14年09月30日
定年退職者の継続雇用は、必ず有期雇用契約書を交わそう
●定年退職者の継続雇用は、必ず有期雇用契約書を交わそう
~でないと何かと不都合が起こる・・・・・~
中小企業の労務管理の中で足りないものの一つに、文書化がおざなりになる、ということがあります。雇用契約書もその一つです。その雇用契約書の中でも更におざなりになってしまうのが、定年退職者を継続雇用する場面です。賃金が減額されることが多いとはいえ、定年後、特別な手続きもなく1日もおかずに元の職場で元の仕事を普通にこなしている状態ですので、再雇用しているという感覚がないのも分からないではありません。
しかし法的には定年前の雇用と定年後の雇用は全く別物※であり、以下に述べるように、実務上も再雇用後の労務管理で雇用契約書がないと、色々不都合が生ずることがありますので、是非、雇用契約書を締結することをお勧め致します。
※別物とは、簡単に言うと、定年退職によって今までの雇用契約は一旦リセットされ、新たな雇用契約が始まるということ。
=不都合その1=
「雇用契約が青天井になってまう」
60歳定年でも65歳定年でも、とにかく定年後の再雇用は必ず有期雇用契約にすべきです。できれば1年以内が望ましいでしょう。定年を超えて期間を区切らずに漫然と雇用していると、それは定年という自動退職の仕組みが適用されない、いわば青天井で死ぬまで雇います!と、言っているようなもので、従業員から自発的に退職の申し出がない限り、解雇するか、少なくとも退職勧奨しなければならないことになってしまいます。必ず期間に終わりがある仕組みを導入しましょう。
=不都合その2=
「労働条件の見直しがしにくい」
通常、定年再雇用者の労働条件は、定年前と同一か、または賃金だけを削減しその他は同じというケースが多いように思います。ただ、年を経るにつれ、どうしても健康状態や能動能率の減退を考慮せざるを得なくなることがあり、また経営状態も鑑みながら更新の有無を判断していかなければなりません。
有期雇用契約書で更新手続きを「イベント化」することによって、少なくとも1年に1回は次期の更新の有無を含めた労働条件の見直しがし易くなります。漫然と継続していると、機械的に話し合いが出来る「イベント」がないため、見直しに苦慮することがあります。
=不都合その3=
「雇用保険の離職事由で困る」
定年再雇用者が実際に退職となったとき、有期雇用契約書がないと、雇用保険の離職事由をどうするかで苦慮することがあります。大概の場合、定年後の再雇用おける雇用保険加入資格は、定年前からそのまま継続していることが多いため、加入期間は相当長期に渉ることがあり、また雇用保険は離職事由により受給資格が大きく左右される仕組みになっているため、どのような離職事由で離職票を発行するかは大事な問題なのです。
しかし有期雇用契約書がないと会社都合か自己都合の両極端な事由しか見出せず、期間満了による退職という離職事由が使えません。期間満了ですと、解雇でなはないため解雇に関する様々な法的制約を受けず、また助成金が不支給になるデメリットも回避できます。従業員からみても自己都合だと3ヶ月の給付制限がかかるところ、期間満了ではその制限はかからず、すぐに失業認定されます。
=不都合その4=
「ミッションが伝わりにくい」
定年再雇用者には黙々と今までの仕事を継続してもらうのではなく、後継者の育成、技能伝承という重要なミッションがあるはずです。それを口頭で伝えることは当然としても、雇用契約書を改めて交わし、その中にそういった特別なミッションをきちんと書き込み、今までとは違うということを意識の中に埋め込んでもらうためにも重要です。不都合その2でも言えることですが、契約書を交わすというイベントがあると、普段改まって言いにくいこともフォーマルな場を作り出せるため、比較的言い易くなるものです。
当事務所では、様々な雇用契約書のサンプルをご提示しております。どうぞご活用いただきますと共に、担当者へお気軽にご相談ください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
~でないと何かと不都合が起こる・・・・・~
中小企業の労務管理の中で足りないものの一つに、文書化がおざなりになる、ということがあります。雇用契約書もその一つです。その雇用契約書の中でも更におざなりになってしまうのが、定年退職者を継続雇用する場面です。賃金が減額されることが多いとはいえ、定年後、特別な手続きもなく1日もおかずに元の職場で元の仕事を普通にこなしている状態ですので、再雇用しているという感覚がないのも分からないではありません。
しかし法的には定年前の雇用と定年後の雇用は全く別物※であり、以下に述べるように、実務上も再雇用後の労務管理で雇用契約書がないと、色々不都合が生ずることがありますので、是非、雇用契約書を締結することをお勧め致します。
