10年03月19日
タイムカードは小切手と同じ、だから管理を厳格にしよう
タイムカードは小切手と同じ、だから管理を厳格にしよう(H20.11月号の記事)
相変わらず長時間労働が常態化している会社があります。労働基準監督署は毎年、年度方針として、長時間労働による健康障害を防止することを基本方針に掲げており、20年度においても「長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害防止対策の推進」と標題で、最重点項目のトップに挙げています。
よく世間でサービス残業の摘発に関する新聞報道がなされますが、先般発表された厚生労働省の統計によると、その未払い額は企業平均では1,577万円、労働者平均では15万円となっています。http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1024-1.html
これらはいわゆる長時間労働を抑制するためには、ただ単に「時間を減らせ」と口だけで音頭を取っても効果が薄いので、残業代とセットになれば痛みが相当伴うことから、方便として行われている側面があります。
ここからが本題です。タイムカードを労働者の自主性に任せてガチャガチャと打刻させるのは、あたかも白紙の小切手を従業員に委ねているようなものです。あとで打刻されている入社から退社までの時間分を請求されても、会社はほとんど反証できません。つまり出るところへ出れば、打刻時間帯分を1分単位で支払うはめになりかねないのです。本来タイムカードは入社退社の時刻でなく、始業終業の時刻を管理するものですが、現実的には会社へ入った時刻と会社を出た時刻で打刻されていることがほとんどではないでしょうか。
ただ始業時に、全員が業務開始時刻に押すのは無理です。これは仕方がありません。しかし終わりの時刻は退社時刻ではなく、きちんと業務終了時刻で押してもらいましょう。また無駄な残業が常態化している場合は、事業所内に「残業削減ポスター」を貼り、タイムカードの傍にはだらだら押しをしないように喚起する「張り紙」をしましょう。どうしても会社の指示によらない残業を行う場合は、事前に「申請書」を出さして、本当に必要な残業なのかどうか監督者が管理しましょう。雛形は以下のアドレスからダウンロードできます。
http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5
対象文書名 (ノー残業デーポスター)(残業削減ポスター)(タイムカード打刻のお願い)(時間外・休日・深夜勤務届出書)(時間外申請書 1ヶ月方式)
少なくとも会社が主体的に長時間残業を黙認していない社風を醸成することが肝要です。また特に現場作業員などは残業しなければ給料が上がらない仕組みのため、長く働いて給料を稼ぐ習慣が体質に染み込んでいることがあります。例えば毎日2時間残業する人に、「2時間分残業がなくても払うから、早く帰るようにしてくれ」と言うと、今まで定時で終了していなかった仕事を定時で完了させることがあります。これなどは正に8時間で本来出来る仕事を10時間でこなすリズムになっている証です。しかし従業員の自主残業は、法律上も実はおかしなことなのです。なぜなら労基法では使用者に原則時間外労働を禁止し、就業規則や労働契約書に残業命令の根拠があり、事前に労基署へ時間外労働の限度範囲を届け出て(36協定)、はじめて可能であり、しかもその対価には最低25%(休日は35%)の割り増しを義務付け、刑罰も担保されているのです。つまりもともと使用者が手続きを踏んだ上で命ぜられるものであり、勝手残業はありえません。それはあたかも使用者が注文していない商品の代金が、後から代引きで請求されるようなものです。
以下、残業による少々怖い話を列記しておきます。
1.冒頭のように労基署へ申告されると、2年間に遡って差額分を支払わされる。その額が一人平均15万円ですと、×人数分・・・・
2.1ヶ月80時間を超える残業が常態化していると、脳心臓疾患で倒れたとき、業務が有力な原因とみなされ、労災請求となり調査を受けるはめになる・・・・
3.2の場合で労災だけで終わればまだしも、家族などから民事上の不法行為もしくは安全配慮義務違反を問われ、訴訟になることも。その金額は億単位もある・・・・
4.旦那の帰りが遅いと、本人とは問題なくても奥さんに慢性的に不満がたまっており、転職を勧めたり、会社にモンスター的クレームをつけてくる・・・・
5.労働条件が劣悪だということで、問題のある合同労組(ユニオン)に駆け込み、半ばやくざまがいの交渉が始まる・・・・
