09年07月07日
<年金受給>免田栄さんの資格回復申し立て不受理に
死刑確定後に再審で無罪が確定した免田栄さん(83)=福岡県大牟田市=が「身柄を拘置されたため国民年金の加入機会を失った」として受給資格の回復を申し立てたのに対し、総務省年金記録確認第三者委員会が受理しなかったことが分かった。第三者委員会は「取り扱う事案に該当しない」と説明しているという。
記録の存在自体がないもので、「回復」を目的とする第三者委員会の取り扱い事案ではないということである。少々冷たい表現である。司法省管轄であるならば、訴訟提起を丁寧に教示したかも知れない。国民の問題として、かつてよりも多少横の連繋がみえてきているものの、総務省でも何省でもということにはなかなかならないみたいである。
ところで、社会保険労務士はまだ訴訟代理権を認められるに至っていないものだが、労働相談においては能力担保ができている。その者を別に特定社会保険労務士と呼ぶ。この特定制度は訴訟代理権獲得運動が一段落した際に認められたものだが、この制度において特定社会保険労務士は次の問題に直面する。
・一般の社会保険労務士と異なり、弁護士(司法関係者)が労務管理をするようなことになる。判例水準と中小零細企業の水準とのギャップを実務でどうするかということになる。
・弁護士(司法関係者)と異なり、社会保険労務士の目的は「労使協調による産業育成」である。したがって、双方代理についての法違反観点は独自の解釈を必要とする。また、報酬あるいは手数料については基金なり何らかの分配装置を設けるのが相当であろう。
・訴訟代理権もさることながら、社会保険労務士の目的からすれば、仲裁センターが妥当である。また、この妥当性から特定業務に降り下っていくのが適切である。各ADR機関の対応が基本になるにせよ、弁護士(司法関係者)の謂う「代理」の意味・実務的解釈が結構違うことが明らかになっている。これらにつき、会員内で大議論をする予定である。
・とはいえ、「紛争」=雨が降っていなければならない。紛争前の受諾ほど空振り率の高い契約はないわけであるから、関与する事件は常に雨が降っているものである。「労使協調による産業育成」は程遠く、関与時には司法的な代理性が強い。ただ手段は裁判制度ではないことから、結果として「労使協調による産業育成」となるものである。労使決裂の場合は受諾する事件にはならない。
・以上は現状からみたものである。
記録の存在自体がないもので、「回復」を目的とする第三者委員会の取り扱い事案ではないということである。少々冷たい表現である。司法省管轄であるならば、訴訟提起を丁寧に教示したかも知れない。国民の問題として、かつてよりも多少横の連繋がみえてきているものの、総務省でも何省でもということにはなかなかならないみたいである。
ところで、社会保険労務士はまだ訴訟代理権を認められるに至っていないものだが、労働相談においては能力担保ができている。その者を別に特定社会保険労務士と呼ぶ。この特定制度は訴訟代理権獲得運動が一段落した際に認められたものだが、この制度において特定社会保険労務士は次の問題に直面する。
・一般の社会保険労務士と異なり、弁護士(司法関係者)が労務管理をするようなことになる。判例水準と中小零細企業の水準とのギャップを実務でどうするかということになる。
・弁護士(司法関係者)と異なり、社会保険労務士の目的は「労使協調による産業育成」である。したがって、双方代理についての法違反観点は独自の解釈を必要とする。また、報酬あるいは手数料については基金なり何らかの分配装置を設けるのが相当であろう。
・訴訟代理権もさることながら、社会保険労務士の目的からすれば、仲裁センターが妥当である。また、この妥当性から特定業務に降り下っていくのが適切である。各ADR機関の対応が基本になるにせよ、弁護士(司法関係者)の謂う「代理」の意味・実務的解釈が結構違うことが明らかになっている。これらにつき、会員内で大議論をする予定である。
・とはいえ、「紛争」=雨が降っていなければならない。紛争前の受諾ほど空振り率の高い契約はないわけであるから、関与する事件は常に雨が降っているものである。「労使協調による産業育成」は程遠く、関与時には司法的な代理性が強い。ただ手段は裁判制度ではないことから、結果として「労使協調による産業育成」となるものである。労使決裂の場合は受諾する事件にはならない。
・以上は現状からみたものである。
09年05月16日
