12年05月09日
有期(期間)雇用契約を締結するときの留意点
有期(期間)雇用契約を締結するときの留意点 (平成24年5月号)
現在、有期労働契約について定めた労働契約法が改正されようとしています。その目玉は3つあり、(1)有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換、(2)有期労働契約の更新等(「雇止め法理」の法定化)、(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止─の3項目となっています。
そのうち(1)については期間の定めのある労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える場合は、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約の締結を使用者が承認したものとみなすとしています。つまり希望があれば5年以降は正社員になってしまうということです。
ただし、原則として6ヵ月以上の空白期間(いわゆるクーリング期間)がある場合は、前の契約期間を通算しないこととされています。また、この仕組みによって転換した期間の定めのない労働契約における労働条件は、別段の定めがない限り、従前と同一とするとしています。つまり給与形態など正社員用に変更する必要まではないということです。
次に(2)の「雇止め法理」に関しては、有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または、有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき、合理的期待が認められる場合には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約が更新(締結)されたものとみなす、とする規定を設けられる予定です。簡単に言うと、安易に更新している有期契約は期間満了により当然に打ち切れないということです。
施行日はまだ未定ですが、ここ数年以内であることは間違いなく、従来から有期労働契約は中小企業でも非常によく行われてきていることから、その運用に少なからぬ影響を及ぼすものと考えられます。ちなみに現在の労働契約法では有期労働契約について、以下第17条を設けています。
期間の定めのある労働契約
第17条 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
現在、17条第1項で途中解約を厳しく規制しています。有期契約は労使対等の原則から言えば、使用者もその期間までは雇用を維持する義務があるし、労働者も期間満了までは労働に従事する義務があるものですが、実態は労働者の途中解約は自由状態となっており、一方、使用者の途中解約はほとんど認められていません。
ただそれでも有期労働契約書の解約条項の中に、期間途中でも解雇権を発動することを謳っておくべきですが、通常の正社員を解雇する場合でも困難であるのに、期間途中で解約する道は争いになれば非常に分が悪いものになります。そしてここに 上記(1)(2)記載のような使用者にとって更に厳しい規定が入ってくることになるのです。
また厚労省の基準では、3回以上更新されているか、1年を超えて継続している場合はで雇い止めをする場合は、30日前までに更新拒絶の予告をしなければならないとされています。
ただ上記(2)の有期契約だからといって安易に打ち切りにできない、という考えは現在はまだ法律条文には記載がありませんが、従来から法の世界では確立した法理となっていました。ここでは法学講座の場ではありませんので、小難しいことは割愛しますが、要するに次のような場合は、今まででも裁判になれば雇い止めを認めない傾向にあるのです。
1 期間契約を形式上結んでいるが、形骸化しており、実態は無期契約と何ら変わらない状態になっているとき
2 形骸化しているとまでは言えないが、反復更新により更新への合理的な期待が生じているとき
3 反復更新もしていないが、契約当初から更新されることに期待を抱かせるような態様で契約しているとき
これら3つの態様に鑑みて、雇い止めが権利の濫用と判断されると、有期契約だからといって当然に終了できないのです。そしてこの態様の判断は以下のような要素で総合判断されることになっています。
1 業務の内容/要するに正社員と比較して業務内容に同一性があり恒常的か、それとも臨時的か
2 契約上の地位/労働条件や地位が正社員と比べてどうか
3 労使の認識/安易に更新があることを期待させる使用者の言動があるか
4 更新の手続/更新回数、年数はどうか、手続きは厳格に行われているか
5 他の労働者の状況/同様の労働者の契約更新の実態はどうか
6 有期契約締結の経緯/単に試用期間の代用としていないか
で、ここからが雇い止めが無効と言われないための、最低限の実務ポイントです。
1 まず更新手続きを厳格にすること
よく満了期を過ぎてから、遡及して更新しているケースをみます。絶対にダメです。必ず満了前に次期の契約についてどうするか、文書を交えてきちんと話し合うべきです。そして更新が決まったら、必ず新しい契約書を交わします。他の契約のように自動更新はないと思っておいてください。
2 更新の基準を明確にしておくこと
次の更新の可能性がある場合、どういった場合に更新するのか、逆に言えばどういったことがあれば更新しないのか、契約書の中にも書き込み、労使できちんと認識しておくべきです。仮に更新を拒絶する場合に非常に有効です。
3 安易に更新への期待を抱かせない
次期の更新がどうなるか分からない場合、「他の人は皆、更新されている」「これは形式上のもので普通は更新する」など、安易に更新への期待が生じるような言動は慎むべきです。長期雇用を前提にしているなら、初めから無期契約にするか、上記2にように更新基準を明確にするべきです。
