19年05月08日
有給休暇の5日、強制付与対策
~2018.4月から 有給休暇の5日、強制付与迫る!!~
●企業は、如何に対策するべきか 多くの企業が本年12月までに検討する必要が (2018.11月号)
先の国会で成立した「働き方改革関連法」により、2019年4月1日以降、有給休暇を5日は必ず付与しなければならなくなりました。厳密には以下の方が対象となります。
◎4月1日以降に、年10日以上の有給休暇が発生している(週30時間以上で、6か月以上の継続勤務がある)
◎4月1日以降に、有給休暇の基準日※を迎えている
※基準日:今回の改正でこの基準日の考え方が非常に複雑になりましたが、おおよそ次の通りとなります。
◎入社日ごとにバラバラに有休を付与する原則的なカウントの会社の場合 →各自の入社後6か月経過した日(4月1日入社なら10月1日)
◎ある日をもって統一的に付与してしている場合 →当該統一的に付与することとした日(前倒しで10日与える場合はその日、最初は6か月経過後に与え2回目に統一する場合は2回目の日)
これらは罰則付きの法律であり、従業員から請求がなくとも、会社から有休休暇を取らさなければならない義務となるのです。個別に日を指定して、5日取得させることもできますが、一定規模以上の会社であれば、計画的付与にせざるを得ないでしょう。計画的付与とは、簡単に言えば年間休日計カレンダーの中に、部署別、班別などで分けたグループごとに、あらかじめ有給休暇を盛り込むやり方です。
一番真っ当な与え方は、現在の年間休日+5日の有給休暇とすることですが、昨今の人手不足の折、ただでさえカツカツの人員でこなしているといった場合、稼働日数が減ると経営上大きな負の影響が出る、という企業はどのようにしたら良いのでしょうか?
いくつかの対策を考えたいと思います。
1.休日増加コース(王道コース)
まずは、王道コースを検討すべきでしょう。先述の通り、現在の年間休日+5日の有給休暇ということで、一番オーソドックスなやり方であり、従業員の納得も得やすいでしょう。
2.休日減少コース(有給5日増との差し引き折半コース)
現行の年間休日を5日減らし、その代わり有給休暇を5日多めに付与するやり方です。
週40時間を達成するために必要な最低休日数を、5日以上、上回る休日を確保できている企業はこの対策が取れます。例えば1日8時間の会社は105日以上の休日が必要ですが、110日以上あるような場合です。
1の王道コースのように、稼働日数が5日減ると、直ちに業務に支障が出る場合は、この方法を検討することになります。この支障は会社からの事情だけでなく、従業員側にも当てはまることがあります。つまり、ぎりぎりの人数でやっとこさ、日々の業務を何とか回している従業員からすると、5日も休むと仕事が滞り却って迷惑!!、という場合です。
こういったケースでは、「余分に」付与している休日を労働日とし、そこに有給休暇を充てます。
例えば通常の企業は、お盆や年末年始において、カレンダー上は平日である日を休日としていますが、これらの日を労働日とし、計画的付与による有給休暇で代用させます。
仮に2018年のカレンダーによると、1月2,3,4日、12月31日は平日ですが、通常は休日にしているはずです。ここに有給休暇を充てれば4日は確保できることになり、あと1日はお盆へ回すというような感じです。
そしてこの本来休日である日を有給休暇に振り替える5日分を、従来の有給日数にプラスして有給休暇として与えます。例えば10日持っている人なら、15日とし、そのうち5日を年末年始とか、お盆に割り当てるものです。
こうすることで、年間の稼働日は今まで通り確保でき、しかも従業員に不利益を与えることはありません。
3.休日減少コース(仕方なしコーズ)
考え方は上記2とほとんど同じで、従来休日にしていた日に5日の有給休暇を割り当てるものなのですが、違うところは、有給日数を5日増としないことです。
年間稼働日数は確保できるのですが、従業員から見ると年間休日数が減少するという不利益変更にあたり、合意を得るか、すくなくとも納得してもらう必要があります。
4.トリッキーコース
週40時間を達成するために必要な最低休日数がギリギリの場合で、稼働日数が減ると業務が回らない場合にこの対策を考えます。
結論から言いますと、1日の所定労働時間を少し減らします。それにより法的に最低必要な年間休日数も減ることとなり、その減った休日分を有給休暇で代用します。
具体的には以下の通りです。
【現在】 【変更後】
1日の時間 必要年間休日 1日の時間(数分減) 必要年間休日(5日減)
