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16年01月15日 | Category: General
Posted by: nishimura
●2016年は経営計画に、「労務管理向上策」を盛り込もう  その2
~経営を向上させるために労務管理を改善するための8つのポイント~
  (H28.1月号)


皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、昨年12月は「2016年は経営計画に、労務管理向上策を盛り込もう」と題して、その為に留意すべき8つのポイントがあるとお話しました。


■企業業績向上のための、労務管理向上策8つのポイント■

1.社長が明確な経営のビジョンを語り、従業員が共感すること(経営理念・方針)
2.人事の要諦、雇ってはいけないヒトを雇わないこと(募集・面接・採用)
3.職場のルールを明確にし、文書化すること(就業規則・雇用契約書)
4.労働法や労働社会保険の加入等法令を守ること(法令遵守)
5.賃金、人事評価などの人事制度を分かりやすく示すこと(賃金・人事考課制度)
6.コミュニケーションを重視し、モチベーションアップとトラブル防止を図ること(心の報酬)
7.従業員は自然に育たないので、強制と継続の仕組みで教育指導を行うこと(管理職研修・社員教育)



このうち、1から4は前回申しましたので、今回はその続きです。


5.賃金、人事評価などの人事制度を分かりやすく示すこと(賃金・人事考課制度)


中小企業の労務コンサルタントをしております経験上、人事制度を整備しなければならない理由は2つあると思っています。一つは、子供への円滑な事業承継のため、もう一つは有為な従業員を失わないためです。どういうことでしょうか?


まず子供への円滑な事業承継についてですが、大手企業とは違い、中小企業の事業承継は、ほぼ社長の息子さんが継がれます。他人が承継するケースはほとんどありません。これが現実です。そしてこれが、最も全うな事業承継の形であるとも考えています。何故なら、経営者の家系に育った子供は、有形無形に経営の薫陶を受けることができるからで、いわゆる親父の背中を見て育った財産は、反面教師の部分も含めて貴重な財産であるからです。サラリーマン家系の人材には、残念ながらこれが伝わりません。

また企業経営は多くのリスクを取る事でもあるのですが、このリスクを他人に負わせるより、経営家系に育った子供が引き受けるのが、性(さが)だと思っているからです。


ただ、そうは言っても、2代目以降になって代が代わって来ると、どうしてもオーナー社長が持っている「カリスマ」や「オーラ」が弱まって行く傾向があります。今までは、オーナー社長がパワーで封じ込めたていたことが、通用しなくなっていくため、どうしても「制度や仕組み」で下支えする必要が出てくるのです。労務管理に関して制度や仕組みとは、賃金や評価制度等の人事制度がこれに当たるわけです。


もう一つの理由が有為な人材を失わないためです。

中小企業の組織風土に欠落しがちな要素に「適度な競争原理」と「上昇志向」があります。人材が活性化するにはこの二つは欠かせません。しかし新卒採用が少なく、同期やライバルがいないために競争原理が働きにくく、また将来、上の方へ上がって行ける道筋が整備されていないことと、モデルになる社員がいないことから、上昇志向を引き出すことも出来ず、有為な人材でも見切りを付けて辞めてゆくことがあります。

特に小規模企業の場合、ほとんどが同族経営で運営されています。ですからいくら頑張っても、経営家系でない限り、経営者の立場に上り詰めることはあり得ません。つまり社長を目指す!という人は、その会社で力を発揮する可能性はなく、仮に一時従業員であったとしても、その人には単なるステップアップの踏み台でしかありません。こういう人は引き留める人材というより、初めから割り切って考える必要のある人でしょう。

中小企業にとって必要なのは、経営を任せる後継者ではなく、部長をそつなく安定的にこなしてくれる、信頼のおける人材のことです。つまり経営者と同等の立場までは求めない、しかし会社のことを考えて仕事はして欲しい、かつ信頼できる存在であることが重要です。

ただ、こういった上昇志向のある人材も中小企業の場合、たくさんいるわけではありません。非常に限られた人材の中から、財産となる「人財」を育てて行かなければならないのです。会社を伸ばして行きたいのであれば、やはり信頼のおける部長の存在は欠かせないのです。

