11年12月07日
中小企業のメンタルへルス問題 ②
~精神疾患(うつ病)の基礎知識~
今回は代表的な精神疾患であるうつ病に関する基礎知識を中心にお話します。ただ私は医師やカウンセラーではありませんので、労務管理をしてゆく上で、管理者が知っておいてもらいたい基礎知識についてお話します。
1.ストレスとは
うつ病に罹患するには、その前提として何らかの強い、又は継続的なストレスを受けています。このストレスとは「ストレス要因」と「ストレス反応」に分けることができます。例えて言うなら、やわらかいテニスボールをイメージしてください。テニスボールを「心」に置き換えます。ボールを指で強く押すと、ググッと凹みます。これがストレスを受けている状態で、この場合、指がストレスを引き起こしている「ストレス要因」であり、凹んだ状態が「ストレス反応」を引き起こしているということです。そして通常、指(ストレス要因)を離すとボール(心)に、凹んだ状態(ストレス反応)はなくなります。しかしうつ病の人は指を離しているのに、ボールが元へ戻らないような状態をイメージすると分りやすいでしょう。
通常我々が日常生活を送る上で、ストレスを感じないということはありません。仕事上、家庭生活上、個人的なことなど常にストレスに晒されます。ストレスのない社会など有り得ません。誰でもストレスは受けているのです。
ここでは仕事上のストレスを中心に考えます。仕事上、何らかのストレス要因が発生します。しかしそれだけでは直ちに精神疾患になるわけではなく、そこに仕事以外の要因や個人要因が加わって症状が出るのですが、ここで大事なのは職場でストレスを緩和する「緩衝要因」を管理者が如何に与えられるかが重要なのです。これを図示すると以下のようになります。
個人要因
↓
仕事上のストレス要因――――――――――――――――――――――――――→急性ストレス反応―――→疾病
↑ ↑
仕事以外の要因 緩衝要因 ⇔ これが急性ストレス反応を防ぐ
この緩衝要因が労務管理の肝です。これに関しては次回以降で考えてゆきます。
2.うつ病の基礎知識
1)うつ病とは心の風邪?
何らかの因子により脳内のセロトニンなどの神経伝達物質の働きに異常が生じて出現する病気と言われています。誰でもかかり易いことの比喩で、よく心の風邪と言われたりもします。
2)うつ状態とうつ病
よく医師の診断書を取ると、「うつ状態(抑うつ状態)」と記載されていることがあります。むしろはっきりうつとを断定して記載されている方が少ないくらいです。ここでよく勘違いが起こるのですが、うつ状態=うつ病 ではありません。うつ状態とは確定診断が下るまでの仮の病名であったり、本来の病名を隠すため曖昧な状態病名で記載されることが多く、うつ病なら必ずうつ状態になりますが、うつ状態=うつ病ではないのです。この関係を図示すると以下のようになります。
うつ状態 > うつ病、統合失調症、人格障害、更年期障害、糖尿病、脳梗塞etc
つまり、うつ状態を引き起こす原因はうつ病だけではなく、他の精神疾患であったり、脳疾患であったりすることもあるのです。
3)うつ病の診断基準
うつ病は、以下9個の症状のうち、①または②のどちらかを含む5つ以上の症状が2週間以上持続したと判断される場合に初めてうつ病と診断されます。
①抑うつ気分
②興味または喜びの喪失
③食欲の減退または増加
④不眠または睡眠過多
⑤強い焦りまたは身体の動きの鈍化
⑥疲れやすさまたは気力の減退
⑦自責感
⑧思考力や集中力の減退
⑨死についての反復思考
あくまでも医学的に判断するのは医師なのですが、管理者としては、「きちんと眠れていますか?」「好きなことを楽しめていますか?」の質問に、どちらもNOなら、メンタルヘルス不調を疑ってかかる必要があります。
4)二つのうつ病
現在、うつ病には大別して二つのうつ病があります。皆さんが一般的にイメージできるのは、以下(ア)の従来型うつ病といわれるものなのですが、最近ではそのイメージとはかけ離れた(イ)の新型うつ病というのが、増加しています。
(ア) メランコリー親和型うつ病(従来型)
働き盛りの人に多い
社会的規範(決まりごと)を重視
自分に厳しく几帳面で周りへの気遣いに長けている
強い焦りや不安がある
自責の念が強い(自分を責める傾向)
(イ)ディスチミア親和型うつ病(新型)
20~30代の若い方に多い
社会規範よりも自分のやり方にこだわる
根拠のない自信を持っている
他責的(直ぐ相手や会社のせいにする)
仕事以外は活動ができる(趣味を楽しんでいることも)
アの従来型は基本的に、休養と服薬で改善するのに対し、イの新型は人格育成が必要で、対応が容易ではありません。
5)心の健康問題を診察する医療機関
最近は心の病気を扱う医師が増え、敷居が大分低くなりました。「精神科」と「神経科」はほぼ同じと考えてよく、「心療内科」は厳密には少し領域が違うのですが実務的には同義と考えてよいと思われます。但し、「神経内科」は対象疾患が全く違いますので、うつ病が疑われる場合は、「精神科」、「神経科」、または「心療内科」を受診してもらうことになります。
次回はいよいようつ病と労務管理について話をすすめて行きたいと思います。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
今回は代表的な精神疾患であるうつ病に関する基礎知識を中心にお話します。ただ私は医師やカウンセラーではありませんので、労務管理をしてゆく上で、管理者が知っておいてもらいたい基礎知識についてお話します。
1.ストレスとは
