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合同労組がやって来たら・・・・・その対策を考える その1 (H22.4月号の記事)

 近年、労使紛争が多発しています。それもかつてのような集団的労使紛争ではなく、個別労使紛争が激増しているのです。会社に不満をもった労働者が第三者を通じて問題解決を図ろうとすることがあり、労基署への申告を始め、労働局紛争調整委員会へのあっせん申立て、簡裁への訴え、弁護士への依頼やその延長として労働審判や地裁への訴えなどバリエーションは多数で、中には親族だの友人だの部外者が参加してくることもあります。そんな中で、企業にとって一番厄介なのが、合同労組へ駆け込むケースでしょう。

 合同労組とは何か?一言で言えば労働法で守られた、得体の知れない部外者集団?です。勿論常識的に話し合える組合もありますが、非常に戦闘的な態様で臨んで来ることがあります。例えば、過度な団体交渉での条件闘争や、集団による威嚇、吊るし上げ、街宣車による会社への糾弾やビラ撒き、ストライキや故意に業務を滞らせる怠業など、様々です。また街宣やビラ撒きは取引先や役員の自宅近くでも行われることもあり、取引の安全や私生活の平穏すら犯されることがあります。

 先ほど労働法で守られていると言いましたが、具体的には主に次の3点です。
1.刑事免責:正当な組合活動に対しては刑事罰を科すことはできない
2.民事免責:正当な組合活動を行ったことについて損害賠償を請求することができない
3.不当労働行為による保護:組合員を正当な組合活動によって不利益取扱い、団体交渉の拒否、支配介入などしてはならない

 
 通常のケースではある日突然、「組合結成通知書」「要求書」「団体交渉申入書」なるものが送られて来たり、直接持参したりします。場合によっては、加入した組合だけでなくさらにその上部団体役員と同伴で来ることもあります。経営者の中には従業員でもない者または退職者との団交を疑問視する方もおられるでしょうが、これは例外を除いて基本的に拒否できません。しかし団交の最初の対応が非常に重要で、不利な慣行を定着させると途中でそれを変えるのは困難です。そこでここでは、最初か肝心として、以下ポイントを解説します。

1 組合員名簿の提出または開示要求

 合同労組の場合、社内組合と違い匿名性が高く、時には誰が加入しているのか全く分からないケースがあります。その場合、相手が正当な交渉権限者かどうか判断ができません。少なくとも当該企業の従業員や退職者がいることを確認します。但し、その確認ができれば名簿の提出強要はできません。

2 人数の制限

 労働組合法は力の強い使用者に対して弱い労働者が団結して労働条件の維持向上のために団体交渉する権利を認めています。しかしこれが中小企業と合同労組の関係では、労働法のことが分からない少数の経営陣と、多数のプロ組合員という、逆に不均衡な構図が生ずることがあります。出席者は双方4名までなど、平等な条件で話し合いをするルールを取り決めすること自体に問題はありません。また書記をおく場合もその人数の範囲内で置くようにします。

3 時間

 あまりにもロングラン交渉は意味がありません。業務にも支障が出ます。1回の交渉で2時間以内とか20時以降は行わないなどの取り決めも必要です。

4 場所

 ロングラン交渉にならないためにも、公共施設などの施設を使用して交渉するのも一考です。何故なら貸切時間が制約され、自動的にその時間で席を立てるからです。また細かいことですが、先に現地に到着し、入り口に近い席を確保する方がいいでしょう。外の施設を使うのは、部外者に会社施設内へ自由に立ち入らせることや、逆に会社が先方にお伺いに行くような慣行も避けたいからです。会場費は安いものです。交互に負担できればいいですが、それくらい会社が持つのも仕方がないでしょう。

5 記録の確認方法

 通常、話しながら記録するのは無理ですし、言った言わないの水掛論を防ぐためにも書記役を置きますが、相手方は断りもなく録音していると考えた方がいいでしょう。録音するなら双方で、しないならしないと取り決めするのも自由です。


