●こども職場参観日を作って、仕事で輝いているお父さん、お母さんをみてもらおう!
~「誇り」をもってもらうために~ (H26.11月号)
従業員のモチベーションの維持、向上に腐心する経営者の方は非常に多いと思います。かつてこのメルマガ上でも何度も取り上げてきたテーマです。従業員が仕事に生きがい、やりがいを感じる動機はそれぞれあると思いますが、おおよそ多くの人は、「達成すること」「承認されること」「仕事自体のおもしろさ」「責任」「昇進」「笑顔」「感謝」が重要な動機付け要因なっていることは心理学上も、実務上も理解きるところだと思います。
そんな色々な要因の中で、今回重要視したいのが、「誇り」です。「誇り」を辞書で引くと「自らそれを名誉とする感情」という意味が出てきますが、ここでは「傷つけられたくない心の奥深くにある大切な思い」と定義したいと思います。「誇り」があれば、自分自身を規律しすることができます。それは「誇り」を傷つけること、裏切ることに罪悪感や抵抗感を覚えるからだと思います。人が凛として生きてゆくためにとっても必要な要素だと思うのです。ところであなたの会社の従業員は、会社や仕事に「誇り」を持っているでしょうか?
仕事そのものから「誇り」を感じやすい職種は何と言っても対人接触がある仕事です。営業とか、看護とか、教育とか、販売とか・・・・・。勿論、ストレスも多いのですが、これらの仕事は、目の前にいる人々から直接、笑顔、承認、感謝のリアクションが返ってくるからです。
しかし工場内作業や内勤事務など、対人接触の少ない職種では、中々そうは行きません。リアクションが直ぐに返って来ないため、「誇り」も実感しにくいものと思われます。
そこで今回ご提案したいのが、「こども職場参観日」の導入です。親が学校へ子供の「授業参観」へ行くことは当たり前にありますが、子供が親の職場を見学する「職場参観」があってもいいのではないでしょうか?こどもが出来て人生の価値観が変わる人は多いはずです。またこどもに人生の生きがいを感じる人も多いはずです。そしてそんなこども達に、尊敬される立派な親になりたいと願う人も多いと思うのです。
しかし・・・・・・・、
こどもが知っているのは家庭でのお父さん、お母さんだけ。厳しいけれど、だらしないお父さん、やさしいけれど、口うるさいお母さんしか知りません。額に汗して、油まみれになって、今まで見たこともない真剣な表情で、黙々と仕事をする、そんな親の姿を、是非、見てもらうべきだと思うのです。きっとこどもなりに感じることがあるでしょう。仕事の種類は何であれ、その仕事に対して一所懸命に向き合っている姿は、新鮮で、かっこよく、輝いて見えるはずです。
一方、親の方もそんなこどもの「誇り」を傷つけたり裏切ったりすることはできませんからその姿勢を継続する動機付けにもなり、また家庭では見せない、仕事に真剣に向き合っている姿を見せることができて、自らに「誇り」と自信を持って行けるのではないでしょうか?
具体的にはこのようにします。
(1)まず、「こども職場参観日」を実施する案内文を配布し、朝礼等の全体会議の場で社長から趣旨説明をします。
(2)あくまでも任意で強制でないこと、希望者のみに限定することとします。また、何らかの事情でこどもが居ない従業員や独身者もいることから、彼らへの配慮も忘れてはいけません。
(3)申込者と個別に面談し、こどもが職場に来れる日時を調整します。勿論、配偶者との同伴も可能とします。
(4)参観日当日は、社長が自ら出迎え、面談室で簡単な談笑の後、社長自身が職場や設備を案内し、親の仕事の内容を説明します。特にその従業員が担っている役割をこどもにきちんと説明します。
(5)説明が一通り終わったら面談室に戻り、親もそこへ加わり、軽食程度のもてなしをします。社長は必ず、こどもの前で当該親である従業員に感謝している姿を見せます。
(6)最後にタクシーを準備しておき、お土産を渡して帰ってもらいます。時間的には2時間もかからないでしょう。
おおよそこんなイメージで如何でしょうか?
追記
こどもが小学生などでまだ一人で職場に来れない等の事情により、配偶者も同伴される場合は・・・・・・・。奥さんも会社のファンにするチャンス!!