私自身もサラリーマンで数社の転職経験がありますが、残念ながら多くの中小企業には「将来に対する見える化」が充分ではありません。これを働く従業員の立場でみると、「今はいいとしても、年をとったときにこの会社でずっと頑張る意味があるのかな」とか、自分の先輩を見るにつけ「俺の50歳の姿はこの人と同じか・・・・・」となると、その潜在能力を発揮できないままに埋もれてしまうことになるのです。または転職する動機ともなるでしょう。

ここで注意が必要なのは、全従業員が必ずしも、上昇志向があるとは限らないことです。全員が人事制度によって上昇して行くというのは残念ながら幻想です。ここで大事なのは、ごく一部の限られた有為の人材を失わないことです。仕組みさえあれが、上の方へ上がって行ける可能性がある人材であるにもかかわらず、その仕組みがないため、埋もれてしまうとしたら会社にとっても本人にとっても不幸なことです。ですから「将来に対する見える化」が必要なのです。これが人事制度が必要な二つ目の理由です。


以上の視点から、もし人事制度が整備されていないとお考えでしたら、ここから改善して行きましょう。



6.コミュニケーションを重視し、モチベーションアップとトラブル防止を図ること(心の報酬)


ある意味、これが労務管理では一番大切なことかもしれません。これまでコンプライアンスや制度論をお話ししましたが、語弊を恐れずに言えば、法令や制度に多少の落ち度や杜撰さがあったとしても、「心の報酬」が担保されていれば、何とか上手くやって行くことができるからです。逆に言えば、これがなければ、何をやっても上手くいかないのです。

これに関して、従来から確立された実証理論があります。それはハーツバーグという臨床心理学者が唱えた二要因理論です。人間には不満要因と満足要因があると言われています。満足に関わるのは、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」など。これらが満たされると満足感を感じるのですが、欠けていても職務不満足を引き起こすわけではありません。これらは「動機付け要因」と呼ばれます。

一方、不満に関わるのは「給与」「対人関係」「作業条件」など。これらが不足すると不満を引き起こしますが、満たされたからといっても満足感に繋がるわけではないとされています。単に不満足を予防する意味しか持たないという意味で「衛生要因」と呼ばれます。

私は常々、「労務は感情、労務は心理学」と申しています。人間は感情を持った資源です。理屈や法律通りに動いているわけではありません。もし、職場のコミュニケーションに問題があるとお感じでしたら、如何にして心の報酬を与えることができるか、これを検討して行くことになります。



7.従業員は自然に育たないので、強制と継続の仕組みで教育指導を行うこと(管理職研修・社員教育)

社員教育も大切な経営課題の一つです。そしてこれに関しても二つのポイントがあります。一つは、強制すること、もう一つは継続することです。

結論から申し上げますと、中小企業の社員教育は、社員を信じて自主性に任せてはいけません。強制して追い込んで行く仕組みが必要なのです。特に管理職として期待する人材ほどそうしなければなりません。彼らはまともな人材ではあるのですが、決して自然発火はしないのです。いわばマッチと一緒。常に摺って火を点し続ける必要があるのです。つまり強制です。ところが意外にも、経営者は自主性に期待する傾向があります。気をつけたいものです。

継続も大切な要素です。残念ながら一度くらい研修を行ったくらいでは人は変わりません。大きな研修を単発でやるよりも、小さなものでも良いですから、繰り返し繰り返し行うことが大切です。繰り返すことによって、行動と思考パターンが徐々に変化して行くのです。

人の性格は変えられませんが、行動や思考方法は変化させることができます。また、特に中小企業にとっては、良い番頭を作れるかどうかが家業から企業になる分かれ目のような気がします。管理職の養成は非常に重要な経営課題であると言えます。



8.多様な人材の有効活用(高齢者、女性、障害者、外国人)


最近よく耳にするようになったダイバオーシティ・マネジメントのことです。和訳すると「多様な人材がいきいきと働ける職場環境を作ること」です。これは1企業の問題と言うよりも、日本社会全体に対する問題とも言えます。

