迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える  その2(2019.9月号)


前回において、「均等待遇」と「均衡待遇」という概念があることを触れました。

これは一般の方々には非常に分かりにくい概念ですが、ごくごく簡単に申しますと、

●均等待遇とは・・・・「ある要素」が正社員とパート・有期雇用労働者で同じなら、待遇も同じにしなければならない(パート・有期雇用労働者法第9条)

◎均衡待遇とは・・・・「ある要素」に違いがある場合、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇に相違があっても良いが、不合理な差異であってはいけない(パート・有期雇用労働者法第8条)


という風に解説しました。そして「ある要素」が今後の対策を立案する上において非常に重要なものになるとも言いましたが、今回はこのことについてお話しします。



この「ある要素」とは以下の3つのことをいいます。


 A 職務の内容
 B 職務の内容・配置の変更の範囲
 C その他の事情


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※A「職務の内容」とは、単に同じ職種ということだけではなく、その業務に伴う責任や役割の程度も問われる
※B「職務の内容・配置の変更の範囲」とは、転勤や昇進の有無、職種(責任や役割を含む)の変更の有無があるかないかということ(将来的な見込みでも可)
※C「その他の事情」とは、主に以下のものをいう。
  1 他の待遇とのバランス
  2 定年後の再雇用    
  3 労使協議の在り方  
  4 正社員登用の有無  
  5 成果・能力・経験・役割の違い
  6 合理的な慣行
  7 残業の有無
  8 所定労働時間の違い 
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そして前記、●均等待遇(平等にすること)とは・・・でいう、「ある要素」が正社員とパート・有期雇用労働者で同じなら、待遇も同じにしなければならないとは、

上記「Aの職務の内容」と「Bの職務の内容・配置の変更の範囲」がどちらも同じであって、「Cのその他の事情」がなければ、正社員とあらゆる待遇を同じにしなければならないということです。



また前記、◎均衡待遇(違いに応じた処遇にすること)とは・・・でいう、「ある要素」に違いがある場合、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇に相違があっても良いが、不合理な差異であってはいけないとは、

上記「Aの職務の内容」と「Bの職務の内容・配置の変更の範囲」のいずれかが異なる場合、またはAB両方が異なっても「Cのその他の事情」がなければ、正社員と不合理な差を付けることは許されないということです。

ややこしい話ですが、平等にしなければならない均等と違い、均衡の方は、不合理な差がダメなのであって、差自体が否定されるのではなく、合理性は求められません。簡単に言い換えれば、合法(合理的)でなくとも、違法(不合理)でなければ良いわけで、つまりグレーはセーフということなのです。





この考えを図示すると以下の通りです。


   A職務の内容    B職務の内容・配置の変更の範囲    Cその他の事情
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1   同じ          同じ               なし     ⇒   均等待遇(差別的取り扱い禁止)
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2   同じ          異なる              ―      ⇒   均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3   異なる         同じ               ―      ⇒   均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4   異なる         異なる             (なし)    ⇒   均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)

                                                              ↑ パート・有期雇用労働法の規制の対象
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
5   同じ          異なる              あり     ⇒   待遇差は違法ではない可能性あり   ↓ パート・有期雇用労働法の規制の対象外
6   異なる         同じ               あり     ⇒   待遇差は違法ではない可能性あり
7   異なる         異なる              あり     ⇒   待遇差は違法ではない
     



上表1から4はいずれも今回のパート・有期雇用労働法の規制の対象となり、均等にしても、均衡にしても、いずれにしても何らかの持ち出しが必要となります。

つまり、非正規社員(有期、短時間の方)の待遇を引き上げて、正社員と同じ待遇にするか、近づける必要があるわけです。法の目的にも合致し、王道コースといえるでしょう。


しかしこのいわば王道コースを取り難い中小企業の場合は、まず上表の5、6、7の考え方を労務管理に反映させて運用することを具体的に検討してゆくこととなるのです。


以下次号。


小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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