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社会保障費で「日本経済は沈没」=消費税率の引き上げを−額賀財務相

≪額賀福志郎財務相は29日、NHKの番組に出演し、増大する社会保障費について「働く世代にすべて負担を任せたら、日本の経済は沈没する」と述べ、高齢者も含め国民が幅広く負担する消費税率の引き上げで賄うべきだとの考えを示した。その上で「北欧やドイツも消費税は20%前後になっている。その一方で所得税や法人税を下げているのが世界の姿だ」と指摘した。 ≫


後期高齢者医療問題について非難が殺到したために緩和策が講じられる一方で、またその隣りではそのシワ寄せが来る。
日本の組織には中心がない。あるとすれば「台風の目」のようなもので、これを文学者たちは「空気」「真空」と呼んできた。
「専制君主」といえば聞こえが悪いが、日本ではヒトラーのような代表すべき人物は出ていない。出ていないにもかかわらず、聞こえが悪いというのは、当時同盟国関係であったという意識が残存しているというものだろうか。そうは思えない。

リアリズムでみれば、日本は実質的に(直接)「民主主義」を採用しておらず、間接的(擬制的・形式的)に運用しているだけである。したがって、直接民主主義の国として、国民の個々が誤解し、めいめいの意見を述べるようになった今日では、まったく国が組織として機能しなくなる。そのようにできていないのである。また、このような直接民主社会を運営するノウハウをもっていない。ドイツではワイマール憲法後ヒトラーを支持したが、日本ではそのようなワンマンが育たないのである。このことが今日と明日の日本の足をすくっている。民間企業ではワンマンがむしろ普通で、したがって社会的に育たないことはないが、現状「民間登用」という程度で、「社風」が社会化していく段階は想定されていない。無論、民間企業のワンマンが良いイメージを出し切れていないからであろうが。
さらに、従来中心とされてきた厚生労働省の信用が失墜した。もはや財政面の危機というだけでは解決することは難しい。敢えていうと、治安や秩序の危機を示している。日本社会と国民の改革について新聞記事などで見つけようとするものの、何も述べられていない。かつては「ヤソ」や「アカ」「××」などのタームで誘導されていた方法が、対象の全国民化によってもはや通用しない。強いて言えば「クレーマー」ということになるのだろうが、無差別殺人など加害者が「中心」を捉え切れていない現象もまたそれに含まれる。
(なお、民間企業においては「クレーム対策」により、顧客の信用回復と管理体制改善などプラス面で捉えられてきている。「インフォームドコンセント」はもはや知識ではなく、業務命令である。それだけ売り上げに影響しているのが実情であり、また社員の維持が大変になってきているのである。)
08年06月29日 | Category: General
Posted by: roumushi
昭和 23年10月米國社會保障制度調査團の報告書

(占領目標)
≪社會保障制度調査團報告書は、日本國民に、社會保障の健全なる基礎を提供するための援助を行ふべく、連合軍・極東派遣軍最司令部關係各部局、並びに日本政府關係各官廳及び係官の、研究・分析のための參考文書として、受納せられた。民主々義思想に基き、國の資源の範圍に於て、日本に廣汎にして且つ適切な社會保障制度を保持する事は、承認せられたる占領目標である。≫

占領目標ということもあってか、奥行きの深い設計と感ずる。

(民主主義)
≪與論の支持に依る社會保障制度に依り、個人が、滿足し得る程度の生活標準を維持して行く事が出來るならば、政府並びに一般社會に對しての信頼は、一層強められる事になるのである。
 社會保障立法は、又、自主性を發揮し企業を盛んならしめるに適切な環境を造り出す効果を持ち、從つて、民主々義の重要な要素となるのである。かゝる立法が、豫期し得ざる出來事に際して個人を保護するが故に、個人自らの勤勞、或ひは企業の結果が保護せられる事となり、平等の立場に立つて家事し、勤勉に努力し、自らの能力と腕前を充分に發揮する事は、無駄ではないものだと感じる樣になるのである≫
≪全般に亘つて、非民主的制度に依り、與論に依るに非ずして政府の權威に依り運營せられ來つた。之等の制度を、事務機構並びに本質的給付の面から再編成する事に依つて、現存せる社會保險諸施設をより有効に使用すると共に、日本經濟を健全なる基礎に置く事の一助ともなり、且つ又、民主々義制度を確立する結果ともなるであらう事は明らかである。≫

