14年11月26日
労働契約法の改正
労働契約法は、ほぼ確立された判例を立法化したものである。したがって、主張の場においてはほとんど影響がないものと受け止められた。労働契約法の規定を実体法として主張することができるのであれば民法規定を出すまでもなくなった程度である。
その労働契約法も、第18条の登場で、判例を実体法にするのに止まらず、新たな労働秩序を形成する役割をもつことになった。
≪同一の労働者との間で有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合は、労働者の申込により、無期労働契約に転換できる。≫
労働契約法は取締法規ではなく、あくまでも私法に属する。したがって、罰則は無いが、当事者が争う際に決め手となる。
第19条と強く関連するが、5年も更新しているのならば、労使の信頼関係も十分あるし、有期契約の意味あるの?ということである。法成立にあたっての調査結果がこの18、19条に反映されている。
ただ、いざ法定化されると使用者の不安を誘い、5年になる前に契約を断ち切ろうとする傾向も出た。今、少し落ち着いたかのようで、5年を待たずして無期転換の申し出も受け付ける使用者も増えつつあると聞く。
この「5年」設定は、既に大学の先生において確か10年に読み替えられている。
今回は、
≪一 「特定有期雇用労働者」とは、専門的知識等を有する有期雇用労働者(一年間当たりの賃金の額が一定の額以上である者に限る。)であって、当該専門的知識等を必要とする業務(五年を超える一定の期間内に完了することが予定されているものに限る。以下「特定有期業務」という。)に就くもの(以下「第一種特定有期雇用労働者」という。)及び定年(六十歳以上のものに限る。)に達した後引き続いて当該事業主等に雇用される有期雇用労働者(以下「第二種特定有期雇用労働者」という。)をいう。≫
(議案情報)
(リーフレット)
第一種、第二種ともに手続きが必要となっている。詳細はいずれ出る。
「特定有期業務」の内容も同様。
こう見てみると、労基法14条との関連も押さえる必要がある。
≪第十四条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。≫
労基法の「専門的知識等」業務従事者とダブることが多いと思われるが、労基法では5年までの契約しかできない(当然、更新を除く)とある。しかし、労契法では5年を越えるものに適用するとある。その処理の仕方として、「一定の事業の完了に必要な期間」の契約という合わせ技で解消してある。さらに、今議論し続けられているホワイトカラーエクゼンティブでの観点である、「 (一年間当たりの賃金の額が一定の額以上である者に限る。)」とまで付いてきている。
発明対価の著作権の所属問題など、日本のサラリーマンのなかには想像が難しいほど優秀で貴重な存在もいる。それはそれとして、使用者が5年設定で不安を如実化したのと同じく、労働者は安易な適用に不安をもつ。使用者もサラリーマンも、優秀な者がいれば、普通もおり、もう少しというのも存在するわけである。
高齢者の方はまたの機会とするが、いずれにせよ、労契法は私法である。19条もある。それから、待遇における無期有期の均等化の流れも進みつつある。もとより長期継続的な労使間を志向するならば、何が「得」か「損」かという観点は抑えるべきであるが、その結果が現状なので、法制度の変遷も視野に入れつつ、どうあるべきかを考えていく時期であろう。
その労働契約法も、第18条の登場で、判例を実体法にするのに止まらず、新たな労働秩序を形成する役割をもつことになった。
≪同一の労働者との間で有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合は、労働者の申込により、無期労働契約に転換できる。≫
労働契約法は取締法規ではなく、あくまでも私法に属する。したがって、罰則は無いが、当事者が争う際に決め手となる。
第19条と強く関連するが、5年も更新しているのならば、労使の信頼関係も十分あるし、有期契約の意味あるの?ということである。法成立にあたっての調査結果がこの18、19条に反映されている。
ただ、いざ法定化されると使用者の不安を誘い、5年になる前に契約を断ち切ろうとする傾向も出た。今、少し落ち着いたかのようで、5年を待たずして無期転換の申し出も受け付ける使用者も増えつつあると聞く。