厚生労働省の分割論
厚生労働省の分割
≪麻生総理大臣は、15日夜に開かれた「安心社会実現会議」で、社会情勢の変化などを踏まえ今の厚生労働省を医療・介護・年金などを所管する「社会保障省」と、雇用対策や内閣府が担当している少子化対策などを所管する「国民生活省」に分割すべきだという考えを示しました。≫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
≪2001年の統合で所管業務が膨大となっており舛添大臣自身が医療年金労働の三省への分割を提案している。≫
統合してまだ10年弱。スケールメリットが活かせないのかということは別にして、年金記録問題そして世界同時不況による雇用問題(従来からの個別労使紛争も含む)、生活保護対象急増とが連なり、最も重要な点は国民の数だけ(年金記録はその数倍のキャパシティがある)つまり厖大でかつ個々にデリケートな管理業務に正面から取組む体制ができつつあるということである。ただ、それではもたない。モレた年金記録による遡及支払いは人員等強化されたがやはりすぐというわけにはいかない。
このようなことが考えられる背景には「年金」「労働」「医療」各方面において、それぞれに力を投入しきれていない状態であるようである。確かに範囲が広い。かつての内務省、その内務省から厚生省が独立した経緯だったように思う。
また内閣府との重複性も気になるところである。
また前のように省を分離するというのではあまり意味がなさそうである。
年金制度改正ではよく「場当たり的」という言葉が使われる。問題は厚生労働省だけではなくて、それを含める現在の省構成や国家機能が本当のところ見直されるべきなのではないかというのが「正論」といえる。したがってやはり「場当たり的」となる。ゼロからの発想は前途多難である。
ただし、ゼロから発想しつつ、「場当たり的」に修正していくというのは悪くはない。
≪麻生総理大臣は、15日夜に開かれた「安心社会実現会議」で、社会情勢の変化などを踏まえ今の厚生労働省を医療・介護・年金などを所管する「社会保障省」と、雇用対策や内閣府が担当している少子化対策などを所管する「国民生活省」に分割すべきだという考えを示しました。≫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
≪2001年の統合で所管業務が膨大となっており舛添大臣自身が医療年金労働の三省への分割を提案している。≫
統合してまだ10年弱。スケールメリットが活かせないのかということは別にして、年金記録問題そして世界同時不況による雇用問題(従来からの個別労使紛争も含む)、生活保護対象急増とが連なり、最も重要な点は国民の数だけ(年金記録はその数倍のキャパシティがある)つまり厖大でかつ個々にデリケートな管理業務に正面から取組む体制ができつつあるということである。ただ、それではもたない。モレた年金記録による遡及支払いは人員等強化されたがやはりすぐというわけにはいかない。
このようなことが考えられる背景には「年金」「労働」「医療」各方面において、それぞれに力を投入しきれていない状態であるようである。確かに範囲が広い。かつての内務省、その内務省から厚生省が独立した経緯だったように思う。
また内閣府との重複性も気になるところである。
また前のように省を分離するというのではあまり意味がなさそうである。
年金制度改正ではよく「場当たり的」という言葉が使われる。問題は厚生労働省だけではなくて、それを含める現在の省構成や国家機能が本当のところ見直されるべきなのではないかというのが「正論」といえる。したがってやはり「場当たり的」となる。ゼロからの発想は前途多難である。
ただし、ゼロから発想しつつ、「場当たり的」に修正していくというのは悪くはない。
09年05月13日
研修会のご案内
謹啓 時下ますます、ご清祥のこととお喜び申し上げます。
平素は、淀川労務研究会の研修に、ご支援ご協力をいただき厚く御礼申し上げます。
さて、平成21年度第1回の研修会を下記のとおり開催いたしますので、皆様多数ご参加頂けますようよろしくお願い致します 敬具
研修会のご案内
1. テーマ 「労務管理 − アパレル業・貨物運送業」
〈内容〉 シーズンで予定を組んでいる業界の労務管理はどのようなものか、運送業の事務員と運転手の労務管理(特に労働時間管理)との関係はどのようなものか、これらの業界にはどのような労務管理が望ましいのか、など業界通の先生方にお話を賜ります。
