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08年01月23日

ねんきん特別便

ねんきん特別便について、再配送と窓口対応の仕方が見直された。

まず、「なりすまし」。やっと思い出して統合手続きに行ったら、その記録は他人の記録へ統合済みとなっていた、という危険から、ハードルを高く設置していたものだが、そのために予想を大きく下回る統合件数で対応の見直しというもの。

従前から「記録探し」は行なわれていて、社会保険労務士のやりがいある仕事のひとつであったが、もはや国をあげての大問題となった。
もともと年金手帳の記録簿をつけていればよいが、今ほど国民は年金に関心がなかった。厚生年金にしても就職手続きのひとつという認識であったわけである。その国民が二年前に、長妻議員によって「社会化」したものである。なお、国民の「社会化」は、企業環境が大きく変わったために相乗効果的に生じた。つまり、少し前までの国民は「会社化」することはあっても「社会化」することはなかった。
労働トラブルをみると、最近では国の制度を積極的に解決手段として普通に考えられるようになってきた。少し前の社内解決(我慢、痛み分け、懐柔等)は効果は弱まる一方。理由は同様で、あとは経営の「社会化」が課題である。

さて、三月までに発送された年金特別便の方は、(この浮いた記録はあなたのものではないか)という感触のある方なので、同封の記録照会票にできるだけ思い出されることをお書きください。ただ平成九年の基礎年金番号通知書のように、考えればものすごく重要な通知なのだがそういう認識が不足していることも大いに考えられ、そのときは直接社会保険事務所に行って探す(普通のやりかた)といい。
また、前に述べたが、統合されると年金が減る方も少ないと思われるがいるということを念の為申し添えておく。これから先の流れとしては、国民に対して年金の期間と標準報酬について随時お知らせするものとなるのではないかと思われる。直接国民に対して消費する国家予算は跳ね上がるが、年金(社会保障)不信は政権が成立たなくなっていることから、少し以前と違う日本の姿に変わる。
08年01月23日 | Category: General
Posted by: roumushi
08年01月16日

解雇に関する相談

「解雇したいがどうか」という相談はよくある。専門の者に相談するのであるから、法的にどうかという意味である。

経緯を聞くと、確かに問題のある従業員の内容が多い。しかし、裁判をするとたいてい会社が負ける。その吟味については色々分析があろうかと思うが、「日本の裁判所は解雇の判断をしない傾向が強い」とするだけでは労務管理の足しにはならない。今「労務管理」という言葉を出したが、課題はこの労務管理だと考える。

まず軽く法律をみてみよう。新労働契約法では、(第16条)≪解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。≫とある。これは労働基準法18条の2から移管されてきた規定である。条文は短いが、これには過去数十年かけて積み重ねられてできた判例をバックボーンとしているため、この条文だけで実務は無理である。
なお、判例と異なり、法律規定であるので公定力が働くことに留意。また努力義務とされている規定にせよ、行政機関と異なり司法機関の判断上においてはそれほど薄まるとも思えない。


さて、結論をいうと、客観的に、合理的な理由が備わり、社会通念上相当とする解雇とはどういうものかというと、「労務管理」ができている解雇かそうでない解雇かということになる。
したがって、「解雇したいがどうか」の相談において必ず確かめるべきことは、諸種の問題についてそれぞれどのような対処(処分)がされてきたかどうかという点である。それらが合理的な性質のあるものであれば解雇に至るも不自然ではない。しかし、そうでないのであれば解雇は時期尚早だということである。鍵は「労務管理」にある。

すぐさま「解雇」と連想するのは、懲戒処分(いうまでもなく労務管理の一つ)に慣れていないからである。それは戦中以降の日本の組織体制の名残りであり、そしてまだそれは強い影響を残しているとはいえ、懲戒処分を含め労務管理の再建築をしなければ労使いずれにおいても不満の火種は燻っているのである。会社は必ずといってよいほど負け、従業員間では不公平感が蔓延する。そして嫌がらせ行為が社内中にはびこると、もはや社長も会社をコントロールできなくなり、使用者責任をとらされるはめになる。いいことはない。
08年01月16日 | Category: General
Posted by: roumushi
厚生年金 記録訂正で減額も 特例対象者 納付実績下がり

記録が見つかったと喜んでばかりいられない。
≪厚生年金の受給額は、加入期間の長さと、過去に納めた保険料の平均額に応じて決まる。漏れていた年金記録が見つかった場合、加入期間は延びる。ただし、納付額が低かった期間の記録などが足されると、受給額の計算基準となる平均標準報酬月額は下がる。≫

よくあるのが障害年金と遺族年金。
また気をつけなければならないのは、加給年金。これは期間の記録についてである。61年に新年金となった際、多くの経過措置がとられ、当時女性はずっと働くとは考えられていなかった若しくはパートとして厚生年金には非適用のかたちで働くと考えられていて、そのフォローとして家族手当と言われる加給年金そして振替加算の仕組みがとられた。したがって、配偶者(ほぼ女性)が240月以上の老齢厚生年金を受けられるときは配偶者手当(加給年金のこと)がつかなくなる。所得の底上げを図る社会保障の意義から当然の措置といえるが、「申請主義」ゆえに、その配偶者(ほぼ女性)の記録が見つかって統合すれば240月以上になる場合は「申請しない」ことでよかったわけである。

