17年02月28日
同一労働同一賃金ガイドライン(案)が出た影響は?
●同一労働同一賃金ガイドライン(案)が出た影響は? (H29.3月号)
最近、報道においてよく耳にすることが多くなりました。現政権が目指そうとしているらしい?「同一労働同一賃金」という言葉です。昨年12月20日に、「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」なるのもが初めて発表されました。
その内容は、このガイドライン(案)の趣旨目的を明らかにした上で、賃金(基本給、賞与、手当)・福利厚生・教育訓練や安全管理について、非正規労働者においても正社員と同じ雇用管理であれば同一にし、違うとしても違いに応じた処遇をすべきとして、それぞれ<問題とならない事例>と<問題となる事例>を示しています。
例えば賞与について言うと、<問題となる事例>として、①企業への貢献度に応じた支給をする会社において、正社員と非正規社員で同一の貢献度があるにもかかわらず、正社員のみ支給しているケース、②正社員は職務内容や貢献度にかかわらず支給しているが、非正規社員には支給していないケースが挙げられています。
このガイドライン(案)による影響ですが、結論を先に申し上げますと、直ぐに企業が何かを対応しなければならないことはありません。むしろ、様子見をした方が良いくらいです。
そもそもこのガイドライン(案)には、何の拘束力もありません。また、今回ちょっと変わっているのは、通常、ガイドラインと言うのは、まず大原則となる法律が先にあり、本則に書ききれない細かなことを政令や施行規則で定め、さらに運用解釈を助ける指針として出されるものです。にもかかわらず、今回はガイドラインが先に出てるという得意なケースです。しかもその(案)です。
更に言うと、現在我が国には、今まで同一労働同一賃金を規定した法令も、司法判断も存在しません。つまりこのガイドライン(案)は、考え方や将来に対する方向性を示したものでしかないのです。
ただ、今後こういった方向で法制化を進めるということを宣言するかのような、政府の強い意志が感じられます。前文に書かれている「我が国から「非正規」という言葉を一掃する」と言う文言にも現れています。この同一労働同一賃金と、長時間労働の削減による生産性の向上という施策は、大命題の政策とされているのです。
今後、労使代表の協議を経て、どのように決着するかは予断を許しませんが、今後の労務管理についてはっきり言えることが一つだけあります。
それは「正社員と非正規社員の待遇を全く同じものにしなければならないという単純なことではなく、差があっても良いが、その差は不合理なものであってはならない」という根本を見失わずに、処遇することです。この解釈は、現行法の労働契約法第20条、パートタイム労働法第8条から導くことができます。合理的でなくとも良いが、不合理はダメだ!ということなのですが、分かりにくいですね。
待遇に差異が生じるのであれば、次の4点のいずれかを、如何にきちんと説明できるかがポイントとなるのです。
①職務の内容の違い
②その職務に伴う責任の程度の違い
③人材活用の仕組み(配置転換、キャリアコースなど)の違い
④その他諸々の事情
④は違いの説明というより、世間一般の状況とか、他の待遇面の向上とか、労使の話し合いの経緯とかいった色々な事情のことです。
いずれにしても予断を許しませんが、少なくとも欧米のような均等な同一労働同一賃金にはならず、均衡に配慮した同一労働同一賃金になって行くものと考えられます。最終的な姿がどのようななるかは分かりませんが、非正規社員の処遇を改善するという大きな方向性は変わらないと思われ、そのためには上記①から④を意識した労務管理が益々必要になって来るでしょう。
(参考)
◎同一労働同一賃金ガイドライン(案)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdf
◎労働契約法 第20条
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
◎パートタイム労働法 第8条
(短時間労働者の待遇の原則)
事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
最近、報道においてよく耳にすることが多くなりました。現政権が目指そうとしているらしい?「同一労働同一賃金」という言葉です。昨年12月20日に、「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」なるのもが初めて発表されました。
その内容は、このガイドライン(案)の趣旨目的を明らかにした上で、賃金(基本給、賞与、手当)・福利厚生・教育訓練や安全管理について、非正規労働者においても正社員と同じ雇用管理であれば同一にし、違うとしても違いに応じた処遇をすべきとして、それぞれ<問題とならない事例>と<問題となる事例>を示しています。
例えば賞与について言うと、<問題となる事例>として、①企業への貢献度に応じた支給をする会社において、正社員と非正規社員で同一の貢献度があるにもかかわらず、正社員のみ支給しているケース、②正社員は職務内容や貢献度にかかわらず支給しているが、非正規社員には支給していないケースが挙げられています。
