09年02月13日
研修会のお知らせ
謹啓 時下ますます、ご清祥のこととお喜び申し上げます。
平素は、淀川労務研究会の研修に、ご支援ご協力をいただき厚く御礼申し上げます。
さて、2月の研修会を下記のとおり開催いたしますので、多数ご参加くださいますようお願い致します。 敬具
研修会のご案内
1. テーマ 「産業カウンセラーとは」シリーズ1
〈内容〉 労使紛争における社労士に求められている役割は、和解交渉にウェイトが置かれていることから、調停人的な色合いの濃い代理行為です。法解釈能力等においては社労士誰もが一定の高水準を保持している現在、必要な調停的紛争解決能力を伸ばすには、産業カウンセラーに学ぶべきものが多く、また労務管理にも役立つのではないでしょうか? 今回は協会の方をお招きし、その事業内容と動向についてご講義いただきます。
なお、シリーズ2として、6月には、活躍されている産業カウンセラーのお話を賜る予定です。
2. 講 師 上 山 寛 光 氏 (日本カウンセラー協会関西支部 支部長)
3. 日 時 平成21年2月24日(火)午後6時30分〜午後8時30分頃
(受付 午後6時00分から)
4. 場 所 大阪府社会保険労務士会館 401号室
大阪市北区天満2−1−30
※ 淀川労務研究会では新規会員を募集しています。
平素は、淀川労務研究会の研修に、ご支援ご協力をいただき厚く御礼申し上げます。
さて、2月の研修会を下記のとおり開催いたしますので、多数ご参加くださいますようお願い致します。 敬具
研修会のご案内
1. テーマ 「産業カウンセラーとは」シリーズ1
〈内容〉 労使紛争における社労士に求められている役割は、和解交渉にウェイトが置かれていることから、調停人的な色合いの濃い代理行為です。法解釈能力等においては社労士誰もが一定の高水準を保持している現在、必要な調停的紛争解決能力を伸ばすには、産業カウンセラーに学ぶべきものが多く、また労務管理にも役立つのではないでしょうか? 今回は協会の方をお招きし、その事業内容と動向についてご講義いただきます。
なお、シリーズ2として、6月には、活躍されている産業カウンセラーのお話を賜る予定です。
2. 講 師 上 山 寛 光 氏 (日本カウンセラー協会関西支部 支部長)
3. 日 時 平成21年2月24日(火)午後6時30分〜午後8時30分頃
(受付 午後6時00分から)
4. 場 所 大阪府社会保険労務士会館 401号室
大阪市北区天満2−1−30
※ 淀川労務研究会では新規会員を募集しています。
09年01月11日
「派遣切り」議論の問題
テレビ番組を何気なく聞いていると、「派遣切り」特集が多くなっている。もはや労働問題とはいえず、政治問題として扱われている。しかし、労働問題としての適切な解釈を経ているのかというと、そうも思えない。
まず労働問題としては、次の記事による解決が適切である。
派遣解雇で和解解決金 期間満了までの賃金も支払う
派遣労働者の雇用主は派遣会社であるから、派遣先(とりあえずメーカーとする)が派遣会社との「派遣契約」を解除した場合には、派遣会社が期間満了までの雇用責任を果さなければならない。
「派遣契約」は業務契約であり、いつでも解除することができる。解除する場合、相手への損害賠償が発生する。したがって、契約解除により派遣会社に対して損害賠償しなければならない。
では、派遣会社は損害賠償請求を派遣先に対して行使しているのかどうか。少なくとも、契約解除後の派遣会社が負担すべき賃金は発生しているはずなのだ。
こうした労働問題における解決に関して、テレビでは今まで聞いたがない。
ということは、やはりテレビでのコメンテイター等は「派遣契約」として認めておらず、あからさまな労働者供給事業としてハナから議論していることになる。あるいは、派遣会社をハナから否認していることになる。
そこでメーカーの国際競争力の問題であるとかいう議論に一足飛びに走ってしまっている。
「派遣契約」を無視した議論の展開先に、派遣法改正が出ているようなのだが、それは空中楼閣に等しい。これではいくら改正したところで、実態は同じである。
派遣会社の法人格を否認したままでいいのか。トンネル会社のままでいいのか。
派遣会社を安全地帯に置いたままでいこうとしている動きがあるのかも知れないが、あまりにも雇用主としての影が薄すぎるというものである。あるいは、ハナから責任を取る能力に欠けるものとして議論の対象にしていないかである。この辺をテレビ報道で聴きたいと願う。