医療給付を全額とすることや制度統合など注意すべき勧告もあるが、ここで大切なのは「民主主義」(思想)確立のために不可欠な制度だと考えられている点である。現在のアメリカは考慮しないとしても、やはり現行の日本制度にはバックポーンとしての民主主義の念押しが欠乏しているとみるべきだろう。
08年06月09日 | Category: General
Posted by: roumushi
昭和22年10月社会保険制度調査会が提出した社会保障案から考えてみる。なお、この調査会は健保から労災保険を独立させ、失業保険(雇用保険の前身)創設に寄与した。


≪なお、この制度の確立は経済再建の基本的条件の一つである。≫

「社会保障」の意義は、国家経済のための基本的条件の一つということは多く議論され国民の常識として認知されねばなるまい。

≪この制度は、現在の各種の社会保険を単につぎはぎして統一するものではなく、生活保護制度をも吸収した全国民のための革新的な総合的社会保障制度である。なお、この制度は、最低生活を保障するものであるから、それ以上の生活の維持のためには、これと併せて各種の任意保険や共済施設の利用を極力奨励する。≫

現行の社会保障制度は個々において「一元化」を目ざしつつあるものの未だ不充分である。(「一元化」の青写真は明瞭なものが出されても、その過程の事務負担の混乱が敬遠されているとも考えうる。なお、「一元化」されたとしても、清算等の処理でなく自然経過による処理の場合、数十年は同時併走する。ちなみに、昭和61年実施の「基礎年金制度」はまだ国民に周知されたものとはいいがたい。)また、現行では、最低生活保障である老齢基礎年金と生活保護とは別立てされており、老齢基礎年金は最低生活保障に満たない水準に止まっている。

《この制度は、雇用、貸金、住宅、衛生、医療、教育その他の公共の福祉等に関する政策並びに施設との関係を密接にし、これらの諸政策の拡充強化とならんで、国民生活の保障を確立せんとするものである。≫

経済復興後の社会は「タテ割り」しないと状況管理できなくなったわけだが、そのコントロールも限界点を突破しており、総じて「タテ割り」の弊害も深刻なため、再度一睨できる体制が必要となっている。

≪傷病手当金は、被用者及び自営者に対して支給する。支給期間は、療養の給付を受ける期間とする。但し、自営者については、待期を設け、被用者については、貸金全額を受ける期間は支給しない。無業者である妻がある場合は、手当金を相当額増額する。

現行は自営業者には適用していない。また、要綱は失業給付についても配偶者加算を設けている。

≪老齢年金は、男子満60歳、女子55歳に達した時から支給する。但し職業により、支給開始年齢は適当に考慮する。なお、夫婦とも老齢の場合には、年金額を若干減額し、老齢に達しない無業者である妻がある場合は相当額増額する。≫

「男子満60歳、女子55歳」は当時の労働力年齢で設定したようである。引退して年金で生活を保障するというもの。「但し職業により」はサンプルがないが、年齢が許さない職業については若年令で支給しようとしていたものか。夫婦双方に受給権が発生しているときは減額というのも当時の良識か。(現行の加給年金停止)

《特別の事情がある者に対しては、その事情に応じて適当な生活保障を行う。》

これが生活保護を取り込んだ意味になるが、現状では老齢年金だけが取り残された恰好となっている。というよりも、生活保護が主で、老齢年金を従としたカタチである。このあたりの国民の理解の仕方が不充分なものとなっている。老齢年金だけで無理な者は生活保護を受ければよいという設計という理解でよいのかどうか。

費用概算については正直よくわからないが、戦後直後と異なり、現在ではもう一つの大きな問題がある。後期医療保険の問題から、<国民の代表である国会議員によって>国会で成立した法律が、実施直後から国民の批判に遇い、また<国民の代表である国会議員によって>法律廃止法案
が出ているという痴態である。いかに、国民の信頼を受けずに法律を成立させていたか。医療保険法は具体的直接に影響を与える実効性の高い法律であるが、労働法等はいかに実効性がないか(労働法も同様に適用すれば、同様に混乱する)。いかに、法律と国会と国民との間に溝があるか。
現在、日本の労働状況は戦時中の「労働者供給事業」に戻っており、劣悪な労使関係と労務管理(外国人研修問題から)により、再び国際的な批判と勧告を受けることになった。
08年06月06日 | Category: General
Posted by: roumushi