≪この件について、各地の社会保険事務所の対応が統一されていないのも問題になりそうだ。年金減額を説明された女性は「額が減ると聞いて、『それなら訂正しないで』と言ったら、『記録漏れが分かった以上、元に戻すことはできない』と言われた」と話す。一方、社会保険庁は「本人の了解や納得が得られなければ、無理に記録訂正はできない」として、記録をそのままにすることを否定していない。≫

ここでは社会保険庁は「申請主義」の方針である。社会保険事務所のものは社会保障論的立場をとっている。これについては、政府が統一的見解を明らかにすべきであろう。「損得論」を生じさせない(生じても主張を無効にする)社会保障論か「損得論」の余地を残す「申請主義」かを。
社会保険事務所は得になる人も損になる人も直接相対するため、「損得論」を排除する傾向をもつのも当然な話。また「申請主義」にも重要な理由がある。というのは、一人一年金制により、年金の選択申請を受給権者が行なう必要があるからである。したがって、記録に関しては保険者、年金の選択については受給権者が決定するという方針でもよいわけである。
政府が無理ならば、長妻議員にこの件についてもお願いするほかあるまい。
08年01月12日 | Category: General
Posted by: roumushi
08年01月08日

公益通報 で

『内部告発と公益通報』

公益通報者保護法が施行されて1年以上経った。この法律がまた変な位置にあるようだ。これもまた国際標準に合わせて作られたもので、魂が入っていないといえる。ただ、この本が面白いのは、著者が第6章でその点を突いているからである。労働基準監督官出身の著者がその点に触れているのをみるとホッとする、

さて、この法律は、内部告発した者に対して解雇等の不利益を課してはならないという簡単なもの。
対象者は自社・下請・取引先・派遣等の労働者。下請業者などは外されており、また公務員もまた国際標準に合わせたとみせながら外されている。
告発の態様は3種。
1つは内部処理機関へ。これはセクハラと同じで、当人の感じ方でよく、証拠など不要である。この段階で、それを放っておけば我が社にダメージが大きいということで、自浄作用があれば成功。普通は告発者を追いやるため、この法律ができたという堂々巡り。著者の結論は、「公益」という概念が根付いていないという不安を抱えるものなのだが。
2つ目は、行政機関の通報。この場合、「信じるに足りる証拠」が必要。
3つ目は、マスコミ等。マスコミといっても、取りあげるかどうかは不明なので何ともいえないが、この場合は名誉毀損などの問題や証拠隠滅等のおそれなどの問題が絡み、正当な通報かどうかの基準がある。

内部告発者の多くは、アメリカでもハッピーなエンディングとはいえないが、日本ではまた別の事情がある。それについて割いてるのが第6章「コンプライアンスと日本の法律」「日本の法律は守れるか」「守れない法律がなぜ作られるのか」である。例として著者は道交法と労基法について触れている。詳しくは読まれたいが、少し載せてみる。
《法規制のタテマエと現実のホンネとが乖離して並存し、関係者の遵法意識を麻痺させることによって、どうせ守れないからといい加減な時間管理が行われ、結果としてサービス残業につながるという構造もできあがっている。》
《ここでも、産業界のサービス残業を摘発する業務を行うために官庁でサービス残業がなされるというブラックユーモア的状況が存在し、それを指摘するのは非常識だという意識も同時に存在している。なぜ守れるかどうかの検証を欠いた法律が作られるのか、法律を所管する者がなぜ法律を守ろうとしないのか、その構造について次に考えてみることにしたい。》

残念ながらあまり頁が割かれていないが、こういう指摘は山本七平氏の他に聞くことがなかったので、嬉しい。
08年01月08日 | Category: General
Posted by: roumushi
<厚生年金>給与記録改ざんが発覚 社保事務所の関与も

今度は標準報酬月額の問題が取り上げられ、いよいよ年金記録問題の全貌が明らかになった観がある。


≪その後は社員のほとんどをリストラし、経営も回復、社会保険事務所から連絡もなかった。ところが、03年に元社員の一人から「自分の標準報酬月額が過去2年分、30万円から(当時最低額の)8万円に下げられている」と指摘され、当時の社員全員の年金データが改ざんされていたことに気づいた。≫

たまに(身近でも)聞いたことがある話である。というのは整理解雇に移行するときのその回避策として考えられなくもないからである。給与を実際に8万とするなら反撥があるが、標準報酬月額を8万と偽装させて保険料を減らすのなら痛みも少ない。少し前までは、誰も年金記録なんて関心もない。ただし、納付義務を負う会社が勝手にしていたのは民事上の問題として残る。もちろん合意があれば組織秩序的にマシ(所謂「企業ぐるみ」の安定)というだけで、違法行為なので結局合意の有無を問わず無効であることはいうまでもない。

こうした年金減額分請求もしくは受給資格不足による損害賠償請求について争った裁判はあまり聞かない。審査請求では二義的な観点として出ることもたまにあるが、多くはない。第三者委員会はこういった日本社会の現実をみて混乱していると思われる。司法(当然法律を作る国会を含む)も行政も会社も国民生活も、もはや自家中毒で動きが取れなくなりつつあることを強く感じる。アメリカ社会を嫌っていたはずの日本が、知らずしてトラブル社会への途を歩んでいたのは皮肉な話である。
08年01月07日 | Category: General
Posted by: roumushi