●人事総務事務に大きな影響が。いよいよ見えてきた、マイナンバー制度の概要 その1 (H26.12月号)
~全ての民間事業者は2015年中には対応する必要があります~
皆様はご存知でしょうか。2016年からマイナンバー制度が運用開始されることを。そのために全ての事業者が来年2015年中には何らかの対応策を講ずる必要があることを。
マイナンバーとは全国民に12桁の番号を振り出して、所得や年金などの受給状況を把握しやすくし、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止することを主眼としながら、国民の利便性の向上を企図して2016年1月から運用開始されるものです。2015年の10月から順次、マイナンバー通知書が送られて来ますので、その後各自が自治体へ出向き、顔写真付の個人番号カード(マイナンバーカード)の発行手続きを行います。カードには「氏名」「住所」「性別」「生年月日」の4情報がICチップと共に記載されますが、当面はその他の健康情報や所得情報は収録されません。また身分証明書としても利用可能になります。
また法人にも同様に13桁の番号が振り出され、これはインターネット上でも公開される予定です。
このマイナンバーは、当面の間、社会保障関係の手続き、税務関係の手続きにおいて利用されます。役所でいうと、「自治体」「税務署」「全国健康保険協会または健康保険組合」「日本年金機構」「ハローワーク」で使用されます。具体的には「健康保険や年金の資格取得手続き」、「ハローワークへの資格取得手続き」、「税務署に提出する源泉徴収票ほかの法定調書」、「自治体へ届出する給与支払報告書」などで、人事総務部門や経理部門にとっては非常に身近な日常業務で必要となってきます。これらの事務においてその届出書にその従業員のマイナンバーを必ず記載しなければならず、また健康保険の被扶養者や源泉徴収における扶養親族に関しても、事業所の方でマイナンバーを収集し、記載して行かなければなりません。つまり赤ん坊が生まれたから保険証を作るとか、所得控除を受けるために扶養家族として扶養控除等申告書に記載してもらう場面など、極めて日常的にマイナンバーを取り扱うこととなるのです。また会社から出す書類にもそれぞれ法人番号の記載が必要となります。
このシステムは上述の役所間において横串で一元的に管理されるのではなく、今まで通り各役所で分散管理する情報を、情報提供ネットワークシステムを通じて、情報照会及び提供が行われる仕組みのようです。また独立した特定個人情報保護委員会の設置により、指導・監督・立入検査等が行われ、個人でもマイポータルにより、自分の情報が役所間でどのように使われたかを確認できることとなります(マイポータルは2018年1月開始予定)。さらにマイナンバーを不正に提供したり盗用したりした場合の罰則が個人情報保護法よりも強化され、直接の行為者だけでなく、法人も連帯して責任を問われることとなります。
先ほども言いましたが、運用は2016年1月からですのであと1年ありますが、この間に様々な対応が迫られることとなり、またスムーズな運用のためには事前に知識を付けておく必要もあり、準備作業に迫られることとなります。考えられる必要な対策及びスケジュールは以下の通りです。
【会社が2015年中に行っておくべきこと】
1.総務部門を中心とした従業員研修及び社内体制の整備
2.情報システム(人事給与計算ソフト、会計ソフト等)の改修
【会社が2016年に行うこと】
1.在職社員(パート含む)全員及び扶養家族からのマイナンバーの収集
2.社会保険手続き、税金関係手続き(年末調整、退職者への源泉徴収票、住民税異動)におけるマイナンバーの使用
※2016年中に退職される方に源泉徴収票を発行するときから、その都度記載が必要。
※社会保険関係手続きは2016年から開始できるか微妙。年末調整は2016年分から開始。
※マイナンバーの収集作業は、かなり事務負担になると思われる。
【会社が2017年に行うこと】
1.法定調書(給与支払報告書、報酬の支払調書、不動産使用等の支払調書など、2017年1月末期限のもの)におけるマイナンバーの使用
