15年05月07日
4月より施行されている有期雇用特別措置法
●4月より施行されている有期雇用特別措置法 (H27.5月号)
その概略は、(1)一定の高度専門職と、(2)定年退職後の有期雇用者 に関しては、会社は無期転換権を認めなくても良いとする特例法です。
この話の前提ですが、平成25年4月に改正労働契約法が施行され、そのときに有期契約労働者に無期転換権が付与されることなりました。簡単に申し上げると、有期契約労働者が、平成25年4月以降に契約した有期契約の通算年数が5年を超えると、その労働者には無期転換権(有期契約ではなく、契約期間の定めのない契約に変更を求めることができる権利)を行使できるもので、会社は申し出があった場合、拒否できないこととなっています。
これに対して、上記2種類の労働者については、一定の手続きをすれば、無期転換権を発生させず、ずっと有期契約で雇用できることとなったものです。そして中小企業にも影響が大きいのは、(2)の定年退職後の有期契約労働者の扱いです。今回はこれに絞って解説しますが、参考までに(1)の高度専門職とは医師・弁護士等の国家資格者や5年以上の実務経験を有するシステムエンジニアなど職種が絞られる上に、年収が1,075万円以上でなければならず、まず、中小企業には居ない人材であることから、今回は省略します。
(2)の定年退職後の有期契約労働者は中小企業にも影響が大きいと申し上げましたが、そのことをご理解いただくには、改正労働契約法と同じく25年4月に施行された改正高齢者安定法を理解する必要があります。
この法律は、簡単に申し上げると中小を含むすべての企業が、1.定年の廃止 2.65歳まで定年を引き上げ 3.65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかの措置を取らなければならず、年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、高齢者が働き続けられる仕組みを、国が企業に義務付けしたものですが、多くの企業では3の継続雇用制度を選択しています。
この継続雇用制度とは、定年は60歳に据え置きながらも、本人から継続雇用の希望がある限り、65歳までは雇用を継続しなければならず、多くは半年から1年間の有期雇用契約により、65歳まで継続する制度設計をしているものです。
つまり60歳定年後に有期契約労働者(一般には嘱託などと呼称することが多い)になった者でも、本人から希望がある限り、自動的に65歳まで行ってしまう仕組みなのです。そうすると、先の無期転換権を付与する労働契約法との関係で、定年により一旦有期契約になった労働者が、65歳以降でまだ継続されているとき、つまり有期契約が5年を超えた時点で、「また定年前と同じく、無期契約にしてください!」との申出を受けると、拒否できないこととなっていたのです。何だか少しおかしいですよね。
そういったこともあり、今回の有期雇用特別措置法は、一定の手続きをすれば、こういった不整合な状況を回避できることとなり、定年後に有期契約労働者になった者には、無期転換権が発生しないこととなりました。
では、その一定の手続きとはどのようなものでしょうか?
これには「適切な雇用管理に関する申請書を作成」し、本店の所在地の「労働局長の認定」を受けなければなりません。これは企業単位でよく、36協定のように事業所単位で出す必要はありません。
適切な雇用管理に関する申請書とは?
