13年08月05日
限定社員制度を活用しよう (H25.8月号)
●限定社員制度を活用しよう
~解雇し易い制度であることは間違いないが~
現在、政府の規制改革会議の中で、[限定正社員]構想が持ち上がっています。労組の反対が強いため、法案まで辿りつくかは微妙で、今は言葉だけが先行しておりその詳しい中味は不明です。ただ経営側には、解雇の金銭解決制度とと並んで、限定社員制度を法制化することで、厳しすぎる日本の解雇規制を何とか緩和して欲しいという思惑が絡んでいるようです。
なぜ限定社員制度は解雇をしやすくなるのかは後述しますが、私は以前から限定社員制度を積極的に推奨してきた立場です。ここで何を限定するのかといえば、それは職種と場所です。特に中小零細企業においては労使ともに使える制度だと考えています。そしてこの制度、実は新たな立法措置を待たなくとも、今すぐやろうと思えばできるのです。
日本の解雇規制は異常なほど厳しいことで知られています。いわゆる解雇権濫用法理と言われるもので、現在では労働契約法第16条にその規定を置いています。今回はこの解説が主題ではないため詳しくは触れませんが、要するに長期雇用を前提とした正社員に関しては、使用者の広範な人事権を認め、色々と社員に要求できる代わりに、その反射として雇用保障は手厚くすべきであるという考え方に立っています。
例えば会社には社員に対して「この仕事をこういうやり方でしろ」とか「この場所で働いてくれ」とか、仕事内容や勤務場所について業務命令を発することができます。個別に同意は必要ありません。これは広い人事権が認められているからです。
しかし会社は、社員の能力が低いとか、勤務態度が悪いからといって簡単には解雇できません。業績悪化など企業側の都合で整理(リストラ)解雇するときは更に解雇のハードルが上がります。これは経営者の感覚からすれば、なかなか理解しがたいことのようです。
ところが限定社員制度は、この厳しい解雇要件を緩和する効果があるのです。つまり使用者から見れば、解雇しやすくなる制度と言えます。なぜ、そのようになるのでしょうか。先ほど、広い人事権があるからこそ、解雇が厳しいと申しました。その反対です。つまり会社の人事権が狭くなれば、解雇の出口は広くなるのです。具体的には社員の仕事内容や勤務場所については会社が自由に命令できる権利を制限し、もしそれらをする場合には個別同意が必要とするのです。こうすることで無限定に働いてくれる通常の社員より解雇がし易くなります。
そもそも中小零細企業の場合、初めからその業務以外の仕事は想定していないことも多いでしょう。例えば、小さな運送業でドライバーとして雇った人に、営業や事務に職種換えすることなど予定されているでしょうか。あるいはそもそも働く場所は1箇所しかなく、他の場所へ配置転換させることなど物理的に有り得ないことも多いでしょうし、複数の営業拠点がある場合でもパートなど現地採用で来ている人の場合、初めからその勤務地以外の場所で働くなど労使共に考えていないケースも多いでしょう。
つまり限定社員制度などとかしこまって言わなくとも、実態として初めから職種も場所も限定されているに等しいという事実があるのです。このような状況の企業の場合、むしろ限定社員契約であるということを明確にして、その仕事や勤務場所がなくなれば自動解約する契約も私的自治の原則からいえば可能なはずです。何も新しい法律を作らなくとも現行法下においても、お互いが納得して合意すれば理論上は可能なのです。
また非常に解雇のハードルが高い整理解雇の場面でも、解雇される人選が妥当であるかとか解雇回避の努力を尽くしたかという要素判断においても、通常の社員よりも劣後に置かれることに一定の合理性が生じます。
ただ、こういった言わば会社にとって都合の良い?制度を可能ならしめるためには、少なくとも以下の要件をクリアする必要があると考えています。
1.労働契約締結の段階で、きちんとその趣旨を説明し、契約書の文面に落としこむ
2.社員が真正に納得して契約している
3.できれば募集の段階から、そのような契約であることを謳っておく
4.就業規則にその職務または勤務場所がなくなった場合に解約できる根拠条文がある
5.その就業規則が周知されている
6.この制度の適用を受ける人に対する運用にムラがなく、貫徹されている
そしてこの限定社員制度、解雇され易い反面、社員にとってもメリットがあります。例えば「この仕事しかしたくない」、とか「この仕事でキャリアを積みたい」と思った場合、この制度下の社員であれば、会社から他の仕事を命じられる心配はありません。また「自宅から近いこの場所でしか働きたくない」と思った場合も、会社から転勤を命じられる筋合いもありません。安心して自分がやりたい仕事、働きたい場所で勤務できるのです。また有期契約社員に限定社員制度を入れると、企業も正社員化し易いので、有期契約社員の安定化に資する効用もあるかもしれません。
まんざら、悪い制度ではない、使える制度だと思うのです。
以下雇用契約書または就業規則の該当部分サンプルを掲示しておきます。くれぐれも専門家にご相談の上、導入されることをお勧めします。
限定社員用 雇用契約書
(職務)
第00条 ●●業務に限る
(退職)
第00条 乙の職種や勤務場所が、やむを得ない事由により無くなった場合は、その無くなる最後の日をもって退職とする。
第00条 乙の都合により、限定された債務が履行できなくなり、そのことによりあらかじめ退職が合意されているときは、その解除要件で合意した日に退職とする。
(特約)
第00条 甲は乙に対して、乙の同意を得ることなく、●●の業務以外の業務を命ずること、職種変更を命ずること、第00条の勤務場所を変更することを行わない。
(附則)
第00条 乙は以上の内容を確認し、理解した上で甲との雇用契約を申し込み、上記に関し、お互いに承諾諾したことの証として各々1通保管する。こと(職務)(退職)(特約)に関する事項については乙は充分な納得をした上で、本契約を申し込むものとする。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
~解雇し易い制度であることは間違いないが~
現在、政府の規制改革会議の中で、[限定正社員]構想が持ち上がっています。労組の反対が強いため、法案まで辿りつくかは微妙で、今は言葉だけが先行しておりその詳しい中味は不明です。ただ経営側には、解雇の金銭解決制度とと並んで、限定社員制度を法制化することで、厳しすぎる日本の解雇規制を何とか緩和して欲しいという思惑が絡んでいるようです。
なぜ限定社員制度は解雇をしやすくなるのかは後述しますが、私は以前から限定社員制度を積極的に推奨してきた立場です。ここで何を限定するのかといえば、それは職種と場所です。特に中小零細企業においては労使ともに使える制度だと考えています。そしてこの制度、実は新たな立法措置を待たなくとも、今すぐやろうと思えばできるのです。
日本の解雇規制は異常なほど厳しいことで知られています。いわゆる解雇権濫用法理と言われるもので、現在では労働契約法第16条にその規定を置いています。今回はこの解説が主題ではないため詳しくは触れませんが、要するに長期雇用を前提とした正社員に関しては、使用者の広範な人事権を認め、色々と社員に要求できる代わりに、その反射として雇用保障は手厚くすべきであるという考え方に立っています。
例えば会社には社員に対して「この仕事をこういうやり方でしろ」とか「この場所で働いてくれ」とか、仕事内容や勤務場所について業務命令を発することができます。個別に同意は必要ありません。これは広い人事権が認められているからです。