なお、派遣契約解除後は、一般に近いかたちでの解雇原則の適用となる。これへの処方規定を具体的に労働契約法等の改正で明記しておくべきなのだろう。
まず労働問題としては、次の記事による解決が適切である。
派遣解雇で和解解決金 期間満了までの賃金も支払う
派遣労働者の雇用主は派遣会社であるから、派遣先(とりあえずメーカーとする)が派遣会社との「派遣契約」を解除した場合には、派遣会社が期間満了までの雇用責任を果さなければならない。
「派遣契約」は業務契約であり、いつでも解除することができる。解除する場合、相手への損害賠償が発生する。したがって、契約解除により派遣会社に対して損害賠償しなければならない。
では、派遣会社は損害賠償請求を派遣先に対して行使しているのかどうか。少なくとも、契約解除後の派遣会社が負担すべき賃金は発生しているはずなのだ。
こうした労働問題における解決に関して、テレビでは今まで聞いたがない。
ということは、やはりテレビでのコメンテイター等は「派遣契約」として認めておらず、あからさまな労働者供給事業としてハナから議論していることになる。あるいは、派遣会社をハナから否認していることになる。
そこでメーカーの国際競争力の問題であるとかいう議論に一足飛びに走ってしまっている。
「派遣契約」を無視した議論の展開先に、派遣法改正が出ているようなのだが、それは空中楼閣に等しい。これではいくら改正したところで、実態は同じである。
派遣会社の法人格を否認したままでいいのか。トンネル会社のままでいいのか。
派遣会社を安全地帯に置いたままでいこうとしている動きがあるのかも知れないが、あまりにも雇用主としての影が薄すぎるというものである。あるいは、ハナから責任を取る能力に欠けるものとして議論の対象にしていないかである。この辺をテレビ報道で聴きたいと願う。
なお、派遣契約解除後は、一般に近いかたちでの解雇原則の適用となる。これへの処方規定を具体的に労働契約法等の改正で明記しておくべきなのだろう。
08年12月29日
研修内容抜粋
1、きっかけ なぜ社会保険労務士が「クレーム」対応に着目するようになったか
(年金トラブル)
・「ねんきん特別便」の対応
・社会保険事務所をとりまく状況
→「正確に説明する」「よく聞く」「あいまいな対応はしない」「平身低頭」
(マスコミが最大のクレーマーなのだが、従来の社会保険事務所職員の対応が原因その他制度やシステムに関するものが要因)
2、評価について クレーム対応については、組織が求める総合的な人材評価要素が
詰まっている。
・クレーム対応ができる人を評価するとすれば、以下の要素になるだろう。
「胆力」「忍耐力」
「総合知識力」担当業務並びにその業務を包括する全体業務の把握、実務処理の把握
「遂行力」説明通りの結果を出すことができる
「人心力」「包容力」怒気を鎮め、翻心させることができる(クレーマーから上得意へ)
「察知力」「手際力」相手の目的を見抜く(クレーマーに変身させない)
「経験」「慣れ」
→いずれをとっても数値化に馴染まないためか、人事制度化がほとんどされない。
○クレーマーの「定義」
・イチャモンをつける人
・理不尽な要求をする人
・無理難題を言って楽しむ人
(私を成長させてくれた人)
○クレーマーの「特徴」
・通常では苦情と言えないものを、大げさに取り上げる
・一つの事に対して、複数の苦情を訴える
・過去の苦情被害を持ち出し、自分を優位に置く
・「苦情ゲーム」として愉しむ
・恐喝には至らないが、対応が困るように脅しを仕向けてくる
・関連先全体に苦情として申し入れをしてくる
・現場で話をすれば解決できることを、本部や関連各所に申し入れる
・一度は解決したと思ったところ、また来る。次に来ない保証はない
・家族など公認の者もいる
・相手が困るのを面白がる「愉快犯型」と、結果として金品を求める「要求型」がある
○クレーマーの種類
・たかり、恐喝
・愉快犯、ストレス解消、優越感
・「リタメイト」‥昔を懐かしむだけのクレーマー(元管理職で、退職後もかつて部下にしていたように、対象を叱ったり、指導しようとしたり、無理難題を吹っかける。クレーム先企業の管理に問題があると指摘し、教育係を要望してくる。他、懲戒処分や人事処分などを要求してくる。)
・話し相手探し(何を要求しているか不明)
○「クレーム」各種
・”苦情”=不満 →要望 (真摯に受け止める必要アリ)
→諦め (同上)
・クレーム →補償要求 (営業妨害かどうかの判断が必要)