※別物とは、簡単に言うと、定年退職によって今までの雇用契約は一旦リセットされ、新たな雇用契約が始まるということ。
=不都合その1=
「雇用契約が青天井になってまう」
60歳定年でも65歳定年でも、とにかく定年後の再雇用は必ず有期雇用契約にすべきです。できれば1年以内が望ましいでしょう。定年を超えて期間を区切らずに漫然と雇用していると、それは定年という自動退職の仕組みが適用されない、いわば青天井で死ぬまで雇います!と、言っているようなもので、従業員から自発的に退職の申し出がない限り、解雇するか、少なくとも退職勧奨しなければならないことになってしまいます。必ず期間に終わりがある仕組みを導入しましょう。
=不都合その2=
「労働条件の見直しがしにくい」
通常、定年再雇用者の労働条件は、定年前と同一か、または賃金だけを削減しその他は同じというケースが多いように思います。ただ、年を経るにつれ、どうしても健康状態や能動能率の減退を考慮せざるを得なくなることがあり、また経営状態も鑑みながら更新の有無を判断していかなければなりません。
有期雇用契約書で更新手続きを「イベント化」することによって、少なくとも1年に1回は次期の更新の有無を含めた労働条件の見直しがし易くなります。漫然と継続していると、機械的に話し合いが出来る「イベント」がないため、見直しに苦慮することがあります。
=不都合その3=
「雇用保険の離職事由で困る」
定年再雇用者が実際に退職となったとき、有期雇用契約書がないと、雇用保険の離職事由をどうするかで苦慮することがあります。大概の場合、定年後の再雇用おける雇用保険加入資格は、定年前からそのまま継続していることが多いため、加入期間は相当長期に渉ることがあり、また雇用保険は離職事由により受給資格が大きく左右される仕組みになっているため、どのような離職事由で離職票を発行するかは大事な問題なのです。
しかし有期雇用契約書がないと会社都合か自己都合の両極端な事由しか見出せず、期間満了による退職という離職事由が使えません。期間満了ですと、解雇でなはないため解雇に関する様々な法的制約を受けず、また助成金が不支給になるデメリットも回避できます。従業員からみても自己都合だと3ヶ月の給付制限がかかるところ、期間満了ではその制限はかからず、すぐに失業認定されます。
=不都合その4=
「ミッションが伝わりにくい」
定年再雇用者には黙々と今までの仕事を継続してもらうのではなく、後継者の育成、技能伝承という重要なミッションがあるはずです。それを口頭で伝えることは当然としても、雇用契約書を改めて交わし、その中にそういった特別なミッションをきちんと書き込み、今までとは違うということを意識の中に埋め込んでもらうためにも重要です。不都合その2でも言えることですが、契約書を交わすというイベントがあると、普段改まって言いにくいこともフォーマルな場を作り出せるため、比較的言い易くなるものです。
当事務所では、様々な雇用契約書のサンプルをご提示しております。どうぞご活用いただきますと共に、担当者へお気軽にご相談ください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
14年09月02日
道路交通法が改正が労務管理へも影響を及ぼす(H26.9月号)
●道路交通法が改正が労務管理へも影響を及ぼす
~自動車運転に従事する労働者がいる企業は一定の病気に要注意!事前に把握する仕組みを導入しよう~ (H26.9月号)
近年、運転中に意識障害を起こし重大な交通事故が発生するなど、大きな社会問題として報道されています。
こういった背景を受け、本年5月20日に自動車運転処罰法が新たに制定され、6月1日より道路交通法が一部改正され施行されています。「アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した場合」や、「幻覚や発作を伴う病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転 」するなど、一定の病気等により死傷事故を起こした場合に、その罰則が強化されたり、免許取得等に制限が課されるものですが、その内容の詳細に触れることはここでの主旨でないため割愛します。
労務管理との関係では、本年5月30日に厚生労働省労働基準局長通達として、トラック業界等関係団体などに「意識の消失等の症状を有する労働者が業務として自動車を運転する場合等の健康診断等における留意点について」と題するものを発出されています。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■■□■
厚生労働省労働基準局長通達(基発0530第5号)(抄)