この「5年」設定は、既に大学の先生において確か10年に読み替えられている。
今回は、
≪一 「特定有期雇用労働者」とは、専門的知識等を有する有期雇用労働者(一年間当たりの賃金の額が一定の額以上である者に限る。)であって、当該専門的知識等を必要とする業務(五年を超える一定の期間内に完了することが予定されているものに限る。以下「特定有期業務」という。)に就くもの(以下「第一種特定有期雇用労働者」という。)及び定年(六十歳以上のものに限る。)に達した後引き続いて当該事業主等に雇用される有期雇用労働者(以下「第二種特定有期雇用労働者」という。)をいう。≫
(議案情報)
(リーフレット)
第一種、第二種ともに手続きが必要となっている。詳細はいずれ出る。
「特定有期業務」の内容も同様。
こう見てみると、労基法14条との関連も押さえる必要がある。
≪第十四条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。≫
労基法の「専門的知識等」業務従事者とダブることが多いと思われるが、労基法では5年までの契約しかできない(当然、更新を除く)とある。しかし、労契法では5年を越えるものに適用するとある。その処理の仕方として、「一定の事業の完了に必要な期間」の契約という合わせ技で解消してある。さらに、今議論し続けられているホワイトカラーエクゼンティブでの観点である、「 (一年間当たりの賃金の額が一定の額以上である者に限る。)」とまで付いてきている。
発明対価の著作権の所属問題など、日本のサラリーマンのなかには想像が難しいほど優秀で貴重な存在もいる。それはそれとして、使用者が5年設定で不安を如実化したのと同じく、労働者は安易な適用に不安をもつ。使用者もサラリーマンも、優秀な者がいれば、普通もおり、もう少しというのも存在するわけである。
高齢者の方はまたの機会とするが、いずれにせよ、労契法は私法である。19条もある。それから、待遇における無期有期の均等化の流れも進みつつある。もとより長期継続的な労使間を志向するならば、何が「得」か「損」かという観点は抑えるべきであるが、その結果が現状なので、法制度の変遷も視野に入れつつ、どうあるべきかを考えていく時期であろう。
14年11月21日
連合談話 で (社労士法8次改正)
社会保険労務士法改正法案の成立に関する談話
下記は抜粋、全文は上記にアクセスして確認できます。
≪1、労働組合活動の現場から、社会保険労務士(以下「社労士」)が団体交渉等に不当に介入することで正常な労使関係を損なう事態が生じているとの声があがる中、社労士の業容拡大のみを認める同法案が成立に至ったことは問題である。≫の箇所
社労士が団交の席に出る場合、代理人となることは弁護士法違反になる。
「不当介入」「正常な労使関係を損なう」については個々の事案での問題。
≪2.また、社労士の試験科目には個別労働紛争に関する科目が設けられておらず、対審構造に基づく訓練も行われていない中、特定社労士のみならず全ての社労士まで労働関係事項に関する補佐人業務を認めることは極めて問題である。≫の箇所
個別労使紛争に関する科目については、社労士試験とは別に、特定社労士に対応した研修と試験がある。そこからは個々の研鑽が中心になる。
補佐人業務については、「紛争解決業務」ではないため、特定社労士に限定されるものではない。「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項」という社労士の一般的業務についての補佐業務である。
当然、裁判所の許可を不要とした分、適正な補佐業務かどうかの注目を浴びるわけであり、また社労士のもつ実務知識が訴訟の場で展開される機会が増えるものであるから、労務管理、労働社会保険諸法令に関する実務手続きの適正化、公正化の普及に資するはずである。
まだ法律が成立したばかりのため、推移を見守るほかないが、社労士=使用者側それも使用者の手先という見方がまだ強いようだ。そういう社労士像からの脱却のためには、士業としての独立性をもち、それが公正性の担保となる。訴訟の場で補佐人として陳述するということは使用者の手先であるわけにはいかない。使用者へ指導するということを本来目的とする士業像がそこにあると考える。したがって、寧ろ、どんどん公けの場に出さなければならない資格であろう。