うつ病に罹患するには、その前提として何らかの強い、又は継続的なストレスを受けています。このストレスとは「ストレス要因」と「ストレス反応」に分けることができます。例えて言うなら、やわらかいテニスボールをイメージしてください。テニスボールを「心」に置き換えます。ボールを指で強く押すと、ググッと凹みます。これがストレスを受けている状態で、この場合、指がストレスを引き起こしている「ストレス要因」であり、凹んだ状態が「ストレス反応」を引き起こしているということです。そして通常、指(ストレス要因)を離すとボール(心)に、凹んだ状態(ストレス反応)はなくなります。しかしうつ病の人は指を離しているのに、ボールが元へ戻らないような状態をイメージすると分りやすいでしょう。
通常我々が日常生活を送る上で、ストレスを感じないということはありません。仕事上、家庭生活上、個人的なことなど常にストレスに晒されます。ストレスのない社会など有り得ません。誰でもストレスは受けているのです。
ここでは仕事上のストレスを中心に考えます。仕事上、何らかのストレス要因が発生します。しかしそれだけでは直ちに精神疾患になるわけではなく、そこに仕事以外の要因や個人要因が加わって症状が出るのですが、ここで大事なのは職場でストレスを緩和する「緩衝要因」を管理者が如何に与えられるかが重要なのです。これを図示すると以下のようになります。
個人要因
↓
仕事上のストレス要因――――――――――――――――――――――――――→急性ストレス反応―――→疾病
↑ ↑
仕事以外の要因 緩衝要因 ⇔ これが急性ストレス反応を防ぐ
この緩衝要因が労務管理の肝です。これに関しては次回以降で考えてゆきます。
2.うつ病の基礎知識
1)うつ病とは心の風邪?
何らかの因子により脳内のセロトニンなどの神経伝達物質の働きに異常が生じて出現する病気と言われています。誰でもかかり易いことの比喩で、よく心の風邪と言われたりもします。
2)うつ状態とうつ病
よく医師の診断書を取ると、「うつ状態(抑うつ状態)」と記載されていることがあります。むしろはっきりうつとを断定して記載されている方が少ないくらいです。ここでよく勘違いが起こるのですが、うつ状態=うつ病 ではありません。うつ状態とは確定診断が下るまでの仮の病名であったり、本来の病名を隠すため曖昧な状態病名で記載されることが多く、うつ病なら必ずうつ状態になりますが、うつ状態=うつ病ではないのです。この関係を図示すると以下のようになります。
うつ状態 > うつ病、統合失調症、人格障害、更年期障害、糖尿病、脳梗塞etc
つまり、うつ状態を引き起こす原因はうつ病だけではなく、他の精神疾患であったり、脳疾患であったりすることもあるのです。
3)うつ病の診断基準
うつ病は、以下9個の症状のうち、①または②のどちらかを含む5つ以上の症状が2週間以上持続したと判断される場合に初めてうつ病と診断されます。
①抑うつ気分
②興味または喜びの喪失
③食欲の減退または増加
④不眠または睡眠過多
⑤強い焦りまたは身体の動きの鈍化
⑥疲れやすさまたは気力の減退
⑦自責感
⑧思考力や集中力の減退
⑨死についての反復思考
あくまでも医学的に判断するのは医師なのですが、管理者としては、「きちんと眠れていますか?」「好きなことを楽しめていますか?」の質問に、どちらもNOなら、メンタルヘルス不調を疑ってかかる必要があります。
4)二つのうつ病
現在、うつ病には大別して二つのうつ病があります。皆さんが一般的にイメージできるのは、以下(ア)の従来型うつ病といわれるものなのですが、最近ではそのイメージとはかけ離れた(イ)の新型うつ病というのが、増加しています。
(ア) メランコリー親和型うつ病(従来型)
働き盛りの人に多い
社会的規範(決まりごと)を重視
自分に厳しく几帳面で周りへの気遣いに長けている
強い焦りや不安がある
自責の念が強い(自分を責める傾向)
(イ)ディスチミア親和型うつ病(新型)
20~30代の若い方に多い
社会規範よりも自分のやり方にこだわる
根拠のない自信を持っている
他責的(直ぐ相手や会社のせいにする)
仕事以外は活動ができる(趣味を楽しんでいることも)
アの従来型は基本的に、休養と服薬で改善するのに対し、イの新型は人格育成が必要で、対応が容易ではありません。
5)心の健康問題を診察する医療機関
最近は心の病気を扱う医師が増え、敷居が大分低くなりました。「精神科」と「神経科」はほぼ同じと考えてよく、「心療内科」は厳密には少し領域が違うのですが実務的には同義と考えてよいと思われます。但し、「神経内科」は対象疾患が全く違いますので、うつ病が疑われる場合は、「精神科」、「神経科」、または「心療内科」を受診してもらうことになります。
次回はいよいようつ病と労務管理について話をすすめて行きたいと思います。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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11年11月28日
中小企業のメンタルヘルス問題 ①
~今やどこの企業でも精神疾患で休業する労働者が発生する可能性が~
うつ病などメンタルヘルス(心の健康問題)で休業する労働者が増えています。私共のお客様においても、必ずどこかの企業の誰かが精神疾患により、傷病手当金の申請をしている状況で、私が開業した15年前には想像すらできませんでした。メンタルヘルスが労務問題になるとは全く予想できなかったのです。しかし今や中小企業においてもこの問題は対岸の火事ではありません。どこの中小企業で起こっても不思議でない世情になってしまっているのです。そして一度発生すれば、罹患した本人はもとより、雇用する使用者も非常につらい思いをすることになります。そこで今回より、非常に身近になってしまったこのメンタルヘルス問題について、シリーズにて考えてゆきたいと思います。
1.メンタルヘルス対策はコンプライアンス(法令遵守事項)となった
まず従業員の健康に配慮することが法令上も必要になっていることをお話します。今回は法律の話が入りますので、少々硬くなることをお許しください。