奥さんといえども、会社とは給与明細でしか繋がっていません。
昔のたたき上げ社長は、中小企業家らしく家族主義的経営をし、従業員の家族にもよく配慮していたものです。ところが最近の傾向として、そういった古き良き家族主義的経営が希薄になっているように感じられます。奥さんの理解とバックアップなくして、旦那さんの頑張りは期待できません。奥さんとも接点を持てるチャンスです。
そこで更なる提案です。会社と奥さんの接点を給与明細だけの関係から、もっと発展させましょう。
(1)時折、給与明細に、感謝の言葉を印刷しておく。「いつも夜遅くまでありがとうございます」「ご主人の献身的な仕事ぶりには感謝しております」とか
(2)勤続3年ごとに勤続表彰をし、奥さんを会社に招待して、全社員の前で奥さんの内助の功をねぎらい、奥さんに金一封と花束を渡す。
(3)社員旅行を復活して、家族も招待する。
(4)忘年会に奥さんも招待して、壇上に上がってもらい、奥さん一人ひとりにと両手で握手して頭を下げ、旦那の頑張りをひと言伝え、奥さんに感謝する。
(5)奥さんや子供の誕生日、子供の入学、出産、結婚記念日などのイベント日に感謝の手紙と粗品を進呈する、等々…。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
~「誇り」をもってもらうために~ (H26.11月号)
従業員のモチベーションの維持、向上に腐心する経営者の方は非常に多いと思います。かつてこのメルマガ上でも何度も取り上げてきたテーマです。従業員が仕事に生きがい、やりがいを感じる動機はそれぞれあると思いますが、おおよそ多くの人は、「達成すること」「承認されること」「仕事自体のおもしろさ」「責任」「昇進」「笑顔」「感謝」が重要な動機付け要因なっていることは心理学上も、実務上も理解きるところだと思います。
そんな色々な要因の中で、今回重要視したいのが、「誇り」です。「誇り」を辞書で引くと「自らそれを名誉とする感情」という意味が出てきますが、ここでは「傷つけられたくない心の奥深くにある大切な思い」と定義したいと思います。「誇り」があれば、自分自身を規律しすることができます。それは「誇り」を傷つけること、裏切ることに罪悪感や抵抗感を覚えるからだと思います。人が凛として生きてゆくためにとっても必要な要素だと思うのです。ところであなたの会社の従業員は、会社や仕事に「誇り」を持っているでしょうか?
仕事そのものから「誇り」を感じやすい職種は何と言っても対人接触がある仕事です。営業とか、看護とか、教育とか、販売とか・・・・・。勿論、ストレスも多いのですが、これらの仕事は、目の前にいる人々から直接、笑顔、承認、感謝のリアクションが返ってくるからです。
しかし工場内作業や内勤事務など、対人接触の少ない職種では、中々そうは行きません。リアクションが直ぐに返って来ないため、「誇り」も実感しにくいものと思われます。
そこで今回ご提案したいのが、「こども職場参観日」の導入です。親が学校へ子供の「授業参観」へ行くことは当たり前にありますが、子供が親の職場を見学する「職場参観」があってもいいのではないでしょうか?こどもが出来て人生の価値観が変わる人は多いはずです。またこどもに人生の生きがいを感じる人も多いはずです。そしてそんなこども達に、尊敬される立派な親になりたいと願う人も多いと思うのです。
しかし・・・・・・・、
こどもが知っているのは家庭でのお父さん、お母さんだけ。厳しいけれど、だらしないお父さん、やさしいけれど、口うるさいお母さんしか知りません。額に汗して、油まみれになって、今まで見たこともない真剣な表情で、黙々と仕事をする、そんな親の姿を、是非、見てもらうべきだと思うのです。きっとこどもなりに感じることがあるでしょう。仕事の種類は何であれ、その仕事に対して一所懸命に向き合っている姿は、新鮮で、かっこよく、輝いて見えるはずです。
一方、親の方もそんなこどもの「誇り」を傷つけたり裏切ったりすることはできませんからその姿勢を継続する動機付けにもなり、また家庭では見せない、仕事に真剣に向き合っている姿を見せることができて、自らに「誇り」と自信を持って行けるのではないでしょうか?
具体的にはこのようにします。
(1)まず、「こども職場参観日」を実施する案内文を配布し、朝礼等の全体会議の場で社長から趣旨説明をします。
(2)あくまでも任意で強制でないこと、希望者のみに限定することとします。また、何らかの事情でこどもが居ない従業員や独身者もいることから、彼らへの配慮も忘れてはいけません。
(3)申込者と個別に面談し、こどもが職場に来れる日時を調整します。勿論、配偶者との同伴も可能とします。
(4)参観日当日は、社長が自ら出迎え、面談室で簡単な談笑の後、社長自身が職場や設備を案内し、親の仕事の内容を説明します。特にその従業員が担っている役割をこどもにきちんと説明します。
(5)説明が一通り終わったら面談室に戻り、親もそこへ加わり、軽食程度のもてなしをします。社長は必ず、こどもの前で当該親である従業員に感謝している姿を見せます。
(6)最後にタクシーを準備しておき、お土産を渡して帰ってもらいます。時間的には2時間もかからないでしょう。
おおよそこんなイメージで如何でしょうか?
追記
こどもが小学生などでまだ一人で職場に来れない等の事情により、配偶者も同伴される場合は・・・・・・・。奥さんも会社のファンにするチャンス!!
