12年03月17日
特定社会保険労務士はどうなったか
・最高裁平成24.2.24判決<債務不履行による損害賠償請求において、代理人費用を認めた事案>
色々と調べると、不法行為による事案においては、通常 契約のない関係で、相手方の故意・過失によって「事件に巻き込まれ」、裁判となると弁護士にほぼ頼らざるを得ないため、その費用の一部を(損害の一部として)裁判所が認めた。
(なお、簡易裁判所事件では司法委員が調停委員的な役割を担っており、それなりに筋が通っておれば本人訴訟で十分である。)
一方、債務不履行による事案においては、契約関係にあり、したがってその場合等について約定化され折込済みであることから、「事件に巻き込まれた」のはそうであるとしても、そこまで保護する必要性はないとされている。
以上はかなり昔の理屈でそれが司法関係者間で綿々と受け継がれているわけであるが、そこに、債務不履行においても代理人費用を相手方に負担させるという冒頭表記の判決が出た。不法行為によるものとほぼ同様の立証が要求されたものであったから、と。
これには、時効の問題が絡んでおり、債務(安全配慮)不履行事案といえども実質は不法行為であるという点が汲まれているようである。特殊な取扱いという見解がある。
敗訴者負担がより支持されれば、一部とはいわず6割強となれば司法の世界は様変わりするだろう。アメリカでは訴訟保険が普及しており、企業側に嘘みたいな額の賠償を下すこともありえる。(刑事罰で寿命をはるかに超える懲役期間もありえるが、あれには保険はないはず)。やはり文化的な背景の違いといえばもう終わりであるにせよ、司法福祉としては成り立ちそうに思われる。文化面でいえば、訴訟においても、社会保険労務士が行う助成金の成功報酬的思考が広まりつつある。着手金は定額発生するが、報酬は入ってくる額のうち何%を払うというものである。払う側であれば報酬は発生しない(尤もそんなことは商売としてありえないので、訴訟以外の報酬で賄われるというかたちである)。
・ところで、「代理人」というスタイルがやや揺れてはいやしないだろうか。雇用契約というのはもともと具体的な内容をきっちりさせず、長い年月かけてプラスとマイナスとをチャラにするという発想が強い。良いときも悪いときもある、というもはや人生句に近い。そのため「代理」するというのも違和感があり、本人申請の下「補佐」することがより適切といえなくもない。代理人であるが、実質は補佐人というべきだろう。あるいは広義の社内調停役か。
色々と調べると、不法行為による事案においては、通常 契約のない関係で、相手方の故意・過失によって「事件に巻き込まれ」、裁判となると弁護士にほぼ頼らざるを得ないため、その費用の一部を(損害の一部として)裁判所が認めた。
(なお、簡易裁判所事件では司法委員が調停委員的な役割を担っており、それなりに筋が通っておれば本人訴訟で十分である。)
一方、債務不履行による事案においては、契約関係にあり、したがってその場合等について約定化され折込済みであることから、「事件に巻き込まれた」のはそうであるとしても、そこまで保護する必要性はないとされている。
以上はかなり昔の理屈でそれが司法関係者間で綿々と受け継がれているわけであるが、そこに、債務不履行においても代理人費用を相手方に負担させるという冒頭表記の判決が出た。不法行為によるものとほぼ同様の立証が要求されたものであったから、と。
これには、時効の問題が絡んでおり、債務(安全配慮)不履行事案といえども実質は不法行為であるという点が汲まれているようである。特殊な取扱いという見解がある。
敗訴者負担がより支持されれば、一部とはいわず6割強となれば司法の世界は様変わりするだろう。アメリカでは訴訟保険が普及しており、企業側に嘘みたいな額の賠償を下すこともありえる。(刑事罰で寿命をはるかに超える懲役期間もありえるが、あれには保険はないはず)。やはり文化的な背景の違いといえばもう終わりであるにせよ、司法福祉としては成り立ちそうに思われる。文化面でいえば、訴訟においても、社会保険労務士が行う助成金の成功報酬的思考が広まりつつある。着手金は定額発生するが、報酬は入ってくる額のうち何%を払うというものである。払う側であれば報酬は発生しない(尤もそんなことは商売としてありえないので、訴訟以外の報酬で賄われるというかたちである)。