2. 講 師 中辻 幸男 氏 高木 朋行 氏
3. 日 時 平成21年5月22日(金)
受付 午後6時00分
開始 午後6時30分
終了 午後8時30分ごろ (終了後、懇親会を予定しています。)
4. 場 所 大阪府社会保険労務士会館 401号室
大阪市北区天満2−1−30
TEL 06−4800−8188
5. 会 費 年会費 9,000円
当日現金でお支払、または下記の口座へのお振込お願い致します。(略)
6.以降の予定 6月20日(土) 午後1時30分〜午後4時30分頃
「メンタルヘルスケアー − 管理職教育の基本と実践」
講師 安元 寛子 氏(心理カウンセラー・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント)
7.出欠のご返事は、資料準備の都合上 5月15日(金)必着でお願いします。
欠席の場合で、資料が欲しい方は事前にご申出下さい。 (期日厳守)
※ 出席のご連絡をいただいて、やむを得ず、当日欠席される場合は、
出席される会員のどなたかに、ご伝言をお願いします。
淀川労務研究会では、会員を募集しています。業務に必要とされる色々な知識・手法等を習得・訓練等にお役立てください。
平素は、淀川労務研究会の研修に、ご支援ご協力をいただき厚く御礼申し上げます。
さて、平成21年度第1回の研修会を下記のとおり開催いたしますので、皆様多数ご参加頂けますようよろしくお願い致します 敬具
研修会のご案内
1. テーマ 「労務管理 − アパレル業・貨物運送業」
〈内容〉 シーズンで予定を組んでいる業界の労務管理はどのようなものか、運送業の事務員と運転手の労務管理(特に労働時間管理)との関係はどのようなものか、これらの業界にはどのような労務管理が望ましいのか、など業界通の先生方にお話を賜ります。
2. 講 師 中辻 幸男 氏 高木 朋行 氏
3. 日 時 平成21年5月22日(金)
受付 午後6時00分
開始 午後6時30分
終了 午後8時30分ごろ (終了後、懇親会を予定しています。)
4. 場 所 大阪府社会保険労務士会館 401号室
大阪市北区天満2−1−30
TEL 06−4800−8188
5. 会 費 年会費 9,000円
当日現金でお支払、または下記の口座へのお振込お願い致します。(略)
6.以降の予定 6月20日(土) 午後1時30分〜午後4時30分頃
「メンタルヘルスケアー − 管理職教育の基本と実践」
講師 安元 寛子 氏(心理カウンセラー・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント)
7.出欠のご返事は、資料準備の都合上 5月15日(金)必着でお願いします。
欠席の場合で、資料が欲しい方は事前にご申出下さい。 (期日厳守)
※ 出席のご連絡をいただいて、やむを得ず、当日欠席される場合は、
出席される会員のどなたかに、ご伝言をお願いします。
淀川労務研究会では、会員を募集しています。業務に必要とされる色々な知識・手法等を習得・訓練等にお役立てください。
09年04月25日
年金加算法、利息軽減法が成立
年金加算法、利息軽減法が成立
≪加算金法案は(略)過去5年を超える未払い期間を対象に物価上昇分を上乗せして支給する。
特別便対応で、クレームに含まれていた事案であった。
《利息軽減法案は厚生年金、健康保険料、雇用保険料などの延滞利息を現行の年14・6%から引き下げ、国税の延滞利息(今年は年4・5%)並みにする。景気悪化で資金繰りに苦しむ中小企業からの「利息が高すぎる」との訴えに配慮した。来年1月1日に施行される。》
この効果はどうか。
資金繰りに苦しむ企業は、現行の年14・6%超の金利で金融機関から借り入れていて、したがって高い金利の方から支払う。だから年14・6%では後回しとなる。
それをさらに軽減するのであるから―。国税並みにしたのはよいが、税務署ほどには企業の存続を左右するほどの行動はとらないというのがこれまでの経営者のイメージ。ただし、税金分野と異なり、労使紛争となり民事事件に直面するが―。
定期便についてはまだ件数が少ないが、特別便ほどの混乱などは無い模様である。特別便にての記録補正はなお継続して取り掛かっており、その上で詳しい定期便の内容とくるので、年金記録管理についての国民の不信はかなり取り除かれたものと中途的に感想を述べる。後は、本質的な問題である。制度のこと、共済とのことなど‥。