奥さんといえども、会社とは給与明細でしか繋がっていません。
昔のたたき上げ社長は、中小企業家らしく家族主義的経営をし、従業員の家族にもよく配慮していたものです。ところが最近の傾向として、そういった古き良き家族主義的経営が希薄になっているように感じられます。奥さんの理解とバックアップなくして、旦那さんの頑張りは期待できません。奥さんとも接点を持てるチャンスです。
そこで更なる提案です。会社と奥さんの接点を給与明細だけの関係から、もっと発展させましょう。
(1)時折、給与明細に、感謝の言葉を印刷しておく。「いつも夜遅くまでありがとうございます」「ご主人の献身的な仕事ぶりには感謝しております」とか
(2)勤続3年ごとに勤続表彰をし、奥さんを会社に招待して、全社員の前で奥さんの内助の功をねぎらい、奥さんに金一封と花束を渡す。
(3)社員旅行を復活して、家族も招待する。
(4)忘年会に奥さんも招待して、壇上に上がってもらい、奥さん一人ひとりにと両手で握手して頭を下げ、旦那の頑張りをひと言伝え、奥さんに感謝する。
(5)奥さんや子供の誕生日、子供の入学、出産、結婚記念日などのイベント日に感謝の手紙と粗品を進呈する、等々…。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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14年09月30日
定年退職者の継続雇用は、必ず有期雇用契約書を交わそう
●定年退職者の継続雇用は、必ず有期雇用契約書を交わそう
~でないと何かと不都合が起こる・・・・・~
中小企業の労務管理の中で足りないものの一つに、文書化がおざなりになる、ということがあります。雇用契約書もその一つです。その雇用契約書の中でも更におざなりになってしまうのが、定年退職者を継続雇用する場面です。賃金が減額されることが多いとはいえ、定年後、特別な手続きもなく1日もおかずに元の職場で元の仕事を普通にこなしている状態ですので、再雇用しているという感覚がないのも分からないではありません。
しかし法的には定年前の雇用と定年後の雇用は全く別物※であり、以下に述べるように、実務上も再雇用後の労務管理で雇用契約書がないと、色々不都合が生ずることがありますので、是非、雇用契約書を締結することをお勧め致します。
※別物とは、簡単に言うと、定年退職によって今までの雇用契約は一旦リセットされ、新たな雇用契約が始まるということ。
=不都合その1=
「雇用契約が青天井になってまう」
60歳定年でも65歳定年でも、とにかく定年後の再雇用は必ず有期雇用契約にすべきです。できれば1年以内が望ましいでしょう。定年を超えて期間を区切らずに漫然と雇用していると、それは定年という自動退職の仕組みが適用されない、いわば青天井で死ぬまで雇います!と、言っているようなもので、従業員から自発的に退職の申し出がない限り、解雇するか、少なくとも退職勧奨しなければならないことになってしまいます。必ず期間に終わりがある仕組みを導入しましょう。
=不都合その2=
「労働条件の見直しがしにくい」
通常、定年再雇用者の労働条件は、定年前と同一か、または賃金だけを削減しその他は同じというケースが多いように思います。ただ、年を経るにつれ、どうしても健康状態や能動能率の減退を考慮せざるを得なくなることがあり、また経営状態も鑑みながら更新の有無を判断していかなければなりません。
有期雇用契約書で更新手続きを「イベント化」することによって、少なくとも1年に1回は次期の更新の有無を含めた労働条件の見直しがし易くなります。漫然と継続していると、機械的に話し合いが出来る「イベント」がないため、見直しに苦慮することがあります。
=不都合その3=
「雇用保険の離職事由で困る」
定年再雇用者が実際に退職となったとき、有期雇用契約書がないと、雇用保険の離職事由をどうするかで苦慮することがあります。大概の場合、定年後の再雇用おける雇用保険加入資格は、定年前からそのまま継続していることが多いため、加入期間は相当長期に渉ることがあり、また雇用保険は離職事由により受給資格が大きく左右される仕組みになっているため、どのような離職事由で離職票を発行するかは大事な問題なのです。
しかし有期雇用契約書がないと会社都合か自己都合の両極端な事由しか見出せず、期間満了による退職という離職事由が使えません。期間満了ですと、解雇でなはないため解雇に関する様々な法的制約を受けず、また助成金が不支給になるデメリットも回避できます。従業員からみても自己都合だと3ヶ月の給付制限がかかるところ、期間満了ではその制限はかからず、すぐに失業認定されます。
=不都合その4=
「ミッションが伝わりにくい」
定年再雇用者には黙々と今までの仕事を継続してもらうのではなく、後継者の育成、技能伝承という重要なミッションがあるはずです。それを口頭で伝えることは当然としても、雇用契約書を改めて交わし、その中にそういった特別なミッションをきちんと書き込み、今までとは違うということを意識の中に埋め込んでもらうためにも重要です。不都合その2でも言えることですが、契約書を交わすというイベントがあると、普段改まって言いにくいこともフォーマルな場を作り出せるため、比較的言い易くなるものです。
当事務所では、様々な雇用契約書のサンプルをご提示しております。どうぞご活用いただきますと共に、担当者へお気軽にご相談ください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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~でないと何かと不都合が起こる・・・・・~