・ところで、「代理人」というスタイルがやや揺れてはいやしないだろうか。雇用契約というのはもともと具体的な内容をきっちりさせず、長い年月かけてプラスとマイナスとをチャラにするという発想が強い。良いときも悪いときもある、というもはや人生句に近い。そのため「代理」するというのも違和感があり、本人申請の下「補佐」することがより適切といえなくもない。代理人であるが、実質は補佐人というべきだろう。あるいは広義の社内調停役か。
12年01月27日
年金制度の行く末
年金制度に関する検討書である。正式に決まってないものを押さえるのは徒労でもあるが、厚労省担当者と権威者(学識者)の考え方を知るにはよいし、改正運動の流れもわかってくる。
社会保険審議会年金部会におけるこれまでの議論の整理平成23年12月26日
年金制度の目指すべき方向性と現行制度の改善項目との関係
① 働き方、ライフコースの選択に影響を受けない、一元的な制度
(パート適用拡大)(2階建て部分の一元化)(産休中の保険料免除)(第3号被保険者制度の見直し)(在職老齢年金)(標準報酬の上下限)
② 単身高齢者、低年金者、無年金者に対して最低保障機能を有し、高齢者の防貧・救貧機能強化
(受給資格期間のに短縮)(低所得者層への加算)(高所得者の年金額調整)
③ 財政の安定等
(基礎年金国庫負担1/2の恒久化)(マクロスライド)(支給開始年齢)
優先すべき事項
(1)(基礎年金国庫負担1/2の恒久化)
平成21年より1/2負担となったが、臨時財源であり、安定した財源をあてなければならないというもの。
(2)(受給資格期間のに短縮)
・おおむね10年が妥当というもの。ただし、40年強制加入は揺らがず、したがって10年だけ払えばいいという解釈を危惧するとのこと。
・改正法施行後に限り有効なものとし、遡っての適用はないとするもの。(現行無年金であるが、10年の期間はある場合、あくまでも改正法施行後から受給権が発生するということであろう。)
(3)(低所得者層への加算)
生活保護に陥らせないという観点。*「創設」部分という考えである。
(4)(高所得者の年金額調整)
年金においては財産権の制約を受ける点については異論がない。ただし、どれくらいの制約を受けるかについて慎重に図らねばならない。なお、所得補足の仕組みや年金課税についても検討し、社会保障と税共通番号制が必要である。
(5)(特例水準の解消)
物価が上下した場合、それに連動するのが年金の物価スライド制であるが、政権の政策により、過去の物価下落分通算2.5%を年金に反映されていないまま来ている。そのため、約7兆円の「払いすぎ」が見込まれる。
1.(産休中の保険料免除)
育休期間の免除を産前産後にまで拡大というもの。
2.(パート適用拡大)
かえって未適事業所が増えることへの危惧。
3.(2階建て部分の一元化)
まず、厚生年金と共済年金の制度的な差等を解消するというもの。
継続的に検討すべき課題
い.(第3号被保険者制度の見直し)
複雑になるため、まずパート適用そして配偶者控除の見直しを進めるというもの。
ろ.(マクロスライド)
保険料を上昇を抑え、人口の減少と寿命の伸びの要素から給付水準を決めるものであるが、デフレ下では適用しないこととしているため、まだ発動されたことがない。特例水準の解消を踏まえて引きつづき検討するというもの。また、名称をもっとわかりやすくするというものとか。
は.(在職老齢年金)
就労抑制として働いているかどうか、さらに分析を進める。なお、60歳前半の年金は今の世代だけのものであるという点。
に.(標準報酬の上下限)
・健康保険に比べると報酬月額の範囲を狭くしているため、所得再分配機能を狭めている。また、パート適用するにあたっての下限についても検討すべきである。なお現在の経済環境を踏まえて企業の負担増は慎重に行うべきである。
ほ.(支給開始年齢)
企業に対し高年齢者雇用確保措置をさらに強く義務付ける改正を行う。
・現状の国民の年金制度への信頼を考えれば、議論すら無理である。
その他
(遺族年金の支給対象範囲)
男女格差の解消。
社会保険審議会年金部会におけるこれまでの議論の整理平成23年12月26日
年金制度の目指すべき方向性と現行制度の改善項目との関係
① 働き方、ライフコースの選択に影響を受けない、一元的な制度
(パート適用拡大)(2階建て部分の一元化)(産休中の保険料免除)(第3号被保険者制度の見直し)(在職老齢年金)(標準報酬の上下限)
② 単身高齢者、低年金者、無年金者に対して最低保障機能を有し、高齢者の防貧・救貧機能強化
(受給資格期間のに短縮)(低所得者層への加算)(高所得者の年金額調整)
