●4月以降に結ぶ有期雇用契約には気をつけよう
~4月以降、有期雇用契約を締結する場合の留意点~


来月4月1日より次の3つの労働法が同時に改正施行されます。
1.高齢者安定法  2.労働契約法  3.労働基準法

これらの改正は、相互に相関連するところがあり、特に、60歳定年制を実施している会社または有期(期間)雇用契約を採用している企業、或いは今後結ぶことがある企業は必ず留意しておいて頂きたいことがあります。その前に、法改正の概要を簡単に解説します。

1.高齢者安定法の改正

この4月以降に60歳定年を迎える従業員に対しては、原則希望者全員を65歳まで継続雇用する必要があります。但し、60歳定年自体は今まで通り有効であり、また定年後は一旦退職した後の再雇用となるため、新たな労働条件(例えば賃金水準の見直し)の設定は自由に行うことができます。すでに定年のない会社、65歳定年を実施している会社または希望者全員を65歳まで継続雇用する制度を既に導入している会社は何ら今回の改正による変更は必要ありません。

2.労働契約法の改正

有期雇用契約を更新して、5年を超えて継続している場合、6年目より、従業員の申し込みにより自動的に無期契約に転換されます。会社は申し入れがあれば拒否できません。5年の起算日は、4月以降に始期がある有期契約からカウントしますので、今迄の期間は通算されません。また無期転換となっても、期間が有期から無期に変わるだけで、賃金等の労働条件が正社員に変わるものではありません。

3.労働基準法の改正

雇用契約を締結する場面で、必ず文書により交付しなければならない事項があります。例えば有期契約の期間や賃金、労働時間などです。この文書交付による明示事項の中に、有期契約を締結する場合は、(1)更新の有無、(2)更新の基準を明示しなければならなくなりました。つまり、(1)は更新することがあるのかないのか、(2)はあるとした場合、どういう場合に更新することがあるのかを文書により交付しなければならなくなったのです。



ここからが本題です。

上記3つの改正にあわせ、定年後の再雇用契約やパートとの有期労働契約を4月以降に締結する場合、必ず嘱託雇用契約書または有期雇用契約書において、以下のように締結することを強くお勧めします。

A  雇用契約書中の雇用期間に関する記載方法。以下の例示ご参照ください。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

雇用期間:平成  年  月  日~平成  年  月  日
1.本契約をもって最終とする
  
2.甲(会社)は次の各号の全てが充足された場合に限り、乙(本人)との雇用契約を更新する。更新するときは再度労働条件を見直す。
(1)就業規則、誓約書その他会社のルールを遵守できること
(2)常に上司の指示をよく守り他の従業員と協調して職務を遂行できること
(3)契約期間中に無断欠勤、遅刻をしていないこと
(4)懲戒事由に該当する行為がないこと
(5)心身ともに健康であること
(6)事業場の移転、縮小、廃止などの事情が生じていないこと
(7)契約期間中に業務上、無事故無違反であること
(8)顧客とトラブルがないこと
(9)業務に必要な資格が停止となっていないこと
(10)その他労働契約の本旨に従った労務の提供ができること

3.前号により更新する場合でも、通算5年を超えて更新しない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【ポイント】その1   今回で更新最後となるときは1に○印を入れます。
      その2   更新の可能性がある場合は、2に○印を入れます。この場合、例示(1)から(10)のような、更新するための基準を明示します。 60歳以上の再雇用者の場合は、この基準と労使協定の基準をリンクさせた方が良いでしょう。各社で基準を設定してください。自動更新は絶対にしないでください。
      その3   3の記載により、5年を超える契約はしないことを、明示して理解してもらってください。有期契約者が無期転換してしまうリスクを初めから遮断するためです。特に定年後の再雇用者は、絶対に必要です。




B  Aの内容を記載するだけでなく、充分な説明と理解を得る。


少なくとも雇用契約書の末尾にこのように記載し、必ずその意味を説明してください。

「乙(本人)は以上の内容を確認し、理解した上で甲(会社)との雇用契約を申し込み、上記に関し、お互いに承諾諾したことの証として各々1通保管する。こと雇用期間の(1)から(3)の更新に関する事項については、乙(本人)は充分な納得をした上で、契約を申し込むものとする」

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
null