なお、個別紛争業務においては、労使ともに特定社会保険労務士に依頼するケースも多くなっている。使用者側の手先の社労士だけではない。また、社労士で構成する研修団体においては、労働弁護団所属弁護士も招いているし、ユニオン執行委員も招いている。これも紛争解決業務に参画できるようになってからである。そういう流れへと変化しているわけであるから、社労士=使用者側の手先というガチガチの見解はそろそろ溶いてもらいたいと願うものである。さらに、手先としてではなく、公正な手続き、労務管理の適正のために社労士と契約するという経営者も珍しいことではなくなりつつあるという変化もみられる。そういったわけで、実効的なことは何も出来ないショボい資格に社労士を閉じ込めようとすることは得策ではない。倫理の強化、紛争処理業務の研修整備など課題は無論少なくない。
下記は抜粋、全文は上記にアクセスして確認できます。
≪1、労働組合活動の現場から、社会保険労務士(以下「社労士」)が団体交渉等に不当に介入することで正常な労使関係を損なう事態が生じているとの声があがる中、社労士の業容拡大のみを認める同法案が成立に至ったことは問題である。≫の箇所
社労士が団交の席に出る場合、代理人となることは弁護士法違反になる。
「不当介入」「正常な労使関係を損なう」については個々の事案での問題。
≪2.また、社労士の試験科目には個別労働紛争に関する科目が設けられておらず、対審構造に基づく訓練も行われていない中、特定社労士のみならず全ての社労士まで労働関係事項に関する補佐人業務を認めることは極めて問題である。≫の箇所
個別労使紛争に関する科目については、社労士試験とは別に、特定社労士に対応した研修と試験がある。そこからは個々の研鑽が中心になる。
補佐人業務については、「紛争解決業務」ではないため、特定社労士に限定されるものではない。「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項」という社労士の一般的業務についての補佐業務である。
当然、裁判所の許可を不要とした分、適正な補佐業務かどうかの注目を浴びるわけであり、また社労士のもつ実務知識が訴訟の場で展開される機会が増えるものであるから、労務管理、労働社会保険諸法令に関する実務手続きの適正化、公正化の普及に資するはずである。
まだ法律が成立したばかりのため、推移を見守るほかないが、社労士=使用者側それも使用者の手先という見方がまだ強いようだ。そういう社労士像からの脱却のためには、士業としての独立性をもち、それが公正性の担保となる。訴訟の場で補佐人として陳述するということは使用者の手先であるわけにはいかない。使用者へ指導するということを本来目的とする士業像がそこにあると考える。したがって、寧ろ、どんどん公けの場に出さなければならない資格であろう。
なお、個別紛争業務においては、労使ともに特定社会保険労務士に依頼するケースも多くなっている。使用者側の手先の社労士だけではない。また、社労士で構成する研修団体においては、労働弁護団所属弁護士も招いているし、ユニオン執行委員も招いている。これも紛争解決業務に参画できるようになってからである。そういう流れへと変化しているわけであるから、社労士=使用者側の手先というガチガチの見解はそろそろ溶いてもらいたいと願うものである。さらに、手先としてではなく、公正な手続き、労務管理の適正のために社労士と契約するという経営者も珍しいことではなくなりつつあるという変化もみられる。そういったわけで、実効的なことは何も出来ないショボい資格に社労士を閉じ込めようとすることは得策ではない。倫理の強化、紛争処理業務の研修整備など課題は無論少なくない。
14年11月18日
社労士に出廷陳述権
議案情報
≪本法律案は、最近における社会保険労務士制度を取り巻く状況の変化に鑑み、厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限を引き上げ、社会保険労務士が裁判所において補佐人となる制度を創設し、及び社員が一人の社会保険労務士法人を設立できることとしようとするものであり、その主な内容は次のとおりである。
