育児休業取得者が発生する企業への助成金(H29.9月号)
~両立支援等助成金 育児休業等支援コース~   (H29.9月号)

育児休業を取得される従業員が増えています。かつては中小企業においては女性ですら、非常にその数が少なかったのですが、近年は中小企業でも増加傾向にあり、弊社でも育児休業に関する事務手続きを代行させていただく機会が増えました。
そこで今回は、育児休業の取得や復帰を円滑にする環境整備をした企業に支給される助成金をご紹介したいと思います。
◎両立支援等助成金(育児休業等支援コース)

■内容■
育児復帰支援プランを作成し、プランに基づく措置を実施し、育児休業の取得・職場復帰させた事業主、及び育児休業取得者の代替要員を確保すると共に、育児休業者を原職復帰させた事業主に対して助成するもの。
育児休業の取得前から職場復帰までにノウハウを構築し、労働者が安心して育児休業を取得でき、職場に復帰しやすい環境整備を図ることを目的とする。

■基本的な流れ■
(1)労働者から出産、育児休業に関する報告及び面談
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(2)育児復帰支援プランを実施する規定の整備・周知
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(3)最新法令に基づく育児介護休業規程の届出・周知
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(4)次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」(育児環境改善などの取組みを宣言するもの)の策定・届け出・公表
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(5)支援プラン作成のための上司との面談
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(6)育児復帰支援プランの作成(業務の引継ぎに関すること、休業中の情報提供に関することを纏めたもの)
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(7)支援プランに基づく業務の整理・引継ぎ
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(8)産後休業・育児休業の取得(最低3ヶ月以上)
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(9)休業中の労働者に職場の状況などを情報や資料の提供
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(10)上司による復帰前面談
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(11)原職への職場復帰
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(12)上司による復帰後面談

■助成額■
1.育児休業取得後  1人28.5万円(生産性要件アップ時は36万円)
2.職場復帰後    1人28.5万円(生産性要件アップ時は36万円)
3.代替要員確保後  1人47.5万円(生産性要件アップ時は60万円)   
  ※代替要員確保とは、育児休業取得者の休業中の穴埋めのために派遣労働者等を新たに受け入れた場合。

■その他留意すべきこと
1.お金を目的にすべきではない
助成金は確かに返済の必要がない純利であり、魅力的なお金かもしれませんが、お金を目的にしてはいけません。良い労務管理により企業の改善活動を行うのが本筋であり、お金はおまけです。お金が目的なら、本業で頑張るか、融資に頼るべきです。

2.倫理感を維持する
助成金は人間のモラルを低下させる副作用があります。公金を扱うのですから、間違っても倫理観の低い行いをしてはいけません。無かった事実をあったことにする、事実を捻じ曲げるようなことは、絶対にあってはなりません。

3.長い目で考える
助成金は単年度予算で行われることもあり、政策課題が実現すれば廃止されることもあります。しかし助成金に併せて策定した人事制度(正社員転換とか、定年延長とか)はずっと残ります。助成は終了しても、人事制度は残ることを肝に銘じるべきです。

4.法令を遵守する
助成金に限らず当たり前なのですが、就業規則の作成や社会保険への加入、公租公課の納入、残業代の支払いなど、やるべきことをきちんとやっていることが大前提です。

助成金にはパンフレットには載っていない細かな要件や制約事項がありますが、従業員から出産育児の相談がありましたら、一度検討してみては如何でしょうか?

小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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