過去10年間に渉って、日本人の自殺者数は毎年3万人を超えており、交通事故で死亡する人よりも多く、先進国でも突出した数字となっています。その中の多くの人は、何らかの精神疾患に罹患していたと推定されております。またこれを労働者数だけで限定しても、9千人前後で推移しており、精神疾患で労災認定される人の数も平成13年から右肩上がりで増加しており、この状況は逓減する気配がありません。
現在政府においても、労働安全衛生法の改正が予定されており、そこでは従来の健康診断の延長線上で、医師による精神的健康の状況把握が義務付けられ、その通知を労働者本人に行い、その検査結果を受けた労働者が事業主に申し出れば、会社は医師による面接指導を受けさせなければならず、その面談の結果、必要な場合には労働時間の短縮や作業転換などの配慮措置を行わなければならないことになる見込みです。早ければ来秋から施行される予定です。
また現行法においても、使用者には労働者への健康問題に留意すべき根拠規定が設定されており、被災者はこれらを根拠に会社や使用者に対して、損害賠償請求をしてくることがあります。
(労働者の安全への配慮)
使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
【労働契約法第5条】
いわゆる安全(健康)配慮義務といわれるものです。その意味は簡単に申しますと、「通常の人ならこのまま放置すれば危険な状態になるのを予測できるにもかかわらず、何ら適切な措置を取らなかった為に、その危険が現実のものとなってしまった」というような場合に、会社の責任が問われるこことなります。そしてここで争われる金額は億単位の金額です。中小企業なら一たまりもありません。
(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。【民法第715条】
例えば管理者の労務管理がずさんで、部下に長時間労働を行わせ、それが基で健康を害したような場合、管理者がおこなった不法行為の責任を事業主も追わなければならないリスクがあるのです。
(健康診断)
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない【労働安全衛生法第66条】
会社は毎年1回、定期健康診断を行わなければなりません。これを行わず、有所見がある事実を把握せず、適切な措置を取らなかったために重大な事態を招来すれば、その結果に刑事罰を伴う、重い責任が課される可能性があります。
(衛生管理者)
事業者は政令で定める事業所ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対して意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。【労働安全衛生法第18条】
一から三省略 四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項
50人以上の事業所では衛生委員会を設ける義務があり、その中の審議させる重要事項に「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」が含まれており、それを怠ると、以下の会社法などにより、役員は責任追及される可能性があります。
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。 【会社法第429条】
少し退屈ですね。でもここで理解して頂きたいのが、ひとたび従業員が業務上、健康問題をかかえることとなったとき、使用者の責任はあらゆる方向で追及され、その賠償額は会社を潰してしまうほどのリスクになるということなのです。メンタルヘルス問題も例外ではありません。
従って次回からは、使用者にも最低知っておいて頂きたいメンタルヘルスの基礎知識について話をすすめて行きたいと思います。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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うつ病などメンタルヘルス(心の健康問題)で休業する労働者が増えています。私共のお客様においても、必ずどこかの企業の誰かが精神疾患により、傷病手当金の申請をしている状況で、私が開業した15年前には想像すらできませんでした。メンタルヘルスが労務問題になるとは全く予想できなかったのです。しかし今や中小企業においてもこの問題は対岸の火事ではありません。どこの中小企業で起こっても不思議でない世情になってしまっているのです。そして一度発生すれば、罹患した本人はもとより、雇用する使用者も非常につらい思いをすることになります。そこで今回より、非常に身近になってしまったこのメンタルヘルス問題について、シリーズにて考えてゆきたいと思います。
1.メンタルヘルス対策はコンプライアンス(法令遵守事項)となった
まず従業員の健康に配慮することが法令上も必要になっていることをお話します。今回は法律の話が入りますので、少々硬くなることをお許しください。
過去10年間に渉って、日本人の自殺者数は毎年3万人を超えており、交通事故で死亡する人よりも多く、先進国でも突出した数字となっています。その中の多くの人は、何らかの精神疾患に罹患していたと推定されております。またこれを労働者数だけで限定しても、9千人前後で推移しており、精神疾患で労災認定される人の数も平成13年から右肩上がりで増加しており、この状況は逓減する気配がありません。