今、日本社会は経験したことのない人口減少社会に突入しました。この問題に対応してゆくには、(1)移民を受け入れる、(2)AI(人工知能)化する、(3)現行労働者の生産性を上げる、(4)まだまだ眠っている女性や高齢者を掘り起こす、ことなのです。ダイバーシティ・マネジメントとはこのうち(4)に当るわけです。

少し大きいテーマですが、そう遠くない将来、こういった問題に対応できるかどうかが、企業の盛衰を左右して行くことになるのかも知れません。




最後に、

労務問題は重要な経営政策ですが、後回しになりがちです。漠然と鳥瞰すると、どこから手を付けて良いかわかりません。今まで申し上げたことを切り口として、労務問題から経営を向上させる一助になれば幸いです。

(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)

小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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16年01月05日 | Category: General
Posted by: nishimura
●2016年は経営計画に、「労務管理向上策」を盛り込もう  その1
~経営を向上させるために労務管理を改善するための8つのポイント~
  (H27.12月号)


企業経営の3要素として「ヒト、モノ、カネ」とはよく言われることです。しかし一般的に経営計画を作成するとき、「ヒト」に関する政策が抜け落ちていることが多いと感じています。確かに「ヒト」に関する改善活動は一番難しいものです。何故なら「ヒト」は「モノ」や「カネ」と違い、感情を持った動物であり、心理的要素が成果に大きく影響するからです。

しかし3要素である「ヒト」に関する政策、言い換えれば労務管理の改善活動も経営計画に落とし込み、一つ一つ着実に向上させて行かなければなりません。労働分野は、大事だと分かっていながら、ややもすれば劣後に置かれ、おざなりに経過して行くことになり易いからです。

そこで今回は、経営計画を策定するに当って、「ヒト」に関する問題にアプローチしようとするとき、どこから手を付けるべきか、そのヒントになる大切な8つのポイントをお話ししたいと思います。




■企業業績向上のための、労務管理向上策8つのポイント■

1.社長が明確な経営のビジョンを語り、従業員が共感すること(経営理念・方針)
2.人事の要諦、雇ってはいけないヒトを雇わないこと(募集・面接・採用)
3.職場のルールを明確にし、文書化すること(就業規則・雇用契約書)
4.労働法や労働社会保険の加入等法令を守ること(法令遵守)
5.賃金、人事評価などの人事制度を分かりやすく示すこと(賃金・人事考課制度)
6.コミュニケーションを重視し、モチベーションアップとトラブル防止を図ること(心の報酬)
7.従業員は自然に育たないので、強制と継続の仕組みで教育指導を行うこと(管理職研修・社員教育)
8.多様な人材の有効活用(高齢者、女性、障害者、外国人)



1.社長が明確な経営のビジョンを語り、従業員が共感すること(経営理念・方針)


経営理念を策定しておられる会社も多いことでしょう。「どのような会社にしたいのか」、「事業を通じてどのように社会に貢献するのか」などを定めることが多いと思いますが、経営理念とは、いわば「社長の思い」を文書化して見える化したものです。
この経営理念、従業員に落し込みするためには、「企業の目的は何か?」ということが明確になっていなければなりません。つまり「何の為に」ということです。これがぼやけると、すとんと腹落ちしないのではないでしょうか?

経営理念とは少し離れますが、「安全第一」という標語について、理念の落しこみを考えたいと思います。よく工場などで見かける標語ですが、この意味は何でしょうか?
これは安全があらゆることに最優先するというメッセージを、従業員に発しているということです。つまり、現場において「安全」と「効率」が競合する場面に遭遇したとき、「効率」を落としてでも「安全」を優先して行動しなさいと言っているのです。この理念が落とし込まれていれば、現場は迷うことなく安全作業を優先します。迷ったとき、判断の指針が生まれることとなるのです。

会社は何の為に存在するのでしょうか? 仕事は何の為に行うのでしょうか?誰の為に行っているのでしょうか?「社長の思い」は、従業員に浸透していますか?
もしそうでなければ改善が必要ですので、どういう対策を打って浸透を図るべきかを計画に盛り込むようにしましょう。




2.人事の要諦、雇ってはいけないヒトを雇わないこと(募集・面接・採用)