○”苦情”対応対策の意義
・外部からの業務改善提案として(新商品開発などに結びつくことが多い)
・取引先に安全と安心と信頼の認識を与える
・商品以外での付加価値となる
4、クレーム処理組織体制
・同業者情報網(照会)
・現場担当者へのヒアリング
・二人対応体制
・対応責任者にはその件に関しトップと同じ権限を与える
・苦情処理シートや報告書のファイリング
・相談用紙など用意しておく
・ベテランの者を責任者に据える
・対応会議にて全員同じ方針で臨む
・検証会議には開発部などその件に関連する部署責任者も参加する
・保安員を置く
5、時代背景
・社会現象化‥ネット掲示板によるメーカー等企業批判の増大、日常化
・大企業トップの謝罪の増加‥不正取引等が水面上へ
・社会全体のコミュニケーション不全→ボキャブラリ不足、相手との摩擦を小さくするような話し方や受け応えが下手
・リスクマネジメントの欠落‥情報の蓄積や共有がない、リスクを回避しようとする姿勢がない(消費者が危険を負担するという売り手市場意識の名残り)
6、クレーマーのターゲット
・「安全苦情」(反撃の心配がなく、安全地帯でクレームがつけられる)
→公務員、百貨店、医者、学校、鉄道、タクシー
7、コメント
・「苦情を言うのも苦痛」なはずで、嫌なことに巻き込まれたという意識に気付いて対応することが大事(クレーマーにならざるを得ない事情など)。したがって、原状回復だけでは解決しない。
(年金トラブル)
・「ねんきん特別便」の対応
・社会保険事務所をとりまく状況
→「正確に説明する」「よく聞く」「あいまいな対応はしない」「平身低頭」
(マスコミが最大のクレーマーなのだが、従来の社会保険事務所職員の対応が原因その他制度やシステムに関するものが要因)
2、評価について クレーム対応については、組織が求める総合的な人材評価要素が
詰まっている。
・クレーム対応ができる人を評価するとすれば、以下の要素になるだろう。
「胆力」「忍耐力」
「総合知識力」担当業務並びにその業務を包括する全体業務の把握、実務処理の把握
「遂行力」説明通りの結果を出すことができる
「人心力」「包容力」怒気を鎮め、翻心させることができる(クレーマーから上得意へ)
「察知力」「手際力」相手の目的を見抜く(クレーマーに変身させない)
「経験」「慣れ」
→いずれをとっても数値化に馴染まないためか、人事制度化がほとんどされない。
○クレーマーの「定義」
・イチャモンをつける人
・理不尽な要求をする人
・無理難題を言って楽しむ人
(私を成長させてくれた人)
○クレーマーの「特徴」
・通常では苦情と言えないものを、大げさに取り上げる
・一つの事に対して、複数の苦情を訴える
・過去の苦情被害を持ち出し、自分を優位に置く
・「苦情ゲーム」として愉しむ
・恐喝には至らないが、対応が困るように脅しを仕向けてくる
・関連先全体に苦情として申し入れをしてくる
・現場で話をすれば解決できることを、本部や関連各所に申し入れる
・一度は解決したと思ったところ、また来る。次に来ない保証はない
・家族など公認の者もいる
・相手が困るのを面白がる「愉快犯型」と、結果として金品を求める「要求型」がある
○クレーマーの種類
・たかり、恐喝
・愉快犯、ストレス解消、優越感
・「リタメイト」‥昔を懐かしむだけのクレーマー(元管理職で、退職後もかつて部下にしていたように、対象を叱ったり、指導しようとしたり、無理難題を吹っかける。クレーム先企業の管理に問題があると指摘し、教育係を要望してくる。他、懲戒処分や人事処分などを要求してくる。)
・話し相手探し(何を要求しているか不明)
○「クレーム」各種
・”苦情”=不満 →要望 (真摯に受け止める必要アリ)
→諦め (同上)
・クレーム →補償要求 (営業妨害かどうかの判断が必要)
○”苦情”対応対策の意義
・外部からの業務改善提案として(新商品開発などに結びつくことが多い)
・取引先に安全と安心と信頼の認識を与える
・商品以外での付加価値となる
4、クレーム処理組織体制
・同業者情報網(照会)
・現場担当者へのヒアリング
・二人対応体制
・対応責任者にはその件に関しトップと同じ権限を与える
・苦情処理シートや報告書のファイリング
・相談用紙など用意しておく
・ベテランの者を責任者に据える
・対応会議にて全員同じ方針で臨む
・検証会議には開発部などその件に関連する部署責任者も参加する
・保安員を置く
5、時代背景