現在政府においても、労働安全衛生法の改正が予定されており、そこでは従来の健康診断の延長線上で、医師による精神的健康の状況把握が義務付けられ、その通知を労働者本人に行い、その検査結果を受けた労働者が事業主に申し出れば、会社は医師による面接指導を受けさせなければならず、その面談の結果、必要な場合には労働時間の短縮や作業転換などの配慮措置を行わなければならないことになる見込みです。早ければ来秋から施行される予定です。
また現行法においても、使用者には労働者への健康問題に留意すべき根拠規定が設定されており、被災者はこれらを根拠に会社や使用者に対して、損害賠償請求をしてくることがあります。
(労働者の安全への配慮)
使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
【労働契約法第5条】
いわゆる安全(健康)配慮義務といわれるものです。その意味は簡単に申しますと、「通常の人ならこのまま放置すれば危険な状態になるのを予測できるにもかかわらず、何ら適切な措置を取らなかった為に、その危険が現実のものとなってしまった」というような場合に、会社の責任が問われるこことなります。そしてここで争われる金額は億単位の金額です。中小企業なら一たまりもありません。
(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。【民法第715条】
例えば管理者の労務管理がずさんで、部下に長時間労働を行わせ、それが基で健康を害したような場合、管理者がおこなった不法行為の責任を事業主も追わなければならないリスクがあるのです。
(健康診断)
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない【労働安全衛生法第66条】
会社は毎年1回、定期健康診断を行わなければなりません。これを行わず、有所見がある事実を把握せず、適切な措置を取らなかったために重大な事態を招来すれば、その結果に刑事罰を伴う、重い責任が課される可能性があります。
(衛生管理者)
事業者は政令で定める事業所ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対して意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。【労働安全衛生法第18条】
一から三省略 四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項
50人以上の事業所では衛生委員会を設ける義務があり、その中の審議させる重要事項に「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」が含まれており、それを怠ると、以下の会社法などにより、役員は責任追及される可能性があります。
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。 【会社法第429条】
少し退屈ですね。でもここで理解して頂きたいのが、ひとたび従業員が業務上、健康問題をかかえることとなったとき、使用者の責任はあらゆる方向で追及され、その賠償額は会社を潰してしまうほどのリスクになるということなのです。メンタルヘルス問題も例外ではありません。
従って次回からは、使用者にも最低知っておいて頂きたいメンタルヘルスの基礎知識について話をすすめて行きたいと思います。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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11年11月10日
従業員の能力(レベル)アップの方法を考える その6
従業員の能力(レベル)アップの方法を考える その6
1.能力基準でなく、仕事基準で考える(キャリアアップシートの活用)
2.対象者の損益分岐点を探る(給料分の稼ぎとはいくらか)
3.自分で対策を考えさせる
4.グラフを使って視える化する
5.毎月チェックする
6.いい行動は強化する
7.インセンティブを与える
8.指導担当責任者を決める
前回は上記のうち、5の「毎月チェックする」について申し上げました。今回はその第6弾、「いい行動は強化する」「インセンティブを与える」「指導担当責任者
を決める」について一気にお話いたします。
「いい行動は強化する」について
行動分析学という心理学の学問があります。ここでの人間に対する考え方は、人を性格や能力という漠然としたもので捉えるのではなく、表に出ている行動に着目
し、それを制御することによって、教育指導して行こうとするものです。例えば次をご覧ください。
管理者 承認(笑顔)なし ⇒ 社員 {会議で進んで発言する} ⇒ 管理者 承認(笑顔)あり
仮に会議で積極的に発言しない人がいたとします。会社は積極的に発言して欲しいと思っています。その人が発言をしました。すると発言することによって管理者
から承認(笑顔)という反応が返ってきました。これは{会議で進んで発言する}という望ましい行動を承認によって強化したことになるのです。
ポイントは{ }の部分です。この中に行動が入るわけで、それが望ましい行動ならその後の返しは承認(笑顔、褒める、うなずく)になり、望ましくない行動な
ら指導・注意して弱化してゆくこととなるのです。非常に単純な理屈です。またこれには60秒ルールというのがあって、直ぐに承認しないと、後からでは強化しにく
いと言われています。ですから良いと思ったことは直ぐに承認が原則なのです。が、実際は難しい。だからこそ、前回申し上げた毎月5分チェックの時間を仕組みで取
り入れ、何か月分も溜めないように承認して、望ましい方向へ誘導して行くのです。
「インセンティブを与える」について
前回モチベーション理論をお話しました。金銭は動機付けにはならないのがセオリーです。行動そのものを承認し、その社員に人間としての誇りと居場所を与え、