一 厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において、特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限を、百二十万円に引き上げる。
二 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。≫
「出廷陳述権」がわかりにくいので調べてみたところ、従前であれば、社労士は裁判所では証人として出るか、裁判所の許可を得て補佐人となるかしかなかったところ、裁判所の許可が不要としたというもの。
なお、「陳述」が何を意味するかはまだ明らかではないが、ただ少なくとも弁護士とのタッグ結成なので、ある程度の法律事務に通暁していないと訴訟を振り回しかねないのは予測される出来事である。現在、社労士会の研修講師は多く弁護士が占めているので、問題は早晩解消される見込みであろう。
また、この「裁判所において」は簡裁、地裁、高裁、最高裁のことなのか明らかではない。本裁判のみならず審判も含んでいるようにも推定できるがこれも不明。
さらに、「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項」とあり、特定社会保険労務士のみが許されている「紛争解決業務」ではないので、社労士なら特定でなくとも適用するものと解釈しえる。
≪本法律案は、最近における社会保険労務士制度を取り巻く状況の変化に鑑み、厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限を引き上げ、社会保険労務士が裁判所において補佐人となる制度を創設し、及び社員が一人の社会保険労務士法人を設立できることとしようとするものであり、その主な内容は次のとおりである。
一 厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において、特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限を、百二十万円に引き上げる。
二 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。≫
「出廷陳述権」がわかりにくいので調べてみたところ、従前であれば、社労士は裁判所では証人として出るか、裁判所の許可を得て補佐人となるかしかなかったところ、裁判所の許可が不要としたというもの。
なお、「陳述」が何を意味するかはまだ明らかではないが、ただ少なくとも弁護士とのタッグ結成なので、ある程度の法律事務に通暁していないと訴訟を振り回しかねないのは予測される出来事である。現在、社労士会の研修講師は多く弁護士が占めているので、問題は早晩解消される見込みであろう。
また、この「裁判所において」は簡裁、地裁、高裁、最高裁のことなのか明らかではない。本裁判のみならず審判も含んでいるようにも推定できるがこれも不明。
さらに、「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項」とあり、特定社会保険労務士のみが許されている「紛争解決業務」ではないので、社労士なら特定でなくとも適用するものと解釈しえる。
14年11月07日
「持ち帰り残業」 「労働量と労働時間」
持ち帰り残業月82時間… 自殺の英会話講師に労災認定
≪大手英会話学校の講師だった女性(当時22)が2011年に自殺したのは、長時間の「持ち帰り残業」が要因だったとして、金沢労働基準監督署が今年5月に労災認定をしたことがわかった。女性は一人暮らしのため自宅の作業量の裏付けが困難だったが、労基署は女性が作った大量の教材などから作業時間を推定する異例の措置をとった。≫
≪労基署の資料や代理人弁護士によると、労基署は、女性が入社後約2カ月間で主に自宅で作成した文字カード1210枚、絵入りカード1175枚の教材に着目。丁寧にイラストなどがあしらわれ、担当者が作ってみたところ、1枚につき29秒~9分26秒かかったという。これをもとに1カ月の持ち帰り残業時間を82時間と推定し、学校での残業を含めると111時間を超えたため、女性が長時間労働でうつ病を発症したとして労災を認定したという。≫
