15年02月02日
小規模企業の人事考課は社長の主観で決める。公平性・客観性は不要!好き嫌いで決めよう!! (H27.2月号)
●小規模企業の人事考課は社長の主観で決める。公平性・客観性は不要!好き嫌いで決めよう!! (H27.2月号)
1.日本の企業の86.5%は20人以下の小規模企業
世に人事本といわれる書籍群があります。その中で人事評価、賃金制度に関する書籍もおびただしく発刊されているのですが、中小企業では使いこなせません。
そもそも中小企業とひと言で言っても、日本に存在する企業の86.5%は従業員数が20人以下の小規模事業所と言われています。しかし書店に並ぶ人事本にはこの人数をはるかに超える規模の事業所をサンプルに取っていたり、前提にしているものが多く、大集団である20人以下の小規模企業のことは置き去りにされているように思えてなりません。
役所や大企業の人事制度を縮小化しているものは確かにたくさんあるのですが、正直、私のように人事労務を一応専門家として生業にしている人間にとっても、中々すっと理解して取り入れるのが難しい。小規模企業自身が取り組むのは更に困難なことです。
(参考)
中小企業白書2014年版より抜粋
小規模事業者 86.5%:製造業・その他 従業員数20人以下
商業・サービス業 従業員5人以下
中規模事業者:13.2% 製造業 資本金3億円以下又は従業員数300人以下
卸売業 資本金1億円以下又は従業員数100人以下
サービス業 資本金5千万円以下又は従業員数100人以下
小売業 資本金5千万円以下又は従業員数50人以下
大企業:0.3% 上記以上の規模
2.20人以下の小規模企業の人事考課は社長の「主観」、もっと言うなら「好き嫌い」で構わない
20人以下の小規模企業の人事考課は社長の「主観」、もっと言うなら「好き嫌い」で構わないと思います(人事評価と人事考課という言い方がありますが、各人の課題を考える、という意味合いでここでは人事考課で統一します)。
こんなことを言っている人事本は恐らく他にないのではないかと思いますが、私がこのような結論に至ったのには理由があります。
例えば解雇するほどでもないが、何となく合わない従業員を経営者の皆さんはどう考えますか?
すこし横道に反れるようですが、重要な論点ですのでお聞きください。
日本は企業にとって解雇規制が厳しい国とされています。裁判になれば一旦雇った人を、ちょっとやそっとでクビに出来ないのです。
しかし現実的に労務管理を行う上で、解雇をしたいと思う場面は、「能力不足」「勤務態度不良」という企業にとって立証が難しい曖昧な事由が多いのです。そして後者の「勤務態度不良」というのはさらににやっかいな要素があり、大きく二つに分類でき、一つは生来、協調性がないとか反抗的であるとか、気質的な執務態度自体の問題であり、紛争としては比較的対処しやすいパターンなのですが、もう一つは経営者と考え方、価値観が合わないことから来る共感性欠如や反抗的な態度です。これはやっかいです。この極めて曖昧な事由で解雇することは法的にほとんど不可能と言えます。しかし一緒にやって行くには非常にストレスになる。このような経営者と共感できないことから無視できない言動を繰り返す従業員を、どのように考えればいいのでしょうか?
この問題を考えるとき、私はこのように考えています。最終的には従業員が折れるべきだと。それが嫌なら自ら身を引くべきだと。
特に小規模企業の場合、実態上会社と経営者は分離されておらず、一体不可分の関係です。
他人が経営を引き継ぐことはほとんどなく、親族で承継される、いわば家業なのです。そして経営者は経営上起こりうる全てのリスクに最終的に向き合うこととなります。出資金額の範囲内で責任を取れば良いというような限定的なことにはなっていません。如何なる経営上の問題が生じても、お客様に対して、取引業者に対して、そして従業員とその家族に対して最終的に経営者が全責任を負うのです。極論すれば墓場まで会社を背負って行くのです。経営者は会社を選ぶことができません。逃げることが出来ないのです。
一方、従業員の方はどうかというと、最終的に会社がピンチになっても退職というリスクさえ甘受すれば、その他の諸々の責任を負う立場ではありません。しかも失業保険など社会保障政策にも守られています。いざとなれば、逃げることが出来るし、会社や経営者を自ら選択する自由もあるのです。
方針や考え方がどうしても合わなくとも、その結果に対して最終的に全責任を取るのは経営者です。そのリスクは経営者が引き受けるのです。リスクを取るのは従業員の方ではありません。であるなら、最後は従業員が折れるべきです。もしそれができないのなら、自ら身を引き、違う経営者の元でその力を発揮すべきです。その方が従業員にとっても、良いことです。嫌な経営者の元でくすぶる必要はありません。そこで意地を張る必要もない。合う環境で光ることを目指す方がずっといい。
残念ながら人間はそう大きく変われません。経営者も本質的には変わらないのです。そしてその経営者はその会社にずっと居ます。経営者が居なくなる状況はありません。その状況を変えられるのは、離脱する自由がある従業員の方なのです。それが現実だと思うのです。
少々長くなりましたが、このように考えるなら、小規模企業経営者は自らの責任において自らが好ましいと思う従業員を採用し、優遇して行けば良い。つまり主観です。好き嫌いです。経営者のあなたがリスクを負うのですから、自信をもってあなたが好む人材を優遇してください。これは理不尽でも何でもありません。社長が良いと思った人を評価し、ダメと感じた人は低く処遇するという、当たり前の“感じ”から出発しましょう。この現実を素直に受け止めるのです。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