年金制度について、国民の歩調をかなり整えられたことは大きな収穫である。ただ、もう少し早ければ、支給開始年齢の繰り下げなどストップをかけられていたのではないかと思ったりする。これからは年金改正が安易に国会をスルーするということがなくなりそうである。ここからである。
(時事)
草薙剛が公然わいせつで逮捕されたと聞き、驚いた。「公然わいせつ」というと、公衆の面前で女性に辱めを与えたというイメージだったので驚いたのだが、実際は公園で酔っ払いが裸で騒いでいたということである。それならまぁわかるかなと。アル中なのかどうかわからないが、ヤクをやっている者の症状と似ているため家宅捜査までしている。ハイな性格も時には厄介である。
アメリカではプライベートの在り方までも含めてのタレント契約と聞く。たぶん破格値の契約だけだと思うが、日本ではそれを薄めた契約だと考えておいた方がいい。日本流儀で、それは決して記載されていない。
≪加算金法案は(略)過去5年を超える未払い期間を対象に物価上昇分を上乗せして支給する。
特別便対応で、クレームに含まれていた事案であった。
《利息軽減法案は厚生年金、健康保険料、雇用保険料などの延滞利息を現行の年14・6%から引き下げ、国税の延滞利息(今年は年4・5%)並みにする。景気悪化で資金繰りに苦しむ中小企業からの「利息が高すぎる」との訴えに配慮した。来年1月1日に施行される。》
この効果はどうか。
資金繰りに苦しむ企業は、現行の年14・6%超の金利で金融機関から借り入れていて、したがって高い金利の方から支払う。だから年14・6%では後回しとなる。
それをさらに軽減するのであるから―。国税並みにしたのはよいが、税務署ほどには企業の存続を左右するほどの行動はとらないというのがこれまでの経営者のイメージ。ただし、税金分野と異なり、労使紛争となり民事事件に直面するが―。
定期便についてはまだ件数が少ないが、特別便ほどの混乱などは無い模様である。特別便にての記録補正はなお継続して取り掛かっており、その上で詳しい定期便の内容とくるので、年金記録管理についての国民の不信はかなり取り除かれたものと中途的に感想を述べる。後は、本質的な問題である。制度のこと、共済とのことなど‥。
年金制度について、国民の歩調をかなり整えられたことは大きな収穫である。ただ、もう少し早ければ、支給開始年齢の繰り下げなどストップをかけられていたのではないかと思ったりする。これからは年金改正が安易に国会をスルーするということがなくなりそうである。ここからである。
(時事)
草薙剛が公然わいせつで逮捕されたと聞き、驚いた。「公然わいせつ」というと、公衆の面前で女性に辱めを与えたというイメージだったので驚いたのだが、実際は公園で酔っ払いが裸で騒いでいたということである。それならまぁわかるかなと。アル中なのかどうかわからないが、ヤクをやっている者の症状と似ているため家宅捜査までしている。ハイな性格も時には厄介である。
アメリカではプライベートの在り方までも含めてのタレント契約と聞く。たぶん破格値の契約だけだと思うが、日本ではそれを薄めた契約だと考えておいた方がいい。日本流儀で、それは決して記載されていない。
09年02月17日
経過報告云々
弁護士の増員問題については「質の低下」をもたらすという批判がある。ただし、これは一般的には解釈できない。一般的な解釈とは、金に困った弁護士が法違反を助長し、信用が下落するというものだが、そういう想像は先走りというものである。
弁護士業界は従来ボス弁イソ弁という秩序を形成し、教え教えられ引き継がれることによって弁護士業務の秩序を形成してきたものである。それが、引き受け事務所がなく、一人で活路を開いていくことや自分で仕事のやり方を実践で覚えていく弁護士が増えていくと、もちろん裁判実務がギクシャクもする(これが一般的な意味での質の低下ともいえる)し、第一に業界のこれまでの秩序が綻ぶのである。
裁判員制度など現代の国民の参政権拡張に応じる司法制度が展開されていくのであるから、多少は微調整していくことになろう。
社会保険労務士の場合、昔は「縄張り」意識があったようであるが、もともと弁護士のような世界秩序はない。そのため、業務の教え教えられ引き継がれることの役割は主に研修や支部行事に依存することになる。たいていの弁護士は「社会保険労務士は勉強をよくする」と皮肉もまじえて評するのであるが、ボス弁のような存在の埋め合わせとして必要なのである。それに、社会保険労務士の携わる法事情の変化は毎年夏の台風のようなものである。