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
相変わらず長時間労働が常態化している会社があります。労働基準監督署は毎年、年度方針として、長時間労働による健康障害を防止することを基本方針に掲げており、20年度においても「長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害防止対策の推進」と標題で、最重点項目のトップに挙げています。
よく世間でサービス残業の摘発に関する新聞報道がなされますが、先般発表された厚生労働省の統計によると、その未払い額は企業平均では1,577万円、労働者平均では15万円となっています。http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1024-1.html
これらはいわゆる長時間労働を抑制するためには、ただ単に「時間を減らせ」と口だけで音頭を取っても効果が薄いので、残業代とセットになれば痛みが相当伴うことから、方便として行われている側面があります。
ここからが本題です。タイムカードを労働者の自主性に任せてガチャガチャと打刻させるのは、あたかも白紙の小切手を従業員に委ねているようなものです。あとで打刻されている入社から退社までの時間分を請求されても、会社はほとんど反証できません。つまり出るところへ出れば、打刻時間帯分を1分単位で支払うはめになりかねないのです。本来タイムカードは入社退社の時刻でなく、始業終業の時刻を管理するものですが、現実的には会社へ入った時刻と会社を出た時刻で打刻されていることがほとんどではないでしょうか。
ただ始業時に、全員が業務開始時刻に押すのは無理です。これは仕方がありません。しかし終わりの時刻は退社時刻ではなく、きちんと業務終了時刻で押してもらいましょう。また無駄な残業が常態化している場合は、事業所内に「残業削減ポスター」を貼り、タイムカードの傍にはだらだら押しをしないように喚起する「張り紙」をしましょう。どうしても会社の指示によらない残業を行う場合は、事前に「申請書」を出さして、本当に必要な残業なのかどうか監督者が管理しましょう。雛形は以下のアドレスからダウンロードできます。
http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5
対象文書名 (ノー残業デーポスター)(残業削減ポスター)(タイムカード打刻のお願い)(時間外・休日・深夜勤務届出書)(時間外申請書 1ヶ月方式)
少なくとも会社が主体的に長時間残業を黙認していない社風を醸成することが肝要です。また特に現場作業員などは残業しなければ給料が上がらない仕組みのため、長く働いて給料を稼ぐ習慣が体質に染み込んでいることがあります。例えば毎日2時間残業する人に、「2時間分残業がなくても払うから、早く帰るようにしてくれ」と言うと、今まで定時で終了していなかった仕事を定時で完了させることがあります。これなどは正に8時間で本来出来る仕事を10時間でこなすリズムになっている証です。しかし従業員の自主残業は、法律上も実はおかしなことなのです。なぜなら労基法では使用者に原則時間外労働を禁止し、就業規則や労働契約書に残業命令の根拠があり、事前に労基署へ時間外労働の限度範囲を届け出て(36協定)、はじめて可能であり、しかもその対価には最低25%(休日は35%)の割り増しを義務付け、刑罰も担保されているのです。つまりもともと使用者が手続きを踏んだ上で命ぜられるものであり、勝手残業はありえません。それはあたかも使用者が注文していない商品の代金が、後から代引きで請求されるようなものです。
以下、残業による少々怖い話を列記しておきます。
1.冒頭のように労基署へ申告されると、2年間に遡って差額分を支払わされる。その額が一人平均15万円ですと、×人数分・・・・
2.1ヶ月80時間を超える残業が常態化していると、脳心臓疾患で倒れたとき、業務が有力な原因とみなされ、労災請求となり調査を受けるはめになる・・・・
3.2の場合で労災だけで終わればまだしも、家族などから民事上の不法行為もしくは安全配慮義務違反を問われ、訴訟になることも。その金額は億単位もある・・・・
4.旦那の帰りが遅いと、本人とは問題なくても奥さんに慢性的に不満がたまっており、転職を勧めたり、会社にモンスター的クレームをつけてくる・・・・
5.労働条件が劣悪だということで、問題のある合同労組(ユニオン)に駆け込み、半ばやくざまがいの交渉が始まる・・・・
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com