14年04月29日
弁護士と特定社労士
労働事件をよくする弁護士と社労士の交流が繁くなっていることは前に述べたとおりである。愚痴を聞かされるのには閉口するが、紛争手続きの実務や情勢について聞くのは新鮮な事柄が多い。弁護士にとっては垢のついた内容ではあろうが、労務管理の限界などと繋げれば辻褄が大体合ってくるものである。
この両者が交わることによって感じたことがある。
1、弁護士が労使どちら側でもない職務に従事する社労士をみて羨ましがっている点。
尤も、弁護士でも社労士として登録すればそのようにすぐなれるのであるが、それはそれとして、この見方について社労士からは、どちら側でもないが、経験が浅ければ会社の言いなりになってしまう者が多いという点がある。だからこそ、紛争解決を経験することによって、私法解決の考えをみっちり身に着ける必要に迫られているのである。
なお、弁護士は裁判官がいない日常での解決にはあまり関心が向いていない。若干、和解に積極的な者もいるが、たいていそこまでの余力も限られているようである。
2、紛争事案における弁護士と社労士の住み分けについて。
弁護士の多くが誤解しているのは、社労士に公的な紛争処理の実力があると考えていることである。無論、関与先に生じた紛争はたいてい解決できるが、それは法を基にしたものではない。労使間の信頼の貸し借りのような解決となる。したがって、あっせんの次以降の裁判所を利用した制度については弁護士にスイッチするという住み分け。
しかしこの考えは否定されている。否定されたのは思考の経路である。
まず、社労士法において、あっせん代理業務から個別紛争解決業務に改正された。そして特定社会保険労務士は労働相談技術の習得が必修とされた。その上で、特定社会保険労務士としてできることとできないことの研修を受け、訴訟代理を含め法律事務の制約を受けているのである。したがって、法律事務は無論知っておかねばならない。しかし、できない業務であるから、そこでスムーズに交流のある弁護士を紹介するのである。
そもそも労働相談をまともにできない社労士に、弁護士を紹介してもらうことはほとんど無い。信頼関係が傷ついているからである。その程度の社労士が紹介する弁護士に対しても無論眉唾モノでの初対面となり、後々依頼人トラブルへと発展しかねない要素をもつ。
社労士に自己の営業の先鋒を頼む考えを抱く弁護士がいないとは思えないが、半分以上は、それぞれ独立する経営体であり、同業者という関係でしかないのである。しかも弁護士法では弁護士が他者と貸し借りをもつ関係をよしとしていないのである。
よって、特定社会保険労務士は労働相談技術を身につけ、相談者に信用を得た後に、できない業務については弁護士を紹介するということになる。解決手順、解決手段の見極めなどろくに労働相談ができない社労士が多すぎるので、述べたまでである。もちろん、それはなかなか身につくものではないが、相談においてどのような債務を負っているかを認識すべきである。
(なお、こうしたことが言えるようになったのは既に上記の課題をある程度クリアもしくはクリアする体制が備わってきたいう見解だからである。誤解無きよう。)
この両者が交わることによって感じたことがある。
1、弁護士が労使どちら側でもない職務に従事する社労士をみて羨ましがっている点。
尤も、弁護士でも社労士として登録すればそのようにすぐなれるのであるが、それはそれとして、この見方について社労士からは、どちら側でもないが、経験が浅ければ会社の言いなりになってしまう者が多いという点がある。だからこそ、紛争解決を経験することによって、私法解決の考えをみっちり身に着ける必要に迫られているのである。
なお、弁護士は裁判官がいない日常での解決にはあまり関心が向いていない。若干、和解に積極的な者もいるが、たいていそこまでの余力も限られているようである。
2、紛争事案における弁護士と社労士の住み分けについて。
弁護士の多くが誤解しているのは、社労士に公的な紛争処理の実力があると考えていることである。無論、関与先に生じた紛争はたいてい解決できるが、それは法を基にしたものではない。労使間の信頼の貸し借りのような解決となる。したがって、あっせんの次以降の裁判所を利用した制度については弁護士にスイッチするという住み分け。