4 更新しない場合はそれを予告した上で最後の更新をする
もし経営上何らかの事情で雇い止めするときで、直ちに解約するほどでもないときは、あと1回だけ更新して、「今回の更新が最後になります」ことを口頭でも契約書でも明示して、それでよければ更新してもらうべきです。この場合必ずしも従前と同じ期間でなければならないことはありません。これにより少なくとも次期への合理的期待権は減殺されます。
5 経営者だけの都合でむやみやたらに有期契約を濫用しない。
説明するまでもないでしょう。人を使う上で品格を問われるケースすらあるでしょう。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
現在、有期労働契約について定めた労働契約法が改正されようとしています。その目玉は3つあり、(1)有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換、(2)有期労働契約の更新等(「雇止め法理」の法定化)、(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止─の3項目となっています。
そのうち(1)については期間の定めのある労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える場合は、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約の締結を使用者が承認したものとみなすとしています。つまり希望があれば5年以降は正社員になってしまうということです。
ただし、原則として6ヵ月以上の空白期間(いわゆるクーリング期間)がある場合は、前の契約期間を通算しないこととされています。また、この仕組みによって転換した期間の定めのない労働契約における労働条件は、別段の定めがない限り、従前と同一とするとしています。つまり給与形態など正社員用に変更する必要まではないということです。
次に(2)の「雇止め法理」に関しては、有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または、有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき、合理的期待が認められる場合には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約が更新(締結)されたものとみなす、とする規定を設けられる予定です。簡単に言うと、安易に更新している有期契約は期間満了により当然に打ち切れないということです。
施行日はまだ未定ですが、ここ数年以内であることは間違いなく、従来から有期労働契約は中小企業でも非常によく行われてきていることから、その運用に少なからぬ影響を及ぼすものと考えられます。ちなみに現在の労働契約法では有期労働契約について、以下第17条を設けています。
期間の定めのある労働契約
第17条 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
現在、17条第1項で途中解約を厳しく規制しています。有期契約は労使対等の原則から言えば、使用者もその期間までは雇用を維持する義務があるし、労働者も期間満了までは労働に従事する義務があるものですが、実態は労働者の途中解約は自由状態となっており、一方、使用者の途中解約はほとんど認められていません。
ただそれでも有期労働契約書の解約条項の中に、期間途中でも解雇権を発動することを謳っておくべきですが、通常の正社員を解雇する場合でも困難であるのに、期間途中で解約する道は争いになれば非常に分が悪いものになります。そしてここに 上記(1)(2)記載のような使用者にとって更に厳しい規定が入ってくることになるのです。
また厚労省の基準では、3回以上更新されているか、1年を超えて継続している場合はで雇い止めをする場合は、30日前までに更新拒絶の予告をしなければならないとされています。
ただ上記(2)の有期契約だからといって安易に打ち切りにできない、という考えは現在はまだ法律条文には記載がありませんが、従来から法の世界では確立した法理となっていました。ここでは法学講座の場ではありませんので、小難しいことは割愛しますが、要するに次のような場合は、今まででも裁判になれば雇い止めを認めない傾向にあるのです。
1 期間契約を形式上結んでいるが、形骸化しており、実態は無期契約と何ら変わらない状態になっているとき
2 形骸化しているとまでは言えないが、反復更新により更新への合理的な期待が生じているとき
3 反復更新もしていないが、契約当初から更新されることに期待を抱かせるような態様で契約しているとき
これら3つの態様に鑑みて、雇い止めが権利の濫用と判断されると、有期契約だからといって当然に終了できないのです。そしてこの態様の判断は以下のような要素で総合判断されることになっています。
1 業務の内容/要するに正社員と比較して業務内容に同一性があり恒常的か、それとも臨時的か
2 契約上の地位/労働条件や地位が正社員と比べてどうか
3 労使の認識/安易に更新があることを期待させる使用者の言動があるか
4 更新の手続/更新回数、年数はどうか、手続きは厳格に行われているか
5 他の労働者の状況/同様の労働者の契約更新の実態はどうか
6 有期契約締結の経緯/単に試用期間の代用としていないか
で、ここからが雇い止めが無効と言われないための、最低限の実務ポイントです。
1 まず更新手続きを厳格にすること