効力感を持たせることが最重要なのですが、しかし何ら報酬に反映されないのも考えもの。また管理する立場から言っても、何も物理的に与えず、承認光線だけを出
して管理してゆくのは実際問題としてやりにくい。
でも給与が振り込みで、給与明細に報奨金が載っているだけでは、有難味も薄い。やはり金一封封筒に入れ、短く理由を伝え、直接お渡しする方がいいでしょう。
但しきちっとした給与賞与制度があれば、その仕組みで受け止めてゆけばそれでも構わないでしょう。
「指導担当責任者を決める」
リンゲンルマン効果(社会的手抜き)という心理学理論があります。1対1で綱引きをすると100%の力で引き合うが、2人一組で引くとその力は93%まで下がり
、3人で引っ張り合うと85%というように人数が多くなればなるほど、各人の力は最大限発揮されず、逓減してゆくという理屈です。つまり「誰かがやってくれるだ
ろう」と責任分散の気持ちが生まれ、手抜き現象が起こることをいいます。
人材育成にはこのリンゲルマン効果を防止しなければなりません。誰かが教えるのではなく、教える責任担当者を決めることが肝要です。また人に教えるというの
は自分が分ってること、できることとは別次元に難しいものです。教える立場の社員も成長します。
必ず責任担当者を決めましょう。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
1.能力基準でなく、仕事基準で考える(キャリアアップシートの活用)
2.対象者の損益分岐点を探る(給料分の稼ぎとはいくらか)
3.自分で対策を考えさせる
4.グラフを使って視える化する
5.毎月チェックする
6.いい行動は強化する
7.インセンティブを与える
8.指導担当責任者を決める
前回は上記のうち、5の「毎月チェックする」について申し上げました。今回はその第6弾、「いい行動は強化する」「インセンティブを与える」「指導担当責任者
を決める」について一気にお話いたします。
「いい行動は強化する」について
行動分析学という心理学の学問があります。ここでの人間に対する考え方は、人を性格や能力という漠然としたもので捉えるのではなく、表に出ている行動に着目
し、それを制御することによって、教育指導して行こうとするものです。例えば次をご覧ください。
管理者 承認(笑顔)なし ⇒ 社員 {会議で進んで発言する} ⇒ 管理者 承認(笑顔)あり
仮に会議で積極的に発言しない人がいたとします。会社は積極的に発言して欲しいと思っています。その人が発言をしました。すると発言することによって管理者
から承認(笑顔)という反応が返ってきました。これは{会議で進んで発言する}という望ましい行動を承認によって強化したことになるのです。
ポイントは{ }の部分です。この中に行動が入るわけで、それが望ましい行動ならその後の返しは承認(笑顔、褒める、うなずく)になり、望ましくない行動な
ら指導・注意して弱化してゆくこととなるのです。非常に単純な理屈です。またこれには60秒ルールというのがあって、直ぐに承認しないと、後からでは強化しにく
いと言われています。ですから良いと思ったことは直ぐに承認が原則なのです。が、実際は難しい。だからこそ、前回申し上げた毎月5分チェックの時間を仕組みで取
り入れ、何か月分も溜めないように承認して、望ましい方向へ誘導して行くのです。
「インセンティブを与える」について
前回モチベーション理論をお話しました。金銭は動機付けにはならないのがセオリーです。行動そのものを承認し、その社員に人間としての誇りと居場所を与え、
効力感を持たせることが最重要なのですが、しかし何ら報酬に反映されないのも考えもの。また管理する立場から言っても、何も物理的に与えず、承認光線だけを出
して管理してゆくのは実際問題としてやりにくい。
でも給与が振り込みで、給与明細に報奨金が載っているだけでは、有難味も薄い。やはり金一封封筒に入れ、短く理由を伝え、直接お渡しする方がいいでしょう。
但しきちっとした給与賞与制度があれば、その仕組みで受け止めてゆけばそれでも構わないでしょう。
「指導担当責任者を決める」
リンゲンルマン効果(社会的手抜き)という心理学理論があります。1対1で綱引きをすると100%の力で引き合うが、2人一組で引くとその力は93%まで下がり
、3人で引っ張り合うと85%というように人数が多くなればなるほど、各人の力は最大限発揮されず、逓減してゆくという理屈です。つまり「誰かがやってくれるだ
ろう」と責任分散の気持ちが生まれ、手抜き現象が起こることをいいます。
人材育成にはこのリンゲルマン効果を防止しなければなりません。誰かが教えるのではなく、教える責任担当者を決めることが肝要です。また人に教えるというの
は自分が分ってること、できることとは別次元に難しいものです。教える立場の社員も成長します。
必ず責任担当者を決めましょう。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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11年09月13日
従業員の能力(レベル)アップの方法を考える その5
従業員の能力(レベル)アップの方法を考える その5
1.能力基準でなく、仕事基準で考える(キャリアアップシートの活用)
2.対象者の損益分岐点を探る(給料分の稼ぎとはいくらか)
3.自分で対策を考えさせる
4.グラフを使って視える化する
5.毎月チェックする
6.いい行動は強化する
7.インセンティブを与える
8.指導担当責任者を決める
前回は上記のうち、4の「グラフを使って視える化する」について申し上げました。今回はその第5弾、「毎月チェックする」について、考えたいと思います。