しかし会社は、社員の能力が低いとか、勤務態度が悪いからといって簡単には解雇できません。業績悪化など企業側の都合で整理(リストラ)解雇するときは更に解雇のハードルが上がります。これは経営者の感覚からすれば、なかなか理解しがたいことのようです。
ところが限定社員制度は、この厳しい解雇要件を緩和する効果があるのです。つまり使用者から見れば、解雇しやすくなる制度と言えます。なぜ、そのようになるのでしょうか。先ほど、広い人事権があるからこそ、解雇が厳しいと申しました。その反対です。つまり会社の人事権が狭くなれば、解雇の出口は広くなるのです。具体的には社員の仕事内容や勤務場所については会社が自由に命令できる権利を制限し、もしそれらをする場合には個別同意が必要とするのです。こうすることで無限定に働いてくれる通常の社員より解雇がし易くなります。
そもそも中小零細企業の場合、初めからその業務以外の仕事は想定していないことも多いでしょう。例えば、小さな運送業でドライバーとして雇った人に、営業や事務に職種換えすることなど予定されているでしょうか。あるいはそもそも働く場所は1箇所しかなく、他の場所へ配置転換させることなど物理的に有り得ないことも多いでしょうし、複数の営業拠点がある場合でもパートなど現地採用で来ている人の場合、初めからその勤務地以外の場所で働くなど労使共に考えていないケースも多いでしょう。
つまり限定社員制度などとかしこまって言わなくとも、実態として初めから職種も場所も限定されているに等しいという事実があるのです。このような状況の企業の場合、むしろ限定社員契約であるということを明確にして、その仕事や勤務場所がなくなれば自動解約する契約も私的自治の原則からいえば可能なはずです。何も新しい法律を作らなくとも現行法下においても、お互いが納得して合意すれば理論上は可能なのです。
また非常に解雇のハードルが高い整理解雇の場面でも、解雇される人選が妥当であるかとか解雇回避の努力を尽くしたかという要素判断においても、通常の社員よりも劣後に置かれることに一定の合理性が生じます。
ただ、こういった言わば会社にとって都合の良い?制度を可能ならしめるためには、少なくとも以下の要件をクリアする必要があると考えています。
1.労働契約締結の段階で、きちんとその趣旨を説明し、契約書の文面に落としこむ
2.社員が真正に納得して契約している
3.できれば募集の段階から、そのような契約であることを謳っておく
4.就業規則にその職務または勤務場所がなくなった場合に解約できる根拠条文がある
5.その就業規則が周知されている
6.この制度の適用を受ける人に対する運用にムラがなく、貫徹されている
そしてこの限定社員制度、解雇され易い反面、社員にとってもメリットがあります。例えば「この仕事しかしたくない」、とか「この仕事でキャリアを積みたい」と思った場合、この制度下の社員であれば、会社から他の仕事を命じられる心配はありません。また「自宅から近いこの場所でしか働きたくない」と思った場合も、会社から転勤を命じられる筋合いもありません。安心して自分がやりたい仕事、働きたい場所で勤務できるのです。また有期契約社員に限定社員制度を入れると、企業も正社員化し易いので、有期契約社員の安定化に資する効用もあるかもしれません。
まんざら、悪い制度ではない、使える制度だと思うのです。
以下雇用契約書または就業規則の該当部分サンプルを掲示しておきます。くれぐれも専門家にご相談の上、導入されることをお勧めします。
限定社員用 雇用契約書
(職務)
第00条 ●●業務に限る
(退職)
第00条 乙の職種や勤務場所が、やむを得ない事由により無くなった場合は、その無くなる最後の日をもって退職とする。
第00条 乙の都合により、限定された債務が履行できなくなり、そのことによりあらかじめ退職が合意されているときは、その解除要件で合意した日に退職とする。
(特約)
第00条 甲は乙に対して、乙の同意を得ることなく、●●の業務以外の業務を命ずること、職種変更を命ずること、第00条の勤務場所を変更することを行わない。
(附則)
第00条 乙は以上の内容を確認し、理解した上で甲との雇用契約を申し込み、上記に関し、お互いに承諾諾したことの証として各々1通保管する。こと(職務)(退職)(特約)に関する事項については乙は充分な納得をした上で、本契約を申し込むものとする。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
13年07月05日
従業員を懲戒(制裁)処分したいと思ったとき その3
●従業員を懲戒(制裁)処分したいと思ったとき その3
~懲戒はハードルが高いことを理解しよう~
このシリーズの最後の回となりました。1回目は懲戒処分を行うにはルールがあることを、2回目では懲戒処分の種類について解説いたしました。今回は最も悩ましい、非違行為と処分内容とのバランスについて考えたいと思います。
ここで参考になるのが人事院通知「懲戒処分の指針について」です。これは公務員に対する懲戒処分の指針であり、そのまま民間企業に当てはめるのは適当でないケースもあるのですが、実務上、非常に参考になります(※1)。
(※1)公務員は憲法によって全体の奉仕者とされ、法律によりストライキ、政治活動、兼職などが禁止され、守秘義務が課せられており、刑罰の対象になるなどの違いがある。従って民間人よりも、その運用は厳しいものになると考えられる。
その指針は、量刑を判断するにあたって、以下の点に留意することとしています。
第1 基本事項
具体的な処分量定の決定に当たっては、
1 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
2 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
3 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
4 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
5 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。
個別の事案の内容によっては、下記標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得るところである。例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合として、
1 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
2 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
3 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
4 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
5 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき
がある。また、例えば、標準例に掲げる処分の種類より軽いものとすることが考えられる場合として、
1 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