 そして団体交渉に臨む訳ですが、交渉に応じることは拒否できないとしても、要求事項に応じなければならない義務はありません。真摯に話し合って、それでもゼロ回答ということは有り得ます。また最初は熱くならず、相手方の言い分をまず聞くことが重要でしょう。何故なら要求書に書かれていることと、実際の要求が違うことがあるからです。交渉が終わるとその場で議事内容にサインを求めてくることがありますが、これは慎重になるべきです。なぜなら標題が議事録、覚書その他どのようであれ、双方が署名または記名押印したものは労働協約という、強烈な権能を持つ文書になるからです。一旦持ち帰って、検討するくらいの慎重さが求められます。

 交渉は生き物ですから、これらを全て思い通りに充足するのは困難かも知れませんが、頭に銘記しておくべき事柄です。

 続きは次回(4月末)にお話いたします。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
10年04月14日 | Category: General
Posted by: nishimura
このままでは若者の雇用が破壊される 高齢者は賃金シェアを (H22.3月号の記事)
~60歳以上の従業員の皆様へ 賃金シェアリングにご協力ください~

 今回のテーマはは、60歳以上の方々(役員を含む)の給与を減額させてもらって、その原資を若年者に還元しようという、というお話です。どうして今まで貢献してきた高齢者の賃金を見直す必要があるのでしょうか。

 国税庁が出している「民間給与の実態調査」という統計があます(http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2008/minkan.htm)。これは年末調整後の年収データを集計したもので、賞与や残業代も含んだ年収総額(交通費は除く)の相場を読み取ることができます。この20年版によると、「100万円から500万円未満」で生活している方が全体の61.2%を占め、一番多い年収帯は16.9%を占める「300万円から400万円未満」の方々です。この統計の驚くべきことは、年収300万円にも満たない層が約40%もいるのです。この現象は企業規模が小さくなるほど顕著です。仮に年収300万円とすると、単純に月額25万円、賞与が1か月分とすると月額23万円です。果たして余裕のある生活が想像できるでしょうか。年齢構成はよく分かりませんが、若年者が相当の割合を占めていることは容易に推測できます。

 また昨年12月、厚生労働省から「平成21年度賃金引上げ等の実態に関する調査結果の概況」が発表されました。(http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/09/index.html)。
 その中で1人平均の賃金改定額及び改定率の推移という統計があります。平成21年の改定額平均は3,083円、改定率平均は1.1%、100人から300人未満の企業だけでみると額は1,846円、率は0.8%です。100人未満は分かりませんが、推して知るべきでしょう。また同じく厚労省の「賃金構造基本統計調査」によると、平成21年の高卒初任給平均は157,800円です(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/53-21.html)。これはどういうことを意味するのでしょうか。

 つまり18歳の子を158,000円で雇い、世間並みに昇給しても年間1,740円(1.1%)の昇給で、多少色を付けたとしても10年で2万円程度しか上がらないことを意味します。10年後といえば28歳、そろそろ結婚も考え、子供も作り、住宅ローンも組みたい、そんな年です。それが20万円にも満たない給与。まさにデフレ下のワーキングプア族です。勿論、これは机上論であり、実際には経営者が若年者にはこれ以上の配分をしていると思われますが、それでも15年前までに行われていた1年1万円以上、率で5%以上の昇給などこれから先は考えられません。こと平成11年以降、改定率は2%に到達したことがなく、改定額で5,000円を超えたことがありません。ということはこれからの若者は、現在の中高齢者に見られる40万円以上の給与などついぞありえないことを意味します。

 これからの企業、ひいては将来の日本を支える人たちの給与がこんな状態では、本当にかわいそうです。年金制度においても現行では60歳から厚生年金の受給権が発生しますが、これも徐々に先送りされてゆき、具体的には昭和36年4月2日以降生まれの男性は、そもそも老齢年金は65歳からでないと、受給権自体が発生しません(女性は41年4月2日以降の方)。また現在は60歳以降に給与が減額になると、在職中でも雇用保険から従業員本人に給付金が受けられますが、将来はこれも削減されてゆくでしょう。税金も社会保険料もどんどん上がって行きます。しかもこれからはパイが縮小する時代です。限られた原資の中で賃金をやりくりする必要があります。そこでどうしても相対的に恵まれている60歳以上に方には、譲るべきところは譲っていただく必要があると思うのです。