従業員のキャリア形成を行う場合、半年ごとに1回のペースで、人事考課として行うことが一般的に行われています。おおよそ年2回支給するボーナスの査定期間に合わせて行うことが多い
ようです。
このテーマの本題とは少し外れますが、まず最初に確認しておきたいのは、この人事考課(と呼ぶことが多いもの)は、決して査定のために行うものではないという事です。そこには必ず、「
従業員のキャリアアップ」の視点、つまり従業員に継続的に成長して欲しいという視点がなければなりません。そのためにはどうしても査定というイメージの強い「人事考課」という言い方よりも、
「キャリアアップのための面談シート」とか「社員育成プロジェクト」とか、何でもいいですから社員の育成のために行っているということが分り易い呼び名にした方がいいでしょう。
ちなみに当社では「毎月 会社と従業員の確認シート」という名で行っています。
要するに何のために行っているのかという、「目的」がはっきりしていないとぼやけるのです。簡潔にまとめれば「経営目標を達成するための社員育成の仕組み」であり、その確認作業は「経
営の意思の伝達とフォードバック」の作業です。つまり会社が「こうして欲しい」「こうなって欲しい」というメッセージが社員に伝わっているか、そしてそれを受け止めて成長してくれているかを
確認する作業なのです。
それと前置きをもう一つ。二つの有名なモチベーション理論があります。まず一つはハーツバーグという臨床心理学者が唱えた二要因理論です。
ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるというのではなくて、「満足」に関わる要因と「不満足」に関わる要因は別のものであると考えられています。
満足に関わるのは、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」など。これらが満たされると満足感を覚えますが、欠けていても不満足を引き起こすわけではありません
。これらは「動機付け要因」と呼ばれます。
一方、不満足に関わるのは「会社の政策と管理方式」「監督」「給与」「対人関係」「作業条件」など。これらが不足すると不満足を引き起こしますが、満たされたからといっても満足感に繋が
るわけではないとされています。単に不満足を予防する意味しか持たないという意味で「衛生要因」と呼ばれます。
またアメリカの心理学者マズローは欲求理論を唱えました。これは人間の行動を引き起こす欲求は次の五つの階層を持つとした理論で、人間はこの順番でモチベーションが高まるとしまし
た。
1)生存の欲求(食欲、睡眠など生命の維持に関する欲求で労務管理で言うと生活できる賃金など)
2)安全の欲求(危険や不安から逃れたい、衣服や住居など生命に関するものを安定的に維持したいという欲求で労務で言うと安定した雇用など)
3)社会的欲求(帰属の欲求ともいい、集団に所属し仲間からの愛情を求める欲求)
4)自尊欲求(承認の欲求ともいい、他人から尊敬されたいとか、人の注目を得たいという欲求で、名声や地位を求める出世欲もこの欲求の一つ)
5)自己実現欲求(各人が自分を高めていこうとする欲求のことで、潜在的な自分の可能性の探求や自己の成長、発展を求める欲求)
人間は第1段階の生存の欲求が満たされると、より高次元の段階の欲求(第2~第4)を求めるようになり、最終的には第5段階の自己実現の欲求を求めるようになるとしています。
これらの考え方からも分るように、、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」など動機付け要因を通じて、自尊欲求や自己実現欲求が満たされるように誘導して行くのが、理想の姿
です。この理想に近づけるための手段が、いわゆる人事考課と呼ばれるものだと思います。
で、前置きが長くなりましたが、社員に成長して欲しいと強く望む中小企業ほど、また採用の段階で大手企業が採るような人材を採用できない中小企業ほど、この仕組みを導入してゆかな
いと、偶然の結果しかありません。偶然の結果とは、たまたまいい人が来てくれたとか、たまたまウチの企業に合ったとか、「偶然の産物」なのです。
そしてその仕組みで重要なのが、毎月チェックするということです。これは永年の経験上、確信的に言い得ます。なぜなら、半年に1回の確認では労使双方とも確認すべきことを忘れてしま
うからです。総括した重い面談は半年に1回でもいいですが、5分程度の短い時間で毎月簡単に会社と社員が確認し合える仕組みが必要です。
月末とか月初とか給与支給日とか、一定の日を設定しておくことをお勧めします。目的を見失わず、「こうして欲しい」「こうなって欲しい」というメッセージが社員に伝わっているか、そしてそ
れを受け止めて成長してくれているかを毎月確認しましょう。
そのための仕組み作りを当事務所ではお手伝いいたします。お気軽にご相談ください。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
1.能力基準でなく、仕事基準で考える(キャリアアップシートの活用)
2.対象者の損益分岐点を探る(給料分の稼ぎとはいくらか)
3.自分で対策を考えさせる
4.グラフを使って視える化する
5.毎月チェックする
6.いい行動は強化する
7.インセンティブを与える
8.指導担当責任者を決める
前回は上記のうち、4の「グラフを使って視える化する」について申し上げました。今回はその第5弾、「毎月チェックする」について、考えたいと思います。
従業員のキャリア形成を行う場合、半年ごとに1回のペースで、人事考課として行うことが一般的に行われています。おおよそ年2回支給するボーナスの査定期間に合わせて行うことが多い
ようです。