中小企業の労務管理の中で足りないものの一つに、文書化がおざなりになる、ということがあります。雇用契約書もその一つです。その雇用契約書の中でも更におざなりになってしまうのが、定年退職者を継続雇用する場面です。賃金が減額されることが多いとはいえ、定年後、特別な手続きもなく1日もおかずに元の職場で元の仕事を普通にこなしている状態ですので、再雇用しているという感覚がないのも分からないではありません。
しかし法的には定年前の雇用と定年後の雇用は全く別物※であり、以下に述べるように、実務上も再雇用後の労務管理で雇用契約書がないと、色々不都合が生ずることがありますので、是非、雇用契約書を締結することをお勧め致します。
※別物とは、簡単に言うと、定年退職によって今までの雇用契約は一旦リセットされ、新たな雇用契約が始まるということ。
=不都合その1=
「雇用契約が青天井になってまう」
60歳定年でも65歳定年でも、とにかく定年後の再雇用は必ず有期雇用契約にすべきです。できれば1年以内が望ましいでしょう。定年を超えて期間を区切らずに漫然と雇用していると、それは定年という自動退職の仕組みが適用されない、いわば青天井で死ぬまで雇います!と、言っているようなもので、従業員から自発的に退職の申し出がない限り、解雇するか、少なくとも退職勧奨しなければならないことになってしまいます。必ず期間に終わりがある仕組みを導入しましょう。
=不都合その2=
「労働条件の見直しがしにくい」
通常、定年再雇用者の労働条件は、定年前と同一か、または賃金だけを削減しその他は同じというケースが多いように思います。ただ、年を経るにつれ、どうしても健康状態や能動能率の減退を考慮せざるを得なくなることがあり、また経営状態も鑑みながら更新の有無を判断していかなければなりません。
有期雇用契約書で更新手続きを「イベント化」することによって、少なくとも1年に1回は次期の更新の有無を含めた労働条件の見直しがし易くなります。漫然と継続していると、機械的に話し合いが出来る「イベント」がないため、見直しに苦慮することがあります。
=不都合その3=
「雇用保険の離職事由で困る」
定年再雇用者が実際に退職となったとき、有期雇用契約書がないと、雇用保険の離職事由をどうするかで苦慮することがあります。大概の場合、定年後の再雇用おける雇用保険加入資格は、定年前からそのまま継続していることが多いため、加入期間は相当長期に渉ることがあり、また雇用保険は離職事由により受給資格が大きく左右される仕組みになっているため、どのような離職事由で離職票を発行するかは大事な問題なのです。
しかし有期雇用契約書がないと会社都合か自己都合の両極端な事由しか見出せず、期間満了による退職という離職事由が使えません。期間満了ですと、解雇でなはないため解雇に関する様々な法的制約を受けず、また助成金が不支給になるデメリットも回避できます。従業員からみても自己都合だと3ヶ月の給付制限がかかるところ、期間満了ではその制限はかからず、すぐに失業認定されます。
=不都合その4=
「ミッションが伝わりにくい」
定年再雇用者には黙々と今までの仕事を継続してもらうのではなく、後継者の育成、技能伝承という重要なミッションがあるはずです。それを口頭で伝えることは当然としても、雇用契約書を改めて交わし、その中にそういった特別なミッションをきちんと書き込み、今までとは違うということを意識の中に埋め込んでもらうためにも重要です。不都合その2でも言えることですが、契約書を交わすというイベントがあると、普段改まって言いにくいこともフォーマルな場を作り出せるため、比較的言い易くなるものです。
当事務所では、様々な雇用契約書のサンプルをご提示しております。どうぞご活用いただきますと共に、担当者へお気軽にご相談ください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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14年09月02日
道路交通法が改正が労務管理へも影響を及ぼす(H26.9月号)
●道路交通法が改正が労務管理へも影響を及ぼす
~自動車運転に従事する労働者がいる企業は一定の病気に要注意!事前に把握する仕組みを導入しよう~ (H26.9月号)
近年、運転中に意識障害を起こし重大な交通事故が発生するなど、大きな社会問題として報道されています。
こういった背景を受け、本年5月20日に自動車運転処罰法が新たに制定され、6月1日より道路交通法が一部改正され施行されています。「アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した場合」や、「幻覚や発作を伴う病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転 」するなど、一定の病気等により死傷事故を起こした場合に、その罰則が強化されたり、免許取得等に制限が課されるものですが、その内容の詳細に触れることはここでの主旨でないため割愛します。
労務管理との関係では、本年5月30日に厚生労働省労働基準局長通達として、トラック業界等関係団体などに「意識の消失等の症状を有する労働者が業務として自動車を運転する場合等の健康診断等における留意点について」と題するものを発出されています。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■■□■
厚生労働省労働基準局長通達(基発0530第5号)(抄)
意識の消失等の症状を有する労働者が業務として自動車を運転する場合等の健康診断等における留意点について
平成23年に栃木県鹿沼市で発生した交通事故等、業務で自動車を運転する労働者が、運転中の意識の消失等を発生したことが主な要因と思われる重大な死傷事故が発生する等しており、労働者の健康状態を的確に把握すること等により、いかに同種事故を防止するかが課題となっています。