③ 財政の安定等
(基礎年金国庫負担1/2の恒久化)(マクロスライド)(支給開始年齢)
優先すべき事項
(1)(基礎年金国庫負担1/2の恒久化)
平成21年より1/2負担となったが、臨時財源であり、安定した財源をあてなければならないというもの。
(2)(受給資格期間のに短縮)
・おおむね10年が妥当というもの。ただし、40年強制加入は揺らがず、したがって10年だけ払えばいいという解釈を危惧するとのこと。
・改正法施行後に限り有効なものとし、遡っての適用はないとするもの。(現行無年金であるが、10年の期間はある場合、あくまでも改正法施行後から受給権が発生するということであろう。)
(3)(低所得者層への加算)
生活保護に陥らせないという観点。*「創設」部分という考えである。
(4)(高所得者の年金額調整)
年金においては財産権の制約を受ける点については異論がない。ただし、どれくらいの制約を受けるかについて慎重に図らねばならない。なお、所得補足の仕組みや年金課税についても検討し、社会保障と税共通番号制が必要である。
(5)(特例水準の解消)
物価が上下した場合、それに連動するのが年金の物価スライド制であるが、政権の政策により、過去の物価下落分通算2.5%を年金に反映されていないまま来ている。そのため、約7兆円の「払いすぎ」が見込まれる。
1.(産休中の保険料免除)
育休期間の免除を産前産後にまで拡大というもの。
2.(パート適用拡大)
かえって未適事業所が増えることへの危惧。
3.(2階建て部分の一元化)
まず、厚生年金と共済年金の制度的な差等を解消するというもの。
継続的に検討すべき課題
い.(第3号被保険者制度の見直し)
複雑になるため、まずパート適用そして配偶者控除の見直しを進めるというもの。
ろ.(マクロスライド)
保険料を上昇を抑え、人口の減少と寿命の伸びの要素から給付水準を決めるものであるが、デフレ下では適用しないこととしているため、まだ発動されたことがない。特例水準の解消を踏まえて引きつづき検討するというもの。また、名称をもっとわかりやすくするというものとか。
は.(在職老齢年金)
就労抑制として働いているかどうか、さらに分析を進める。なお、60歳前半の年金は今の世代だけのものであるという点。
に.(標準報酬の上下限)
・健康保険に比べると報酬月額の範囲を狭くしているため、所得再分配機能を狭めている。また、パート適用するにあたっての下限についても検討すべきである。なお現在の経済環境を踏まえて企業の負担増は慎重に行うべきである。
ほ.(支給開始年齢)
企業に対し高年齢者雇用確保措置をさらに強く義務付ける改正を行う。
・現状の国民の年金制度への信頼を考えれば、議論すら無理である。
その他
(遺族年金の支給対象範囲)
男女格差の解消。
11年12月08日
労働三見
1.『個別労働紛争解決マニュアル』
特定社会保険労務士制度ができてちょっと経ち、労使紛争解決の水準にバラツキが感じられるこの頃です。
弁護士のように、司法修習過程、イソ弁、弁護士会内研修と充実した養成過程が確立していないことが要因ですが、特定社会保険労務士においても強化養成する体制を組む必要があります。
まずイソ弁として就職できない弁護士の発生がいかに弁護士制度を揺るがしているかについて考えますと、当人は自由に活動することができる一方、弁護士の業務遂行水準を下げる惧れが出てくるわけです。弁護士なら当然、その人となりは別として、おおむね世間に求められる業務遂行能力が担保されているとはなかなか言えなくなるわけです。社会保険労務士はもともと同業を雇用するということが慣例ではないので、世間での信用は簡単には行っていないのはご承知の通りです。したがって、バラツキが問題なのです。弁護士のような長いロードはそれほど必要とも思われませんし、また後発の者は相当効率よくできますし、そのうえに労働問題だけの話です。特定社会保険労務士は裁判所のメニューについて早急に強化する必要があります。そういうことを言っていたら、監督署の相談員をされている方がこの本を貸してくれました。弁護士がいまさら読むようなものでもなく、特定社会保険労務士のために書いたような本といえます。絶版のようで増刷か改訂かを求めます。
2.集団的労働紛争解決