このテーマの本題とは少し外れますが、まず最初に確認しておきたいのは、この人事考課(と呼ぶことが多いもの)は、決して査定のために行うものではないという事です。そこには必ず、「
従業員のキャリアアップ」の視点、つまり従業員に継続的に成長して欲しいという視点がなければなりません。そのためにはどうしても査定というイメージの強い「人事考課」という言い方よりも、
「キャリアアップのための面談シート」とか「社員育成プロジェクト」とか、何でもいいですから社員の育成のために行っているということが分り易い呼び名にした方がいいでしょう。
ちなみに当社では「毎月 会社と従業員の確認シート」という名で行っています。
要するに何のために行っているのかという、「目的」がはっきりしていないとぼやけるのです。簡潔にまとめれば「経営目標を達成するための社員育成の仕組み」であり、その確認作業は「経
営の意思の伝達とフォードバック」の作業です。つまり会社が「こうして欲しい」「こうなって欲しい」というメッセージが社員に伝わっているか、そしてそれを受け止めて成長してくれているかを
確認する作業なのです。
それと前置きをもう一つ。二つの有名なモチベーション理論があります。まず一つはハーツバーグという臨床心理学者が唱えた二要因理論です。
ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるというのではなくて、「満足」に関わる要因と「不満足」に関わる要因は別のものであると考えられています。
満足に関わるのは、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」など。これらが満たされると満足感を覚えますが、欠けていても不満足を引き起こすわけではありません
。これらは「動機付け要因」と呼ばれます。
一方、不満足に関わるのは「会社の政策と管理方式」「監督」「給与」「対人関係」「作業条件」など。これらが不足すると不満足を引き起こしますが、満たされたからといっても満足感に繋が
るわけではないとされています。単に不満足を予防する意味しか持たないという意味で「衛生要因」と呼ばれます。
またアメリカの心理学者マズローは欲求理論を唱えました。これは人間の行動を引き起こす欲求は次の五つの階層を持つとした理論で、人間はこの順番でモチベーションが高まるとしまし
た。
1)生存の欲求(食欲、睡眠など生命の維持に関する欲求で労務管理で言うと生活できる賃金など)
2)安全の欲求(危険や不安から逃れたい、衣服や住居など生命に関するものを安定的に維持したいという欲求で労務で言うと安定した雇用など)
3)社会的欲求(帰属の欲求ともいい、集団に所属し仲間からの愛情を求める欲求)
4)自尊欲求(承認の欲求ともいい、他人から尊敬されたいとか、人の注目を得たいという欲求で、名声や地位を求める出世欲もこの欲求の一つ)
5)自己実現欲求(各人が自分を高めていこうとする欲求のことで、潜在的な自分の可能性の探求や自己の成長、発展を求める欲求)
人間は第1段階の生存の欲求が満たされると、より高次元の段階の欲求(第2~第4)を求めるようになり、最終的には第5段階の自己実現の欲求を求めるようになるとしています。
これらの考え方からも分るように、、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」など動機付け要因を通じて、自尊欲求や自己実現欲求が満たされるように誘導して行くのが、理想の姿
です。この理想に近づけるための手段が、いわゆる人事考課と呼ばれるものだと思います。
で、前置きが長くなりましたが、社員に成長して欲しいと強く望む中小企業ほど、また採用の段階で大手企業が採るような人材を採用できない中小企業ほど、この仕組みを導入してゆかな
いと、偶然の結果しかありません。偶然の結果とは、たまたまいい人が来てくれたとか、たまたまウチの企業に合ったとか、「偶然の産物」なのです。
そしてその仕組みで重要なのが、毎月チェックするということです。これは永年の経験上、確信的に言い得ます。なぜなら、半年に1回の確認では労使双方とも確認すべきことを忘れてしま
うからです。総括した重い面談は半年に1回でもいいですが、5分程度の短い時間で毎月簡単に会社と社員が確認し合える仕組みが必要です。
月末とか月初とか給与支給日とか、一定の日を設定しておくことをお勧めします。目的を見失わず、「こうして欲しい」「こうなって欲しい」というメッセージが社員に伝わっているか、そしてそ
れを受け止めて成長してくれているかを毎月確認しましょう。
そのための仕組み作りを当事務所ではお手伝いいたします。お気軽にご相談ください。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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11年09月05日
従業員の能力(レベル)アップの方法を考える その4
従業員の能力(レベル)アップの方法を考える その4
1.能力基準でなく、仕事基準で考える(キャリアアップシートの活用)
2.対象者の損益分岐点を探る(給料分の稼ぎとはいくらか)
3.自分で対策を考えさせる
4.グラフを使って視える化する
5.毎月チェックする
6.いい行動は強化する
7.インセンティブを与える
8.指導担当責任者を決める
前回は上記のうち、3の「自分で対策を考えさせる」について申し上げました。今回はその第4弾、「グラフを使って視える化する」に
ついて、考えたいと思います。
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱したメラビアンの法則というものがあります。この研究は人間のコミュニケーション