人事の要諦は採用にあり、といっても過言ではないくらい大切なテーマです。特に中小企業におけるここでのポイントは、「優秀なヒトを雇う」ことではなく、「雇ってはいけないヒトを雇わない」ことであると考えています。ヒトにおける2:6:2の法則というものがありますが、上位20%のスーパー社員を採用するのは難しいので、せめて下位20%のダメ社員を採用するミステイクを避けたいものです。つまり、真ん中の60%の普通のヒトを安定的に採用すれば、あとはそのヒトたちを活かすも殺すも経営者次第といったところでしょうか。

ここで普通の人の定義をしておきますと、「一般的社会人としての常識を持った人」ぐらいの意味です。所詮、面接ではその人のスキル(仕事に直接必要な技術や知識)は分かりません。しかし多くの中小企業の実態から推測すると、会社は特別にスキルの高い人を求めているというよりも、常識のある普通の人を求めていることが大半です。つまり、普通の人であればきちんと仕事のスキルは教えて行く気はあるのです。おおよその仕事はきちんと教えれば普通のヒトなら出来るものです。しかしそれ以前に、常識や生活態度から教えるとなると話は別です。これは家庭のしつけの問題だからです。
ところがこういう人物が簡単に入ってくるから困るのです。

これを防ぐにはいくつかの方法があります。もし採用活動が弱いとお感じであれば、具体的にどのような方法で、募集、面接、採否決定して行くのかを検討して行くことになります。




3.職場のルールを明確にし、文書化すること(就業規則・雇用契約書)


ここでは主に就業規則や雇用契約書など書式の整備のことを言っています。特に就業規則はきちんと作りこんで運用していれば、経営の武器になることを認識して頂きたいと思います。よく市販のモデルに社名を入れただけとか、助成金を受給するために作ったような就業規則をお見かけすることがありますが、これでは経営の武器になりません。

就業規則の効用を企業経営の立場から言い表すと、会社の防御機能であると言えます。労働法はその根幹に、強い経営者から弱い労働者を守る! という思想で貫かれています。ですから法的紛争になると、経営者は不利な立場に置かれることも少なくありません。

しかし就業規則は会社のルールを社長が一方的に定めることが許されているのです。この利点を活かさない手はありません。つまり「将来起こるかもしれない困ったこと」を出来るだけ多く想定し、それに具体的に対応できるものでなければならないのです。

例えば現代の企業経営において、メンタル不調者に対する対応は、中小企業においても必須の課題です。個人情報や営業機密漏洩防止のためには、電子機器やSNSへの対応も必要です。パワハラ、マタハラ等次々出てくるハラスメント問題・・・・・。

また雇用契約書、誓約書などの書式の整備も大切であり、こういったことの文書化により、会社の困ったことをかなり、防御することが可能になるのです。未整備な状態は、あたかも「ウイルスソフトの入っていないパソコン」のように危険な状態であると認識してください。

ルールの文書化が弱いとお感じでしたら、まずこのテーマから取り組みましょう。




4.労働法や労働社会保険の加入等法令を守ること(法令遵守)


まれにこのようにおっしゃる経営者に出会うことがあります。「労働法なんて守っていたら、会社が潰れる」。これは本当でしょうか?そのような会社を見たことがあってのことでしょうか?

少々辛口かもしれませんが、経営者がこれを言ってはダメだと思っています。何故なら、労務管理の改善はする気がないと言っているようなもので、「経営者の逃げ」だと思うからです。別に国のための法律を守るのではありません。企業経営の向上のためです。

自分の子供がサラリーマンとして就職する会社として相応しいですか?コンプライアンスは充分ですか?親の立場で安心して送り出せる職場ですか?