このため自動車運転免許に関しましては、平成25年6月14日に道路交通法の一部を改正する法律が公布され、免許の拒否事由等とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するため、免許を受けようとする者等に対する病気の症状に関する公安委員会の質問制度等の規定が整備され、これらの内容については、本年6月1日から施行されます。
一方、労働安全衛生関係法令においては、事業者による労働者の健康状況の把握及び適切な事後措置の重要性に鑑み、現行制度下でも、労働者に対して行う一般健康診断において、自覚症状及び他覚症状の有無を検査することとされているところですが、特に業務として自動車を運転する労働者等に対しては、健康診断及び健康診断後の措置等について、下記の点に留意するよう貴団体会員事業者への周知等について特段のご理解とご協力をお願いいたします。
記
1.業務上、自動車(大型特殊等を含む)運転に従事する者(業務上、移動手段として自動車を利用する者を含む)等に対しては、労働者の健康・安全の確保のために必要な場合は、雇入れ時又は定期の一般健康診断において、意識を失った、身体の全部又は一部が一時的に思い通りに動かせなくなった、活動している最中に眠り込んでしまった等の症状の有無を確認することが望ましいこと。
2.健康診断結果及び健康診断結果を受けての医師からの意見聴取等により、労働者の健康・安全の確保の観点から、必要と認められる場合は、健康診断結果に基づき事業が講ずべき措置に関する指針(健康診断結果措置指針公示第7号)2(4)に留意し、労働者の意見等も勘案しつつ、適切な事後措置等を講じる等、必要な対策をとること。
3.1.で確認することとした労働者に係る情報は、極めて機微に触れる情報であることから、事業者は、労働者の健康情報については漏洩等の防止、それを取り扱う者に対する監督等、その取扱いに十分留意すること。 なお、医師はもとより健康診断事務担当者等の健康診断等業務従事者に対して労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第104条に規定されている守秘義務の規定が適用されることに、留意すること。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■■□■□
実はここからが本題です。
上記の「一定の病気等」には以下のようなものが定められています。
「統合失調症」「てんかん」「再発性の失神」「無自覚性の低血糖症」「そううつ病」「重度の眠気の症状を示す睡眠障害」「認知症」「アルコール、麻薬、覚せい剤等の中毒」
上記通達1にもあるように、「症状の有無を確認することが望ましい」とされていますが、これらは健康診断によって、必ずしも把握できるものではありません。差別にならないように配慮する必要があるものの、使用者として何ら把握するための措置を取らず従業員が業務災害を起こした場合、社会的制裁のみならず、法的責任や賠償問題についても今まで以上に厳しくなる可能性があるのです。
従って、自動車を業務として運転する従業員を抱える企業は、運転させても大丈夫か、という観点から今まで以上に把握する措置を講ずる必要があると思います。そこでご提案したいのが、採用面接時と年1回の定期健康診断時に、「運転告知書」や「運転業務に対する病歴、治療等についての確認書」などのシートを利用して、事前把握する仕組みを設けることです。
シートは弊社HPの「書式のダウンロードコーナー」にありますので、どうぞご活用ください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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~自動車運転に従事する労働者がいる企業は一定の病気に要注意!事前に把握する仕組みを導入しよう~ (H26.9月号)
近年、運転中に意識障害を起こし重大な交通事故が発生するなど、大きな社会問題として報道されています。
こういった背景を受け、本年5月20日に自動車運転処罰法が新たに制定され、6月1日より道路交通法が一部改正され施行されています。「アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した場合」や、「幻覚や発作を伴う病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転 」するなど、一定の病気等により死傷事故を起こした場合に、その罰則が強化されたり、免許取得等に制限が課されるものですが、その内容の詳細に触れることはここでの主旨でないため割愛します。
労務管理との関係では、本年5月30日に厚生労働省労働基準局長通達として、トラック業界等関係団体などに「意識の消失等の症状を有する労働者が業務として自動車を運転する場合等の健康診断等における留意点について」と題するものを発出されています。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■■□■
厚生労働省労働基準局長通達(基発0530第5号)(抄)
意識の消失等の症状を有する労働者が業務として自動車を運転する場合等の健康診断等における留意点について
平成23年に栃木県鹿沼市で発生した交通事故等、業務で自動車を運転する労働者が、運転中の意識の消失等を発生したことが主な要因と思われる重大な死傷事故が発生する等しており、労働者の健康状態を的確に把握すること等により、いかに同種事故を防止するかが課題となっています。
