23年01月30日
2022年を振り返って
昨年も新型コロナウイルスから解放されることは無く、またウクライナ戦争及び円安による物価の高騰に翻弄された年でした。新型コロナに関しては第8波に入りましたが、緊急事態宣言も自粛要請もなく、イベントや外国人観光客の受け入れも再開され、世間の様相はコロナ前と変わらない状況となっているようです。
新型コロナが流行し出した2020年春、これを克服して行くには、ワクチン、治療薬、そして集団免疫と言われていました。しかし最初に中国の武漢から始まったこの流行り病、3年経過して多くの感染者を出しても一向に波が収まることなく、第7波のように後へ行くほど波が高くなる現実を見た時、集団免疫という考え方は幻想だったのかもしれません。
ワクチンは余るほど出回るようになりましたが、遅れていた治療薬に関し、塩野義製薬が開発した「ゾコーバ」、ようやく国産のコロナ治療薬として薬事承認され、これから大量生産されて町の調剤薬局にも出回ることになるでしょう。まだ有効性は投与しない場合より1日だけの改善効果のようですが、インフルエンザの「タミフル」と同様に5日間処方され、軽症者にも投与できることから、ほぼ季節性インフルエンザと同じ扱いに出来るのではないでしょうか?ただワクチンが開発されたときもこれがゲームチェンジャーになると言われたものが、必ずしもそうなっていない経験から安易な楽観視は禁物ですが、やはり期待を抱かざるを得ません。しかし現状でも陽性反応が出ると7日間の自宅待機が要請されますので、業務への支障が大きいことからまだ警戒は解くべきではないでしょう。
ウクライナ戦争も昨年の大きなトピックでした。ロシアによる2月の侵攻時には、数日で首都キーウは陥落すると見られていました。ところが西側諸国の結束した支援とウクライナ軍の戦意の高さにロシア軍は難渋し、出口が分からなくなっているのが今の状況かと思います。戦争は始めるよりも終結させることの方が難しいと言われます。かつて太平洋戦争に突入した日本も経験したことです。一体、どのような出口戦略を描いているのでしょうか?
ウクライナ戦争による食料不足と日米の金利差による円安も相まって、物価が想定外に上昇しました。もともと日銀も2%のインフレ目標を立てて大規模な金融緩和を行っていたものですが、外部要因により3%台の物価上昇となる一方で、肝心の賃金上昇幅はこれに追い付かず、実質賃金は目減りし、悪いインフレとなりつつあります。
実際、最近の企業業績に悪影響を及ぼしているのはコロナよりも、電気代をはじめとするエネルギー価格の上昇と仕入れコストのアップです。なかなか売価に転嫁できない企業も多く、また転嫁したとしても底なしに原価が上昇する状況です。
こうなると一定期間ごとの為替相場により、売価を増減できる交渉をして行くことも必要になるかも知れません。ほとんどの中小企業は内需型であり、海外で安価に販売できるメリットよりも、物価上昇によるコスト高のデメリットの方が大きく影響しています。
半導体不足も大きな影響をもたらしました。今やグローバルなサプライチェーンが寸断されると、仮に1%の供給不足でも99%がストップする現実を見ました。作りたくても作れない。そんな1年だったのではないでしょうか?かつては世界の半導体市場を席捲した日本。しかし今は見る影もありません。需要が縮小して行くばかりの日本は新興国に買い負けしている側面も否めません。
しかし光明もありました。
トヨタ自動車、NEⅭ、NTT、三菱UFJ銀行などが出資し、新しい半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」が設立され、最先端の国産半導体の量産を目指し、政府も700億円を投じて支援するようです。昔から言われていることではありますが、エネルギー、食糧、半導体など基軸となる産業は国産化が望ましいのは言うまでもありません。
1990年代から2000年代にかけて、日本のお家芸である製造業は中小企業までもが恐怖にかられるように中国へ進出しました。しかしその結果が今、どうなっているのか?