現代は10年前とは違い、IT技術の飛躍的進歩により、情報が容易に入手できます。10年前まではごく限られた知識人しか情報を持っていませんでしたが、今は誰もが知識人になり得ます。労働のように生活に密着した情報は、関心が高いものです。法令の不備を従業員が知らないことはないと考えるべきで、表面化しないのは不満として言っていないだけ、と考えておいた方が良いでしょう。知らないのではなく、言わないだけなのです。


また社会保障の分野では、2016年からマイナンバーが開始されます。その目的は行政事務の効率化や国民の利便性の向上もありますが、その本丸は公正な社会の実現、つまりきちんと収めるべきものは収めることにあります。社会保険料の指導調査も当然厳しくなって行くでしょう。

こういった社会背景の変化は、きちんと法令を守っている者が割を食う(かもしれない)社会から、きちんと法令を守っている者が生き残る、全うな社会に移行して行くものと考えられます。生き残るためにも、法令遵守は大切な経営課題です。もし不備が多いとお感じなら、まず労務診断をして改善を図ってゆくこととなります。

以下次号。

小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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15年12月02日 | Category: General
Posted by: nishimura
~バブル期以来の求人倍率でますます求人難に~
●求人募集の応募効果を考える   
(H27.11月号)


最近、クライアントさんから「人が来ない!」との嘆きをよくお聞きするようになりました。求人倍率はあのバブル期以来の高倍率らしいのですが

、経済が拡大局面にあるとの実感には乏しく、ピン来ないというのが正直なところです。しかしサービス業などでは、アルバイトが確保できず、店

舗経営に支障を来たすこともあるようです。


そこで今回は、一般的に言われている応募効果の上がる求人広告の出し方とは少し違う視点で、もう一工夫できないかを考えたいと思います。その

前に一般的にはどのような項目が応募者から重視されているのか、ざっと概観しておきましょう。

求人広告大手インテリジェンスの2014年調査によると、アルバイト探しで最も重視するポイントの上位8項目は以下の通りとなっています。

1.勤務地が自宅から近いこと
2.興味ある仕事内容であること
3.時間の融通がきくこと
4.給与が高いこと
5.自分にもできそうな仕事であること
6.店長や社員の人の雰囲気が良いこと
7.1日に働く時間が短いこと
8.1週間あたりの勤務日数が少ないこと 


このうち改善が不可能なのは1の「勤務地が自宅から近いこと」です。駅前にでも移転しない限り物理的に無理であり、これにはコミットしません

。但し、駅近にもかかわらず、地図にて駅前にあることの表示や、●●駅より徒歩1分!などと駅近を謳っていない場合はもったいないので、きち

んと入れておきましょう。

また4の「給与が高いこと」も改善が困難です。その会社の支給水準がありますから、世間相場より極端に低い場合は別として、初任給を上げるに

は自ずと限界があります。もしここで僅かでも工夫できるとすれば、近い将来の昇給モデル(1年後昇給例●●円)や、残業込みの平均総月収を入

れるくらいは可能です。

2の「興味ある仕事内容であること」と、5の「自分にもできそうな仕事であること」は、ともに仕事自体のことを言っています。この仕事内容の

表記は、求人において最も重要な要素と考えられています。ただ単に職種を記載するのではなく、どのような仕事をするのか、きちんと教えてくれ

るのか、将来のキャリアアップが可能なのか、或いはその仕事の醍醐味(やりがい)は何か、などにも言及できると更に良いでしょう。

3の「時間の融通がきくこと」、7の「1日に働く時間が短いこと」及び8の「1週間あたりの勤務日数が少ないこと」は、アルバイト・パートに

とって非常に大事な要素です。これに関しては後述します。

6の「店長や社員の人の雰囲気が良いこと」は、よほどお金を掛けたスペース枠のある広告であれば、先輩諸氏のポジティブなインタビューコメン

トを載せるなどの工夫の余地があるかもしれませんが、そうでなければ求人で謳うには難しい内容でしょう。


ところで今回はこういった一般的な要素だけに着目するのではなく、意外に気づかない新たな視点で、求人広告をもう一工夫できないかを検討しま

す。




(1)パート・アルバイトは、給与の多さを嫌う層がいることを認識する


先ほど、「時間の融通がきくこと」「1日に働く時間が短いこと」「1週間あたりの勤務日数が少ないこと」について後述すると申しましたが、こ

れらの要素は一体何を意味するのでしょうか?主婦層や高齢者層に多い傾向ですが、彼らは必ずしも給与の絶対額に拘っているわけではありません

。その理由は主に次の3点です。

 a.扶養親族になる範囲内で働きたいから
 b.生活保護を切られるのを恐れるから
c.年金が減額されるのを嫌がるから


まずaについてですが、よく言われる103万円及び130万円の壁のことです。103万円とは所得税法上の扶養親族になる収入額の上限であり、130万円

とは健康保険法上の被扶養者になれる収入の上限額のことです。103万円
を超えることにより、夫の所得税が上がり、或いは夫に支給されている家族手当が打ち切られることを嫌うものです。また130万円以上となること