よく満了期を過ぎてから、遡及して更新しているケースをみます。絶対にダメです。必ず満了前に次期の契約についてどうするか、文書を交えてきちんと話し合うべきです。そして更新が決まったら、必ず新しい契約書を交わします。他の契約のように自動更新はないと思っておいてください。
2 更新の基準を明確にしておくこと
次の更新の可能性がある場合、どういった場合に更新するのか、逆に言えばどういったことがあれば更新しないのか、契約書の中にも書き込み、労使できちんと認識しておくべきです。仮に更新を拒絶する場合に非常に有効です。
3 安易に更新への期待を抱かせない
次期の更新がどうなるか分からない場合、「他の人は皆、更新されている」「これは形式上のもので普通は更新する」など、安易に更新への期待が生じるような言動は慎むべきです。長期雇用を前提にしているなら、初めから無期契約にするか、上記2にように更新基準を明確にするべきです。
4 更新しない場合はそれを予告した上で最後の更新をする
もし経営上何らかの事情で雇い止めするときで、直ちに解約するほどでもないときは、あと1回だけ更新して、「今回の更新が最後になります」ことを口頭でも契約書でも明示して、それでよければ更新してもらうべきです。この場合必ずしも従前と同じ期間でなければならないことはありません。これにより少なくとも次期への合理的期待権は減殺されます。
5 経営者だけの都合でむやみやたらに有期契約を濫用しない。
説明するまでもないでしょう。人を使う上で品格を問われるケースすらあるでしょう。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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12年04月16日
中小企業のメンタルへルス問題 その5 ~うつ病社員の復職の流れ~
●中小企業のメンタルへルス問題 その5 ~うつ病社員の復職の流れ~
精神疾患の場合、一番悩ましいのが復職判断です。ポイントは二つ、
1)治癒が大前提であること
2)あくまでも最終的に復職判断を下すのは医師ではなく、人事権のある会社であること
これを押さえておいてください。治癒とは休職前に行っていた通常の業務を遂行できる程度に回復することをいいます。
また主治医の診断書をどう見るかですが、病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、直ちに職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限りません。また従業員や家族の希望が含まれている場合もありえます。従って主治医は病気を治す専門家であって、就業が可能かどうかの機能性を評価する専門家ではないということです。
①復職への基本的な流れ
ア)復職願により労働者本人の職場復帰を希望する旨の意思表示の確認
↓
イ)主治医による就業可能との診断書
↓
ウ)更に情報を得るために主治医と面談または文書により主治医から詳細な情報提供を依頼
↓
エ)産業医又は会社指定医による本人との面談
↓
オ)企業としての就業可否の判断(復職又は休職継続或いは退職)
ウは当該労働者の企業での勤務時間や仕事内容等の詳細情報を提供し、以下のようなことを聞きます。
・抑うつ状態など抽象的ではなく、具体的な病名
・これまでの治療経過と回復状況
・今後の治療の見通し(通院頻度など)
・職務遂行能力の回復具合
・業務上必要な配慮措置やその期間など
エにおいて産業医がいない場合、他の医師への受診命令は可能かということですが、就業規則に根拠規定があれば問題なく、仮に規定がなくとも安全配慮義務の必要上、必要な受診命令は可能です。
またオの会社の判断は、個人に責任が集中しないように復職判定委員会のような合議体で決定するのが望ましいでしょう。
②復職後
1)まずは元の職場へ復帰が大前提です。但し明らかに過重労働職場やハラスメントが原因となっている場合は、異動も考えます。ただこの場合でも人事権は会社にある大原則を肝に銘ずべきで、必要以上に配慮しすぎないことです。
2)リハビリ(試し)勤務(復職支援)
「休職中の社員(業務量、職責など軽減することで労働者の職場復帰を円滑に進める治療への職場協力)」として扱うのか、「復帰後の社員(使用者が本当に労務提供可能かどうかを判断するという試験的要素)」として扱うか、制度設計が必要です。
前者のケースでは一般的に模擬出勤や通勤訓練として行い、あくまでも休職中として、復職判断のために行うことが多く、指揮命令に基づく労務提供はなし、賃金・交通費なし、労災補償なし、となります。
また後者のケースでは復職後の措置として行うことが多く、出勤した時間に応じて賃金支払い、短時間(時給)勤務、軽作業への従事、残業・深夜労働の禁止、出張制限、危険業務・運転作業の制限、窓口業務の制限等をおこないます。
いずれにしても概ね3ヶ月を目安とし、それ以上の期間配慮が必要ならそもそも復帰が適切でないと判断されます。
③復職困難なとき
いたずらに温情をかけず、制度に基づいて粛々と対応します。退職の機会は休職満了時の一度しかありません。ただ退職になる場合でも、非難感情を和らげるためにも、退職後の生活保障につてきちんと説明してあげることが肝要です(傷病手当金、失業保険、障害年金、社会保険の切り替え、住民税や確定申告など)。
④最後にメンタルヘルスを減らすための労務管理
1)コーチングセンスを磨く
基本的スキルは質問と傾聴につきます。その中でもうなづく・笑顔・承認・感謝・誉めるは、コーチングの代表格です。
ストレスは単に労働時間や仕事の難易度で決まるのではなく、ストレス反応に与える影響が大きいのはストレス増強要因より緩和要因です。
①仕事の量 ②仕事の質 ③人間関係 < ④裁量権 ⑤達成感 ⑥上司同僚の支援
← ストレス増強要因 → ← ストレス緩和要因 →
2)ハラスメントはしない
ア)セクハラ 男女雇用機会均等法違反!!