このガイドライン(案)による影響ですが、結論を先に申し上げますと、直ぐに企業が何かを対応しなければならないことはありません。むしろ、様子見をした方が良いくらいです。
そもそもこのガイドライン(案)には、何の拘束力もありません。また、今回ちょっと変わっているのは、通常、ガイドラインと言うのは、まず大原則となる法律が先にあり、本則に書ききれない細かなことを政令や施行規則で定め、さらに運用解釈を助ける指針として出されるものです。にもかかわらず、今回はガイドラインが先に出てるという得意なケースです。しかもその(案)です。
更に言うと、現在我が国には、今まで同一労働同一賃金を規定した法令も、司法判断も存在しません。つまりこのガイドライン(案)は、考え方や将来に対する方向性を示したものでしかないのです。
ただ、今後こういった方向で法制化を進めるということを宣言するかのような、政府の強い意志が感じられます。前文に書かれている「我が国から「非正規」という言葉を一掃する」と言う文言にも現れています。この同一労働同一賃金と、長時間労働の削減による生産性の向上という施策は、大命題の政策とされているのです。
今後、労使代表の協議を経て、どのように決着するかは予断を許しませんが、今後の労務管理についてはっきり言えることが一つだけあります。
それは「正社員と非正規社員の待遇を全く同じものにしなければならないという単純なことではなく、差があっても良いが、その差は不合理なものであってはならない」という根本を見失わずに、処遇することです。この解釈は、現行法の労働契約法第20条、パートタイム労働法第8条から導くことができます。合理的でなくとも良いが、不合理はダメだ!ということなのですが、分かりにくいですね。
待遇に差異が生じるのであれば、次の4点のいずれかを、如何にきちんと説明できるかがポイントとなるのです。
①職務の内容の違い
②その職務に伴う責任の程度の違い
③人材活用の仕組み(配置転換、キャリアコースなど)の違い
④その他諸々の事情
④は違いの説明というより、世間一般の状況とか、他の待遇面の向上とか、労使の話し合いの経緯とかいった色々な事情のことです。
いずれにしても予断を許しませんが、少なくとも欧米のような均等な同一労働同一賃金にはならず、均衡に配慮した同一労働同一賃金になって行くものと考えられます。最終的な姿がどのようななるかは分かりませんが、非正規社員の処遇を改善するという大きな方向性は変わらないと思われ、そのためには上記①から④を意識した労務管理が益々必要になって来るでしょう。
(参考)
◎同一労働同一賃金ガイドライン(案)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdf
◎労働契約法 第20条
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
◎パートタイム労働法 第8条
(短時間労働者の待遇の原則)
事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
17年02月22日
一般事務をお任せする正社員募集(内勤) 完全週休2日制
17年02月01日
見えてきた「働き方改革 残業は月60時間まで?」
●見えてきた「働き方改革 残業は月60時間まで?」 (H29.2月号)
1月28日付、日本経済新聞によると、「残業上限60時間 月平均で規制 全業種対象 政府原案」という報道がなされました。
現在の労基法では36協定を締結することで、月45時間までの残業を認めており、さらに特別な協定を結ぶと、1年に6回までは青天井で残業可能となっています。政府はこれが長時間労働の温床となっていると考えているのです。
今行われている通常国会でも、本テーマが取り上げられており、使用者側は80時間あたりを、労働者側は45時間あたりを考えていたようですが、どうやらその間の60時間で収まる気配が見えてきました。まだ予断を許しませんが、規制を強化したい政府と労働側の思惑はおおよそ一致しているため、経営側の巻き返しがない限り、この方向で進む可能性が高いと思われます。
さて、昨年のメルマガ8月号から11月号にかけて、長時間労働対策を特集いたしました。これからは長時間労働のある会社は、行政からも市民(特に求職者)からも見放され、経営が立ち行かなくなる危機感から出たものです。特に11月号では、以下のような19の対策案をご提示しました。
1.デスク及びパソコンの整理整頓 2.仕事の整理整頓(棚卸し) 3.1時間早帰り制度
4.時間外労働を許可届出制にする 5.19時退社制度 6.変形労働時間制を活用する
7.社風改革 8.人事考課で長時間労働を抑制 9.TO DOリストを活用する
10.集中タイムを設ける 11.タスク管理(プロセス分析) 12.共有フォルダを活用する
13.分業化(IT活用) 14.アウトソーシング 15.チームで競わせる
16.帰社時間宣言フラッグ 17.社内メールは件名のみ 18.時短アイデアコンテスト
19.マネジメントの改善
しかし、細かなテクニック論もあり、どこから手をつけて良いかわからない!、そんな企業の為に、今年はまず次の2つを実践して頂きたいと思います。
1.社長が強く号令をかける
2.簡単は数字目標を取り込む
1.社長が強く号令をかける