しかしこの考えは否定されている。否定されたのは思考の経路である。
まず、社労士法において、あっせん代理業務から個別紛争解決業務に改正された。そして特定社会保険労務士は労働相談技術の習得が必修とされた。その上で、特定社会保険労務士としてできることとできないことの研修を受け、訴訟代理を含め法律事務の制約を受けているのである。したがって、法律事務は無論知っておかねばならない。しかし、できない業務であるから、そこでスムーズに交流のある弁護士を紹介するのである。
そもそも労働相談をまともにできない社労士に、弁護士を紹介してもらうことはほとんど無い。信頼関係が傷ついているからである。その程度の社労士が紹介する弁護士に対しても無論眉唾モノでの初対面となり、後々依頼人トラブルへと発展しかねない要素をもつ。
社労士に自己の営業の先鋒を頼む考えを抱く弁護士がいないとは思えないが、半分以上は、それぞれ独立する経営体であり、同業者という関係でしかないのである。しかも弁護士法では弁護士が他者と貸し借りをもつ関係をよしとしていないのである。
よって、特定社会保険労務士は労働相談技術を身につけ、相談者に信用を得た後に、できない業務については弁護士を紹介するということになる。解決手順、解決手段の見極めなどろくに労働相談ができない社労士が多すぎるので、述べたまでである。もちろん、それはなかなか身につくものではないが、相談においてどのような債務を負っているかを認識すべきである。
(なお、こうしたことが言えるようになったのは既に上記の課題をある程度クリアもしくはクリアする体制が備わってきたいう見解だからである。誤解無きよう。)
14年04月10日
労務管理相談と法律相談
弁護士で社労士会へ登録する者が増えている。
理由はそれぞれであり、分析する必要があるが、第一番目は社労士業務を行いたいというものであろう。弁護士は社労士試験を受ける必要は無いが、社労士業務(労働社会保険諸法令に基く書類の作成や届出、行政への陳述)を行うには社労士会(連合会)への登録をしなければならない。
次に労働関係がメインの社労士業においては、常にその情報が蠢いている。まともに対応するならば脳ミソがパンクするはずだか、十中八九まともに社労士業をするつもりはないようである。
弁護士の労働に関する世界は大きく「労働者側」「使用者側」に分かれ、それぞれ派閥というか内部の任意団体に所属して活動している。ただ、弁護士業務における労働事案は比較的小さいのが普通である。したがって、ボス弁から「お前は労働担当」という業務命令で担当しているのが今日のよくある実情のようだ。
上記のようにどちらかに属すというのは、それなりに理由がある。訴訟代理という業務から由来するもので、双方代理の禁止がそのドンツキにある。ある相談を以前受けたが、今度はその相手方が相談したいと言ってきた場合、代理業務においては相手方から相談を受けてはいけないことになっている。契約にいくかどうかは未知としても職業倫理上無理な話なのである。したがって、相談者名簿を相談業務が発生する都度調べる必要があり、その手間は大変なのである。事務所規模によってはたいした事は無いが、もしかしてということはある。そういう手間を省くには一方だけの相談に乗るとした方がまちがいがないというわけである。
社労士業務においても個別紛争解決業務がある。訴訟代理は弁護士業務とバッティングするため外されている。ただ、これをしたければ弁護士のままでいいわけであるから、社労士登録の理由にはならない。
社労士の場合、労務管理がメインである。労働時間制度管理、賃金制度管理、組織開発と経営面でのサポートが大きい。事務手続きをすることによって原データに接しているため、上手く進めやすい。さすがに労務管理業務を弁護士ができるとは思わないが、肝腎なのは労働側とか使用者側という区分けがないという点であろう。(尤も、ブラック士業と称される者は使用者側となるが…)このおよそ紛争解決とは離れた労務業務に関心をもたれているのではないかとも思う。
