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14年10月31日

マタハラ訴訟

平成24年(受)第2231号 地位確認等請求事件

判決破棄、差し戻し。

≪1 本件は,被上告人に雇用され副主任の職位にあった理学療法士である上告人が,労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を免ぜられ,育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことから,被上告人に対し,上記の副主任を免じた措置は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「均等法」という。)9条3項に違反する無効なものであるなどと主張して,管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。≫

長文で読みにくいし、またこの訴訟の解説をするつもりではないが、地位を求めていないのに確認訴訟とはと不思議に思う。こういうやり方がよいのか不明である。
さて、この判決はあまり評判がよくないが、事情を読み実務的にすると、軽易な作業を求めて配転した。それに伴う役職を解くにあたり、会社はその人事手続きを失念し、たぶん給与計算の際に気づいたものと思われるが、遡って役職を解くことについて本人の承認を取った。ここで本人と会社との信頼関係が揺れた。従前からの経緯も当然あると推定する。
会社は本人の従前の仕事を任せる者も配置させた。しかしそれは代替のつもりではなく、本人が軽易な業務から元に復帰を願ったところ、もう既に代りは見つけているので、貴方の復帰できる場所はないということから訴訟に発展した。私なりに思い切り丸めた事情なので、この訴訟からは少し離れていることは留意されたい。

訴訟は均等関係を根拠とするものでややこしくみえているが、私の丸め方であれば、会社の権利の濫用、不法行為が一目瞭然であろう。妊娠、育児にかかわらず、穴埋めのため配置した者がいるから辞めめてくれ、辞めるしかない、会社は余剰人員を抱えるところではない、とかよくある話である。まして、少子化問題があり、誰それが言われていたが、子供か会社かの二社選択を迫る雇用状況は改善されなければならない国家的急務である。ただ一方で、会社の財政問題も無視できないともいえ、法律論だけではなかなか難しく、身を引く者が実際のところ多い。有期雇用なら転職してしまう。争う労力等はハンパではなく、その間出費のみになるからだ。

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マタハラで頼れぬ、「伝書バトのような」労働局

≪最高裁判決で注目されたマタニティー・ハラスメント(マタハラ)だが、問題解決のために全国の労働局で行われている「紛争解決援助」や「是正指導」の実績は低迷している。≫読売新聞

セクハラやパワハラもそうだが、これを裁く法律は民法である。つまり、債務不履行や不法行為、権利の濫用、公序良俗違反を根拠に置く。加害者被害者という関係でみるなら刑法である。労働行政はそういうものを扱うのではなく、労働環境の改善への取り組み、起こったときの対応体制などである。当然の話であるが、労働局は裁判所ではない。事件を裁く権能は持たされていない。
ただし、個別労使紛争として助言をしたりあっせんの組織はある。助言というのは当事者の和解促進を助けるものでそれなりの実績効果がある。伝書バトではなく、裁判所扱いでない民事事案はあくまでも当事者で解決すべきものという性質なので、逆に代理人のように頼るものではないというものである。あっせんにしても、裁判のように主張や証拠の確認を数回の期日で行うものではなく、事情は当事者が最も知るものとして、あっせん委員が当事者の和解契機を誘う性質である。
この新聞記事では解雇無効を本人が求めていたとのことなので、もともと助言もあっせんも向かないということに過ぎない。白黒の決着は法的認定権能がある裁判所だけである。「解雇の撤回を求める。しかし、どうしても解雇を撤回しないならば給与1年分の補償を求める。」など交渉の余地があるか無いかがポイントで、本人が交渉の余地を求めないで解雇無効のみについて争うのならば裁判所しかない。
なお、あっせんは訴訟において数度の主張立証を行われた後の和解勧告の場に匹敵する。したがって、少なくとも、相手方との数度の書面などの交渉で双方の主張ポイントが確認できてから行うのがよい。だからあっせんは半日で十分なのである。なかなか労働局では代理人のように接することができないので念のため。
14年10月31日 | Category: General
Posted by: roumushi
14年10月23日

労基法では?

質問「仕事中、会社の車を傷つけてしまった。修理代を会社から請求されたが、労基法上どうなのか知りたい。」


労基法がどのような法律なのかがよく理解されていない典型例である。
あっせん手続きに備え、各監督署等において相談員を配置しているので詰まる所このような質問も対応できているが、ただ、これは労基法の話ではない。
これはどうみても民民の損害賠償請求事案である。したがって、当事者間で数回交渉してもらい、妥結しないならば、あっせん申請となる。あるいは決裂だとか交渉拒否の場合は、あっせんではなくて、審判など裁判所の事案となる。なお、当事者間の事前交渉が少ないため、まだ全体的な見通しが立たない状態で、交渉の大部分も裁判所でしたいならば民事調停となろう。

労基法上どうなのか?の他に、「法律上」どうなのかという質問もある。これもなかなか困ったものである。民法そしてその解釈としての裁判例まで拡げて「法律」と受取るべきかどうか………。尤も、回答への影響は殆ど無いけれど。

しかしながら、損害賠償の事項について雇用契約書に取り決めてあるとかいうことで、給料から差し引くと言われている、となると、今まで無関係だった労基法が関連づけられてくる。

≪(賠償予定の禁止)
第十六条  使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

この規定は「違約金の定め」と「損害賠償額の予定」を禁止している。「額」を予定してはいけないということなので、労使で交渉して決めるということになる。
ただし、ここで民事上のことについて触れるならば、どういう風にして車を傷つけたかがポイントになってくる。基本は、仕事中のリスクと利益は会社が負うものなので、労働者側に故意はまず無いとしても相当な不注意が認められるのかどうかにより、賠償額は測られていく。

(賃金の支払)
第二十四条  賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、(略)労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。≫

ここは難しい。額については互いに納得して決まったならまぁ協定通り差し引かれても労基法上問題は無いと考えることができる。そこで労働者側が拒否した場合どうか?
そうなると今度は協定の有効性について考えていく必要もでてくるだろうし、また当事者間で支払い方についてもう少し交渉できないかどうかというアドバイスも出すべきだろう。労基法上ではどうかというのはかなり難しく、無難でない選択となる。監督行政では裁判機能は当然ながら持たされていないため、協定の有効性については見るからに無効だとわかる珍物でない限り有効とするより他はないだろうからである。したがって、それより先は当初の話に戻り、民事的な解決について、当人が自分がどうしたいかの意思を固めて次のステップに移るもしくは移らないという次第となる。
14年10月23日 | Category: General
Posted by: roumushi