社会保険労務士会には色々自主研究会があります。社会保険労務士業務はゆりかごから墓場までですので、まずすることはないだろうとタカをくくっていた手続きをやはりすることになるものです。例えば、厚生年金や労災の遺族年金など。また、合同労組との関わり。その実質はご承知の通り、個別労使関係色の強い事案です。合同労組等も含めて労使関係を扱うのが人間労使関係自主研究会です。
社会保険労務士といえば会社顧問だから「使用者側」という認識が行渡っているかも知れませんが、なかなかそうでもありません。社会保険労務士の目的は健全な産業のためなのであって、労使セットでものを考えます。無論、紛争解決代理人となる場合はいずれかの側に立ちますし、それは争点上一致していないゾーンがあるから可能なわけです。税務と異なり、グレーゾーンは比較にならない程小さく、法律面の争いであればまず会社側は不利です。会社は法律を護るものでもない、護れない、無理な規定以外は護る…そんな状態を社会保険労務士は是正指導するのですが、ふと気づけば、メニューこそ違え、合同労組と共通点が多いわけです。無論似すぎると、敢えて顧問契約をする会社はありませんが。
3.精神障害による自殺の取扱いについて(平成11年9月14日付け 基発第545号)
《労働者災害補償保険法第12条の2の2第1項の「故意」については、昭和40
年7月31日付基発第901号「労働者災害補償保険法の一部を改正する法律の施
行について」により、結果の発生を意図した故意であると解釈してきたところであ
るが、このことに関し、精神障害を有するものが自殺した場合の取扱いについては
下記のとおりとするので、今後遺漏のないようされたい。》
故意にケガをして労災支給を受ける、あるいは遺族に生命保険金が下りるように自殺するとかなら、社会通念上合理的な規定であり、解釈である。しかし、遺族年金のためということがないなら、まして自分が死ぬという危険まで冒して(文章的におかしいが)故意に自殺するなんてことはありえないと考えるのが普通である。わざとケガして給付金を掠め取るとは全然次元が違う話である。裁判より労災認定が難しいという状態はやはりおかしい。裁判は時間と手間がかかるから行政段階で処理できるものは処理するというのが本来の姿であろう。ほとんどの事項はそうなのであるが、これは例外中の例外としてある。今日の事情において看視できる事項でなく、今回も前回に次ぐ見直しがなされたが、構成は変わっていない。理屈として替えようにも替えられないともみえるが、不幸である。
特定社会保険労務士制度ができてちょっと経ち、労使紛争解決の水準にバラツキが感じられるこの頃です。
弁護士のように、司法修習過程、イソ弁、弁護士会内研修と充実した養成過程が確立していないことが要因ですが、特定社会保険労務士においても強化養成する体制を組む必要があります。
まずイソ弁として就職できない弁護士の発生がいかに弁護士制度を揺るがしているかについて考えますと、当人は自由に活動することができる一方、弁護士の業務遂行水準を下げる惧れが出てくるわけです。弁護士なら当然、その人となりは別として、おおむね世間に求められる業務遂行能力が担保されているとはなかなか言えなくなるわけです。社会保険労務士はもともと同業を雇用するということが慣例ではないので、世間での信用は簡単には行っていないのはご承知の通りです。したがって、バラツキが問題なのです。弁護士のような長いロードはそれほど必要とも思われませんし、また後発の者は相当効率よくできますし、そのうえに労働問題だけの話です。特定社会保険労務士は裁判所のメニューについて早急に強化する必要があります。そういうことを言っていたら、監督署の相談員をされている方がこの本を貸してくれました。弁護士がいまさら読むようなものでもなく、特定社会保険労務士のために書いたような本といえます。絶版のようで増刷か改訂かを求めます。
2.集団的労働紛争解決
社会保険労務士会には色々自主研究会があります。社会保険労務士業務はゆりかごから墓場までですので、まずすることはないだろうとタカをくくっていた手続きをやはりすることになるものです。例えば、厚生年金や労災の遺族年金など。また、合同労組との関わり。その実質はご承知の通り、個別労使関係色の強い事案です。合同労組等も含めて労使関係を扱うのが人間労使関係自主研究会です。