1.日本の企業の86.5%は20人以下の小規模企業
世に人事本といわれる書籍群があります。その中で人事評価、賃金制度に関する書籍もおびただしく発刊されているのですが、中小企業では使いこなせません。
そもそも中小企業とひと言で言っても、日本に存在する企業の86.5%は従業員数が20人以下の小規模事業所と言われています。しかし書店に並ぶ人事本にはこの人数をはるかに超える規模の事業所をサンプルに取っていたり、前提にしているものが多く、大集団である20人以下の小規模企業のことは置き去りにされているように思えてなりません。
役所や大企業の人事制度を縮小化しているものは確かにたくさんあるのですが、正直、私のように人事労務を一応専門家として生業にしている人間にとっても、中々すっと理解して取り入れるのが難しい。小規模企業自身が取り組むのは更に困難なことです。
(参考)
中小企業白書2014年版より抜粋
小規模事業者 86.5%:製造業・その他 従業員数20人以下
商業・サービス業 従業員5人以下
中規模事業者:13.2% 製造業 資本金3億円以下又は従業員数300人以下
卸売業 資本金1億円以下又は従業員数100人以下
サービス業 資本金5千万円以下又は従業員数100人以下
小売業 資本金5千万円以下又は従業員数50人以下
大企業:0.3% 上記以上の規模
2.20人以下の小規模企業の人事考課は社長の「主観」、もっと言うなら「好き嫌い」で構わない
20人以下の小規模企業の人事考課は社長の「主観」、もっと言うなら「好き嫌い」で構わないと思います(人事評価と人事考課という言い方がありますが、各人の課題を考える、という意味合いでここでは人事考課で統一します)。
こんなことを言っている人事本は恐らく他にないのではないかと思いますが、私がこのような結論に至ったのには理由があります。
例えば解雇するほどでもないが、何となく合わない従業員を経営者の皆さんはどう考えますか?
すこし横道に反れるようですが、重要な論点ですのでお聞きください。
日本は企業にとって解雇規制が厳しい国とされています。裁判になれば一旦雇った人を、ちょっとやそっとでクビに出来ないのです。
しかし現実的に労務管理を行う上で、解雇をしたいと思う場面は、「能力不足」「勤務態度不良」という企業にとって立証が難しい曖昧な事由が多いのです。そして後者の「勤務態度不良」というのはさらににやっかいな要素があり、大きく二つに分類でき、一つは生来、協調性がないとか反抗的であるとか、気質的な執務態度自体の問題であり、紛争としては比較的対処しやすいパターンなのですが、もう一つは経営者と考え方、価値観が合わないことから来る共感性欠如や反抗的な態度です。これはやっかいです。この極めて曖昧な事由で解雇することは法的にほとんど不可能と言えます。しかし一緒にやって行くには非常にストレスになる。このような経営者と共感できないことから無視できない言動を繰り返す従業員を、どのように考えればいいのでしょうか?
この問題を考えるとき、私はこのように考えています。最終的には従業員が折れるべきだと。それが嫌なら自ら身を引くべきだと。
特に小規模企業の場合、実態上会社と経営者は分離されておらず、一体不可分の関係です。
他人が経営を引き継ぐことはほとんどなく、親族で承継される、いわば家業なのです。そして経営者は経営上起こりうる全てのリスクに最終的に向き合うこととなります。出資金額の範囲内で責任を取れば良いというような限定的なことにはなっていません。如何なる経営上の問題が生じても、お客様に対して、取引業者に対して、そして従業員とその家族に対して最終的に経営者が全責任を負うのです。極論すれば墓場まで会社を背負って行くのです。経営者は会社を選ぶことができません。逃げることが出来ないのです。
一方、従業員の方はどうかというと、最終的に会社がピンチになっても退職というリスクさえ甘受すれば、その他の諸々の責任を負う立場ではありません。しかも失業保険など社会保障政策にも守られています。いざとなれば、逃げることが出来るし、会社や経営者を自ら選択する自由もあるのです。
方針や考え方がどうしても合わなくとも、その結果に対して最終的に全責任を取るのは経営者です。そのリスクは経営者が引き受けるのです。リスクを取るのは従業員の方ではありません。であるなら、最後は従業員が折れるべきです。もしそれができないのなら、自ら身を引き、違う経営者の元でその力を発揮すべきです。その方が従業員にとっても、良いことです。嫌な経営者の元でくすぶる必要はありません。そこで意地を張る必要もない。合う環境で光ることを目指す方がずっといい。
残念ながら人間はそう大きく変われません。経営者も本質的には変わらないのです。そしてその経営者はその会社にずっと居ます。経営者が居なくなる状況はありません。その状況を変えられるのは、離脱する自由がある従業員の方なのです。それが現実だと思うのです。
少々長くなりましたが、このように考えるなら、小規模企業経営者は自らの責任において自らが好ましいと思う従業員を採用し、優遇して行けば良い。つまり主観です。好き嫌いです。経営者のあなたがリスクを負うのですから、自信をもってあなたが好む人材を優遇してください。これは理不尽でも何でもありません。社長が良いと思った人を評価し、ダメと感じた人は低く処遇するという、当たり前の“感じ”から出発しましょう。この現実を素直に受け止めるのです。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com