2 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められるとき
がある。なお、以下の標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。
以上が量刑判断の考え方で、以下からは指針の標準例に掲げられた主な非違行為と処分の内容を種類別に簡略化して、筆者の方で加筆・分類したものです。なお、免職は懲戒解雇と、停職は出勤停止と、戒告は譴責と同じとお考えください。
第2 標準例
1 一般服務関係
●欠勤
ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。
ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。
●遅刻・早退
勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。
●休暇の虚偽申請
病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする。
●勤務態度不良
勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
●職場内秩序を乱す行為
ア 他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減給とする。
イ 他の職員に対する暴言により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。
●虚偽報告
事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。
●秘密漏えい
職務上知ることのできた秘密を漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
●兼業の承認等を得る手続の懈怠
営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは 事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。
●(セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)
ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつ な行為をした職員は、免職又は停職とする。
イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下 「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したこ とにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。
ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。
2.公金官物取扱い関係(公金であるため、民間人のそれより重いと思われる)
●横領
公金又は官物を横領した職員は、免職とする。
●諸給与の違法支払・不適正受給
故意に法令に違反して諸給与を不正に支給した職員及び故意に届出を怠り、又は虚偽の届出をするなどして諸給与を不正に受給した職員は、減給又は戒告とする。
●コンピュータの不適正使用
職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
3.公務外非行関係 (企業外の私的行為にあたるもの)
●暴行・けんか
暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。
● 器物損壊
故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
●窃盗・強盗
ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。
● 詐欺・恐喝
人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。
● 麻薬・覚せい剤等の所持又は使用
麻薬・覚せい剤等を所持又は使用した職員は、免職とする。
●酩酊による粗野な言動等
酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。
●痴漢行為
公共の乗物等において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。
4.飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係
●飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等 の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲 酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
●飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
●飲酒運転以外の交通法規違反
著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は 、停職又は減給とする。
5.監督責任関係
●指導監督不適正
部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で、管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。
●非行の隠ぺい、黙認
部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した職員は、停職又は減給とする。
指針の詳細は、 http://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.htm
また、上記指針のほかに、労働基準監督署において解雇予告や予告手当の支払いを不要とする解雇予告除外認定を受ける際に、従業員の責めに帰すべき事由として認定する材料として、以下の通達があり、懲戒解雇事案で参考となります。
1. 会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合
2. 賭博や職場の風紀、規律を乱すような行為により、他の従業員に悪影響を及ぼす場合
3. 採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
4. 他の事業へ転職した場合
5. 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
6. 遅刻、欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めない場合
また、以上の他に一般論として、正当な配転(職務変更、転勤、出向)命令違反も、懲戒解雇をもって望まざるを得ないでしょう。出勤停止程度の処分では、処分を受けた方が結果的に得になってしまうからです。
懲戒処分は慎重に行うべきことを理解して頂けましたでしょうか。特に懲戒解雇は慎重であるべきで、仮に懲戒解雇する場合でも、予備的に普通解雇の意思表示はしておいた方が良いでしょう。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