 例えば60歳時に446,700円の給与、年金受給権が1,391,200円の方がいたとします。他にもいくつか前提条件があるのですが、難しい説明は割愛します。この方の給与を269,000円まで、つまり約60%まで引き下げたとします。でも手取りは60%になりません。手取りは80%で収まるのです。金額にして月額約33,600円のダウンで済みます。しかし会社から見ると法定福利費を含めて月額約202,000円もの削減になります。1名分の初任給が出てくるのです。大義名分のため、何とかこの痛みを甘受していただけないでしょうか。そして頂いたこの大切な原資を若年者にシェアしてゆくのです。そうしないと雇用が壊れてしまいます。
皆様、どのように思われますか。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年04月14日 | Category: General
Posted by: nishimura
司法書士がサラ金の次に企業の残業代をターゲットにしている (H22.2月号の記事)
~今年は未払い残業代請求が増加するリスクが~

 皆様も消費者金融に対する過払い金請求という言葉を聞かれたことがあると思います。ここ近年、弁護士や司法書士などの訴訟代理権のある国家資格者が、テレビやラジオ、電車広告などにおいてしきりに宣伝を行っているのはご存知の方も多いと思います。これはいわゆるサラ金業者が、従来、グレーゾーン金利といわれる高い金利において消費者に貸付け、強引な取立てが社会問題化した中で、最高裁によりこれが否定されたことにより、払い過ぎた金利を取り戻すことをサポートするものです。語弊を恐れずに言いますと、儲け口の対象となった感も否めません。大手の消費者金融の中には経営難に陥り、法的手続きを余儀なくされたところもあります。かといってサラ金業者に同情するつもりもありません。
 ただこの過払い金請求バブルは、そろそろ収束する見込みであり、弁護士や司法書士が次の業務ターゲットにしているのが企業の「サービス残業」なのです。特に司法書士は昨今の司法制度改革の中で、簡易裁判所における訴額140万円までの訴訟代理権を獲得しており、比較的弁護士が業とするには手を付けにくい金額ですので、この範囲で司法書士が未払い残業代を従業員に代わって企業へ請求してくることが予想されます。現実に関東においてはそういった宣伝が既に始まっているようです。早晩、関西においてもサラ金問題と同じように、電車広告などに頻繁に登場することは時間の問題でしょう。
 もちろん経営者が従業員を使用する最低限のモラルとして、きちんと払うべきものは払うのが当然です。企業もやることはやり、従業員にもやることをやってもらう。これが対等な契約関係であることは論を待たないわけですが、しかし現実的に時間外手当を法的にぎりぎりやると、企業にとって困難な問題が多々あることも事実です。従って、この紙面では如何に法の範囲内で、このリスクを回避してゆくか、ということに絞って、いくつかの対策を考えてみたいと思います。
 

1.まず無駄な残業を出さないことが肝要

 いままでも時間外労働の削減に関しては、多くの紙面を割いてきましたので、その具体的方法は省略しますが、その方法の一つとして時間外労働を事前届出制にして事前規制するのは、一定の効果が期待できます。まずそもそも無駄な残業を出さないことです。

2.外勤者はみなし労働時間制

 常態として事業場外で勤務する従業員には、「みなし労働時間制」を適正に運用します。みなし労働時間制とは現実に労働した時間にかかわりなく、そのみなした時間を労働時間として擬制するものです。適正な運用とは、①時間を把握できる管理者とグループ活動をしていない ②外勤といえども携帯やGPSなどで常に時間や居場所を管理されたり指示命令を受けたりしていない ③訪問先や時間があらかじめ指示され、その予定通りに行動を行うものでないことです。つまり一旦外へ出ればある程度の自由裁量が認められている場合は、この制度を適用できます。また私見ですが、あきらかに所定労働時間内ではこなせ得ない業務量を与えているとか、終業時刻後に特段の指示命令を与えていれば、否定される可能性はあると思います。そのようでなければ、みなし労働時間制のもとではそもそも残業代は発生しません。ただ無用なトラブル回避のためには、そのような制度であることの納得性(合意)が必要かと思います。