まず、これがないとすべてが始まりません。社員教育もそうですが、自主性に任せているだけでは改善されす、強制しないと自然には良くならないのです。
トップである社長が「今年は残業を減らす!」と全社員に向けて、強く号令を掛けるべきです。強い意志を示してください。そして、これからの企業の生き残りのためには、「少ない時間で同じ成果を出す」ことが喫緊の課題であることも説明してください。目的を伝えないと腹落ちしません。
幸いに、最近は長時間労働に関するニュースが毎週のように報道されますので、外堀環境は埋められつつあります。このように社長が号令を発するだけで、一定の効果がでる企業もあります。
しかし、大抵の場合、1回だけの言いっぱなしでは、直ぐに元に戻ります。そうならないためには、会社の本気度が問われ、しつこいくらいに言い続ける必要があります。しつこいくらいで丁度です。「あの社長、また言ってる!?」と、従業員から思われるくらいになれば、しめたものです。
2.簡単な数字目標を取り込む
できれば計測しやすい、簡単な数字を意識するようにしてください。「19時帰社」とか、「20時以降在社禁止」とか、「残業は1日2時間まで」とか、「5割削減」とか、分かりやすいものが良いでしょう。完結で分かりやすい評語を貼り出し、朝礼やミーティング等、ことあるごとに言い続けてください。
こういった大原則をまず、今年は本気で取りみましょう。そうやって残業削減に取り組める社内環境が整備されてきたら、更に進めて先に掲げた19の方法を個別に検討することが良策かと思います。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
1月28日付、日本経済新聞によると、「残業上限60時間 月平均で規制 全業種対象 政府原案」という報道がなされました。
現在の労基法では36協定を締結することで、月45時間までの残業を認めており、さらに特別な協定を結ぶと、1年に6回までは青天井で残業可能となっています。政府はこれが長時間労働の温床となっていると考えているのです。
今行われている通常国会でも、本テーマが取り上げられており、使用者側は80時間あたりを、労働者側は45時間あたりを考えていたようですが、どうやらその間の60時間で収まる気配が見えてきました。まだ予断を許しませんが、規制を強化したい政府と労働側の思惑はおおよそ一致しているため、経営側の巻き返しがない限り、この方向で進む可能性が高いと思われます。
さて、昨年のメルマガ8月号から11月号にかけて、長時間労働対策を特集いたしました。これからは長時間労働のある会社は、行政からも市民(特に求職者)からも見放され、経営が立ち行かなくなる危機感から出たものです。特に11月号では、以下のような19の対策案をご提示しました。
1.デスク及びパソコンの整理整頓 2.仕事の整理整頓(棚卸し) 3.1時間早帰り制度
4.時間外労働を許可届出制にする 5.19時退社制度 6.変形労働時間制を活用する
7.社風改革 8.人事考課で長時間労働を抑制 9.TO DOリストを活用する
10.集中タイムを設ける 11.タスク管理(プロセス分析) 12.共有フォルダを活用する
13.分業化(IT活用) 14.アウトソーシング 15.チームで競わせる
16.帰社時間宣言フラッグ 17.社内メールは件名のみ 18.時短アイデアコンテスト
19.マネジメントの改善
しかし、細かなテクニック論もあり、どこから手をつけて良いかわからない!、そんな企業の為に、今年はまず次の2つを実践して頂きたいと思います。
1.社長が強く号令をかける
2.簡単は数字目標を取り込む
1.社長が強く号令をかける
まず、これがないとすべてが始まりません。社員教育もそうですが、自主性に任せているだけでは改善されす、強制しないと自然には良くならないのです。
トップである社長が「今年は残業を減らす!」と全社員に向けて、強く号令を掛けるべきです。強い意志を示してください。そして、これからの企業の生き残りのためには、「少ない時間で同じ成果を出す」ことが喫緊の課題であることも説明してください。目的を伝えないと腹落ちしません。
幸いに、最近は長時間労働に関するニュースが毎週のように報道されますので、外堀環境は埋められつつあります。このように社長が号令を発するだけで、一定の効果がでる企業もあります。
しかし、大抵の場合、1回だけの言いっぱなしでは、直ぐに元に戻ります。そうならないためには、会社の本気度が問われ、しつこいくらいに言い続ける必要があります。しつこいくらいで丁度です。「あの社長、また言ってる!?」と、従業員から思われるくらいになれば、しめたものです。
2.簡単な数字目標を取り込む
できれば計測しやすい、簡単な数字を意識するようにしてください。「19時帰社」とか、「20時以降在社禁止」とか、「残業は1日2時間まで」とか、「5割削減」とか、分かりやすいものが良いでしょう。完結で分かりやすい評語を貼り出し、朝礼やミーティング等、ことあるごとに言い続けてください。
こういった大原則をまず、今年は本気で取りみましょう。そうやって残業削減に取り組める社内環境が整備されてきたら、更に進めて先に掲げた19の方法を個別に検討することが良策かと思います。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com