社会保険労務士といえば会社顧問だから「使用者側」という認識が行渡っているかも知れませんが、なかなかそうでもありません。社会保険労務士の目的は健全な産業のためなのであって、労使セットでものを考えます。無論、紛争解決代理人となる場合はいずれかの側に立ちますし、それは争点上一致していないゾーンがあるから可能なわけです。税務と異なり、グレーゾーンは比較にならない程小さく、法律面の争いであればまず会社側は不利です。会社は法律を護るものでもない、護れない、無理な規定以外は護る…そんな状態を社会保険労務士は是正指導するのですが、ふと気づけば、メニューこそ違え、合同労組と共通点が多いわけです。無論似すぎると、敢えて顧問契約をする会社はありませんが。
3.精神障害による自殺の取扱いについて(平成11年9月14日付け 基発第545号)
《労働者災害補償保険法第12条の2の2第1項の「故意」については、昭和40
年7月31日付基発第901号「労働者災害補償保険法の一部を改正する法律の施
行について」により、結果の発生を意図した故意であると解釈してきたところであ
るが、このことに関し、精神障害を有するものが自殺した場合の取扱いについては
下記のとおりとするので、今後遺漏のないようされたい。》
故意にケガをして労災支給を受ける、あるいは遺族に生命保険金が下りるように自殺するとかなら、社会通念上合理的な規定であり、解釈である。しかし、遺族年金のためということがないなら、まして自分が死ぬという危険まで冒して(文章的におかしいが)故意に自殺するなんてことはありえないと考えるのが普通である。わざとケガして給付金を掠め取るとは全然次元が違う話である。裁判より労災認定が難しいという状態はやはりおかしい。裁判は時間と手間がかかるから行政段階で処理できるものは処理するというのが本来の姿であろう。ほとんどの事項はそうなのであるが、これは例外中の例外としてある。今日の事情において看視できる事項でなく、今回も前回に次ぐ見直しがなされたが、構成は変わっていない。理屈として替えようにも替えられないともみえるが、不幸である。
11年10月12日
戦後混乱期か
生活保護受給者、過去最多に迫る204万人超 戦後混乱期並みに
《厚生労働省は12日、全国の生活保護受給者が、6月時点で204万1592人だったと発表した。戦後の混乱の余波で過去最多だった昭和26年度(月平均)の204万6646人に近づいた。》
《厚労省によると、今年6月は前月から1万5人増加した。世帯数は、147万9611世帯(前月比8354世帯増)で、過去最多を更新し続けている。》
<厚生年金>支給開始年齢引き上げに布石…厚労省案
《厚生年金の報酬比例部分の支給開始を65歳に引き上げる計画を早める厚生労働省案に対し、11日の社会保障審議会年金部会では「決まったものを途中で変えるのは国民の信頼低下を招く」といった意見が相次ぎ、実現の難しさを示した。68~70歳へ引き上げる案も今改革での導入は困難とみられている。しかし、定年制度の延長などを前提に「いずれはやむを得ない」との意見は複数出された。厚労省も「次」をにらみ、将来への布石として提案したというのが実情だ。 》
この2つのニュースが立て続けに発表されたが、普通は同じ厚労省なのに一体どうなっているのかと思うタイミングである。無論、端的に言ってしまえば、生活保護も増えるし、年金はますます期待度が薄まる。もはや年金記録の整備により回復した信頼ではあがなえない。定年がどうのこうのというのも、今の世代の話で、よきもあしきも転職が避けられないのが下の世代である。労働行政のリサーチもどうであろうか。産業界は厚労省の計画通り従うとも思えない。個人も納得しているとは思えない。生活保護に任せるという腹があるのかどうか。一行政が担う内容とはもはや思えない。各省から選び抜いた人材を新たな省に結集させるというのが、戦前の窮余の一策である。戦後混乱期の占領軍の生活保護制度等の資料も参考になろう。
《厚生労働省は12日、全国の生活保護受給者が、6月時点で204万1592人だったと発表した。戦後の混乱の余波で過去最多だった昭和26年度(月平均)の204万6646人に近づいた。》
《厚労省によると、今年6月は前月から1万5人増加した。世帯数は、147万9611世帯(前月比8354世帯増)で、過去最多を更新し続けている。》
<厚生年金>支給開始年齢引き上げに布石…厚労省案
《厚生年金の報酬比例部分の支給開始を65歳に引き上げる計画を早める厚生労働省案に対し、11日の社会保障審議会年金部会では「決まったものを途中で変えるのは国民の信頼低下を招く」といった意見が相次ぎ、実現の難しさを示した。68~70歳へ引き上げる案も今改革での導入は困難とみられている。しかし、定年制度の延長などを前提に「いずれはやむを得ない」との意見は複数出された。厚労省も「次」をにらみ、将来への布石として提案したというのが実情だ。 》