「第二種計画認定・変更申請書」を2部作成し、以下8つの雇用管理措置の中から最低一つ以上の措置を講じなければなりません。措置を講じたことを証明する就業規則や雇用契約書などの添付資料が必要です。
(1)高齢者雇用安定法第11条の高齢者雇用推進者の選任
(2)職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等
(3)作業施設・方法の改善
(4)健康管理、安全衛生の配慮
(5)職域の拡大
(6)知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
(7)賃金体系の見直し
(8)勤務時間制度の弾力化
それぞれの措置の内容は省略しますが、(8)の勤務時間制度の弾力化とは、短時間勤務や隔日勤務等のことであり、中小企業でも比較的導入しやすい措置です。申請書はこれらのどの措置を選択したかをチェックするだけの非常に簡素なものになっています。
詳細リーフレットは
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000075676.pdf
第二種計画認定・変更申請書は、
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/
定年退職者であっても、65歳(5年以下)できっちり契約を打ち止めしている場合は関係ありませんが、65歳以降においてもそのまましばらく継続しているケースが見受けられます。そういった場合に無期転換権を行使されるのは困るというのであれば、是非、申請書を出して認定を受けておかれることをお勧めします。
但し、60歳以上年齢で雇用している方でも、そもそも定年前から有期雇用である方や、定年後に新たに雇用した者は、有期雇用であってもこの特例の対象とはなりません。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
その概略は、(1)一定の高度専門職と、(2)定年退職後の有期雇用者 に関しては、会社は無期転換権を認めなくても良いとする特例法です。
この話の前提ですが、平成25年4月に改正労働契約法が施行され、そのときに有期契約労働者に無期転換権が付与されることなりました。簡単に申し上げると、有期契約労働者が、平成25年4月以降に契約した有期契約の通算年数が5年を超えると、その労働者には無期転換権(有期契約ではなく、契約期間の定めのない契約に変更を求めることができる権利)を行使できるもので、会社は申し出があった場合、拒否できないこととなっています。
これに対して、上記2種類の労働者については、一定の手続きをすれば、無期転換権を発生させず、ずっと有期契約で雇用できることとなったものです。そして中小企業にも影響が大きいのは、(2)の定年退職後の有期契約労働者の扱いです。今回はこれに絞って解説しますが、参考までに(1)の高度専門職とは医師・弁護士等の国家資格者や5年以上の実務経験を有するシステムエンジニアなど職種が絞られる上に、年収が1,075万円以上でなければならず、まず、中小企業には居ない人材であることから、今回は省略します。
(2)の定年退職後の有期契約労働者は中小企業にも影響が大きいと申し上げましたが、そのことをご理解いただくには、改正労働契約法と同じく25年4月に施行された改正高齢者安定法を理解する必要があります。
この法律は、簡単に申し上げると中小を含むすべての企業が、1.定年の廃止 2.65歳まで定年を引き上げ 3.65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかの措置を取らなければならず、年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、高齢者が働き続けられる仕組みを、国が企業に義務付けしたものですが、多くの企業では3の継続雇用制度を選択しています。
この継続雇用制度とは、定年は60歳に据え置きながらも、本人から継続雇用の希望がある限り、65歳までは雇用を継続しなければならず、多くは半年から1年間の有期雇用契約により、65歳まで継続する制度設計をしているものです。
つまり60歳定年後に有期契約労働者(一般には嘱託などと呼称することが多い)になった者でも、本人から希望がある限り、自動的に65歳まで行ってしまう仕組みなのです。そうすると、先の無期転換権を付与する労働契約法との関係で、定年により一旦有期契約になった労働者が、65歳以降でまだ継続されているとき、つまり有期契約が5年を超えた時点で、「また定年前と同じく、無期契約にしてください!」との申出を受けると、拒否できないこととなっていたのです。何だか少しおかしいですよね。
そういったこともあり、今回の有期雇用特別措置法は、一定の手続きをすれば、こういった不整合な状況を回避できることとなり、定年後に有期契約労働者になった者には、無期転換権が発生しないこととなりました。
では、その一定の手続きとはどのようなものでしょうか?
これには「適切な雇用管理に関する申請書を作成」し、本店の所在地の「労働局長の認定」を受けなければなりません。これは企業単位でよく、36協定のように事業所単位で出す必要はありません。
適切な雇用管理に関する申請書とは?
「第二種計画認定・変更申請書」を2部作成し、以下8つの雇用管理措置の中から最低一つ以上の措置を講じなければなりません。措置を講じたことを証明する就業規則や雇用契約書などの添付資料が必要です。
(1)高齢者雇用安定法第11条の高齢者雇用推進者の選任
(2)職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等
(3)作業施設・方法の改善
(4)健康管理、安全衛生の配慮
(5)職域の拡大
(6)知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
(7)賃金体系の見直し
(8)勤務時間制度の弾力化
それぞれの措置の内容は省略しますが、(8)の勤務時間制度の弾力化とは、短時間勤務や隔日勤務等のことであり、中小企業でも比較的導入しやすい措置です。申請書はこれらのどの措置を選択したかをチェックするだけの非常に簡素なものになっています。
詳細リーフレットは
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000075676.pdf
第二種計画認定・変更申請書は、
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/
定年退職者であっても、65歳(5年以下)できっちり契約を打ち止めしている場合は関係ありませんが、65歳以降においてもそのまましばらく継続しているケースが見受けられます。そういった場合に無期転換権を行使されるのは困るというのであれば、是非、申請書を出して認定を受けておかれることをお勧めします。
但し、60歳以上年齢で雇用している方でも、そもそも定年前から有期雇用である方や、定年後に新たに雇用した者は、有期雇用であってもこの特例の対象とはなりません。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com