・社会現象化‥ネット掲示板によるメーカー等企業批判の増大、日常化
・大企業トップの謝罪の増加‥不正取引等が水面上へ
・社会全体のコミュニケーション不全→ボキャブラリ不足、相手との摩擦を小さくするような話し方や受け応えが下手
・リスクマネジメントの欠落‥情報の蓄積や共有がない、リスクを回避しようとする姿勢がない(消費者が危険を負担するという売り手市場意識の名残り)
6、クレーマーのターゲット
・「安全苦情」(反撃の心配がなく、安全地帯でクレームがつけられる)
→公務員、百貨店、医者、学校、鉄道、タクシー
7、コメント
・「苦情を言うのも苦痛」なはずで、嫌なことに巻き込まれたという意識に気付いて対応することが大事(クレーマーにならざるを得ない事情など)。したがって、原状回復だけでは解決しない。
08年12月05日
研究会のお知らせ
人間・労使関係自主研究会
開催のお知らせ
謹啓 時下ますます、ご清祥のこととお喜び申し上げます。
いよいよ本格的に冷え込んでまいりますが、今年最後の研究テーマは「クレーム」です。個別労使紛争も団交もまた「クレーム」に関する問題のひとつと捉えてください。したがいまして、今回は少し離れたテーマに感ずるでしょうが、「クレーム」についての対応力をつけていくことで、個別労使紛争や団交についての対応力がつくと思われます。下記のとおり開催いたしますので、皆様多数ご参加頂けますようよろしくお願い致します。 敬具
記
日 時 平成20年12月19日(金) 午後6時30分〜午後9時00分
場 所 大阪府社会保険労務士会館 401号室
進 行 山口 佳久氏(北部支部)並びに人間労使関係自主研究会幹事
テーマ 「クレーム(紛争)」に対する場合の対応力のために
≪参考本 『となりのクレーマー』『ぼくが最後のクレーマー』
いずれも関根眞一著・中公新書ラクレ≫
参加費 1,000円
問い合わせ 代表幹事 神谷 一郎 ・ 携帯090−9043−5099
電話/FAX 0729−55−8252 ・ メールi-e-jinya@s9.dion.ne.jp
※ 参加可能者は大阪の自主研究会会員のみです。
開催のお知らせ
謹啓 時下ますます、ご清祥のこととお喜び申し上げます。
いよいよ本格的に冷え込んでまいりますが、今年最後の研究テーマは「クレーム」です。個別労使紛争も団交もまた「クレーム」に関する問題のひとつと捉えてください。したがいまして、今回は少し離れたテーマに感ずるでしょうが、「クレーム」についての対応力をつけていくことで、個別労使紛争や団交についての対応力がつくと思われます。下記のとおり開催いたしますので、皆様多数ご参加頂けますようよろしくお願い致します。 敬具
記
日 時 平成20年12月19日(金) 午後6時30分〜午後9時00分
場 所 大阪府社会保険労務士会館 401号室
進 行 山口 佳久氏(北部支部)並びに人間労使関係自主研究会幹事
テーマ 「クレーム(紛争)」に対する場合の対応力のために
≪参考本 『となりのクレーマー』『ぼくが最後のクレーマー』
いずれも関根眞一著・中公新書ラクレ≫
参加費 1,000円
問い合わせ 代表幹事 神谷 一郎 ・ 携帯090−9043−5099
電話/FAX 0729−55−8252 ・ メールi-e-jinya@s9.dion.ne.jp
※ 参加可能者は大阪の自主研究会会員のみです。
08年11月20日
元厚生次官ら連続殺傷事件 で
【元厚生次官ら連続殺傷】上司と部下…共に取り組んだ年金制度改革
≪昭和59年6月から60年8月までの約14カ月間は吉原さんが年金局長を、山口さんが年金課長を務めていた。
上司と部下の関係にあった2人が取り組んだのが、当時すでに目前に迫っていた高齢化社会の到来を控え、年金制度を将来にわたって安定的に運用していくための大改革だ。≫
≪主な改正点は(1)それまでバラバラに縦割りで運用されていた「国民年金」「厚生年金」などの土台部分を共通の基盤とする「基礎年金」制度の導入、(2)「国民皆年金」を実現させるために任意加入だった専業主婦を国民年金に加入させる、(3)標準的なサラリーマン世帯の年金受給額を、現役世代の69%程度になるよう保険料を段階的に引き上げていく−といったものだった。≫
この事件の真相については当然ながら私はわからない。このお二人の名前すら知らなかった。