このため自動車運転免許に関しましては、平成25年6月14日に道路交通法の一部を改正する法律が公布され、免許の拒否事由等とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するため、免許を受けようとする者等に対する病気の症状に関する公安委員会の質問制度等の規定が整備され、これらの内容については、本年6月1日から施行されます。
一方、労働安全衛生関係法令においては、事業者による労働者の健康状況の把握及び適切な事後措置の重要性に鑑み、現行制度下でも、労働者に対して行う一般健康診断において、自覚症状及び他覚症状の有無を検査することとされているところですが、特に業務として自動車を運転する労働者等に対しては、健康診断及び健康診断後の措置等について、下記の点に留意するよう貴団体会員事業者への周知等について特段のご理解とご協力をお願いいたします。
記
1.業務上、自動車(大型特殊等を含む)運転に従事する者(業務上、移動手段として自動車を利用する者を含む)等に対しては、労働者の健康・安全の確保のために必要な場合は、雇入れ時又は定期の一般健康診断において、意識を失った、身体の全部又は一部が一時的に思い通りに動かせなくなった、活動している最中に眠り込んでしまった等の症状の有無を確認することが望ましいこと。
2.健康診断結果及び健康診断結果を受けての医師からの意見聴取等により、労働者の健康・安全の確保の観点から、必要と認められる場合は、健康診断結果に基づき事業が講ずべき措置に関する指針(健康診断結果措置指針公示第7号)2(4)に留意し、労働者の意見等も勘案しつつ、適切な事後措置等を講じる等、必要な対策をとること。
3.1.で確認することとした労働者に係る情報は、極めて機微に触れる情報であることから、事業者は、労働者の健康情報については漏洩等の防止、それを取り扱う者に対する監督等、その取扱いに十分留意すること。 なお、医師はもとより健康診断事務担当者等の健康診断等業務従事者に対して労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第104条に規定されている守秘義務の規定が適用されることに、留意すること。
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実はここからが本題です。
上記の「一定の病気等」には以下のようなものが定められています。
「統合失調症」「てんかん」「再発性の失神」「無自覚性の低血糖症」「そううつ病」「重度の眠気の症状を示す睡眠障害」「認知症」「アルコール、麻薬、覚せい剤等の中毒」
上記通達1にもあるように、「症状の有無を確認することが望ましい」とされていますが、これらは健康診断によって、必ずしも把握できるものではありません。差別にならないように配慮する必要があるものの、使用者として何ら把握するための措置を取らず従業員が業務災害を起こした場合、社会的制裁のみならず、法的責任や賠償問題についても今まで以上に厳しくなる可能性があるのです。
従って、自動車を業務として運転する従業員を抱える企業は、運転させても大丈夫か、という観点から今まで以上に把握する措置を講ずる必要があると思います。そこでご提案したいのが、採用面接時と年1回の定期健康診断時に、「運転告知書」や「運転業務に対する病歴、治療等についての確認書」などのシートを利用して、事前把握する仕組みを設けることです。
シートは弊社HPの「書式のダウンロードコーナー」にありますので、どうぞご活用ください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
14年08月01日
最新 労働条件指標 世間はどのようになっているか? (H26.8月号)
最新 労働条件指標 世間はどのようになっているか? (H26.8月号)
今回は厚生労働省が発表した平成25年度の集計による最新の労働条件指標を、100人未満の企業規模の統計調査を中心にいくつかご紹介したいと思います。あくまでも平均値でありますが、世間相場としてご参考にしていただければ幸いです。
1.労働時間制度について
1日の所定労働時間は7時間43分、1週間は39時間29分。
完全週休2日制の企業はは41.7%。何らかの週休2日制を導入している企業は83.8%。
年間休日の1企業平均は103.8日。
有給休暇の取得率は、1人平均40.1%(繰越日数分を除く)。
変形労働時間制を導入している企業は48.6%(内訳は1年単位が32.5%、1ヶ月単位が14.8%、フレックスタイムが2.8%)。
みなし労働時間制を導入してる企業は8.8%(内訳は事業場外みなしが7.7%、専門業務型が1.6%、企画業務型が0.6%)。
2.定年制
定年制のある企業は91.5%。
60歳定年は80.3%、65歳定年は14.7%、66歳以上は2.0%。
3.初任給(全国 大企業含む)
大学卒19.8万円、高専短大卒17.2万円、高校卒15.6万円。
4.一般労働者の賃金
男性(全業種、全国)
20~24歳 193.4千円、
25~29歳 222.7千円、
30~34歳 258.4千円、
35~39歳 286.1千円、
40~44歳 312.1千円、
45~49歳 326.3千円、
50~54歳 335.8千円、
55~59歳 327.7千円、
60~64歳 270.1千円、
さらに詳細は→ http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001011429&requestSender=dsearch
5.都道府県別速報(大阪)
全労働者では315.4千円(年齢42歳、勤続11.8年)。
男性では342.8千円(年齢43.2歳、勤続13.3年)。
女性では251.8千円(年齢39.3歳、勤続8.5年)。
6.パートタイマーの時給(大企業含む)
大阪 男性
産業計 1,099円、
製造業 1,261円
運輸業 1,271円
卸小売 944円
飲食サービス 922円