について何が影響を及ぼすかというもので、、話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報
が55%の割合であるとされました。つまり人は話の内容よりも見た目でほとんどを理解しているということを表しています。
この心理法則を利用したのかは分かりませんが、トヨタ自動車を始め、各方面で「視える化」が行われています。要するに「目で視る管
理」のことです。販売系の営業会社ではよく売上高やシェアをグラフにして行われていますが、中小企業では事務所へお邪魔しても、余り
見かけることがありません。大手のマネをするのではなく、身の丈に合った「視みる化」を仕掛けとして取り入れてみることをお勧めしま
す。これを行うと、従業員のレベルアップにも繋がるからです。
自分の経験ですが、かつて求人広告の営業マンでした。しかし特段ノルマはなく、3人の営業マンが皆で協力して紙面を満稿にすればいい
という空気でした。でも景気が悪く、世は求人どころではなく、ボードに貼り出した白紙紙面に受注した原稿枠で黒く埋めるのは大変でし
た。枠が埋まらずほとんど白いままのときすらあります。でも従業員時代の自分は気楽です。大した危機感もなく給料を安定してもらって
います。
ある日社長がマジックで白紙ボードに太線を2本引きました。白ボードが3分割されたのです。分割された横には3名それぞれの名前が書き
込まれました。それを目で見ると、自分の名前が書かれている範囲が白いままだとかっこ悪い。皆で仲良くではなく、自分の役割は最低こ
こまでということが「視える化」されたのです。たったこれだけのことです。
イメージが付きましたでしょうか?
ですから難しく考える必要はありません。その企業独自の「視える化」されたものを貼り出して欲しいのです。何でもいいです。
例えば、
・工数の棒グラフ(1時間当たり何個作っているか)
・賞与の壷(壷の絵の中に賞与原資が溜まってゆくイメージ。多ければ多いほど分配額が上がる)
・お客様からのお褒めメッセージカードの貼り出し(気持ちのいい店員の名前)
・無事故、無違反、無災害の記録(ゴールド賞、シルバー賞)
・退職金のポイントが給与明細欄外に加算され表示される などなど
あまり窮屈にならず、難しく考えず、「視える化」の仕掛けを一緒に考えて行きませんか?
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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1.能力基準でなく、仕事基準で考える(キャリアアップシートの活用)
2.対象者の損益分岐点を探る(給料分の稼ぎとはいくらか)
3.自分で対策を考えさせる
4.グラフを使って視える化する
5.毎月チェックする
6.いい行動は強化する
7.インセンティブを与える
8.指導担当責任者を決める
前回は上記のうち、3の「自分で対策を考えさせる」について申し上げました。今回はその第4弾、「グラフを使って視える化する」に
ついて、考えたいと思います。
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱したメラビアンの法則というものがあります。この研究は人間のコミュニケーション
について何が影響を及ぼすかというもので、、話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報
が55%の割合であるとされました。つまり人は話の内容よりも見た目でほとんどを理解しているということを表しています。
この心理法則を利用したのかは分かりませんが、トヨタ自動車を始め、各方面で「視える化」が行われています。要するに「目で視る管
理」のことです。販売系の営業会社ではよく売上高やシェアをグラフにして行われていますが、中小企業では事務所へお邪魔しても、余り
見かけることがありません。大手のマネをするのではなく、身の丈に合った「視みる化」を仕掛けとして取り入れてみることをお勧めしま
す。これを行うと、従業員のレベルアップにも繋がるからです。
自分の経験ですが、かつて求人広告の営業マンでした。しかし特段ノルマはなく、3人の営業マンが皆で協力して紙面を満稿にすればいい
という空気でした。でも景気が悪く、世は求人どころではなく、ボードに貼り出した白紙紙面に受注した原稿枠で黒く埋めるのは大変でし
た。枠が埋まらずほとんど白いままのときすらあります。でも従業員時代の自分は気楽です。大した危機感もなく給料を安定してもらって
います。
ある日社長がマジックで白紙ボードに太線を2本引きました。白ボードが3分割されたのです。分割された横には3名それぞれの名前が書き
込まれました。それを目で見ると、自分の名前が書かれている範囲が白いままだとかっこ悪い。皆で仲良くではなく、自分の役割は最低こ
こまでということが「視える化」されたのです。たったこれだけのことです。
イメージが付きましたでしょうか?
ですから難しく考える必要はありません。その企業独自の「視える化」されたものを貼り出して欲しいのです。何でもいいです。
例えば、
・工数の棒グラフ(1時間当たり何個作っているか)
・賞与の壷(壷の絵の中に賞与原資が溜まってゆくイメージ。多ければ多いほど分配額が上がる)
・お客様からのお褒めメッセージカードの貼り出し(気持ちのいい店員の名前)
・無事故、無違反、無災害の記録(ゴールド賞、シルバー賞)
・退職金のポイントが給与明細欄外に加算され表示される などなど
あまり窮屈にならず、難しく考えず、「視える化」の仕掛けを一緒に考えて行きませんか?
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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