ここ数年、社会保険事務所では色々と年金クレームが過激化しているという印象がある。誠実に対処すべきクレームであることが多いが、タクシー強盗や飲酒ひき逃げ事件など治安が顕著に悪化している国内事情である。まして年金問題はこれらとは性質上異なる。どこに文句をいっていいのかわからないという性質で、わからない人が社会保険事務所に因縁をつけてくる。日本の歴史をみればそのうち暗殺が起きるかもと思っていたところである。
わからないのが当然で、それは法律で決まったことということになる。では当時賛成票を投じた国会議員か、政党か、法案を提示した厚生労働省の役人かということになってくる。
今回の事件の真相は不明だが、一般的には「年金テロ」といわれている。国会議員等がこれを「民主主義への暴挙」と言っている。しかし、社会保険事務所で耳にするのは、「教えてくれなかった」「通知がなかった」とかいうものが多い。したがって、やはり本来の民主主義国家的には実際のところ法律ができていないというべきだろう。まして年金法は特に重要ながら難解であるため、国民のレベル管理が困難である。そもそも義務教育においてこうした生活関連法規に触れ始めたのがつい最近の話である。どういう国民を作りたいというイメージがこれまでなかったわけである。生活関連法規のない教育制度では真面目に勉強する必要も確かにないわけで、残念ながら脱落者の方が社会で良くも悪しくも活躍しているというのが実態である。社会人では稚拙な議論や行動が横行してしまうわけである。
とはいえ、社会保険関係の改正は国民の成熟を待てずに、待ったなしの段階にある。戦前では経済統制のため、隣組を活用した配給制度により国民を迅速に管理できたが、もはや回覧板や広報などの内容を周知する前提がたたない。乱世の時代というには早すぎるが、現行の国家デザインは綻び過ぎている。
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≪昭和59年6月から60年8月までの約14カ月間は吉原さんが年金局長を、山口さんが年金課長を務めていた。
上司と部下の関係にあった2人が取り組んだのが、当時すでに目前に迫っていた高齢化社会の到来を控え、年金制度を将来にわたって安定的に運用していくための大改革だ。≫
≪主な改正点は(1)それまでバラバラに縦割りで運用されていた「国民年金」「厚生年金」などの土台部分を共通の基盤とする「基礎年金」制度の導入、(2)「国民皆年金」を実現させるために任意加入だった専業主婦を国民年金に加入させる、(3)標準的なサラリーマン世帯の年金受給額を、現役世代の69%程度になるよう保険料を段階的に引き上げていく−といったものだった。≫
この事件の真相については当然ながら私はわからない。このお二人の名前すら知らなかった。
ここ数年、社会保険事務所では色々と年金クレームが過激化しているという印象がある。誠実に対処すべきクレームであることが多いが、タクシー強盗や飲酒ひき逃げ事件など治安が顕著に悪化している国内事情である。まして年金問題はこれらとは性質上異なる。どこに文句をいっていいのかわからないという性質で、わからない人が社会保険事務所に因縁をつけてくる。日本の歴史をみればそのうち暗殺が起きるかもと思っていたところである。
わからないのが当然で、それは法律で決まったことということになる。では当時賛成票を投じた国会議員か、政党か、法案を提示した厚生労働省の役人かということになってくる。
今回の事件の真相は不明だが、一般的には「年金テロ」といわれている。国会議員等がこれを「民主主義への暴挙」と言っている。しかし、社会保険事務所で耳にするのは、「教えてくれなかった」「通知がなかった」とかいうものが多い。したがって、やはり本来の民主主義国家的には実際のところ法律ができていないというべきだろう。まして年金法は特に重要ながら難解であるため、国民のレベル管理が困難である。そもそも義務教育においてこうした生活関連法規に触れ始めたのがつい最近の話である。どういう国民を作りたいというイメージがこれまでなかったわけである。生活関連法規のない教育制度では真面目に勉強する必要も確かにないわけで、残念ながら脱落者の方が社会で良くも悪しくも活躍しているというのが実態である。社会人では稚拙な議論や行動が横行してしまうわけである。
とはいえ、社会保険関係の改正は国民の成熟を待てずに、待ったなしの段階にある。戦前では経済統制のため、隣組を活用した配給制度により国民を迅速に管理できたが、もはや回覧板や広報などの内容を周知する前提がたたない。乱世の時代というには早すぎるが、現行の国家デザインは綻び過ぎている。