3.固定残業代

 しかしそうは言っても、現実的に夜遅くなることもあり、一切残業代が付かないというのは人情的に納得できないこともあるでしょう。そんな時、営業手当や業務手当など名称は問いませんが、とにかく定額で支給する手当に時間外手当の意味を念のために、付与しておきます。例えば、「第○条 営業手当 営業手当は営業職に従事する従業員に対して、臨時の時間外手当相当額として定額にて支給する」といった具合です。  
 また外勤者以外の方でも、固定残業代の支払い方自体がいけないことはありませんので、計算の簡略化のために固定で支給することは可能です。但しこの場合は、実際の額と固定額との差額支給の問題は残ります。

4.内込み残業代

 内勤者は時間に比例して支給すべきですが、時間外手当をどうしても超過時間に応じて支給できない場合は、現行給与体系を組み替えて、その中に一定の時間分の時間外手当を盛り込む方法もあります。事例を下記に記載します。

 前提条件 月給 45万円  1ヶ月平均160時間  込みにしたい残業時間数を45時間/月 とすると

「記載例」
  基本給45万円(基本部分 332,948円、時間外45時間分117,052円)

上記の計算式
①45時間×1.25=56.25時間
②45万円÷(160時間+56.25時間)=@2080.92
③@2080.92×160時間=332,948
④@2080.92×1.25×45時間=117,052円    ③+④=45万円

 ただしこの方法を取る場合は、今おられる従業員との個別同意が必要であると考えます。何故なら上記の例ですと、本来45万円に加算してもらえるはずのところを、45時間以上残業しないともらえないことになるからで、不利益な変更と言えるからです。導入には慎重な手続きが求められます。


5.管理監督者の適正な運用

 いわゆる管理監督者には深夜業を除いて、残業手当や休日出勤手当はもとからありません。ただ管理職=管理監督者ではなく、適切な運用をした場合のことです。適切な運用とは、①経営者と一体的な立場にあること(一定の経営への参画や人事権の付与など)、②役職手当、基本給、賞与査定などにおいて、それ相応の待遇が与えられていること(私見では直近下位の者が時間外労働を行っても逆転しないだけの給与水準を確保する必要があると考えます)、③労働時間が一般社員と同様に厳格に規制管理されていないこと(私見ではタイムカードよりは出勤簿による自主申告管理、微細な遅刻早退で減給しない。しかし何も役員出勤を認めないといけないことはない)。


6.毎年きちんと変形労働時間制の導入を

 完全週休2日制か1日所定6時間40分の会社でない限り、週40時間制を達成することができません。つまりほとんどの会社が変形労働時間制といって、1年間とか一定の期間を平均して週40時間以内に収める必要があることになります。そしてこの協定をしていないと出るところへ出れば、土曜日など週6日目の出勤日が、その日自体すべてを時間外労働として計算しなければならない不都合が生じます。例えば1日7時間45分の会社は年間96日以上の休日を付与することで、週40時間制は達成できるのですが、完全週休2日にはなりません。必ず週6日働く週が出てきます。その場合、この協定がないと、もともと出勤日であるはずの土曜日が法的には時間外労働になってしまうのです。

     日 月 火 水 木 金 土    
1週目  休 出 出 出 出 出 休    
2週目  休 出 出 出 出 出 出

※このような休日カレンダーを組んだ場合、本来2週目の土曜日出勤は手当が要らないはずだが、協定がないとこの日全部が時間外労働となってしまう。

これらに関しては、非常にデリケートな問題をはらんでいます。検討されるときはご相談ください。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年04月14日 | Category: General
Posted by: nishimura
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