07年11月15日
労働条件の変更 で =法的観点から=
経営環境の悪化、最近ではとりわけ全産業において長期にわたっての慣行となっていた「偽装工作」が国や消費者からの批判を受けて是正されるようになり、事業縮小の傾向を示す。事業再生にはやはりきれいなかたちで生まれ変わりたいものである。
(例)船場吉兆:湯木取締役が偽装指示 パート従業員ら語る真実はまだ不明だが、とりあえずこの企業では実質上パートに「業務執行権」があり、取締役は「パート」の役割にすぎなかったと幹部が告白していることになる。確かに、90年代あたりの日本企業では従業員の地位は結構高く、経営者風の発想をし経営者にハッパをかける人も少なくなかったが、パートが実質上事業を執行していたと告白する経営者はいなかったはずである。それが今日の経営遂行能力の低下という問題である。これでは互いに取引がしにくくなり、相乗効果的に産業が行き詰ることになる。まずいことだ。なお、かつての「見せしめ」は今や有効ではなく、個別に是正を求めなければ、誰も好き好んで直近の利益と信用を落とそうとはしない。したがって、経営者団体は、諸外国との取引に際する信用問題や日本の産業育成の視点から、「コンプライアンス」を所属会員に求めるものの、実効性はあまり期待できない。もはや「日本株式会社」は影はあっても姿はない。
さて、本題。
(1) 管理職手当のカットについて個別に面談し、同意を得た。これは法的に有効か。
管理職手当は就業規則絶対記載項目なので、就業規則変更によるのでなければ無効。同意があっても、カット分は返金しなければならない。
(就業規則についてはなお難しい問題を含んでいる。企業内での取り扱いと企業外での扱われ方とは相当なギャップがあるからである。裁判での証拠物という発想で作成していないことが多く、また企業内実務とも乖離している。それは労働時間管理などで「逃げる」経営者意識からくるが、社会保険労務士としてはとりあえずは作成し、当企業からの相談事項から一事項づつ指導助言して人事労務力を段階式に高めることを好しとしている。)
(2) パートの労働時間を減らす際の説明において、その同意は自由とした。不同意の者については繰り返し説得が行われ、実質上解雇されているようである。その後に同意した者から、同意撤回の申し出が出た。
これはかなり難しい状況である。ざっくり言うと、その同意が真意のものなのかどうかである。不同意すれば辞めさせられると考えて同意したとなれば当然無効となり、撤回できることになる。
なお、法的な判断においては経営状態がそれほど斟酌されるものとは思われない。あっせんなど裁判外紛争解決手続によれば別だが、裁判は法律判断するところなので、六法に書かれていないことは重視されないと思っておけばよいだろう。国家はそれが大事。「パートは雇用の調整弁」などという理由も国家には通用しない。
(3) 更新が長期にわたって繰返されているパートの時給を下げて更新すると説明した。同意した者は更新された。それは不同意であるので、今後協議というかたちをとりそれが決着するまで、とりあえずはその条件で就業するといったパートを雇い止めた。
所謂「変更解約告知」「留保付同意」の問題。「更新が長期にわたって繰返されている」場合には、解雇権濫用法理が適用される。また労働基準法18条の2や整理解雇法理など色々な観点から進めることができる。設例のようにして、不利益変更が一方的に行われることは認められないので、辞めさせたパートを職場に復帰させることになる。
(まとめ) 労働条件の変更には説明、協議、同意が必要であるが、今日的な課題として「偽装説明」は話をややこしくさせるものである。従業員に信頼され、人望のある人物が説明し、苦しい状態と再生計画について社会人として節度をもって協議すれば、それほど同意は難しいとも思われない。もちろん、実際に労働条件は下がるものであるから、最後まで反対する者は出るが、そこまでできておればあとは裁判所に委ねるのが気分的には互いに楽である。
最後に、あっせんなど裁判外紛争解決手続では上記のような法律論は重視されないが、大枠として必修的に押さえてあるものである。
(例)船場吉兆:湯木取締役が偽装指示 パート従業員ら語る真実はまだ不明だが、とりあえずこの企業では実質上パートに「業務執行権」があり、取締役は「パート」の役割にすぎなかったと幹部が告白していることになる。確かに、90年代あたりの日本企業では従業員の地位は結構高く、経営者風の発想をし経営者にハッパをかける人も少なくなかったが、パートが実質上事業を執行していたと告白する経営者はいなかったはずである。それが今日の経営遂行能力の低下という問題である。これでは互いに取引がしにくくなり、相乗効果的に産業が行き詰ることになる。まずいことだ。なお、かつての「見せしめ」は今や有効ではなく、個別に是正を求めなければ、誰も好き好んで直近の利益と信用を落とそうとはしない。したがって、経営者団体は、諸外国との取引に際する信用問題や日本の産業育成の視点から、「コンプライアンス」を所属会員に求めるものの、実効性はあまり期待できない。もはや「日本株式会社」は影はあっても姿はない。
さて、本題。
(1) 管理職手当のカットについて個別に面談し、同意を得た。これは法的に有効か。
管理職手当は就業規則絶対記載項目なので、就業規則変更によるのでなければ無効。同意があっても、カット分は返金しなければならない。
(就業規則についてはなお難しい問題を含んでいる。企業内での取り扱いと企業外での扱われ方とは相当なギャップがあるからである。裁判での証拠物という発想で作成していないことが多く、また企業内実務とも乖離している。それは労働時間管理などで「逃げる」経営者意識からくるが、社会保険労務士としてはとりあえずは作成し、当企業からの相談事項から一事項づつ指導助言して人事労務力を段階式に高めることを好しとしている。)
(2) パートの労働時間を減らす際の説明において、その同意は自由とした。不同意の者については繰り返し説得が行われ、実質上解雇されているようである。その後に同意した者から、同意撤回の申し出が出た。
これはかなり難しい状況である。ざっくり言うと、その同意が真意のものなのかどうかである。不同意すれば辞めさせられると考えて同意したとなれば当然無効となり、撤回できることになる。
なお、法的な判断においては経営状態がそれほど斟酌されるものとは思われない。あっせんなど裁判外紛争解決手続によれば別だが、裁判は法律判断するところなので、六法に書かれていないことは重視されないと思っておけばよいだろう。国家はそれが大事。「パートは雇用の調整弁」などという理由も国家には通用しない。
(3) 更新が長期にわたって繰返されているパートの時給を下げて更新すると説明した。同意した者は更新された。それは不同意であるので、今後協議というかたちをとりそれが決着するまで、とりあえずはその条件で就業するといったパートを雇い止めた。
所謂「変更解約告知」「留保付同意」の問題。「更新が長期にわたって繰返されている」場合には、解雇権濫用法理が適用される。また労働基準法18条の2や整理解雇法理など色々な観点から進めることができる。設例のようにして、不利益変更が一方的に行われることは認められないので、辞めさせたパートを職場に復帰させることになる。
(まとめ) 労働条件の変更には説明、協議、同意が必要であるが、今日的な課題として「偽装説明」は話をややこしくさせるものである。従業員に信頼され、人望のある人物が説明し、苦しい状態と再生計画について社会人として節度をもって協議すれば、それほど同意は難しいとも思われない。もちろん、実際に労働条件は下がるものであるから、最後まで反対する者は出るが、そこまでできておればあとは裁判所に委ねるのが気分的には互いに楽である。
最後に、あっせんなど裁判外紛争解決手続では上記のような法律論は重視されないが、大枠として必修的に押さえてあるものである。