大阪 女性
産業計 1,034円、
製造業 929円
卸小売 916円
飲食サービス 916円
医療福祉 1,289円
7.賃金改定状況(全国 300人未満)
平均賃上げ率は1.5%、額は4,131円。
出所:1及び2は「就労条件総合調査」より、3から6は「賃金構造基本統計調査」より、7は「賃金引上げ等の実態に関する調査」より。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
今回は厚生労働省が発表した平成25年度の集計による最新の労働条件指標を、100人未満の企業規模の統計調査を中心にいくつかご紹介したいと思います。あくまでも平均値でありますが、世間相場としてご参考にしていただければ幸いです。
1.労働時間制度について
1日の所定労働時間は7時間43分、1週間は39時間29分。
完全週休2日制の企業はは41.7%。何らかの週休2日制を導入している企業は83.8%。
年間休日の1企業平均は103.8日。
有給休暇の取得率は、1人平均40.1%(繰越日数分を除く)。
変形労働時間制を導入している企業は48.6%(内訳は1年単位が32.5%、1ヶ月単位が14.8%、フレックスタイムが2.8%)。
みなし労働時間制を導入してる企業は8.8%(内訳は事業場外みなしが7.7%、専門業務型が1.6%、企画業務型が0.6%)。
2.定年制
定年制のある企業は91.5%。
60歳定年は80.3%、65歳定年は14.7%、66歳以上は2.0%。
3.初任給(全国 大企業含む)
大学卒19.8万円、高専短大卒17.2万円、高校卒15.6万円。
4.一般労働者の賃金
男性(全業種、全国)
20~24歳 193.4千円、
25~29歳 222.7千円、
30~34歳 258.4千円、
35~39歳 286.1千円、
40~44歳 312.1千円、
45~49歳 326.3千円、
50~54歳 335.8千円、
55~59歳 327.7千円、
60~64歳 270.1千円、
さらに詳細は→ http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001011429&requestSender=dsearch
5.都道府県別速報(大阪)
全労働者では315.4千円(年齢42歳、勤続11.8年)。
男性では342.8千円(年齢43.2歳、勤続13.3年)。
女性では251.8千円(年齢39.3歳、勤続8.5年)。
6.パートタイマーの時給(大企業含む)
大阪 男性
産業計 1,099円、
製造業 1,261円
運輸業 1,271円
卸小売 944円
飲食サービス 922円
大阪 女性
産業計 1,034円、
製造業 929円
卸小売 916円
飲食サービス 916円
医療福祉 1,289円
7.賃金改定状況(全国 300人未満)
平均賃上げ率は1.5%、額は4,131円。
出所:1及び2は「就労条件総合調査」より、3から6は「賃金構造基本統計調査」より、7は「賃金引上げ等の実態に関する調査」より。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
14年06月30日
逆風が吹く「みなし労働時間制」 その適切な運用方法を検討する
●逆風が吹く「みなし労働時間制」 その適切な運用方法を検討する (H26.7月号)
かつてH20.7月のメルマガにおいて、「外勤仕事がある会社は、残業代が要らない、「みなし労働時間制」を適用しよう」という記事を配信しました。ところが本年、最高裁において旅行添乗員のみなし労働時間制が否定されるという、企業にとってはショッキングな判決が出ました(阪急トラベルサポート残業代請求事件 H26.1.24)。これにより、みなし労働時間時間制を採用することは非常に困難になったと解する向きもあるようです。
しかしこの結果においても、裁判所が新たな規範を制定したとまでは言えないのではないかと思っいます。つまり、従来の解釈運用の延長線上にあるものと思われます。これからも運用をきちんとすれば、なおも使える制度なのです。そうでないと、労働基準法が法本則でこの制度を定めている意義自体が没却されてしまいます。
ここで念のため、みなし労働時間時間制とは何か、簡単におさらいしておきます。
営業など外勤活動において、会社がその労働時間を正確に把握できないときは、裁量労働制の一種である「みなし労働時間制」を適用することができます。この場合は、原則的に社内で行った業務を含めて、所定労働時間の労働とすることができ、残業代は発生しません。例えば、所定労働時間が8時間で午前中は事業場内で業務に従事し、午後から事業場外で業務に従事した場合、午後からの労働時間の算定が困難なためにその日全体としての労働時間の算定ができないのであれば、みなし労働時間制の適用ができ、原則として、その日は事業場内で業務に従事した時間を含めて全体として所定労働時間の8時間を労働したことになるというもので、始業終業時刻の前後にはみ出した時間が有っても、特段の指示でもない限り、8時間だけの労働になります(但し、常態として所定労働時間を超える場合は例外があり、この解釈には結論が出ておらず、議論の余地が有るが、ここでは割愛します)。
今回の本論に戻ります。この制度の適切な運用とは、ひと言で言い表すならば、「如何に労働者の自由裁量度があるか」、にかかっていると言ってもいいでしょう。ではその自由裁量度を肯定される(または否定される)事実とは、一体、どういったものでしょうか。
行政解釈では否定されるパターンとして、以下の三つを例示していますが、これは司法でも尊重されているものと思われます。
(1)グループ活動において、労働時間を管理する人がその中にいる場合
(2)携帯電話などで逐一、会社から指示を受けている場合