また、情報システムの改修に関してはある程度の費用は避けられず、業務ソフト会社または事務委託先と連携を取って進める必要があるでしょう。また社内体制の整備に関しては、「安全管理措置」を取ることが求められており、具体的には以下の6点です(100人以下の中小事業者は緩やかな措置で可能となる見込み)。
(1)基本方針の策定
(2)取扱規程の策定
(3)組織的安全管理措置
(4)人的安全管理措置
(5)物理的安全管理措置
(6)技術的安全管理措置
以下順に簡潔に見てゆきます
(1)基本方針の策定について
◆関係法令、ガイドラインを把握し、遵守すること
◆質問、苦情処理の窓口を設けるなど
(2)取扱規程の策定について
◆マイナンバーの取扱い方法、責任者や事務取扱者、その任務等を以下の管理段階ごとに定める
ア.取得する段階
イ.利用を行う段階
ウ.保存する段階
エ.提供を行う段階
オ.消去・廃棄を行う段階
(3)組織的安全管理措置について
◆事務における責任者の設置及び責任の明確化
◆事務取扱者の事務範囲の明確化や取扱規程に違反する場合の報告連絡体制
◆利用、消去、持ち出し、アクセスなどを記録化すること
◆情報漏洩等事故発生時の体制整備など
(4)人的安全管理措置について
◆事務取扱者に対する監督と教育
◆就業規則への記載など
(5)物理的安全管理措置について
◆管理区域を指定し、機器の持ち込み制限
◆ICカード等による入退室管理システム
◆間仕切りの設置や座席配置の工夫
◆キャビネット・書庫への施錠
◆データの暗号化やパスワードによる保護
◆廃棄媒体の物理的破壊や専用のデータ消去ソフトの使用
◆保存年限を経過した個人番号の自動消去システムの構築など
(6)技術的安全管理措置
◆ユーザーIDの付与、磁気カードの使用など内部アクセス制御システムの構築
◆ファイアーウォールなど外部からの不正アクセスの防止
◆データの暗号化やパスワードによる保護など
以下次号にて
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
~全ての民間事業者は2015年中には対応する必要があります~
皆様はご存知でしょうか。2016年からマイナンバー制度が運用開始されることを。そのために全ての事業者が来年2015年中には何らかの対応策を講ずる必要があることを。
マイナンバーとは全国民に12桁の番号を振り出して、所得や年金などの受給状況を把握しやすくし、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止することを主眼としながら、国民の利便性の向上を企図して2016年1月から運用開始されるものです。2015年の10月から順次、マイナンバー通知書が送られて来ますので、その後各自が自治体へ出向き、顔写真付の個人番号カード(マイナンバーカード)の発行手続きを行います。カードには「氏名」「住所」「性別」「生年月日」の4情報がICチップと共に記載されますが、当面はその他の健康情報や所得情報は収録されません。また身分証明書としても利用可能になります。
また法人にも同様に13桁の番号が振り出され、これはインターネット上でも公開される予定です。
このマイナンバーは、当面の間、社会保障関係の手続き、税務関係の手続きにおいて利用されます。役所でいうと、「自治体」「税務署」「全国健康保険協会または健康保険組合」「日本年金機構」「ハローワーク」で使用されます。具体的には「健康保険や年金の資格取得手続き」、「ハローワークへの資格取得手続き」、「税務署に提出する源泉徴収票ほかの法定調書」、「自治体へ届出する給与支払報告書」などで、人事総務部門や経理部門にとっては非常に身近な日常業務で必要となってきます。これらの事務においてその届出書にその従業員のマイナンバーを必ず記載しなければならず、また健康保険の被扶養者や源泉徴収における扶養親族に関しても、事業所の方でマイナンバーを収集し、記載して行かなければなりません。つまり赤ん坊が生まれたから保険証を作るとか、所得控除を受けるために扶養家族として扶養控除等申告書に記載してもらう場面など、極めて日常的にマイナンバーを取り扱うこととなるのです。また会社から出す書類にもそれぞれ法人番号の記載が必要となります。