イ)パワハラ 職場において職務上の地位や影響力に基づき、相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、その人や周囲の人に身体的・精神的な苦痛を与え、その就業環境を悪化させること。労災認定もされ易い。
3)長時間労働(過重労働)はさせない
月80時間以上の時間外労働はイエローカード、100時間以上はレッドカードと考えるべき。
4)無理な退職勧奨はしない
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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精神疾患の場合、一番悩ましいのが復職判断です。ポイントは二つ、
1)治癒が大前提であること
2)あくまでも最終的に復職判断を下すのは医師ではなく、人事権のある会社であること
これを押さえておいてください。治癒とは休職前に行っていた通常の業務を遂行できる程度に回復することをいいます。
また主治医の診断書をどう見るかですが、病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、直ちに職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限りません。また従業員や家族の希望が含まれている場合もありえます。従って主治医は病気を治す専門家であって、就業が可能かどうかの機能性を評価する専門家ではないということです。
①復職への基本的な流れ
ア)復職願により労働者本人の職場復帰を希望する旨の意思表示の確認
↓
イ)主治医による就業可能との診断書
↓
ウ)更に情報を得るために主治医と面談または文書により主治医から詳細な情報提供を依頼
↓
エ)産業医又は会社指定医による本人との面談
↓
オ)企業としての就業可否の判断(復職又は休職継続或いは退職)
ウは当該労働者の企業での勤務時間や仕事内容等の詳細情報を提供し、以下のようなことを聞きます。
・抑うつ状態など抽象的ではなく、具体的な病名
・これまでの治療経過と回復状況
・今後の治療の見通し(通院頻度など)
・職務遂行能力の回復具合
・業務上必要な配慮措置やその期間など
エにおいて産業医がいない場合、他の医師への受診命令は可能かということですが、就業規則に根拠規定があれば問題なく、仮に規定がなくとも安全配慮義務の必要上、必要な受診命令は可能です。
またオの会社の判断は、個人に責任が集中しないように復職判定委員会のような合議体で決定するのが望ましいでしょう。
②復職後
1)まずは元の職場へ復帰が大前提です。但し明らかに過重労働職場やハラスメントが原因となっている場合は、異動も考えます。ただこの場合でも人事権は会社にある大原則を肝に銘ずべきで、必要以上に配慮しすぎないことです。
2)リハビリ(試し)勤務(復職支援)
「休職中の社員(業務量、職責など軽減することで労働者の職場復帰を円滑に進める治療への職場協力)」として扱うのか、「復帰後の社員(使用者が本当に労務提供可能かどうかを判断するという試験的要素)」として扱うか、制度設計が必要です。
前者のケースでは一般的に模擬出勤や通勤訓練として行い、あくまでも休職中として、復職判断のために行うことが多く、指揮命令に基づく労務提供はなし、賃金・交通費なし、労災補償なし、となります。
また後者のケースでは復職後の措置として行うことが多く、出勤した時間に応じて賃金支払い、短時間(時給)勤務、軽作業への従事、残業・深夜労働の禁止、出張制限、危険業務・運転作業の制限、窓口業務の制限等をおこないます。
いずれにしても概ね3ヶ月を目安とし、それ以上の期間配慮が必要ならそもそも復帰が適切でないと判断されます。
③復職困難なとき
いたずらに温情をかけず、制度に基づいて粛々と対応します。退職の機会は休職満了時の一度しかありません。ただ退職になる場合でも、非難感情を和らげるためにも、退職後の生活保障につてきちんと説明してあげることが肝要です(傷病手当金、失業保険、障害年金、社会保険の切り替え、住民税や確定申告など)。
④最後にメンタルヘルスを減らすための労務管理
1)コーチングセンスを磨く
基本的スキルは質問と傾聴につきます。その中でもうなづく・笑顔・承認・感謝・誉めるは、コーチングの代表格です。
ストレスは単に労働時間や仕事の難易度で決まるのではなく、ストレス反応に与える影響が大きいのはストレス増強要因より緩和要因です。
①仕事の量 ②仕事の質 ③人間関係 < ④裁量権 ⑤達成感 ⑥上司同僚の支援
← ストレス増強要因 → ← ストレス緩和要因 →
2)ハラスメントはしない
ア)セクハラ 男女雇用機会均等法違反!!
イ)パワハラ 職場において職務上の地位や影響力に基づき、相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、その人や周囲の人に身体的・精神的な苦痛を与え、その就業環境を悪化させること。労災認定もされ易い。
3)長時間労働(過重労働)はさせない
月80時間以上の時間外労働はイエローカード、100時間以上はレッドカードと考えるべき。
4)無理な退職勧奨はしない
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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12年03月08日
解雇するほどでもないが、何となく合わない社員をどう考えるか?
今回は、現在シリーズでお届けしております、「中小企業のメンタルヘルス対策 その5」は次回にお届けすることとして、現場でよく遭遇する標記のテーマについて考えたいと思います。
さて日本経済の空洞化が進んでいるといわれ、その要因として六重苦が報じられています。その内容は円高、法人税高、貿易自由化(TPP)の遅れ、環境規制、電力不足と共に労働規制というのがあります。日本はどうやら企業にとって労働規制が厳しいようで、その典型が解雇規制と考えられます。日本の場合、入り口に当たる採用に関しては広い裁量権が認められているのですが、出口に当たる解雇は非常に厳しいのです。裁判になれば一旦雇った人を、ちょっとやそっとでクビに出来ないのです。
で、現実的に労務管理を行う上で、解雇をしたいと思う場面は、「能力不足」「勤務態度不良」という立証が難しい曖昧な事由が多いのです。そして後者の「勤務態度不良」というのは更にやっかいで、大きく二つに分類でき、一つは生来、協調性がないとか反抗的であるとか、気質的な執務態度自体の問題であり、もう一つは経営者と考え方、価値観が合わないことから来る共感性欠如や反抗的な態度です。そしてこの極めて曖昧な事由で解雇することは法的にほとんど不可能と言えるくらい困難です。しかし一緒にやって行くには非常にストレスになる。このような経営者と共感できないことから反抗的とも言える言動を繰り返す社員を、どのように考えればいいのでしょうか?