この研修の内容は、今はかなり知恵が絞られている。
ところが、あっせん代理人の研修には二の足を踏んでいる。これは養成研修というものがない。特別研修というものがあるが、それは裁判所での訴訟代理の研修内容である。あっせん対応の調停型代理人という研修教本は完成していない。したがって、各個人の能力に負うということになり、平準化されていない。冒頭での弁護士会が言うところの「質の低下」から始まっているということである。
これまで民事調停や裁判所和解例などの教本、社会保険労務士のなかからのあっせん代理人のマニュアル等の出版物がある。そしてまた、産業カウンセラーの手法が結構合うのではなかろうかと思っているところである。これが活用できるのならば、この養成内容はしっかりしているので、その効果が大きい。
あっせんについては労働問題における訴訟が少ない国民性から出たものであり、その件数はやはりこれだけの問題が職場に存在してたかという結果になっている。ただ、特定社会保険労務士の養成の問題を含め、まだ社会保険労務士が積極的に手掛けるようにはなっていない。それどころか、満ち潮が引き出したような感じもしなくはない。それは多く、あっせんでの和解例が今ひとつ十分でないという印象にある。軽い気持ちでと間口を広くとったため、不充分な展開の結果ともとれる。労働局(紛争調整委員会)よりも労働委員会の方が期待値は多目のようだが、まだ浸透しているとは言えない。裁判所での労働審判は履行段階がネックである。訴訟同様に、法廷を出れば、裁判官さえいなくなれば、という国民性がある。
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弁護士業界は従来ボス弁イソ弁という秩序を形成し、教え教えられ引き継がれることによって弁護士業務の秩序を形成してきたものである。それが、引き受け事務所がなく、一人で活路を開いていくことや自分で仕事のやり方を実践で覚えていく弁護士が増えていくと、もちろん裁判実務がギクシャクもする(これが一般的な意味での質の低下ともいえる)し、第一に業界のこれまでの秩序が綻ぶのである。
裁判員制度など現代の国民の参政権拡張に応じる司法制度が展開されていくのであるから、多少は微調整していくことになろう。
社会保険労務士の場合、昔は「縄張り」意識があったようであるが、もともと弁護士のような世界秩序はない。そのため、業務の教え教えられ引き継がれることの役割は主に研修や支部行事に依存することになる。たいていの弁護士は「社会保険労務士は勉強をよくする」と皮肉もまじえて評するのであるが、ボス弁のような存在の埋め合わせとして必要なのである。それに、社会保険労務士の携わる法事情の変化は毎年夏の台風のようなものである。
この研修の内容は、今はかなり知恵が絞られている。
ところが、あっせん代理人の研修には二の足を踏んでいる。これは養成研修というものがない。特別研修というものがあるが、それは裁判所での訴訟代理の研修内容である。あっせん対応の調停型代理人という研修教本は完成していない。したがって、各個人の能力に負うということになり、平準化されていない。冒頭での弁護士会が言うところの「質の低下」から始まっているということである。
これまで民事調停や裁判所和解例などの教本、社会保険労務士のなかからのあっせん代理人のマニュアル等の出版物がある。そしてまた、産業カウンセラーの手法が結構合うのではなかろうかと思っているところである。これが活用できるのならば、この養成内容はしっかりしているので、その効果が大きい。
あっせんについては労働問題における訴訟が少ない国民性から出たものであり、その件数はやはりこれだけの問題が職場に存在してたかという結果になっている。ただ、特定社会保険労務士の養成の問題を含め、まだ社会保険労務士が積極的に手掛けるようにはなっていない。それどころか、満ち潮が引き出したような感じもしなくはない。それは多く、あっせんでの和解例が今ひとつ十分でないという印象にある。軽い気持ちでと間口を広くとったため、不充分な展開の結果ともとれる。労働局(紛争調整委員会)よりも労働委員会の方が期待値は多目のようだが、まだ浸透しているとは言えない。裁判所での労働審判は履行段階がネックである。訴訟同様に、法廷を出れば、裁判官さえいなくなれば、という国民性がある。