で、夫の健康保険から外れ、自分で健康保険料と年金保険料を負担しなければならなくなることを嫌うものです。

そして意外に多いのがbのケースで、母子家庭の母に当る人の場合です。彼女らは自治体から生活保護を受けていることが多く、認められると生活

費は勿論、医療費や住居費も補助があり、最低賃金で働く人よりも可処分所得でかなり優遇されていると言えます。自治体からは働いて収入を得る

ように促されますので一応就職はするのですが、給料が一定水準を超えると生活保護が打ち切られるため、それを恐れるわけです。また収入額を上

げてもそれに比例して生活保護が逓減する仕組みであるため、保護費を含めた総収入は常に変わらず、ガツガツ働くことへの逆インセンティブにな

っているのです。

cについては、高齢者のケースですが、60歳以上で老齢厚生年金の受給権者の場合、会社からの収入があると年金が減額される仕組みがあり、これ

を嫌がる人達が少なからずいます。また減額されるだけでなく老後も年金保険料を支払い続けなければならないため、その負担も回避したいと考え

るのです。従って働きたいけれどもフルタイムは困る、という人達です。


これらの実態を考えると、会社に都合が良いからといって、フルタイムのパートを求め続けても、その求人はこういった人達には全く訴求できてお

らず、この層をごっそりとを取り逃していることとなるのです。従ってどうしても、「時間の融通がきくこと」「1日に働く時間が短いこと」「1

週間あたりの勤務日数が少ないこと」の要素を組み合わせたシフトを考えて行く必要があります。




(2)当たり前の労務管理を募集に使う


中小企業の求人募集は中途採用が主流です。中途採用ということは、応募者は必ず過去に数社の会社勤務を経験していることになります。そしてそ

の転職動機には様々なことが考えられますが、労働条件に不満があって転職する層が少なからずいるのです。

一方、中小企業の経営は世襲で行われています。経営一家に育てば、その子は親の会社に就職することになるのです。つまりこれは自分の会社以外

、つまり世間の会社がどのようになっているのか、非常にイメージが湧きにくい状態といえます。これは中小企業の経営者ほど、他の中小企業のこ

とが分からず、中小企業の労働者ほど、他の中小企業の実態を知っているということです。


そして世間では、意外?にも、当たり前の労務管理が行われていない実態が多くあり、労働者はそういった現実を経験しています。例えば…、

・限度を超えて長時間労働になっている・・・・・。
・残業代が出ない・・・・・。
・正社員にすら健康診断を行っていない、ましてやパートなど・・・・・。
・労働条件は社長の意のままで、勝手に変更されることも。契約を交わすという発想がない・・・・・。
・そもそも有給休暇など、うちの会社にはないと言われた・・・・・・。
・社会保険は認められた者だけしか入れない・・・・・・。


まだまだ一杯、ありますが、残念ながらこれが多くの中小企業の実態なのです。実は転職労働者は、このような当たり前のはず?のことが、中小企

業ではきちっと行われていないことをある程度理解しており、ほとんどが妥協しながら良心的に我慢している現実があるのです。ということは、特

別魅力的で有利な労働条件を提示できなくとも、当たり前の労務管理が、まだまだ武器となり得るのです。むしろ中小企業間で特別有利な労働条件

を提示できることの方が少ないでしょう。ですから、当たり前の労務管理ができている会社は、そのことをアピールするのです。「ここはきちっと

している会社」ということがアピールできれば、相対的に有利になります。この当たり前の労務管理は、自分では中々気づきにくいので、外部から

チェックしてもらうのが良いでしょう。

求職者は過去の自分が勤めた会社と比べて、この会社はどうか、という視点を常に持っていることに留意しなければなりません。


{募集広告例}
・残業はほとんどありません。定時帰宅がモットー。仕事と私生活のバランスを大切に考える会社です。
・残業時間は1日平均1.5時間程度。サービス残業はありません。やった分をきちっとお支払いします。
・年1回 健康診断あり。パートの方も受けられます。従業員の健康第一!
・就業規則、労働契約書完備。きちっと書面で行っています。
・多くの従業員が有給休暇を満喫しています。パートさんもイキイキと!