(3)外出前に訪問場所や時間を予定し、その通りに帰ってくる場合
私見ですが、これらを具体的に根拠付ける運用としては、以下のようなものが考えられます。
1.訪問前に詳細な行動予定表は作らない。
2.訪問先、順番、ルートの計画は本人に任せる(事前に細かな指示を出さないこと)。
3.たまには直行・直帰を認める。
4.会社から携帯電話等の通信機器を貸与しない(連絡が必要なら本人所持の携帯を借り受けること)。
5.会社指定のSNSアプリを導入しない。
6.逐一、社内から携帯電話やメールをしない(一旦外出すれば指示は出さず、連絡も必要最小限に抑えること)。
7.逐一、外出先から報告や進捗状況を求めない(帰社後にまとめて報告を受ける程度にする)。
8.外出中は、「さぼり」をある程度許容する(所定の休憩時間分にこだわらず、結果さえ出せば良いくらいの度量が必要か)。
9.タイムカードは使用せず、自主申告を認める。
10.自主申告の時間は、まるめた時間で良い(みなした時間の記載で良い。帰社後に会議など、特別の業務がある場合は別)。
11.日報には時間を記録しない。
12.採用時に雇用契約書においてみなし労働時間時間制の適用であることを合意しておく。
これらを全て履行できないと、ダメというわけではありません。しかしこういった事実から自由裁量性を判断していますので、できるだけこういった運用が一つでも多くできることが望ましいです。逆に言うと、ほとんど無理、というのであれば、みなし労働時間制の適用はあきらめた方がいいでしょう。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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かつてH20.7月のメルマガにおいて、「外勤仕事がある会社は、残業代が要らない、「みなし労働時間制」を適用しよう」という記事を配信しました。ところが本年、最高裁において旅行添乗員のみなし労働時間制が否定されるという、企業にとってはショッキングな判決が出ました(阪急トラベルサポート残業代請求事件 H26.1.24)。これにより、みなし労働時間時間制を採用することは非常に困難になったと解する向きもあるようです。
しかしこの結果においても、裁判所が新たな規範を制定したとまでは言えないのではないかと思っいます。つまり、従来の解釈運用の延長線上にあるものと思われます。これからも運用をきちんとすれば、なおも使える制度なのです。そうでないと、労働基準法が法本則でこの制度を定めている意義自体が没却されてしまいます。
ここで念のため、みなし労働時間時間制とは何か、簡単におさらいしておきます。
営業など外勤活動において、会社がその労働時間を正確に把握できないときは、裁量労働制の一種である「みなし労働時間制」を適用することができます。この場合は、原則的に社内で行った業務を含めて、所定労働時間の労働とすることができ、残業代は発生しません。例えば、所定労働時間が8時間で午前中は事業場内で業務に従事し、午後から事業場外で業務に従事した場合、午後からの労働時間の算定が困難なためにその日全体としての労働時間の算定ができないのであれば、みなし労働時間制の適用ができ、原則として、その日は事業場内で業務に従事した時間を含めて全体として所定労働時間の8時間を労働したことになるというもので、始業終業時刻の前後にはみ出した時間が有っても、特段の指示でもない限り、8時間だけの労働になります(但し、常態として所定労働時間を超える場合は例外があり、この解釈には結論が出ておらず、議論の余地が有るが、ここでは割愛します)。
今回の本論に戻ります。この制度の適切な運用とは、ひと言で言い表すならば、「如何に労働者の自由裁量度があるか」、にかかっていると言ってもいいでしょう。ではその自由裁量度を肯定される(または否定される)事実とは、一体、どういったものでしょうか。
行政解釈では否定されるパターンとして、以下の三つを例示していますが、これは司法でも尊重されているものと思われます。
(1)グループ活動において、労働時間を管理する人がその中にいる場合
(2)携帯電話などで逐一、会社から指示を受けている場合
(3)外出前に訪問場所や時間を予定し、その通りに帰ってくる場合
私見ですが、これらを具体的に根拠付ける運用としては、以下のようなものが考えられます。
1.訪問前に詳細な行動予定表は作らない。
2.訪問先、順番、ルートの計画は本人に任せる(事前に細かな指示を出さないこと)。
3.たまには直行・直帰を認める。
4.会社から携帯電話等の通信機器を貸与しない(連絡が必要なら本人所持の携帯を借り受けること)。
5.会社指定のSNSアプリを導入しない。
6.逐一、社内から携帯電話やメールをしない(一旦外出すれば指示は出さず、連絡も必要最小限に抑えること)。
7.逐一、外出先から報告や進捗状況を求めない(帰社後にまとめて報告を受ける程度にする)。
8.外出中は、「さぼり」をある程度許容する(所定の休憩時間分にこだわらず、結果さえ出せば良いくらいの度量が必要か)。
9.タイムカードは使用せず、自主申告を認める。
10.自主申告の時間は、まるめた時間で良い(みなした時間の記載で良い。帰社後に会議など、特別の業務がある場合は別)。
11.日報には時間を記録しない。
12.採用時に雇用契約書においてみなし労働時間時間制の適用であることを合意しておく。
これらを全て履行できないと、ダメというわけではありません。しかしこういった事実から自由裁量性を判断していますので、できるだけこういった運用が一つでも多くできることが望ましいです。逆に言うと、ほとんど無理、というのであれば、みなし労働時間制の適用はあきらめた方がいいでしょう。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com