この2つのニュースが立て続けに発表されたが、普通は同じ厚労省なのに一体どうなっているのかと思うタイミングである。無論、端的に言ってしまえば、生活保護も増えるし、年金はますます期待度が薄まる。もはや年金記録の整備により回復した信頼ではあがなえない。定年がどうのこうのというのも、今の世代の話で、よきもあしきも転職が避けられないのが下の世代である。労働行政のリサーチもどうであろうか。産業界は厚労省の計画通り従うとも思えない。個人も納得しているとは思えない。生活保護に任せるという腹があるのかどうか。一行政が担う内容とはもはや思えない。各省から選び抜いた人材を新たな省に結集させるというのが、戦前の窮余の一策である。戦後混乱期の占領軍の生活保護制度等の資料も参考になろう。
11年10月06日
昭和の労務管理からの定点観測
昭和の労務管理を知る者にとって、労基法をはじめ民事訴訟の法的観点が会社の中に深く入ってくることは当時考えてもいなかったものである。あったことは、労働組合結成表明において憲法による保障が謳われ、それに多くの明治頃生まれの会長が激怒したようなことである。つまり、労働組合くらいしか法律を持ち出さなかった。
そこで、法的保障もなく労働者は働かされていたと外国の方や平成生まれの方は合点してしまうものであるが、全くそうではない。そこに、日本的もしくは発展途上的な性質とも受け取れるものがあった。
昭和の企業体制は鉄板なのであった。軍隊生活ほどではないが、相当な規律重視の秩序体制があった。除隊的な発想はなく、骨を埋めるのを前提にしているため、退職ましてや解雇ということは例外中の例外であった。労働者が憎む相手は社長や会社ではなく、上司や同僚や人事担当者である。まさしく「組織」であり、日本はこうした「組織」を各所に置く状態の、やはり封建体制というべきものであった。したがって、「組織外」の労基法をはじめ民事訴訟という中央的観点は、ほとんどその機能を期待されたものではなかった。占領軍の民主化政策がもっと長く続いておれば変ったはずであろうが、逆戻りに転じ、戦後的現象としてかつての国家を会社になぞらえる流れができ、それが自然に封建的なスタイルをとったまでである。
昭和の時代、まだ国家と会社の従属的関係はあった。公務員に関する制度の幾つかは会社にも流用された。無論、官報購読は必修である。
やはり契機は昭和の終わり頃の経済の自由化であろう。国家と会社の関係は、それまでの封建的な匂いのするものではなくなり、規制から緩和すなわち必罰主義に移ろっていく。それまでの規制内容自体が制度疲労化していたことも大きい。そして、機能を期待されてこなかった労基法や民事訴訟が活きてくる。封建的匂いが薄まる中で、これからも継続して揉まれる段階にある。
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そこで、法的保障もなく労働者は働かされていたと外国の方や平成生まれの方は合点してしまうものであるが、全くそうではない。そこに、日本的もしくは発展途上的な性質とも受け取れるものがあった。
昭和の企業体制は鉄板なのであった。軍隊生活ほどではないが、相当な規律重視の秩序体制があった。除隊的な発想はなく、骨を埋めるのを前提にしているため、退職ましてや解雇ということは例外中の例外であった。労働者が憎む相手は社長や会社ではなく、上司や同僚や人事担当者である。まさしく「組織」であり、日本はこうした「組織」を各所に置く状態の、やはり封建体制というべきものであった。したがって、「組織外」の労基法をはじめ民事訴訟という中央的観点は、ほとんどその機能を期待されたものではなかった。占領軍の民主化政策がもっと長く続いておれば変ったはずであろうが、逆戻りに転じ、戦後的現象としてかつての国家を会社になぞらえる流れができ、それが自然に封建的なスタイルをとったまでである。
昭和の時代、まだ国家と会社の従属的関係はあった。公務員に関する制度の幾つかは会社にも流用された。無論、官報購読は必修である。
やはり契機は昭和の終わり頃の経済の自由化であろう。国家と会社の関係は、それまでの封建的な匂いのするものではなくなり、規制から緩和すなわち必罰主義に移ろっていく。それまでの規制内容自体が制度疲労化していたことも大きい。そして、機能を期待されてこなかった労基法や民事訴訟が活きてくる。封建的匂いが薄まる中で、これからも継続して揉まれる段階にある。