意識の消失等の症状を有する労働者が業務として自動車を運転する場合等の健康診断等における留意点について
平成23年に栃木県鹿沼市で発生した交通事故等、業務で自動車を運転する労働者が、運転中の意識の消失等を発生したことが主な要因と思われる重大な死傷事故が発生する等しており、労働者の健康状態を的確に把握すること等により、いかに同種事故を防止するかが課題となっています。
このため自動車運転免許に関しましては、平成25年6月14日に道路交通法の一部を改正する法律が公布され、免許の拒否事由等とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するため、免許を受けようとする者等に対する病気の症状に関する公安委員会の質問制度等の規定が整備され、これらの内容については、本年6月1日から施行されます。
一方、労働安全衛生関係法令においては、事業者による労働者の健康状況の把握及び適切な事後措置の重要性に鑑み、現行制度下でも、労働者に対して行う一般健康診断において、自覚症状及び他覚症状の有無を検査することとされているところですが、特に業務として自動車を運転する労働者等に対しては、健康診断及び健康診断後の措置等について、下記の点に留意するよう貴団体会員事業者への周知等について特段のご理解とご協力をお願いいたします。
記
1.業務上、自動車(大型特殊等を含む)運転に従事する者(業務上、移動手段として自動車を利用する者を含む)等に対しては、労働者の健康・安全の確保のために必要な場合は、雇入れ時又は定期の一般健康診断において、意識を失った、身体の全部又は一部が一時的に思い通りに動かせなくなった、活動している最中に眠り込んでしまった等の症状の有無を確認することが望ましいこと。
2.健康診断結果及び健康診断結果を受けての医師からの意見聴取等により、労働者の健康・安全の確保の観点から、必要と認められる場合は、健康診断結果に基づき事業が講ずべき措置に関する指針(健康診断結果措置指針公示第7号)2(4)に留意し、労働者の意見等も勘案しつつ、適切な事後措置等を講じる等、必要な対策をとること。
3.1.で確認することとした労働者に係る情報は、極めて機微に触れる情報であることから、事業者は、労働者の健康情報については漏洩等の防止、それを取り扱う者に対する監督等、その取扱いに十分留意すること。 なお、医師はもとより健康診断事務担当者等の健康診断等業務従事者に対して労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第104条に規定されている守秘義務の規定が適用されることに、留意すること。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■■□■□
実はここからが本題です。
上記の「一定の病気等」には以下のようなものが定められています。
「統合失調症」「てんかん」「再発性の失神」「無自覚性の低血糖症」「そううつ病」「重度の眠気の症状を示す睡眠障害」「認知症」「アルコール、麻薬、覚せい剤等の中毒」
上記通達1にもあるように、「症状の有無を確認することが望ましい」とされていますが、これらは健康診断によって、必ずしも把握できるものではありません。差別にならないように配慮する必要があるものの、使用者として何ら把握するための措置を取らず従業員が業務災害を起こした場合、社会的制裁のみならず、法的責任や賠償問題についても今まで以上に厳しくなる可能性があるのです。
従って、自動車を業務として運転する従業員を抱える企業は、運転させても大丈夫か、という観点から今まで以上に把握する措置を講ずる必要があると思います。そこでご提案したいのが、採用面接時と年1回の定期健康診断時に、「運転告知書」や「運転業務に対する病歴、治療等についての確認書」などのシートを利用して、事前把握する仕組みを設けることです。
シートは弊社HPの「書式のダウンロードコーナー」にありますので、どうぞご活用ください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
~自動車運転に従事する労働者がいる企業は一定の病気に要注意!事前に把握する仕組みを導入しよう~ (H26.9月号)
近年、運転中に意識障害を起こし重大な交通事故が発生するなど、大きな社会問題として報道されています。
こういった背景を受け、本年5月20日に自動車運転処罰法が新たに制定され、6月1日より道路交通法が一部改正され施行されています。「アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した場合」や、「幻覚や発作を伴う病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転 」するなど、一定の病気等により死傷事故を起こした場合に、その罰則が強化されたり、免許取得等に制限が課されるものですが、その内容の詳細に触れることはここでの主旨でないため割愛します。