この問題を考えるとき、私はこのように考えています。最終的には社員が折れるべきだと。それが嫌なら自ら身を引くべきだと。
特に小規模企業の場合、実態上会社と経営者は分離されておらず、一体不可分の関係です。そして経営者は経営上起こりうる全てのリスクに最終的に向き合うこととなります。出資金額の範囲内で責任を取れば良いというような限定的なことにはなっていません。如何なる経営上の問題が生じても、お客様に対して、取引業者に対して、そして社員とその家族に対して最終的に経営者が全責任を負うのです。極論すれば墓場まで会社を背負って行くのです。経営者は会社を選ぶことができません。逃げることが出来ないのです。
一方、社員の方はどうかというと、最終的に会社がピンチになっても退職というリスクさえ甘受すれば、その他の諸々の責任を負う立場ではありません。しかも失業保険など社会保障政策にも守られています。いざとなれば、逃げることが出来るし、会社や経営者を自ら選択する自由もあるのです。
勿論、経営者に対する諌言は大いに結構です。むしろ経営者は社員が意見を出してくれるのを本心では望んでいるものです。ましてや経営者の方針や計画に法違反や公序良俗に反するような行いがある場合は諌めるのは当然として、方向性が間違っているのではないかという場合にイエスマンになるのではなく、自らの考えを表明することを否定するものではありません。むしろその方が望ましい部下の姿でしょう。
しかし方針や考え方がどうしても合わなくとも、その結果に対して最終的に全責任を取るのは経営者です。そのリスクは経営者が引き受けるのです。リスクを取るのは社員の方ではありません。であるなら、最後は折れるべきです。もしそれができないのなら、自ら身を引き、違う経営者の元でその力を発揮すべきです。その方が社員にとっても、良いことです。嫌な経営者の元でくすぶる必要はありません。そこで意地を張る必要もない。合う環境で光ることを目指す方がずっといい。
仕事に対する価値観は人それぞれ違いがあるでしょう。ただ確実に言えることは仕事は少なく見積もって人生の3分の1を過ごします。また会社での人間関係は場合によっては家族以上に長い時間でお付き合いします。その大事な時間が不満だらけでくすぶった時間でいいはずがありません。
残念ながら人間はそう大きく変われません。経営者も変わらないのです。そしてその経営者はその会社にずっといます。経営者が居なくなる状況はありません。その状況を変化させられるのは、離脱する事由がある社員でしかないのです。それが現実だと思うのです。
自分の考えを持ち、意見を出し、提案するのは大いに結構。でもどうしても経営者と合わないのなら、自ら身を引き、新たな可能性を模索してもらいましょう。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
さて日本経済の空洞化が進んでいるといわれ、その要因として六重苦が報じられています。その内容は円高、法人税高、貿易自由化(TPP)の遅れ、環境規制、電力不足と共に労働規制というのがあります。日本はどうやら企業にとって労働規制が厳しいようで、その典型が解雇規制と考えられます。日本の場合、入り口に当たる採用に関しては広い裁量権が認められているのですが、出口に当たる解雇は非常に厳しいのです。裁判になれば一旦雇った人を、ちょっとやそっとでクビに出来ないのです。
で、現実的に労務管理を行う上で、解雇をしたいと思う場面は、「能力不足」「勤務態度不良」という立証が難しい曖昧な事由が多いのです。そして後者の「勤務態度不良」というのは更にやっかいで、大きく二つに分類でき、一つは生来、協調性がないとか反抗的であるとか、気質的な執務態度自体の問題であり、もう一つは経営者と考え方、価値観が合わないことから来る共感性欠如や反抗的な態度です。そしてこの極めて曖昧な事由で解雇することは法的にほとんど不可能と言えるくらい困難です。しかし一緒にやって行くには非常にストレスになる。このような経営者と共感できないことから反抗的とも言える言動を繰り返す社員を、どのように考えればいいのでしょうか?
この問題を考えるとき、私はこのように考えています。最終的には社員が折れるべきだと。それが嫌なら自ら身を引くべきだと。
特に小規模企業の場合、実態上会社と経営者は分離されておらず、一体不可分の関係です。そして経営者は経営上起こりうる全てのリスクに最終的に向き合うこととなります。出資金額の範囲内で責任を取れば良いというような限定的なことにはなっていません。如何なる経営上の問題が生じても、お客様に対して、取引業者に対して、そして社員とその家族に対して最終的に経営者が全責任を負うのです。極論すれば墓場まで会社を背負って行くのです。経営者は会社を選ぶことができません。逃げることが出来ないのです。
一方、社員の方はどうかというと、最終的に会社がピンチになっても退職というリスクさえ甘受すれば、その他の諸々の責任を負う立場ではありません。しかも失業保険など社会保障政策にも守られています。いざとなれば、逃げることが出来るし、会社や経営者を自ら選択する自由もあるのです。
勿論、経営者に対する諌言は大いに結構です。むしろ経営者は社員が意見を出してくれるのを本心では望んでいるものです。ましてや経営者の方針や計画に法違反や公序良俗に反するような行いがある場合は諌めるのは当然として、方向性が間違っているのではないかという場合にイエスマンになるのではなく、自らの考えを表明することを否定するものではありません。むしろその方が望ましい部下の姿でしょう。
しかし方針や考え方がどうしても合わなくとも、その結果に対して最終的に全責任を取るのは経営者です。そのリスクは経営者が引き受けるのです。リスクを取るのは社員の方ではありません。であるなら、最後は折れるべきです。もしそれができないのなら、自ら身を引き、違う経営者の元でその力を発揮すべきです。その方が社員にとっても、良いことです。嫌な経営者の元でくすぶる必要はありません。そこで意地を張る必要もない。合う環境で光ることを目指す方がずっといい。
