●4月1日施行! いよいよ改正高齢者雇用安定法、間近に迫る!! (H25.2月号)
~3月31日までに、しておかねばならないこととは~


昨年12月にも、「高齢者等雇用安定法が改正されます ~いよいよ65歳まで雇用する時代へ~」と題して、本問題に関する記事を掲載いたしました。

法改正の概要は12月号に譲るとしまして、今回は今年の3月31日までに是非整備しておいて頂きたいことを申します。それは労使協定の締結です。
何の労使協定かと申しますと、定年後、継続雇用をすることが出来る従業員の基準を定めた労使協定です。

これを説明する前に、法改正前の現在はどうなっているのかを理解いただく必要があります。現在、国は全ての事業所に定年後の雇用確保措置を取ることを義務付けています。そして多くの企業では継続雇用制度を採用しています。継続雇用制度とは、60歳定年で一旦退職させ、継続雇用の希望がある従業員は65歳に到達するまで、有期雇用契約において更新してゆくものです。

原則的には本人が希望していれば、継続させなければならないのですが、現在は、継続雇用の対象となる方の基準を労使協定で定めれば、本人が希望していてもその基準に該当しないということで、継続雇用を排除できる例外が認められているのです。

しかしこの労使協定による例外は改正法施行の4月以降、段階的に利用することはできなくなり、希望があれば65歳までは継続雇用をして行かねばならなくなります(但し、60歳定年後の賃金などの労働条件は定年前と同一でなくても良く、再提示した労働条件で合意できなければ労使協定の運用を待つことなく、退職となることはある)。

それでこの経過的に利用できる労使協定、これは本年3月31日までに締結して実施している場合にのみ、4月以降引き続き有効に使用しても良いこととなっているのです。
ですから当面の間、希望者全員を継続雇用できない可能性があることが予想される企業においてまだ労使協定未締結の場合は、3月31日までに労使協定を整備する必要があるのです。

以下労使協定の雛形を掲示しますので、まだ未整備である場合はご参考にしてください。なお、これはあくまでもサンプルであり、これに囚われることなく、企業に応じた客観的かつ具体的な基準の策定が必要です。



 (労 使 協 定 書)
株式会社ABCと従業員過半数代表者とは、高年齢者等の雇用の安定に関する法律の継続雇用制度の対象となる基準を定めるため、次のとおり合意する。
第1条  会社は、従業員が再雇用を希望し、次条の基準のすべてに該当する場合は、◎◎規程に定める条件で、期間を1年以内とする契約で、65歳前まで再雇用する。
第2条  前条にいう基準とは以下の通りとする。
(1) 勤労意欲に富み、引き続き勤務を希望する者
(2) 上司、同僚、部下との人間関係が良好で、協調性がある者
(3) 勤続■年以上の者
(4) 過去◆年間の人事考課等査定において、著しく悪くない者
(5) 過去◆年間に制裁処分を受けていない者
(6) 過去◆年間に無断欠勤がない者
(7) 過去◆年間に業務上無事故・無違反の者(いずれも交通事故に限らず、安全上または取引上の事故や違反及び自己責任の労災事故を含む)
(8) 過去◆年間の定期健康診断を全て受診し、有所見が出ておらずかつ業務を遂行する上で、心身ともに健康で体力的にも支障がないと判断される者
(9) 過去◆年間の出勤率が95%以上の者(出勤率の算定は年次有給休暇に準ずる)
(10) 製造職にあっては、過去◆年間の不良率が●%以下の者
(11) 営業職にあっては、過去◆年間に顧客からクレームを受けておらず、営業成績が著しく悪くない者
(12) 内勤職にあってはパソコンの基本操作(エクセル・ワード・メールなど、設計職は更にCAD)ができる者
(13) 運転業務に従事する者は、自動車運転免許停止中でない者
(14) 現場職においては、工事・保守等の遂行技術を保持している者
(15) 当該業務に必要な資格を保持している者
(16) 休職中でない者(社命による場合を除く)
(17) 労働条件(職務、賃金、時間、休日休暇、配置など)の変更を承諾できる者
(18) 自宅若しくは自己の用意する住居より通勤可能な者
(19) 前各号の他、労使協定の定める基準に準じて適合する者
第3条  この基準に該当しない場合でも、会社が必要と認めるときは再雇用する。
第4条  本労使協定について廃止又は変更の必要ある時は、会社又は従業員過半数代表者は他方に廃止又は協議の申込をすることができ、他方は協議に応じなければならない。
平成  年  月  日            
株式会社ABC
代表取締役     甲野 太郎        印
株式会社ABC
従業員過半数代表 乙野 次郎        印



上記従業員過半数代表は、会社が恣意的に指名するのではなく、従業員間で民主的に選出されている必要があります。

また労使協定の整備だけでなく、これと連動させる就業規則(嘱託再雇用規程)の再整備も必要で、かつ同時に4月1日から施行される改正労働契約法及び改正労基法にも配慮した記載が必要ですが、ここでは割愛いたします。

なお、12月号で予告しておりますように、弊社で嘱託(再雇用)規程を整備させて頂いておりますクライアント様は必ず3月中には改訂版を再整備させて頂く予定でありますので、今しばらくお待ちください。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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