8時間 105日 → 7時間51分 100日 + 5日年休=合計105日
7時間45分 96日 → 7時間36分 91日 + 5日年休=合計96日
7時間30分 87日 → 7時間21分 82日 + 5日年休=合計87日
よく見て頂いてお分かりのように、年間で社員が強制的に休む日数は、変更前と変更後で変わりません。週40時間制もクリアしています。そして給与ですが、今まで通り出します。理屈的には8時間の会社の場合、7時間51分になるが、給与は9分減らすことなく、元の8時間分として維持する、ということです。
実質的な不利益なほとんどないため、受け入れられやすいのではないかと考えています。
5.半日有給活用コース(少し無茶?コース)
これは稼働日数を減らすことはもとより、現状の勤務シフトをほとんど変更するのは不可能であるという極めて厳しい状況の場合に検討します。、
今回の5日強制付与につき、労働局から9月7日に行政通達が出ていますが、この5日という考え方に半日有給を組み込んでも構わないとの解釈が出ました。つまり極論すると、0.5日を10日消化させることも可能ということです。そうすると、半日はどうしても休みになりますが、1日穴が開くという事態は回避できます。
さらにその日に、4時間残業してもらえば、実質8時間労働が確保されることとなります。4時間分の追加支給は必要となりますが、25%の割り増しは必要ありません。
休暇を取るという、本来の趣旨を没却することになるため、なるべく最終手段とするべきですが・・・
6.蛇足(念のためコース)
上記いずれかの対策により、5日強制付与の義務を果たしてゆくこととなりますが、万が一、何らかの事情でその義務が当該年度において果たせなかったときの為に、年の為、以下のような規定を就業規則に盛り込んで置くことをお勧めします。
(特別休日の年強制付与年休への振り替え)
第00条 従業員は基準日から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得するものとする。但し当該基準年度において取得日数が不足している場合は、お盆、または年末年始の特別休日を強制付与年次有給休暇に振り替えて付与したものとみなす。
(特別休暇の取得順序)
第00条 慶弔休暇など法定の有給休暇に該当しない有給による特別休暇がある場合で、年5日の強制付与年次有給休暇の取得が未達である場合は、まず有給休暇を先に取得してからでないと、特別休暇を取得することはできない。
現在出ている情報の下で、考えられる対策は以上ですが、まだ、何か方法があるかもしれません。それが見つかれば、逐次、お伝えしてゆきたいと思います。
いずれにしても施行は2018年の4月からですが、実務上、1月起算で年間休日カレンダーを組む企業が多いため、本年12月までには道筋を検討しておく必要があり、あまり時間がないのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
●企業は、如何に対策するべきか 多くの企業が本年12月までに検討する必要が (2018.11月号)
先の国会で成立した「働き方改革関連法」により、2019年4月1日以降、有給休暇を5日は必ず付与しなければならなくなりました。厳密には以下の方が対象となります。
◎4月1日以降に、年10日以上の有給休暇が発生している(週30時間以上で、6か月以上の継続勤務がある)
◎4月1日以降に、有給休暇の基準日※を迎えている
※基準日:今回の改正でこの基準日の考え方が非常に複雑になりましたが、おおよそ次の通りとなります。
◎入社日ごとにバラバラに有休を付与する原則的なカウントの会社の場合 →各自の入社後6か月経過した日(4月1日入社なら10月1日)
◎ある日をもって統一的に付与してしている場合 →当該統一的に付与することとした日(前倒しで10日与える場合はその日、最初は6か月経過後に与え2回目に統一する場合は2回目の日)
これらは罰則付きの法律であり、従業員から請求がなくとも、会社から有休休暇を取らさなければならない義務となるのです。個別に日を指定して、5日取得させることもできますが、一定規模以上の会社であれば、計画的付与にせざるを得ないでしょう。計画的付与とは、簡単に言えば年間休日計カレンダーの中に、部署別、班別などで分けたグループごとに、あらかじめ有給休暇を盛り込むやり方です。
一番真っ当な与え方は、現在の年間休日+5日の有給休暇とすることですが、昨今の人手不足の折、ただでさえカツカツの人員でこなしているといった場合、稼働日数が減ると経営上大きな負の影響が出る、という企業はどのようにしたら良いのでしょうか?