仕事に対する価値観は人それぞれ違いがあるでしょう。ただ確実に言えることは仕事は少なく見積もって人生の3分の1を過ごします。また会社での人間関係は場合によっては家族以上に長い時間でお付き合いします。その大事な時間が不満だらけでくすぶった時間でいいはずがありません。
残念ながら人間はそう大きく変われません。経営者も変わらないのです。そしてその経営者はその会社にずっといます。経営者が居なくなる状況はありません。その状況を変化させられるのは、離脱する事由がある社員でしかないのです。それが現実だと思うのです。
自分の考えを持ち、意見を出し、提案するのは大いに結構。でもどうしても経営者と合わないのなら、自ら身を引き、新たな可能性を模索してもらいましょう。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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12年02月06日
中小企業のメンタルへルス問題 ④
~うつ病社員の休職制度への乗せ方~
1.休職制度への基本的な流れ
(1) 心の問題による休業要の診断書の受領
(まず主治医から必要な療養見込み期間を記載した診断書を取るところから始まります)
↓
(2) 就業規則の休職の規定に基づき運用
(自社の就業規則の休職に関する規定内容を確認します。休職を経ないでの解雇は無効の可能性があります。多くの中小企業ではこの休職規定の作り込みが甘いため、実務で使用できません。早急な整備が必要です)
↓
(3) 休職制度の内容の説明
療養できる期間、退職となる時期(休職満了時期)、欠勤と出勤を繰り返す場合の通算制度、有給休暇の使用の可否など、休職制度の内容を説明します。この際休職によって、安心して療養に専念するよう伝えると共に、万が一復職できないときは退職になる旨をきちんと伝えます)
↓
(4) 休業中の所得保障、負担金等を当該従業員に説明
(健康保険から休業中の所得保障である傷病手当金があることを説明して安心感を与える(仮に退職となっても受給権は継続することもあります)と共に、保険料や住民税の会社預かり分をどうするかを確認しておきます)
↓
(5) 休業中の接触の方法の確認
(療養中の連絡先を確認しておきます。また会社の窓口の統一を図ります。例えば、
「毎月、傷病手当金の申請書を出す際に、○○まで病状を報告して欲しい」
「主治医の診断を受けた日に連絡をいただけますか」といった具合です。
また接触手段は当初は負担のかからないメールから始まり、→電話→面談と移行してゆくのが望ましいです。
本人が接触を拒否するときは、家族や仲の良い同僚のサポートを受けることも検討します。とにかくほったらかしは良くありません。
↓
(6) 復職時の手続き説明
(復職願いや復帰可能の診断書を出せば、直ぐに復職できる誤解を招かないようにします。復職に関しては次号でお話しますが、休職制度の中で復職判断が最も難しいのです。本人と話が進まないときは、場合によりご家族にお伝えすることもありえます。例えば、
「当社における職場復帰においては、主治医の職場復帰可能な旨の診断書が提出された後に、産業医(会社指定医)の診察や総務部における判断がありますので、職場復帰を希望される場合には、遅くとも休職期間満了日の●週間前までに復職願いに添えて、主治医の診断書を提出してください」 といった具合です。
↓
(7) 外部利用機関の案内、情報提供
当該従業員への配慮として、無料で利用できる心の問題の相談機関がいくつかありますので、情報提供してあげると親切でしょう。
例えば以下のような機関があります。
◎大阪労災病院勤労者予防医療センター(勤労者心の電話相談)
TEL072-251-9556
◎大阪府こころの健康総合センター(こころの電話相談専用ダイヤル)
TEL06-6607-8814
◎働く人のメンタルヘルス ポータルサイト http://kokoro.mhlw.go.jp/
2.休職中の対応
一旦、休職を発令しても、上記(5)のように接触を試み、ほったらかしにするのは良くありません。接触自体はNGではないのです。
最初はメールでのやり取りなど負担の掛からない接触方法から徐々に電話、面談へと移行してゆきますが、会社での面談には通勤ラッシュ時間や他の社員と顔を合わせる時間帯を避けるなどの配慮も必要です。また休職期間満了前には余裕を持って休職が満了する通知文を出す配慮も欲しいところです。
また、当該従業員への配慮だけでなく、周りの従業員への配慮と個人情報保護も必要です。病名まで公表する必要はないと思いますが、例えば
「しばらくは人数が減った分、各人に負担をお願いすることになるかもしれません。今回はたまたま○○さんが対象だが、誰がつらい状況になっても同じ対応を受ける権利があります。今回は皆でカバーしてやっていきましょう」といった具合です。
次回は復職に関してお話いたします。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
1.休職制度への基本的な流れ
(1) 心の問題による休業要の診断書の受領
(まず主治医から必要な療養見込み期間を記載した診断書を取るところから始まります)
↓
(2) 就業規則の休職の規定に基づき運用
(自社の就業規則の休職に関する規定内容を確認します。休職を経ないでの解雇は無効の可能性があります。多くの中小企業ではこの休職規定の作り込みが甘いため、実務で使用できません。早急な整備が必要です)
↓
(3) 休職制度の内容の説明
療養できる期間、退職となる時期(休職満了時期)、欠勤と出勤を繰り返す場合の通算制度、有給休暇の使用の可否など、休職制度の内容を説明します。この際休職によって、安心して療養に専念するよう伝えると共に、万が一復職できないときは退職になる旨をきちんと伝えます)