~懲戒はハードルが高いことを理解しよう~
このシリーズの最後の回となりました。1回目は懲戒処分を行うにはルールがあることを、2回目では懲戒処分の種類について解説いたしました。今回は最も悩ましい、非違行為と処分内容とのバランスについて考えたいと思います。
ここで参考になるのが人事院通知「懲戒処分の指針について」です。これは公務員に対する懲戒処分の指針であり、そのまま民間企業に当てはめるのは適当でないケースもあるのですが、実務上、非常に参考になります(※1)。
(※1)公務員は憲法によって全体の奉仕者とされ、法律によりストライキ、政治活動、兼職などが禁止され、守秘義務が課せられており、刑罰の対象になるなどの違いがある。従って民間人よりも、その運用は厳しいものになると考えられる。
その指針は、量刑を判断するにあたって、以下の点に留意することとしています。
第1 基本事項
具体的な処分量定の決定に当たっては、
1 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
2 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
3 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
4 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
5 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。
個別の事案の内容によっては、下記標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得るところである。例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合として、
1 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
2 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
3 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
4 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
5 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき
がある。また、例えば、標準例に掲げる処分の種類より軽いものとすることが考えられる場合として、
1 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
2 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められるとき
がある。なお、以下の標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。
以上が量刑判断の考え方で、以下からは指針の標準例に掲げられた主な非違行為と処分の内容を種類別に簡略化して、筆者の方で加筆・分類したものです。なお、免職は懲戒解雇と、停職は出勤停止と、戒告は譴責と同じとお考えください。
第2 標準例
1 一般服務関係
●欠勤
ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。
ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。
●遅刻・早退
勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。
●休暇の虚偽申請
病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする。
●勤務態度不良
勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
●職場内秩序を乱す行為
ア 他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減給とする。
イ 他の職員に対する暴言により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。
●虚偽報告
事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。
●秘密漏えい
職務上知ることのできた秘密を漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
●兼業の承認等を得る手続の懈怠
営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは 事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。
●(セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)
ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつ な行為をした職員は、免職又は停職とする。
イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下 「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したこ とにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。
ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。
2.公金官物取扱い関係(公金であるため、民間人のそれより重いと思われる)
●横領
公金又は官物を横領した職員は、免職とする。
●諸給与の違法支払・不適正受給
故意に法令に違反して諸給与を不正に支給した職員及び故意に届出を怠り、又は虚偽の届出をするなどして諸給与を不正に受給した職員は、減給又は戒告とする。
●コンピュータの不適正使用
職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
3.公務外非行関係 (企業外の私的行為にあたるもの)
●暴行・けんか
暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。
● 器物損壊
故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
●窃盗・強盗
ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。
● 詐欺・恐喝
人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。
● 麻薬・覚せい剤等の所持又は使用
麻薬・覚せい剤等を所持又は使用した職員は、免職とする。
●酩酊による粗野な言動等
酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。
●痴漢行為
公共の乗物等において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。