このシステムは上述の役所間において横串で一元的に管理されるのではなく、今まで通り各役所で分散管理する情報を、情報提供ネットワークシステムを通じて、情報照会及び提供が行われる仕組みのようです。また独立した特定個人情報保護委員会の設置により、指導・監督・立入検査等が行われ、個人でもマイポータルにより、自分の情報が役所間でどのように使われたかを確認できることとなります(マイポータルは2018年1月開始予定)。さらにマイナンバーを不正に提供したり盗用したりした場合の罰則が個人情報保護法よりも強化され、直接の行為者だけでなく、法人も連帯して責任を問われることとなります。
先ほども言いましたが、運用は2016年1月からですのであと1年ありますが、この間に様々な対応が迫られることとなり、またスムーズな運用のためには事前に知識を付けておく必要もあり、準備作業に迫られることとなります。考えられる必要な対策及びスケジュールは以下の通りです。
【会社が2015年中に行っておくべきこと】
1.総務部門を中心とした従業員研修及び社内体制の整備
2.情報システム(人事給与計算ソフト、会計ソフト等)の改修
【会社が2016年に行うこと】
1.在職社員(パート含む)全員及び扶養家族からのマイナンバーの収集
2.社会保険手続き、税金関係手続き(年末調整、退職者への源泉徴収票、住民税異動)におけるマイナンバーの使用
※2016年中に退職される方に源泉徴収票を発行するときから、その都度記載が必要。
※社会保険関係手続きは2016年から開始できるか微妙。年末調整は2016年分から開始。
※マイナンバーの収集作業は、かなり事務負担になると思われる。
【会社が2017年に行うこと】
1.法定調書(給与支払報告書、報酬の支払調書、不動産使用等の支払調書など、2017年1月末期限のもの)におけるマイナンバーの使用
また、情報システムの改修に関してはある程度の費用は避けられず、業務ソフト会社または事務委託先と連携を取って進める必要があるでしょう。また社内体制の整備に関しては、「安全管理措置」を取ることが求められており、具体的には以下の6点です(100人以下の中小事業者は緩やかな措置で可能となる見込み)。
(1)基本方針の策定
(2)取扱規程の策定
(3)組織的安全管理措置
(4)人的安全管理措置
(5)物理的安全管理措置
(6)技術的安全管理措置
以下順に簡潔に見てゆきます
(1)基本方針の策定について
◆関係法令、ガイドラインを把握し、遵守すること
◆質問、苦情処理の窓口を設けるなど
(2)取扱規程の策定について
◆マイナンバーの取扱い方法、責任者や事務取扱者、その任務等を以下の管理段階ごとに定める
ア.取得する段階
イ.利用を行う段階
ウ.保存する段階
エ.提供を行う段階
オ.消去・廃棄を行う段階
(3)組織的安全管理措置について
◆事務における責任者の設置及び責任の明確化
◆事務取扱者の事務範囲の明確化や取扱規程に違反する場合の報告連絡体制
◆利用、消去、持ち出し、アクセスなどを記録化すること
◆情報漏洩等事故発生時の体制整備など
(4)人的安全管理措置について
◆事務取扱者に対する監督と教育
◆就業規則への記載など
(5)物理的安全管理措置について
◆管理区域を指定し、機器の持ち込み制限
◆ICカード等による入退室管理システム
◆間仕切りの設置や座席配置の工夫
◆キャビネット・書庫への施錠
◆データの暗号化やパスワードによる保護
◆廃棄媒体の物理的破壊や専用のデータ消去ソフトの使用
◆保存年限を経過した個人番号の自動消去システムの構築など
(6)技術的安全管理措置
◆ユーザーIDの付与、磁気カードの使用など内部アクセス制御システムの構築
◆ファイアーウォールなど外部からの不正アクセスの防止
◆データの暗号化やパスワードによる保護など
以下次号にて
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com