(3)新卒採用は親の目も意識する


これも意外に気づきにくい視点です。中小企業でも高卒の新卒採用を行うことはよくありますが、ここで意識しなければならないのが親の目線です

。初めてわが子が就職する会社は一体どんな会社なのか?この関心はひょっとしたら、当人よりも親の方が高いかもしれません。よもや「ブラック

企業」に就職しないか、大変神経を尖らせているはずです。勿論、労働契約を結ぶのはその18歳の本人ですが、その背後に親の影響力が相当あるも

のとして、求人すべきです。

そうするとどういったことに気を遣うべきか?これは自分のわが子が初めて就職する状況を想像し、親として何が気になるか、自問自答してみれば

自ずと答えは出てくるでしょう。一般的は、前項(2)で述べた当たり前の労務管理をきちんと行っている会社かどうか、(逆に言えば、わが子が

ブラック企業に酷使されるようなことはないか)、将来性のある安定した会社かどうか(逆に言えば直ぐに潰れて路頭に迷うことがないか)などが

心配になりませんか?

自らの会社をアピールする視点だけでなく、こういった親の心配を出来るだけ払拭できる要素は何か、ということも検討すべきでしょう。




(4)隠れている有利な条件をもう一度洗い直す


求人広告も比較広告です。たまたは同時期に紙面に現れた、他企業との競争になります。求職者は現在出ている情報の範囲内で、自分にとってどこ

が最適か、優先順位を決めて、順に応募して行くものと思われます。仮に、同じような優先順位になった広告が2社並んだとします。どちらを先に

選択するか、その分かれ目になるのは何でしょうか?

私はこの局面では、おまけの多い方が有利になると考えています。おまけとは、コアな労働条件(仕事内容、給料、時間など)以外の要素です。例

えば・・・・


・会社費用で外部研修に参加できます
・毎月1回、社内勉強会開催中
・野球チームあり、連盟リーグに加入しています
・保育施設と提携、子供を預けながら仕事が可能
・有給休暇とは別に、誕生日休暇あり

こういったことは、それ自体が絶対に必要な募集要項ではありませんが、記載があるからと言って応募を控える要素にはならないはずです。むしろ

同じような条件が並んだとき、先に応募させる誘引になるかもしれません。今一度、自社内で隠れた募集要項がないか、検討すべきです。 


少し違った視点で申し上げましたが、今一度、求人広告の出し方に参考にしていただければ幸いです。  

小規模企業の賃金制度を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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15年11月04日 | Category: General
Posted by: nishimura
~社長一人の力は限界。殻を破れるかは、管理職の出来で決まる~
●小規模企業の管理職研修のあり方を考える その4(H27.10月号)



このシリーズの最終回です。第1回目では「小規模企業の管理職に自主性を期待してはいけない、自然発火はしないので強制的に追い込んで行く仕組みが必要」と申しました。2回目では「小規模企業の管理職は{急ぎで重要}な仕事に忙殺されている。全業務の2割は{急がないが重要}な仕事に時間を振り向けないといけない」と申しました。3回目では「管理職には3大ミッションと2大要素が求められる、管理職としてのあるべき姿」に言及しました。


今回はこれらの考え方を踏まえて、上手に強制してゆく仕組みについて考えたいと思います。具体的な手順は以下の通りです。




1.社長が個別の管理職に対して「こうして欲しい、こうなって欲しいとの思い」を書き出す


まず、2回目で申し上げた業務分析を参考にします。以下4つのマトリックスを思い出してください。
管理職に大事なのは、この右上2ゾーン部分の「急がないが重要」な仕事です。ここに時間を割き、継続化(習慣化)させる必要があります。この右上欄にどんな仕事が入りますか?