4.飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係
●飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等 の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲 酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
●飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
●飲酒運転以外の交通法規違反
著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は 、停職又は減給とする。
5.監督責任関係
●指導監督不適正
部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で、管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。
●非行の隠ぺい、黙認
部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した職員は、停職又は減給とする。
指針の詳細は、 http://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.htm
また、上記指針のほかに、労働基準監督署において解雇予告や予告手当の支払いを不要とする解雇予告除外認定を受ける際に、従業員の責めに帰すべき事由として認定する材料として、以下の通達があり、懲戒解雇事案で参考となります。
1. 会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合
2. 賭博や職場の風紀、規律を乱すような行為により、他の従業員に悪影響を及ぼす場合
3. 採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
4. 他の事業へ転職した場合
5. 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
6. 遅刻、欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めない場合
また、以上の他に一般論として、正当な配転(職務変更、転勤、出向)命令違反も、懲戒解雇をもって望まざるを得ないでしょう。出勤停止程度の処分では、処分を受けた方が結果的に得になってしまうからです。
懲戒処分は慎重に行うべきことを理解して頂けましたでしょうか。特に懲戒解雇は慎重であるべきで、仮に懲戒解雇する場合でも、予備的に普通解雇の意思表示はしておいた方が良いでしょう。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
13年06月03日
従業員を懲戒(制裁)処分したいと思ったとき その2
●従業員を懲戒(制裁)処分したいと思ったとき その2
~懲戒はハードルが高いことを理解しよう~
前回は、懲戒処分を行うに当たっての留意すべきポイントを解説いたしました。今回は懲戒処分にはどんな方法があるのかを解説します。
一般的に懲戒処分には以下の処分が定義されていることが多いと思います。
(1) 戒 告 始末書を取らずに将来を戒めるもの
(2) 譴責 始末書を取って将来を戒めるもの
(3) 減給 支給されるべき賃金の一部を支給しないもの
(4) 出勤停止 就労を一定期間禁止してその間の賃金を支払わないもの
(5) 降格降職 役職や能力等級を下げ、それに伴う賃金体系に変更するもの
(6) 諭旨解雇 退職願の提出を促し、提出しないときは懲戒解雇とするもの
(7) 懲戒解雇 使用者が一方的に労働契約を解消するもの
(1)戒告
規定していないところもたくさんあると思います。懲戒処分というよりも、事実上の注意指導に当たるケースが多いでしょう。
(2)譴責(始末書)
上記処分の中で、よく登場するのはこの譴責、いわゆる始末書です。ただ始末書は、反省謝罪の意を表明させるものであり、業務命令で強制的に提出させることはできません。しかし非違行為自体が存在しているなら、反省の意を示さないことをマイナス評価して労務管理することは構いませんし、今後非違行為を繰り返すような場合に悪質性が高いと評価することも可能でしょう。
また、始末書を出さない場合や始末書とは別に、事の顛末や経過報告を求める顛末書を業務命令で求めることは差し支えありません。
(3)減給
これには労基法上の制限があります。つまり1回の非違行為に対して、平均賃金の半額以下、または複数回の非違行為に対しては1賃金支払期間において10分の1以下という制限です。
この10分の1というのは、10%までしか引けないという意味ではなく、あくまでも1賃金支払期における制限であり、複数回の非違行為の減給金額が10%を超えた場合、その超える金額を次の期に繰り越して減給することは可能です。
(4)出勤停止
就労を禁止して賃金を支払わないものですが、あまりに長期間にわたる処分は違法とされる可能性があります。法律上の期間制限はないのですが、1ヶ月を超える場合は相当難しいのではないかと思っています。
また出勤停止と似た措置として、処分確定前の自宅待機命令というのがありますが、調査の為や、証拠隠滅の恐れがある場合に行なう自宅待機命令は、懲戒処分とは別の措置であり、その後に懲戒処分を課しても二重処罰には当たりません。しかし賃金の支払い義務はあり、原則100%ですが、最低でも60%の休業手当は必要です(但し限定的に支払を免除されるケースも考えられるが、ここでは割愛します)。
(5)降格降職
懲戒権の行使として役職を剥奪したり、職能等級を下げたりする結果、一般的に賃金もそれに応じて減額されるものです。
これと似て非なるものに人事権の行使として行うものがあります。これは役職を下げるものと等級を下げるものの二つに分けて考える必要があり、役職者を降格させるのは特に規程上の定めが無くとも可能であり、その帰結として役職手当の対価がなくなるのは当然のことです。
一方、何らかの能力等級があってそれを引き下げることは、就業規則上の根拠規定が必要で、自由に行うことはできません。
私見ですが、役職の任免は使用者が自由に行えるため、ことさら懲戒権の行使で行う必要はなく、役職者の適正が無いなど人事権で行えば良いのではないかと考えています。
ちなみに昇給停止や賞与減額を懲戒事由にしているところもまれにありますが、同様の理由で懲戒として行う意味はあまり無いと思います。
(6)諭旨解雇(退職)
一定の期間内に退職届を出すように勧告し、提出しない場合に懲戒解雇するものですが、次の懲戒解雇と同様、その処分の当否は非常に厳しいものです。
(7)懲戒解雇
即時に解雇し、退職金も諭旨解雇と違って不支給になることが多く、再就職にも不利益になる重大な処分です。非常に慎重に行う必要があり、私見ですが、企業外へ放逐すればよいだけであれば、普通解雇を選択する方が良く、仮に懲戒解雇するにしても、予備的に普通解雇の意思表示もしておくことです。
ここで誤解が多いのが、懲戒解雇の場合は、解雇予告手当(または30日前の予告)が要らないと思われていることですが、労基署長の除外認定を受けない限り、この手続きは回避できません。ただ、除外認定を受けなければ、懲戒解雇ができないということでもありません。