いくつかの対策を考えたいと思います。
1.休日増加コース(王道コース)
まずは、王道コースを検討すべきでしょう。先述の通り、現在の年間休日+5日の有給休暇ということで、一番オーソドックスなやり方であり、従業員の納得も得やすいでしょう。
2.休日減少コース(有給5日増との差し引き折半コース)
現行の年間休日を5日減らし、その代わり有給休暇を5日多めに付与するやり方です。
週40時間を達成するために必要な最低休日数を、5日以上、上回る休日を確保できている企業はこの対策が取れます。例えば1日8時間の会社は105日以上の休日が必要ですが、110日以上あるような場合です。
1の王道コースのように、稼働日数が5日減ると、直ちに業務に支障が出る場合は、この方法を検討することになります。この支障は会社からの事情だけでなく、従業員側にも当てはまることがあります。つまり、ぎりぎりの人数でやっとこさ、日々の業務を何とか回している従業員からすると、5日も休むと仕事が滞り却って迷惑!!、という場合です。
こういったケースでは、「余分に」付与している休日を労働日とし、そこに有給休暇を充てます。
例えば通常の企業は、お盆や年末年始において、カレンダー上は平日である日を休日としていますが、これらの日を労働日とし、計画的付与による有給休暇で代用させます。
仮に2018年のカレンダーによると、1月2,3,4日、12月31日は平日ですが、通常は休日にしているはずです。ここに有給休暇を充てれば4日は確保できることになり、あと1日はお盆へ回すというような感じです。
そしてこの本来休日である日を有給休暇に振り替える5日分を、従来の有給日数にプラスして有給休暇として与えます。例えば10日持っている人なら、15日とし、そのうち5日を年末年始とか、お盆に割り当てるものです。
こうすることで、年間の稼働日は今まで通り確保でき、しかも従業員に不利益を与えることはありません。
3.休日減少コース(仕方なしコーズ)
考え方は上記2とほとんど同じで、従来休日にしていた日に5日の有給休暇を割り当てるものなのですが、違うところは、有給日数を5日増としないことです。
年間稼働日数は確保できるのですが、従業員から見ると年間休日数が減少するという不利益変更にあたり、合意を得るか、すくなくとも納得してもらう必要があります。
4.トリッキーコース
週40時間を達成するために必要な最低休日数がギリギリの場合で、稼働日数が減ると業務が回らない場合にこの対策を考えます。
結論から言いますと、1日の所定労働時間を少し減らします。それにより法的に最低必要な年間休日数も減ることとなり、その減った休日分を有給休暇で代用します。
具体的には以下の通りです。
【現在】 【変更後】
1日の時間 必要年間休日 1日の時間(数分減) 必要年間休日(5日減)
8時間 105日 → 7時間51分 100日 + 5日年休=合計105日
7時間45分 96日 → 7時間36分 91日 + 5日年休=合計96日
7時間30分 87日 → 7時間21分 82日 + 5日年休=合計87日
よく見て頂いてお分かりのように、年間で社員が強制的に休む日数は、変更前と変更後で変わりません。週40時間制もクリアしています。そして給与ですが、今まで通り出します。理屈的には8時間の会社の場合、7時間51分になるが、給与は9分減らすことなく、元の8時間分として維持する、ということです。
実質的な不利益なほとんどないため、受け入れられやすいのではないかと考えています。
5.半日有給活用コース(少し無茶?コース)
これは稼働日数を減らすことはもとより、現状の勤務シフトをほとんど変更するのは不可能であるという極めて厳しい状況の場合に検討します。、
今回の5日強制付与につき、労働局から9月7日に行政通達が出ていますが、この5日という考え方に半日有給を組み込んでも構わないとの解釈が出ました。つまり極論すると、0.5日を10日消化させることも可能ということです。そうすると、半日はどうしても休みになりますが、1日穴が開くという事態は回避できます。
さらにその日に、4時間残業してもらえば、実質8時間労働が確保されることとなります。4時間分の追加支給は必要となりますが、25%の割り増しは必要ありません。
休暇を取るという、本来の趣旨を没却することになるため、なるべく最終手段とするべきですが・・・
6.蛇足(念のためコース)
上記いずれかの対策により、5日強制付与の義務を果たしてゆくこととなりますが、万が一、何らかの事情でその義務が当該年度において果たせなかったときの為に、年の為、以下のような規定を就業規則に盛り込んで置くことをお勧めします。
(特別休日の年強制付与年休への振り替え)
第00条 従業員は基準日から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得するものとする。但し当該基準年度において取得日数が不足している場合は、お盆、または年末年始の特別休日を強制付与年次有給休暇に振り替えて付与したものとみなす。
(特別休暇の取得順序)
第00条 慶弔休暇など法定の有給休暇に該当しない有給による特別休暇がある場合で、年5日の強制付与年次有給休暇の取得が未達である場合は、まず有給休暇を先に取得してからでないと、特別休暇を取得することはできない。
現在出ている情報の下で、考えられる対策は以上ですが、まだ、何か方法があるかもしれません。それが見つかれば、逐次、お伝えしてゆきたいと思います。
いずれにしても施行は2018年の4月からですが、実務上、1月起算で年間休日カレンダーを組む企業が多いため、本年12月までには道筋を検討しておく必要があり、あまり時間がないのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com