[緊急]       [さほど緊急でない]
____________________________
1ゾーン   | 2ゾーン          [重要]
(火消し仕事)  |(投資、予防、育成、開発、
         | 計画、育成等の仕事)
_________|__________________
3ゾーン    | 4ゾーン        [さほど
(お付き合い仕事)|(消費の仕事)        重要でない]
_________|__________________



 2ゾーンに入る仕事は、3回目で申し上げた管理職としてのあるべき論を参考にして考えてください(下記参照)。社長が管理職としてこうあるべきと考える理想形でも結構です。

[あるべき姿]
   | ギャップ
   |→→→→→→→→→〔問  題]→→→→〔原  因]→→→→〔対  策]
   |
〔現   状]





2.社長の「思い」を紙に書いて伝える


1においてその管理職にやって欲しいことが決まったら、その中から6ヶ月間で取り組んでもらう事項を選択し、「役職者任命辞令」に落とし込み、その思いを伝えます。


__________________________________________

役職者任命辞令(例)

木村 一郎 殿

貴方を平成27年10月1日付けをもって、部長職に任じます。


【ミッション】
部長職として従来の業務に加えて、以下の役割を命じます。
1.所属部下の業務効率を改善し、時間外労働を削減すること。
2.部下の○○さんを主任職にするべく重点的に指導教育し、あなたの知識技術を伝承すること。
3.

【待遇】
上記ミッションに対する役職手当(部長手当)として金●●円を平成27年10月分給与より、支給します。

■役職は既得権ではありません。期待成果の検証は1年後の平成28年9月に行い、その時点で昇降格を含めて、次期の処遇を再検討します。
■上記ミッションの範囲で、社長の権限の一部を委嘱します。今後の活躍に期待にしておりますので、期待に反しないよう頑張ってください。

平成27年9月25日
株式会社未来製作所    
代表取締役 山田 太郎  
_______________________________
私、木村 一郎は上記趣旨を理解し、ミッションを遂行します。
平成27年9月28日    氏名 木村 一郎    印
_______________________________




3.「自分行動改善計画」を管理職に作ってもらう


2において大枠のミッションを伝えたら、それを達成するためにどう取り組むのか具体策を管理職に出してもらい、それを毎週かつ毎月チェックする「自分行動改善計画」(省略)に落とし込みでもらいます。「自分行動改善計画」シートは理屈は簡単ですが、このテキスト文書では表現できないため概要だけ申しますと、要するに社長が与えたミッションを具体化する「具体的な行動」を10項目記入し、毎週自己チェックを行い、毎月社長に提出するレポートのようなものです。


例えば上記1に対するミッション達成のための一つの項目として、

●前日16時から17時の間に、翌日の工程表をまとめる

という、行動を出して来たとしたら、前1週間のその行動を状況を、翌月曜日に○×チェックし、月末に100点満点で全体の遂行状況を自己判定し、社長に提出させます。

ここでのポイントは、必ず「具体的な行動」を、日常の中に「あらかじめ」組み込むことで、習慣化を促すことです。何故なら、スキルとは「潜在的能力」と、「日々の習慣行動」に他ならないからですが、「潜在的能力」にアぷローチするのは困難です。「日々の習慣行動」は制御できます。まず、表(オモテ)に出ている「日々の習慣行動」を強制化して、望ましい姿へ変えてゆくのです。




4.「自分行動改善計画」に社長がコメントを返す

毎月、「自分行動改善計画」シートが提出されてきたら、その進捗状況を見ながら、毎月、ひと言コメントを返しましょう。口頭でも結構ですが、できれば赤ペンで「良くやっている、頑張れ」とか、励ましを忘れずにコメントするのがミソです。勿論その上で、足りない部分があれば指摘してください。要するにほったらかしにしないということです。社長の本気度が試されます。



5.6ヶ月間の総括をする


4により、毎月やり取りをした結果を、6ヶ月後に一旦締めて、社長と管理職双方が総括します。そして60点合格しなかった項目がある場合、またはやり残したことがある場合は、また2に戻って再挑戦します。また習慣化したことにより卒業認定できた項目は次回からはずし、新たに1から始めます。



弊社では、この管理職研修の制度設計についてサポートいたします。

小規模企業の賃金制度を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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15年10月02日 | Category: General
Posted by: nishimura
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