特定社労士制度のため労務管理相談(人間関係や組織、人事規定の有り方を修復したり行政通達や判例を紹介するなど)から法律相談(具体的な争い方の検討など)の道ができたことで、社労士のイメージがやや変化しつつある。労働審判も実際は本人ではなかなか進めにくいため、裁判同様利用されているものではない。裁判に比べれば、という程度である。また何よりもこうした公的メニューの利用の仕方について、まだ国民は未熟である。ユニオンによる団交も含めて、紛争解決の仕方についての研究が必要であるし、斯界も変化を見せつつある。先日では、「本人の記憶以外には何ら事実を認める証拠は提出されなかった」という判決が報道されたが、争い方というのはなかなか難しいのである。
社労士会のなかで、労務管理に関心を寄せる弁護士と法律相談に関心を寄せる社労士との融解によってどのような化学反応が生れるかが楽しみである。
理由はそれぞれであり、分析する必要があるが、第一番目は社労士業務を行いたいというものであろう。弁護士は社労士試験を受ける必要は無いが、社労士業務(労働社会保険諸法令に基く書類の作成や届出、行政への陳述)を行うには社労士会(連合会)への登録をしなければならない。
次に労働関係がメインの社労士業においては、常にその情報が蠢いている。まともに対応するならば脳ミソがパンクするはずだか、十中八九まともに社労士業をするつもりはないようである。
弁護士の労働に関する世界は大きく「労働者側」「使用者側」に分かれ、それぞれ派閥というか内部の任意団体に所属して活動している。ただ、弁護士業務における労働事案は比較的小さいのが普通である。したがって、ボス弁から「お前は労働担当」という業務命令で担当しているのが今日のよくある実情のようだ。
上記のようにどちらかに属すというのは、それなりに理由がある。訴訟代理という業務から由来するもので、双方代理の禁止がそのドンツキにある。ある相談を以前受けたが、今度はその相手方が相談したいと言ってきた場合、代理業務においては相手方から相談を受けてはいけないことになっている。契約にいくかどうかは未知としても職業倫理上無理な話なのである。したがって、相談者名簿を相談業務が発生する都度調べる必要があり、その手間は大変なのである。事務所規模によってはたいした事は無いが、もしかしてということはある。そういう手間を省くには一方だけの相談に乗るとした方がまちがいがないというわけである。
社労士業務においても個別紛争解決業務がある。訴訟代理は弁護士業務とバッティングするため外されている。ただ、これをしたければ弁護士のままでいいわけであるから、社労士登録の理由にはならない。
社労士の場合、労務管理がメインである。労働時間制度管理、賃金制度管理、組織開発と経営面でのサポートが大きい。事務手続きをすることによって原データに接しているため、上手く進めやすい。さすがに労務管理業務を弁護士ができるとは思わないが、肝腎なのは労働側とか使用者側という区分けがないという点であろう。(尤も、ブラック士業と称される者は使用者側となるが…)このおよそ紛争解決とは離れた労務業務に関心をもたれているのではないかとも思う。
特定社労士制度のため労務管理相談(人間関係や組織、人事規定の有り方を修復したり行政通達や判例を紹介するなど)から法律相談(具体的な争い方の検討など)の道ができたことで、社労士のイメージがやや変化しつつある。労働審判も実際は本人ではなかなか進めにくいため、裁判同様利用されているものではない。裁判に比べれば、という程度である。また何よりもこうした公的メニューの利用の仕方について、まだ国民は未熟である。ユニオンによる団交も含めて、紛争解決の仕方についての研究が必要であるし、斯界も変化を見せつつある。先日では、「本人の記憶以外には何ら事実を認める証拠は提出されなかった」という判決が報道されたが、争い方というのはなかなか難しいのである。
社労士会のなかで、労務管理に関心を寄せる弁護士と法律相談に関心を寄せる社労士との融解によってどのような化学反応が生れるかが楽しみである。