実務上、懲戒解雇者に予告手当を支払うのは理解しがたい使用者が多いでしょう。ただ即日解雇に拘るものでなければ、予告手当の支払いを欠く懲戒解雇も即時解雇される事由があれば、30日経過後には解雇の効力が発生します。少し分かりにくいでしょうか?
また懲戒解雇の有効性と退職金の不支給も分けて考える必要があり、後者の方が更にハードルが高いとお考えください。簡単に言いますと、仮に懲戒解雇が有効でも、退職金の全額不支給は認められないことが多いということです。
次回はこのシリーズの最後として、ある非違行為に対してどの懲戒処分を選択すればよいのかという、難題に触れたいと思います。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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~懲戒はハードルが高いことを理解しよう~
前回は、懲戒処分を行うに当たっての留意すべきポイントを解説いたしました。今回は懲戒処分にはどんな方法があるのかを解説します。
一般的に懲戒処分には以下の処分が定義されていることが多いと思います。
(1) 戒 告 始末書を取らずに将来を戒めるもの
(2) 譴責 始末書を取って将来を戒めるもの
(3) 減給 支給されるべき賃金の一部を支給しないもの
(4) 出勤停止 就労を一定期間禁止してその間の賃金を支払わないもの
(5) 降格降職 役職や能力等級を下げ、それに伴う賃金体系に変更するもの
(6) 諭旨解雇 退職願の提出を促し、提出しないときは懲戒解雇とするもの
(7) 懲戒解雇 使用者が一方的に労働契約を解消するもの
(1)戒告
規定していないところもたくさんあると思います。懲戒処分というよりも、事実上の注意指導に当たるケースが多いでしょう。
(2)譴責(始末書)
上記処分の中で、よく登場するのはこの譴責、いわゆる始末書です。ただ始末書は、反省謝罪の意を表明させるものであり、業務命令で強制的に提出させることはできません。しかし非違行為自体が存在しているなら、反省の意を示さないことをマイナス評価して労務管理することは構いませんし、今後非違行為を繰り返すような場合に悪質性が高いと評価することも可能でしょう。
また、始末書を出さない場合や始末書とは別に、事の顛末や経過報告を求める顛末書を業務命令で求めることは差し支えありません。
(3)減給
これには労基法上の制限があります。つまり1回の非違行為に対して、平均賃金の半額以下、または複数回の非違行為に対しては1賃金支払期間において10分の1以下という制限です。
この10分の1というのは、10%までしか引けないという意味ではなく、あくまでも1賃金支払期における制限であり、複数回の非違行為の減給金額が10%を超えた場合、その超える金額を次の期に繰り越して減給することは可能です。
(4)出勤停止
就労を禁止して賃金を支払わないものですが、あまりに長期間にわたる処分は違法とされる可能性があります。法律上の期間制限はないのですが、1ヶ月を超える場合は相当難しいのではないかと思っています。
また出勤停止と似た措置として、処分確定前の自宅待機命令というのがありますが、調査の為や、証拠隠滅の恐れがある場合に行なう自宅待機命令は、懲戒処分とは別の措置であり、その後に懲戒処分を課しても二重処罰には当たりません。しかし賃金の支払い義務はあり、原則100%ですが、最低でも60%の休業手当は必要です(但し限定的に支払を免除されるケースも考えられるが、ここでは割愛します)。
(5)降格降職
懲戒権の行使として役職を剥奪したり、職能等級を下げたりする結果、一般的に賃金もそれに応じて減額されるものです。
これと似て非なるものに人事権の行使として行うものがあります。これは役職を下げるものと等級を下げるものの二つに分けて考える必要があり、役職者を降格させるのは特に規程上の定めが無くとも可能であり、その帰結として役職手当の対価がなくなるのは当然のことです。
一方、何らかの能力等級があってそれを引き下げることは、就業規則上の根拠規定が必要で、自由に行うことはできません。
私見ですが、役職の任免は使用者が自由に行えるため、ことさら懲戒権の行使で行う必要はなく、役職者の適正が無いなど人事権で行えば良いのではないかと考えています。
ちなみに昇給停止や賞与減額を懲戒事由にしているところもまれにありますが、同様の理由で懲戒として行う意味はあまり無いと思います。
(6)諭旨解雇(退職)
一定の期間内に退職届を出すように勧告し、提出しない場合に懲戒解雇するものですが、次の懲戒解雇と同様、その処分の当否は非常に厳しいものです。
(7)懲戒解雇
即時に解雇し、退職金も諭旨解雇と違って不支給になることが多く、再就職にも不利益になる重大な処分です。非常に慎重に行う必要があり、私見ですが、企業外へ放逐すればよいだけであれば、普通解雇を選択する方が良く、仮に懲戒解雇するにしても、予備的に普通解雇の意思表示もしておくことです。
ここで誤解が多いのが、懲戒解雇の場合は、解雇予告手当(または30日前の予告)が要らないと思われていることですが、労基署長の除外認定を受けない限り、この手続きは回避できません。ただ、除外認定を受けなければ、懲戒解雇ができないということでもありません。
実務上、懲戒解雇者に予告手当を支払うのは理解しがたい使用者が多いでしょう。ただ即日解雇に拘るものでなければ、予告手当の支払いを欠く懲戒解雇も即時解雇される事由があれば、30日経過後には解雇の効力が発生します。少し分かりにくいでしょうか?
また懲戒解雇の有効性と退職金の不支給も分けて考える必要があり、後者の方が更にハードルが高いとお考えください。簡単に言いますと、仮に懲戒解雇が有効でも、退職金の全額不支給は認められないことが多いということです。
次回はこのシリーズの最後として、ある非違行為に対してどの懲戒処分を選択すればよいのかという、難題に触れたいと思います。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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13年05月10日
従業員を懲戒(制裁)処分したいと思ったとき
●従業員を懲戒(制裁)処分したいと思ったとき
~懲戒はハードルが高いことを理解しよう~
よく従業員の何らか非違行為に対して、懲戒処分を行いたいとのご相談を受けることがあります。ただ、一歩間違うと、逆に反撃されるリスクが高いのも懲戒処分です。
そこで今回は、懲戒処分を行うにあたり、留意しておきべき基本的な知識について解説したいと思います。なお、ここでは懲戒といっていますが、制裁と同義とお考えください。
1.懲戒処分は人事権では行えない
使用者は労働契約の本質的要素として、従業員を指揮監督したりするする人事権、指揮命令権を固有に有しています。つまり、特に就業規則や労働契約書にその記載が無くとも、指揮命令を行うことが可能なのです。しかし懲戒処分に関しては、使用者の固有の権利とされておりません。あらかじめ周知された就業規則において、懲戒の種類や事由を明記しておくことが求められています。これを罪刑法定主義といい、記載されている範囲でしか、懲戒権を行使することはできません(これを限定列挙という)。
2.懲戒処分の有効要件
懲戒処分が有効かどうかは労働契約法15条に基づいて判断されますが、具体的には、
(1)就業規則に懲戒の根拠規定があること
(2)懲戒に値する非違行為があること