労務管理との関係では、本年5月30日に厚生労働省労働基準局長通達として、トラック業界等関係団体などに「意識の消失等の症状を有する労働者が業務として自動車を運転する場合等の健康診断等における留意点について」と題するものを発出されています。
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厚生労働省労働基準局長通達(基発0530第5号)(抄)
意識の消失等の症状を有する労働者が業務として自動車を運転する場合等の健康診断等における留意点について
平成23年に栃木県鹿沼市で発生した交通事故等、業務で自動車を運転する労働者が、運転中の意識の消失等を発生したことが主な要因と思われる重大な死傷事故が発生する等しており、労働者の健康状態を的確に把握すること等により、いかに同種事故を防止するかが課題となっています。
このため自動車運転免許に関しましては、平成25年6月14日に道路交通法の一部を改正する法律が公布され、免許の拒否事由等とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するため、免許を受けようとする者等に対する病気の症状に関する公安委員会の質問制度等の規定が整備され、これらの内容については、本年6月1日から施行されます。
一方、労働安全衛生関係法令においては、事業者による労働者の健康状況の把握及び適切な事後措置の重要性に鑑み、現行制度下でも、労働者に対して行う一般健康診断において、自覚症状及び他覚症状の有無を検査することとされているところですが、特に業務として自動車を運転する労働者等に対しては、健康診断及び健康診断後の措置等について、下記の点に留意するよう貴団体会員事業者への周知等について特段のご理解とご協力をお願いいたします。
記
1.業務上、自動車(大型特殊等を含む)運転に従事する者(業務上、移動手段として自動車を利用する者を含む)等に対しては、労働者の健康・安全の確保のために必要な場合は、雇入れ時又は定期の一般健康診断において、意識を失った、身体の全部又は一部が一時的に思い通りに動かせなくなった、活動している最中に眠り込んでしまった等の症状の有無を確認することが望ましいこと。
2.健康診断結果及び健康診断結果を受けての医師からの意見聴取等により、労働者の健康・安全の確保の観点から、必要と認められる場合は、健康診断結果に基づき事業が講ずべき措置に関する指針(健康診断結果措置指針公示第7号)2(4)に留意し、労働者の意見等も勘案しつつ、適切な事後措置等を講じる等、必要な対策をとること。
3.1.で確認することとした労働者に係る情報は、極めて機微に触れる情報であることから、事業者は、労働者の健康情報については漏洩等の防止、それを取り扱う者に対する監督等、その取扱いに十分留意すること。 なお、医師はもとより健康診断事務担当者等の健康診断等業務従事者に対して労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第104条に規定されている守秘義務の規定が適用されることに、留意すること。
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実はここからが本題です。
上記の「一定の病気等」には以下のようなものが定められています。
「統合失調症」「てんかん」「再発性の失神」「無自覚性の低血糖症」「そううつ病」「重度の眠気の症状を示す睡眠障害」「認知症」「アルコール、麻薬、覚せい剤等の中毒」
上記通達1にもあるように、「症状の有無を確認することが望ましい」とされていますが、これらは健康診断によって、必ずしも把握できるものではありません。差別にならないように配慮する必要があるものの、使用者として何ら把握するための措置を取らず従業員が業務災害を起こした場合、社会的制裁のみならず、法的責任や賠償問題についても今まで以上に厳しくなる可能性があるのです。
従って、自動車を業務として運転する従業員を抱える企業は、運転させても大丈夫か、という観点から今まで以上に把握する措置を講ずる必要があると思います。そこでご提案したいのが、採用面接時と年1回の定期健康診断時に、「運転告知書」や「運転業務に対する病歴、治療等についての確認書」などのシートを利用して、事前把握する仕組みを設けることです。
シートは弊社HPの「書式のダウンロードコーナー」にありますので、どうぞご活用ください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com