↓
(4) 休業中の所得保障、負担金等を当該従業員に説明
(健康保険から休業中の所得保障である傷病手当金があることを説明して安心感を与える(仮に退職となっても受給権は継続することもあります)と共に、保険料や住民税の会社預かり分をどうするかを確認しておきます)
↓
(5) 休業中の接触の方法の確認
(療養中の連絡先を確認しておきます。また会社の窓口の統一を図ります。例えば、
「毎月、傷病手当金の申請書を出す際に、○○まで病状を報告して欲しい」
「主治医の診断を受けた日に連絡をいただけますか」といった具合です。
また接触手段は当初は負担のかからないメールから始まり、→電話→面談と移行してゆくのが望ましいです。
本人が接触を拒否するときは、家族や仲の良い同僚のサポートを受けることも検討します。とにかくほったらかしは良くありません。
↓
(6) 復職時の手続き説明
(復職願いや復帰可能の診断書を出せば、直ぐに復職できる誤解を招かないようにします。復職に関しては次号でお話しますが、休職制度の中で復職判断が最も難しいのです。本人と話が進まないときは、場合によりご家族にお伝えすることもありえます。例えば、
「当社における職場復帰においては、主治医の職場復帰可能な旨の診断書が提出された後に、産業医(会社指定医)の診察や総務部における判断がありますので、職場復帰を希望される場合には、遅くとも休職期間満了日の●週間前までに復職願いに添えて、主治医の診断書を提出してください」 といった具合です。
↓
(7) 外部利用機関の案内、情報提供
当該従業員への配慮として、無料で利用できる心の問題の相談機関がいくつかありますので、情報提供してあげると親切でしょう。
例えば以下のような機関があります。
◎大阪労災病院勤労者予防医療センター(勤労者心の電話相談)
TEL072-251-9556
◎大阪府こころの健康総合センター(こころの電話相談専用ダイヤル)
TEL06-6607-8814
◎働く人のメンタルヘルス ポータルサイト http://kokoro.mhlw.go.jp/
2.休職中の対応
一旦、休職を発令しても、上記(5)のように接触を試み、ほったらかしにするのは良くありません。接触自体はNGではないのです。
最初はメールでのやり取りなど負担の掛からない接触方法から徐々に電話、面談へと移行してゆきますが、会社での面談には通勤ラッシュ時間や他の社員と顔を合わせる時間帯を避けるなどの配慮も必要です。また休職期間満了前には余裕を持って休職が満了する通知文を出す配慮も欲しいところです。
また、当該従業員への配慮だけでなく、周りの従業員への配慮と個人情報保護も必要です。病名まで公表する必要はないと思いますが、例えば
「しばらくは人数が減った分、各人に負担をお願いすることになるかもしれません。今回はたまたま○○さんが対象だが、誰がつらい状況になっても同じ対応を受ける権利があります。今回は皆でカバーしてやっていきましょう」といった具合です。
次回は復職に関してお話いたします。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
12年01月11日
中小企業のメンタルへルス問題 ③
~うつ病?の従業員が出た場合の対応方法~
明けましておめでとうございます。旧年中は本メルマガにお付き合い頂きまして、ありがとうございました。本年も何卒よろしくお願いいたします。
さて、今回は中小企業のメンタルへルス問題の第3回、実際にうつ病の従業員が発生した場合にどのような対応をしてゆけば良いのかについてお話します。
1.初期対応
1)いつもと違う行動に気づく
これに気づくことができるのは日常的に接している管理者です。専門家でもその人がいつもと比べてどうか、ということは中々わかりません。例えば次のようなケースです。
<いつもよりミスが多い、時間がかかっている、イライラしている、塞ぎこんでいる>
こういったいつもと違う兆候を感じたら、恐れず、積極的に声をかけてみましょう。
「最近、○○さんの作った書類に目を通していると、以前だったら余り見かけなかった誤字や脱字が目立つので体調でも悪いのかと心配している。一度ゆっくり話を聞かせてもらえないか?」
この際、重要なことは、受容・傾聴・共感マインドを持つことです。そして次のことも確認します。
「きちんと眠れていますか?」「好きなことを楽しめていますか?」
どちらもNOならメンタルヘルス不調を疑ってかかる必要があると思われます。勿論、素人判断はできませんが、次の受診を促すステップへ進むべきかどうかの判断材料となります。そして全体として話を聴くことに注力し、聴き終わると、
「今日は話してくれてありがとう」
というような感じで一旦話を終えます。
また、管理者に問題の原因が有る場合があり、上司に話しにくいこともありますので、そのような場合には他の相談者に振ることも検討します。他にも、日内変動に注意が必要です。うつ病の一般的な傾向として、午前中具合が悪くて、夕方ごろ調子が良くなってくるという変化が見られます。調子のよい時に話を聞くと、元々真面目、頑張りや、几帳面などの因子を持つ人が多いので、「頑張ります」 と虚勢を張ってしまうことがあります。逆に調子の悪いときに「気のせいだ、頑張れ!」は禁句です。かえって苦しめることになりかねません。頑張りたいのに頑張れない症状だからです。
2)受診を促す
話を聴いた結果、メンタルヘルス不調が疑われる場合は、ためらわず、専門医への受診を勧めます。
「今の状況では仕事をすることでさらに体調が悪化しないか心配している。専門の医師に仕事をしてもよいのか意見書を出してもらいたいのだが」