(3)上記2要件を満たしたとしても、社会的に相当であること
が必要とされています。(3)は少し分かりにくいですが、要するに、いきなり懲戒処分に処するのは酷でないかとか、その処分は厳しすぎるのではないか、行為と処分内容が釣り合っているかといったようなことです。この相当性を判断するのが実務上、非常に専門家であっても迷います。
また、これらに付随して、懲戒処分を有効ならしめるためには、以下のような要素を事前チェックしておくことも必要です。
ア.処分不遡及の原則
先ほども申し上げましたが、懲戒処分を行うには、根拠規定が必要ですが、行われた非違行為は規定の後に行われていることが必要です。つまり先に非違行為があって、後から作った規定で処罰することはできません。
イ.二重処罰の禁止
一事不再理の原則ともいいますが、要するに一度懲戒処分が確定した事実について、再度懲戒処分を行うことはできないということです。また一つの非違行為に対して、複数の処罰(減給と懲戒解雇とか)を行うこともできません。
ウ.適正手続きの原則
よく懲戒規定の中に、聴聞会を開くとか弁明の機会を付与するとか、懲戒処分を行う前の手続き要件を定めているケースがありますが、そのように記載されている以上、その手続きは省略せず、必ず行わなければなりません。ですから、そのような手続きが行えない規模であるなら、最初から書かないことです。
ただ、実務上は記載しなくても、一応、弁明の機会を与えることは必要だと考えています。
エ.平等取扱いの原則
過去の事例、他の従業員との比較において、ことさら当該従業員を不平等に取扱いしていないかということです。
オ.長期間経過後の処罰の禁止
例えば確かに懲戒処分が行われても仕方の無い事由があったとしても、それを長期間放置ししたがために(1)その間企業秩序が回復している、(2)もう懲戒処分は行われないだろうと従業員が期待するのもやむを得ない、ようなケースでは、やはり懲戒処分を行うことは困難でしょう。
カ.処分事由の追加禁止
これは懲戒処分当時に認識していなかった事実、或いは指摘していなかった事実を後になってその懲戒処分の根拠事実に加えることはできないということです。後出しジャンケンの禁止とも言えるかもしれません。ですから、指摘できる非違行為は全て出し切る必要があります。
キ.責任能力の有無
従業員に心身喪失状態などにより責任能力がないとして懲戒処分が否定されるケースはかなり少ないと思われますが、最近多くなっているメンタル不調者への懲戒処分は少し留意した方がいいでしょう。例えば、欠勤が多いという事由があったとしても、それがメンタル不調に由来するものではないかを検討してみることなどが留意点として考えられます。
ク.解雇予告の原則
これは懲戒処分による解雇であったとしても、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受けていない限り、30日前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当は必要になります。ただ、除外認定を受けないと、懲戒処分としての解雇(諭旨解雇や懲戒解雇)が行えないわけではありません。
以下次号にて。
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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~懲戒はハードルが高いことを理解しよう~
よく従業員の何らか非違行為に対して、懲戒処分を行いたいとのご相談を受けることがあります。ただ、一歩間違うと、逆に反撃されるリスクが高いのも懲戒処分です。
そこで今回は、懲戒処分を行うにあたり、留意しておきべき基本的な知識について解説したいと思います。なお、ここでは懲戒といっていますが、制裁と同義とお考えください。
1.懲戒処分は人事権では行えない
使用者は労働契約の本質的要素として、従業員を指揮監督したりするする人事権、指揮命令権を固有に有しています。つまり、特に就業規則や労働契約書にその記載が無くとも、指揮命令を行うことが可能なのです。しかし懲戒処分に関しては、使用者の固有の権利とされておりません。あらかじめ周知された就業規則において、懲戒の種類や事由を明記しておくことが求められています。これを罪刑法定主義といい、記載されている範囲でしか、懲戒権を行使することはできません(これを限定列挙という)。
2.懲戒処分の有効要件
懲戒処分が有効かどうかは労働契約法15条に基づいて判断されますが、具体的には、
(1)就業規則に懲戒の根拠規定があること
(2)懲戒に値する非違行為があること
(3)上記2要件を満たしたとしても、社会的に相当であること
が必要とされています。(3)は少し分かりにくいですが、要するに、いきなり懲戒処分に処するのは酷でないかとか、その処分は厳しすぎるのではないか、行為と処分内容が釣り合っているかといったようなことです。この相当性を判断するのが実務上、非常に専門家であっても迷います。
また、これらに付随して、懲戒処分を有効ならしめるためには、以下のような要素を事前チェックしておくことも必要です。
ア.処分不遡及の原則
先ほども申し上げましたが、懲戒処分を行うには、根拠規定が必要ですが、行われた非違行為は規定の後に行われていることが必要です。つまり先に非違行為があって、後から作った規定で処罰することはできません。
イ.二重処罰の禁止
一事不再理の原則ともいいますが、要するに一度懲戒処分が確定した事実について、再度懲戒処分を行うことはできないということです。また一つの非違行為に対して、複数の処罰(減給と懲戒解雇とか)を行うこともできません。
ウ.適正手続きの原則
よく懲戒規定の中に、聴聞会を開くとか弁明の機会を付与するとか、懲戒処分を行う前の手続き要件を定めているケースがありますが、そのように記載されている以上、その手続きは省略せず、必ず行わなければなりません。ですから、そのような手続きが行えない規模であるなら、最初から書かないことです。
ただ、実務上は記載しなくても、一応、弁明の機会を与えることは必要だと考えています。
エ.平等取扱いの原則
過去の事例、他の従業員との比較において、ことさら当該従業員を不平等に取扱いしていないかということです。
オ.長期間経過後の処罰の禁止
例えば確かに懲戒処分が行われても仕方の無い事由があったとしても、それを長期間放置ししたがために(1)その間企業秩序が回復している、(2)もう懲戒処分は行われないだろうと従業員が期待するのもやむを得ない、ようなケースでは、やはり懲戒処分を行うことは困難でしょう。
カ.処分事由の追加禁止
これは懲戒処分当時に認識していなかった事実、或いは指摘していなかった事実を後になってその懲戒処分の根拠事実に加えることはできないということです。後出しジャンケンの禁止とも言えるかもしれません。ですから、指摘できる非違行為は全て出し切る必要があります。
キ.責任能力の有無
従業員に心身喪失状態などにより責任能力がないとして懲戒処分が否定されるケースはかなり少ないと思われますが、最近多くなっているメンタル不調者への懲戒処分は少し留意した方がいいでしょう。例えば、欠勤が多いという事由があったとしても、それがメンタル不調に由来するものではないかを検討してみることなどが留意点として考えられます。
ク.解雇予告の原則