「持ち帰り残業」というのはもともと労働時間の認定において否定的である。それに応ずる義務はなく、拒否できるものというのが基本的な解釈である。
労働時間と賃金のリンクを外すと言った者もいたが、時給制労働者を対象とした発言でなく、賃金規定で給与が決定される正社員を対象とした発言でおかしいと指摘したことは別として、労働時間を基準とすることについては諸説の反応がある。
なかでも、労働時間でなく、労働量で賃金は決定されるべきという意見もある。これも同様に、政府で決定できるものでもなく、またすべきものでもないだろう。なかなか法制度上扱うのが困難な内容の議題である。しかしそれが諦められずに蒸し返されるのは、実労働時間の管理責任を免れたいのと深夜も法定休日も割増賃金が発生するのを法律上なくしたいということにしか取れない。
そういう背景があったので、労働量から労働時間を割り出して、長時間労働による精神疾患を発症したがための労災認定というのはかなり衝撃的であった。
さらに、これまでは裁判所の見解を待ってから、それから行政が認定に動くという精神事案における順序逆転パターンが、今回はない。他の事案同様、労災決定後、他の損害賠償請求を裁判所に求めるという形になろう。長時間労働や執拗に繰り返されるハラスメントについては積極的に認めていくという方針が形になったということである。それ以外の類型についてはあまり変化はないので、早急に行政→司法→行政という遠くて重い道程の改善を切に願うばかりである。
≪大手英会話学校の講師だった女性(当時22)が2011年に自殺したのは、長時間の「持ち帰り残業」が要因だったとして、金沢労働基準監督署が今年5月に労災認定をしたことがわかった。女性は一人暮らしのため自宅の作業量の裏付けが困難だったが、労基署は女性が作った大量の教材などから作業時間を推定する異例の措置をとった。≫
≪労基署の資料や代理人弁護士によると、労基署は、女性が入社後約2カ月間で主に自宅で作成した文字カード1210枚、絵入りカード1175枚の教材に着目。丁寧にイラストなどがあしらわれ、担当者が作ってみたところ、1枚につき29秒~9分26秒かかったという。これをもとに1カ月の持ち帰り残業時間を82時間と推定し、学校での残業を含めると111時間を超えたため、女性が長時間労働でうつ病を発症したとして労災を認定したという。≫
「持ち帰り残業」というのはもともと労働時間の認定において否定的である。それに応ずる義務はなく、拒否できるものというのが基本的な解釈である。
労働時間と賃金のリンクを外すと言った者もいたが、時給制労働者を対象とした発言でなく、賃金規定で給与が決定される正社員を対象とした発言でおかしいと指摘したことは別として、労働時間を基準とすることについては諸説の反応がある。
なかでも、労働時間でなく、労働量で賃金は決定されるべきという意見もある。これも同様に、政府で決定できるものでもなく、またすべきものでもないだろう。なかなか法制度上扱うのが困難な内容の議題である。しかしそれが諦められずに蒸し返されるのは、実労働時間の管理責任を免れたいのと深夜も法定休日も割増賃金が発生するのを法律上なくしたいということにしか取れない。
そういう背景があったので、労働量から労働時間を割り出して、長時間労働による精神疾患を発症したがための労災認定というのはかなり衝撃的であった。
さらに、これまでは裁判所の見解を待ってから、それから行政が認定に動くという精神事案における順序逆転パターンが、今回はない。他の事案同様、労災決定後、他の損害賠償請求を裁判所に求めるという形になろう。長時間労働や執拗に繰り返されるハラスメントについては積極的に認めていくという方針が形になったということである。それ以外の類型についてはあまり変化はないので、早急に行政→司法→行政という遠くて重い道程の改善を切に願うばかりである。
14年11月07日
持ち帰り残業
持ち帰り残業月82時間… 自殺の英会話講師に労災認定
≪大手英会話学校の講師だった女性(当時22)が2011年に自殺したのは、長時間の「持ち帰り残業」が要因だったとして、金沢労働基準監督署が今年5月に労災認定をしたことがわかった。女性は一人暮らしのため自宅の作業量の裏付けが困難だったが、労基署は女性が作った大量の教材などから作業時間を推定する異例の措置をとった。≫
