双方が地労委の提示した斡旋案を受諾し、協定が成立したことによってロックアウトが解除された。本件は、このロックアウト期間中の賃金請求権の存否が争われたもの」である。

 これは、山口放送事件であるが、最高裁(最判S55,4,11)は、原審の判断を是認して、次のように判示した。

1 思うに、「個々の具体的な労働争議の場において、労働者の争議行為により使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合には、「衡平の原則」に照らし、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められる限りにおいては、使用者の争議行為も正当なものとして是認される」と解すべきであり、使用者のロックアウトが正当な争議行為として是認されるかどうかも、右に述べたところに従い、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、「衡平の見地」から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められるかどうかによってこれを決すべく、「このような相当性を認めうる場合には、使用者は、正当な争議行為をしたものとして、右ロックアウト期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務を免れるものというべきである。」

2 Yは、本社社屋2階の組合事務所とこれに通ずる通路を除いて、右社屋の重要部分をバリケード及び有刺鉄線で囲んでXら組合員の立入りを禁止し、会社としてはAがY側の提案を大筋において受け入れない限り本件ロックアウトを解除する考えがなかった、というのであるから、本件においては、組合事務所及びこれに通ずる通路を除く本社社屋全体について一体不可分のロックアウトがされたものというべきである。したがって、本件ロックアウトの一部を部分ロックアウトとして可分的にその効力を判断することは許されないというべきである。

 このようにして、本件ロックアウトを違法と判断し、Xらの請求を認めたものであるが、ロックアウトの正当性を当該労働争議における個々の具体的諸事情に照らしつつ、「衡平の見地」から総合的に判断することに注意を要します。

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07年06月12日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
 事案は、「山陽電気軌道株式会社では、私鉄総連傘下の私鉄中国地方労働組合山陽電軌支部(以下「支部組合」という)と、会社に極めて協力的な山陽電軌労働組合(以下「山労」という)とがあったが、昭和36年の春闘にあたり、支部組合は賃上げ等を要求して団体交渉を会社側と行ったが、決裂に到った。かくして、支部組合は、無期限全面ストに突入することを決め、その実効を期すため、車両を会社車庫に格納してピケをはった。一方、山労組合員の就労を前提に争議中も運行業務を継続しようと企図した会社は、山労執行部とも十分協議の上、その組合員を中心に「移動隊」を編成するなど事前に周到な準備を行い、所定の各地に車両を分散して保全看守する対抗措置をとった。そこで、支部組合員らは、(1)会社が分散目的で取引先の整備工場や系列下の自動車学校に預託していたバスを搬出・確保するため、多数の威力を示して、看守者の意思に反して当該建造物内に立入ったこと(建造物侵入)、(2)会社の指示により山労組合員が分散地へ回送中のバス等を、多数人の暴力を伴う威力を用いて奪取し、支部組合側の支配下においたこと(威力業務妨害)、(3)支部組合員らと山労組合員らとが衝突した際に、殴打、蹴りつける等の暴力の行使に及んだこと(暴行・傷害)、(4)衝突の規制にあたった警察官に暴行を加え、その逮捕行為を妨害したこと(公務執行妨害)について、起訴されたもの」である。

 この事件に関して、最高裁(最決S53、11,15)は次のように判示した。

1 「使用者は、労働者側がストライキを行っている期間中であっても、操業を継続することができる」ことは、当裁判所の判例の趣旨とするところである・・・・・・・・・。使用者は、労働者側の正当な争議行為によって業務の正常な運営が阻害されることは受忍しなければならないが、「ストライキ中であっても業務の遂行自体を停止しなければならないものではなく、操業阻止を目的とする労働者側の争議手段に対しては操業を継続するために必要とする対抗措置をとることができる」と解すべきであり、このように解しても所論の指摘するいわゆる労使対等の原則に違背するものではない。

2 したがって、「使用者が操業を継続するために必要とする業務は、それが労働者側の争議手段に対する対抗措置として行われたものであるからといって、威力業務妨害罪によって保護されるべき業務としての性格を失うものではない」というべきである。

 争議行為の限界を示したものであるが、争議権の本質と絡んで難しい問題である。このような事案について、常に威力業務妨害罪が成立するとするならば、憲法が争議権を保障した意義を没却することにもなりかねないであろう。

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07年06月11日 | Category: 労働関係
Posted by: marutahoumuj
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