これは懲戒処分による解雇であったとしても、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受けていない限り、30日前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当は必要になります。ただ、除外認定を受けないと、懲戒処分としての解雇(諭旨解雇や懲戒解雇)が行えないわけではありません。
以下次号にて。
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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13年04月09日
4月以降に結ぶ有期雇用契約には気をつけよう その2
●4月以降に結ぶ有期雇用契約には気をつけよう
~4月以降、有期雇用契約を締結する場合の留意点 その2~
前回、同じ標題でこの問題を取り上げました。前回は、4月以降に有期雇用契約を締結または更新するときは、1.契約書の内容に新しい文言を盛り込む 2.その意味をきちっと説明するということを具体的事例を挙げて解説しました。
今回はこれらとは別に、4月以降に有期雇用契約者の労務管理について、留意しておいて頂きたいことがありますので、それを解説したいと思います。
まず以下の労働契約法新設条文をご覧ください(4月1日施行)。
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
少し分かりにくいですね。簡単に言ってしまうと、同じような仕事をしているのに有期契約だからといって理由もなく、無期契約者(正社員)の労働条件を下回るような差別をしてはダメということです。
この条文は民事的効力のある規定とされており、この条文ができたことにより、これを根拠に差別されていると考えた有期契約者が、会社に損害賠償請求を行ってくる可能性が非常に高くなったということです。これはリスクです。
ここで差別の対象となる労働条件とは、一切のものが適用となり、例示すると次の通りです。
賃金・労働時間・災害補償・服務規律・教育訓練・福利厚生など
これらの労働条件が差別されているかかどうかを判断する方法は以下の通りとされてます。
(1)職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)
(2)当該職務の内容及び配置の変更の範囲(配転、昇進、昇格、職種変更など)
(3)その他の事情(労使慣行など)
とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などを相違させる場合は、特段の事情がない限り、合理性は認められないとされています。
ここで問題になるのが、期間雇用のパートではあるが、正社員と同じような仕事をしており、その責任や役割も変わらず、人材活用の仕組みも変わらない場合です。特に問題になるのが、定年退職後の再雇用者です。多くの中小企業では、定年再雇用後も仕事その他は何ら変わらずそのまま業務に従事しており、賃金だけを引き下げるケースが多いことです。
これらのようなケースでは、今後、この第20条を根拠に、正社員と同じ待遇、定年前と同じ待遇を請求してくるリスクが考えられるのです。
まだ判例が確立していないため、予断を許しませんが、恐らく差別があるとして裁判所が無効とした労働条件は、その企業における平均的な正社員の労働条件に引き上げられるか、定年退職者なら定年前の労働条件に戻されることが推測されます。
このような事態を回避するためには、4月以降の労務管理について、以下のように合理的な差別であるとして、きちんと説明できる実態を作っておくことです。
例えば・・・・
◎ 定年後賃金を引き下げる場合、仕事の内容や役割を軽減する
◎ 職務や配置場所を限定する(特定の仕事しかしてもらわない、その場所でしか働いてもらわない)
◎ 重たい責任は負わせない
◎ 正社員には残業をお願いし、有期雇用者には時間通りに帰ってもらう など
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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~4月以降、有期雇用契約を締結する場合の留意点 その2~
前回、同じ標題でこの問題を取り上げました。前回は、4月以降に有期雇用契約を締結または更新するときは、1.契約書の内容に新しい文言を盛り込む 2.その意味をきちっと説明するということを具体的事例を挙げて解説しました。
今回はこれらとは別に、4月以降に有期雇用契約者の労務管理について、留意しておいて頂きたいことがありますので、それを解説したいと思います。
まず以下の労働契約法新設条文をご覧ください(4月1日施行)。
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
少し分かりにくいですね。簡単に言ってしまうと、同じような仕事をしているのに有期契約だからといって理由もなく、無期契約者(正社員)の労働条件を下回るような差別をしてはダメということです。
この条文は民事的効力のある規定とされており、この条文ができたことにより、これを根拠に差別されていると考えた有期契約者が、会社に損害賠償請求を行ってくる可能性が非常に高くなったということです。これはリスクです。
ここで差別の対象となる労働条件とは、一切のものが適用となり、例示すると次の通りです。
賃金・労働時間・災害補償・服務規律・教育訓練・福利厚生など
これらの労働条件が差別されているかかどうかを判断する方法は以下の通りとされてます。
(1)職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)
(2)当該職務の内容及び配置の変更の範囲(配転、昇進、昇格、職種変更など)
(3)その他の事情(労使慣行など)
とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などを相違させる場合は、特段の事情がない限り、合理性は認められないとされています。
ここで問題になるのが、期間雇用のパートではあるが、正社員と同じような仕事をしており、その責任や役割も変わらず、人材活用の仕組みも変わらない場合です。特に問題になるのが、定年退職後の再雇用者です。多くの中小企業では、定年再雇用後も仕事その他は何ら変わらずそのまま業務に従事しており、賃金だけを引き下げるケースが多いことです。
これらのようなケースでは、今後、この第20条を根拠に、正社員と同じ待遇、定年前と同じ待遇を請求してくるリスクが考えられるのです。
まだ判例が確立していないため、予断を許しませんが、恐らく差別があるとして裁判所が無効とした労働条件は、その企業における平均的な正社員の労働条件に引き上げられるか、定年退職者なら定年前の労働条件に戻されることが推測されます。
このような事態を回避するためには、4月以降の労務管理について、以下のように合理的な差別であるとして、きちんと説明できる実態を作っておくことです。
例えば・・・・
◎ 定年後賃金を引き下げる場合、仕事の内容や役割を軽減する
◎ 職務や配置場所を限定する(特定の仕事しかしてもらわない、その場所でしか働いてもらわない)
◎ 重たい責任は負わせない
◎ 正社員には残業をお願いし、有期雇用者には時間通りに帰ってもらう など
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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