その後、会社として一定の対応が必要かどうかは、主治医の診断書を取るところからすべてが始まります。この際、療養の見込み期間も記入してもらうのが望ましいでしょう。そして専門医が医学的に問題なしと判断すれば、会社としてはそれ以上の配慮義務はないと考えます。しかしメンタルヘルス不調の診断書が提出されたら、診断書に記載されている必要療養期間は休業させる必要があります。無視して就労させてはいけません。そして会社の休職規定がどのようになっているのかを確認します。この際大事なことは、メンタル不調者に対応できる休職規定※(就業規則)が整備されていなければならないのは言うまでもありません。もし整備が不十分な場合は、今から専門家へ作成を依頼しておいた方がいいでしょう。
※休職とは・・・・・本来、私傷病など従業員側の事情により、労働が完全に提供できない場合、債務不履行として解雇できますが、いきなり解雇せず、一定の猶予期間を設け、その終期を待って復職できる状態にならないときに自動的に解約するもので、解雇の猶予措置と理解されています。労基法上は一切規制がなく、原則として会社が自由に制度設計できます。
ここで重要なことは、ケースバイケースの対応ではなく、きちんと粛々と休職制度の上に乗せることです。これを誤ると不完全な就労をいつまでもだらだら受領しなければならなかったり、いつまでも休んでおりいつ復帰できるかわからなかったり、他の従業員から不満が溜まってきたり、後任の人事にも影響するなど対応を困難にし、終局的には解雇を検討せざるを得なくなり、問題を一層複雑化させます。
次回は休職制度への乗せ方からお話してまいります。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
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明けましておめでとうございます。旧年中は本メルマガにお付き合い頂きまして、ありがとうございました。本年も何卒よろしくお願いいたします。
さて、今回は中小企業のメンタルへルス問題の第3回、実際にうつ病の従業員が発生した場合にどのような対応をしてゆけば良いのかについてお話します。
1.初期対応
1)いつもと違う行動に気づく
これに気づくことができるのは日常的に接している管理者です。専門家でもその人がいつもと比べてどうか、ということは中々わかりません。例えば次のようなケースです。
<いつもよりミスが多い、時間がかかっている、イライラしている、塞ぎこんでいる>
こういったいつもと違う兆候を感じたら、恐れず、積極的に声をかけてみましょう。
「最近、○○さんの作った書類に目を通していると、以前だったら余り見かけなかった誤字や脱字が目立つので体調でも悪いのかと心配している。一度ゆっくり話を聞かせてもらえないか?」
この際、重要なことは、受容・傾聴・共感マインドを持つことです。そして次のことも確認します。
「きちんと眠れていますか?」「好きなことを楽しめていますか?」
どちらもNOならメンタルヘルス不調を疑ってかかる必要があると思われます。勿論、素人判断はできませんが、次の受診を促すステップへ進むべきかどうかの判断材料となります。そして全体として話を聴くことに注力し、聴き終わると、
「今日は話してくれてありがとう」
というような感じで一旦話を終えます。
また、管理者に問題の原因が有る場合があり、上司に話しにくいこともありますので、そのような場合には他の相談者に振ることも検討します。他にも、日内変動に注意が必要です。うつ病の一般的な傾向として、午前中具合が悪くて、夕方ごろ調子が良くなってくるという変化が見られます。調子のよい時に話を聞くと、元々真面目、頑張りや、几帳面などの因子を持つ人が多いので、「頑張ります」 と虚勢を張ってしまうことがあります。逆に調子の悪いときに「気のせいだ、頑張れ!」は禁句です。かえって苦しめることになりかねません。頑張りたいのに頑張れない症状だからです。
2)受診を促す
話を聴いた結果、メンタルヘルス不調が疑われる場合は、ためらわず、専門医への受診を勧めます。
「今の状況では仕事をすることでさらに体調が悪化しないか心配している。専門の医師に仕事をしてもよいのか意見書を出してもらいたいのだが」
その後、会社として一定の対応が必要かどうかは、主治医の診断書を取るところからすべてが始まります。この際、療養の見込み期間も記入してもらうのが望ましいでしょう。そして専門医が医学的に問題なしと判断すれば、会社としてはそれ以上の配慮義務はないと考えます。しかしメンタルヘルス不調の診断書が提出されたら、診断書に記載されている必要療養期間は休業させる必要があります。無視して就労させてはいけません。そして会社の休職規定がどのようになっているのかを確認します。この際大事なことは、メンタル不調者に対応できる休職規定※(就業規則)が整備されていなければならないのは言うまでもありません。もし整備が不十分な場合は、今から専門家へ作成を依頼しておいた方がいいでしょう。
※休職とは・・・・・本来、私傷病など従業員側の事情により、労働が完全に提供できない場合、債務不履行として解雇できますが、いきなり解雇せず、一定の猶予期間を設け、その終期を待って復職できる状態にならないときに自動的に解約するもので、解雇の猶予措置と理解されています。労基法上は一切規制がなく、原則として会社が自由に制度設計できます。
ここで重要なことは、ケースバイケースの対応ではなく、きちんと粛々と休職制度の上に乗せることです。これを誤ると不完全な就労をいつまでもだらだら受領しなければならなかったり、いつまでも休んでおりいつ復帰できるかわからなかったり、他の従業員から不満が溜まってきたり、後任の人事にも影響するなど対応を困難にし、終局的には解雇を検討せざるを得なくなり、問題を一層複雑化させます。
次回は休職制度への乗せ方からお話してまいります。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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