≪労基署の資料や代理人弁護士によると、労基署は、女性が入社後約2カ月間で主に自宅で作成した文字カード1210枚、絵入りカード1175枚の教材に着目。丁寧にイラストなどがあしらわれ、担当者が作ってみたところ、1枚につき29秒~9分26秒かかったという。これをもとに1カ月の持ち帰り残業時間を82時間と推定し、学校での残業を含めると111時間を超えたため、女性が長時間労働でうつ病を発症したとして労災を認定したという。≫
「持ち帰り残業」というのはもともと労働時間の認定において否定的である。それに応ずる義務はなく、拒否できるものというのが基本的な解釈である。
労働時間と賃金のリンクを外すと言った者もいたが、時給制労働者を対象とした発言でなく、賃金規定で給与が決定される正社員を対象とした発言でおかしいと指摘したことは別として、労働時間を基準とすることについては諸説の反応がある。
なかでも、労働時間でなく、労働量で賃金は決定されるべきという意見もある。これも同様に、政府で決定できるものでもなく、またすべきものでもないだろう。なかなか法制度上扱うのが困難な内容の議題である。しかしそれが諦められずに蒸し返されるのは、実労働時間の管理責任を免れたいのと深夜も法定休日も割増賃金が発生するのを法律上なくしたいということにしか取れない。
そういう背景があったので、労働量から労働時間を割り出して、長時間労働による精神疾患を発症したがための労災認定というのはかなり衝撃的であった。
さらに、これまでは裁判所の見解を待ってから、それから行政が認定に動くという精神事案における順序逆転パターンが、今回はない。他の事案同様、労災決定後、他の損害賠償請求を裁判所に求めるという形になろう。長時間労働や執拗に繰り返されるハラスメントについては積極的に認めていくという方針が形になったということである。それ以外の類型についてはあまり変化はないので、早急に行政→司法→行政という遠くて重い道程の改善を切に願うばかりである。
≪大手英会話学校の講師だった女性(当時22)が2011年に自殺したのは、長時間の「持ち帰り残業」が要因だったとして、金沢労働基準監督署が今年5月に労災認定をしたことがわかった。女性は一人暮らしのため自宅の作業量の裏付けが困難だったが、労基署は女性が作った大量の教材などから作業時間を推定する異例の措置をとった。≫
≪労基署の資料や代理人弁護士によると、労基署は、女性が入社後約2カ月間で主に自宅で作成した文字カード1210枚、絵入りカード1175枚の教材に着目。丁寧にイラストなどがあしらわれ、担当者が作ってみたところ、1枚につき29秒~9分26秒かかったという。これをもとに1カ月の持ち帰り残業時間を82時間と推定し、学校での残業を含めると111時間を超えたため、女性が長時間労働でうつ病を発症したとして労災を認定したという。≫
「持ち帰り残業」というのはもともと労働時間の認定において否定的である。それに応ずる義務はなく、拒否できるものというのが基本的な解釈である。
労働時間と賃金のリンクを外すと言った者もいたが、時給制労働者を対象とした発言でなく、賃金規定で給与が決定される正社員を対象とした発言でおかしいと指摘したことは別として、労働時間を基準とすることについては諸説の反応がある。
なかでも、労働時間でなく、労働量で賃金は決定されるべきという意見もある。これも同様に、政府で決定できるものでもなく、またすべきものでもないだろう。なかなか法制度上扱うのが困難な内容の議題である。しかしそれが諦められずに蒸し返されるのは、実労働時間の管理責任を免れたいのと深夜も法定休日も割増賃金が発生するのを法律上なくしたいということにしか取れない。
そういう背景があったので、労働量から労働時間を割り出して、長時間労働による精神疾患を発症したがための労災認定というのはかなり衝撃的であった。
さらに、これまでは裁判所の見解を待ってから、それから行政が認定に動くという精神事案における順序逆転パターンが、今回はない。他の事案同様、労災決定後、他の損害賠償請求を裁判所に求めるという形になろう。長時間労働や執拗に繰り返されるハラスメントについては積極的に認めていくという方針が形になったということである。それ以外の類型についてはあまり変化はないので、早急に行政→司法→行政という遠くて重い道程の改善を切に願うばかりである。