アメリカの国際的地位が相対的に低下していることも不安材料です。かつてアメリカの軍事力は2位から20位までの諸外国が束になっても叶わない突出した力をもっていました。世界の警察としてお節介なまでに世界の紛争に介入する姿勢、イラク戦争のように大量破壊兵器はなかったにもかかわらず、勇み足を冒すこともありましたが、それでもアメリカを信じていました。何故なら自由と民主主義が成熟した大人の社会だと認識していたからです。その土壌を構成するアメリカ国民がいる限り、おかしな方向へは進まず、抑制的に機動修正が図れる成熟した自由主義国家であるからこそ、世界も信任投票していたものが、そうとも言えなくなってきているように感じます。まさに混沌としている。
ぼやきが多くなったのは歳のせいでしょうか。
今年こそはコロナも収束宣言が出て、物価も安定し、緩やかに賃金も上昇して健全なインフレ状態になる日本、少なくとも安売りされる日本ではなくなることを願うばかりです。
末筆ではございますが、皆様にとって本年もご多幸の多い一年でありますよう、
ご活躍とご健康を心よりお祈り申し上げます。
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〒547-0026 大阪市平野区喜連西4-7-16 石光ビル3F
社会保険労務士法人ラポール ㈱なにわ式賃金研究所
所長 西村 聡
TEL06-6701-5407 FAX06-6701-5412
メール info@nishimura-roumu.com
H P https://www.nishimura-roumu.com
新型コロナが流行し出した2020年春、これを克服して行くには、ワクチン、治療薬、そして集団免疫と言われていました。しかし最初に中国の武漢から始まったこの流行り病、3年経過して多くの感染者を出しても一向に波が収まることなく、第7波のように後へ行くほど波が高くなる現実を見た時、集団免疫という考え方は幻想だったのかもしれません。
ワクチンは余るほど出回るようになりましたが、遅れていた治療薬に関し、塩野義製薬が開発した「ゾコーバ」、ようやく国産のコロナ治療薬として薬事承認され、これから大量生産されて町の調剤薬局にも出回ることになるでしょう。まだ有効性は投与しない場合より1日だけの改善効果のようですが、インフルエンザの「タミフル」と同様に5日間処方され、軽症者にも投与できることから、ほぼ季節性インフルエンザと同じ扱いに出来るのではないでしょうか?ただワクチンが開発されたときもこれがゲームチェンジャーになると言われたものが、必ずしもそうなっていない経験から安易な楽観視は禁物ですが、やはり期待を抱かざるを得ません。しかし現状でも陽性反応が出ると7日間の自宅待機が要請されますので、業務への支障が大きいことからまだ警戒は解くべきではないでしょう。
ウクライナ戦争も昨年の大きなトピックでした。ロシアによる2月の侵攻時には、数日で首都キーウは陥落すると見られていました。ところが西側諸国の結束した支援とウクライナ軍の戦意の高さにロシア軍は難渋し、出口が分からなくなっているのが今の状況かと思います。戦争は始めるよりも終結させることの方が難しいと言われます。かつて太平洋戦争に突入した日本も経験したことです。一体、どのような出口戦略を描いているのでしょうか?
ウクライナ戦争による食料不足と日米の金利差による円安も相まって、物価が想定外に上昇しました。もともと日銀も2%のインフレ目標を立てて大規模な金融緩和を行っていたものですが、外部要因により3%台の物価上昇となる一方で、肝心の賃金上昇幅はこれに追い付かず、実質賃金は目減りし、悪いインフレとなりつつあります。
実際、最近の企業業績に悪影響を及ぼしているのはコロナよりも、電気代をはじめとするエネルギー価格の上昇と仕入れコストのアップです。なかなか売価に転嫁できない企業も多く、また転嫁したとしても底なしに原価が上昇する状況です。
こうなると一定期間ごとの為替相場により、売価を増減できる交渉をして行くことも必要になるかも知れません。ほとんどの中小企業は内需型であり、海外で安価に販売できるメリットよりも、物価上昇によるコスト高のデメリットの方が大きく影響しています。
半導体不足も大きな影響をもたらしました。今やグローバルなサプライチェーンが寸断されると、仮に1%の供給不足でも99%がストップする現実を見ました。作りたくても作れない。そんな1年だったのではないでしょうか?かつては世界の半導体市場を席捲した日本。しかし今は見る影もありません。需要が縮小して行くばかりの日本は新興国に買い負けしている側面も否めません。
しかし光明もありました。
トヨタ自動車、NEⅭ、NTT、三菱UFJ銀行などが出資し、新しい半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」が設立され、最先端の国産半導体の量産を目指し、政府も700億円を投じて支援するようです。昔から言われていることではありますが、エネルギー、食糧、半導体など基軸となる産業は国産化が望ましいのは言うまでもありません。
1990年代から2000年代にかけて、日本のお家芸である製造業は中小企業までもが恐怖にかられるように中国へ進出しました。しかしその結果が今、どうなっているのか?
アメリカの国際的地位が相対的に低下していることも不安材料です。かつてアメリカの軍事力は2位から20位までの諸外国が束になっても叶わない突出した力をもっていました。世界の警察としてお節介なまでに世界の紛争に介入する姿勢、イラク戦争のように大量破壊兵器はなかったにもかかわらず、勇み足を冒すこともありましたが、それでもアメリカを信じていました。何故なら自由と民主主義が成熟した大人の社会だと認識していたからです。その土壌を構成するアメリカ国民がいる限り、おかしな方向へは進まず、抑制的に機動修正が図れる成熟した自由主義国家であるからこそ、世界も信任投票していたものが、そうとも言えなくなってきているように感じます。まさに混沌としている。
ぼやきが多くなったのは歳のせいでしょうか。
今年こそはコロナも収束宣言が出て、物価も安定し、緩やかに賃金も上昇して健全なインフレ状態になる日本、少なくとも安売りされる日本ではなくなることを願うばかりです。
末筆ではございますが、皆様にとって本年もご多幸の多い一年でありますよう、
ご活躍とご健康を心よりお祈り申し上げます。
(文責 特定社会保険労務士 西村 聡)
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〒547-0026 大阪市平野区喜連西4-7-16 石光ビル3F
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所長 西村 聡
TEL06-6701-5407 FAX06-6701-5412
メール info@nishimura-roumu.com
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