●有給休暇 5日強制付与の新解釈が出ました Q&A方式でご紹介します(2019.2月号)
Q1.4月1日になれば、10日以上の有給休暇を持っている従業員が全員対象となるのですか?
A1.4月1日から一斉にスタートするのではなく、4月以降に到来する基準日から1年以内に5日を取得させる必要があります。例えば2月1日に入社した従業員の場合、基準日は8月1日となりますので、この従業員は8月から1年間の間に5日を取得させることとなります。
Q2.今回の改正で、よく基準日という言葉を耳にします。これは何ですか?
A2.ここでいう基準日とは原則として、入社日から6か月経過後の日のことです。4月1日入社であれば10月1日が基準日となり、この日に有給休暇が発生し、以後この日の到来ごとに付与することになります。今回の改正で年間5日の有給取得とは、この基準日から次の基準日(つまり1年間)の間で、5日を取得している必要があるということです。
Q3.入社日ごとにカウントせず、例えば4月1日で付与日を統一しているような場合は、基準日の考え方はどうなりますか?
A3.10日の有給休暇が発生する日は法定通り6か月経過後とし、その後4月1日で統一しているような場合ですと、基本的には4月1日が基準日となります。但し新入社員の場合のみ、最初は10月1日が基準日となり、4月1日に再度基準日が到来することとなります。
Q4.短時間パートにも5日を付与する義務がありますか?
A4.週30時間未満、かつ週4日以下のパートでも比例付与日数表により有給休暇があります。そのうち、10日以上の有給休暇が発生する一部の短時間パートには、5日付与の義務があります。具体的には、
週4日のパートの場合 3年6か月以上の方
週3日のパートの場合 5年6か月以上の方 のことです。これ以外の短時間パートに は5日付与の義務はありません。
Q5.比例付与の短時間パートの場合、前年繰越日数を加算して10日以上あれば、今回の5日付与義務の対象となるのでしょうか?
A5.繰越日数分は加算しません。本年度に10日発生したパートのみが対象となります。
Q6.会社が独自に作っている有給の特別休暇(慶弔休暇、誕生日休暇など)は、有給5日の中にカウントしていいですか?
A6.カウントすることはできません。従って有給休暇が5日に満たない場合は、特別休暇より有給休暇を優先して取得させる規定を設けることも対策の一つと考えます。
Q7.従業員自ら取得する場合でも、会社は別に5日の有給を付与する必要があるのですか?
A7.労働者からの請求や、計画的付与により取得した日数は5日から控除することができます。会社が時季指定しなければならないのは、5日に達していない従業員です。ですから既に5日の取得をしている従業員に対しては、時季指定することはできません。
Q8.有給休暇には当年度発生分と、前年繰越分があると聞きました。今回の5日というのはどちらから消化するのでしょうか?
A8.とにかく基準日から5日の消化がなされていれば、前年分や当年分を問わず、どちらでも良いというのが行政解釈となっています。但し、企業ごとの独自ルール(例えば当年分を先に消化してから繰り越し分を使用するなど)がある場合は、それに従うこととなります。
Q9.入社日ごとに有給休暇を管理している会社の場合、基準日がバラバラで管理が難しいのですが、統一基準日にして管理するのも抵抗があります。何か良い方法はないものでしょうか?
A9.厚労省では、以下のようなモデルを提示しています。
例 4月10日入社 本来の基準日10月10日 → 統一基準日10月1日
4月20日入社 本来の基準日10月20日 → 統一基準日10月1日
5月15日入社 本来の基準日11月15日 → 統一基準日11月1日
つまり、バラバラの日に入社しても、同一月に入社した基準日は、6か月後の月初(1日)に統一するというものです。この考え方に立てば、月初に限らず、さらに基準日を前倒しすることは可能と思われます。例えば8月のお盆休みに有給をくっつけたいと考えた場合、9月以降に基準日が到来する従業員は、その前の8月に付与した有給が5日強制付与分にカウントできないこととなりますが、基準日を8月1日とすれば、お盆に付与した有給もカウントすることが可能と考えられるからです。
Q10.会社が時季指定したにもかかわらず、従業員が拒否して出勤した場合、法違反になりますか?
A10.法違反となります。但しいきなりペナルティが課されるのは考え難く、まずは行政指導が行われます。従業員にもきちんと理解してもらい、希望も考慮しながら付与して行くことが望まれます。
Q11.会社が時季指定した日より前に、従業員が5日を消化した場合は、その後の時季指定日に与えなくともよいでしょうか?
A11.すでに5日を取得しておれば、法違反にはなりません。こういったケースに備えて、5日取得後は、会社の時季指定した有給休暇は無効となる規定をいれておくべきかと思われます。
Q12.罰則はあるのですか?
A12.違反した場合は、30万円以下の罰金に処される可能性があります。罰則は企業ごとではなく、1人1罪として扱われます。但し通常は是正勧告による行政指導が行われます。
Q13.今回の法改正を就業規則に盛り込む必要がありますか?
A13.休暇に関する事項は絶対的記載事項であり、時季指定の対象となる従業員やその方法等について、必ず記載しなければなりません。
Q14.現在育児休業で休んでいる従業員が復帰した場合にも、5日付与の義務はありますか?
A14.結論的には除外規定がないので、育児休業など他の休暇制度から復帰した従業員にも、基準年度内に5日を消化させる必要があります。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
Q1.4月1日になれば、10日以上の有給休暇を持っている従業員が全員対象となるのですか?
A1.4月1日から一斉にスタートするのではなく、4月以降に到来する基準日から1年以内に5日を取得させる必要があります。例えば2月1日に入社した従業員の場合、基準日は8月1日となりますので、この従業員は8月から1年間の間に5日を取得させることとなります。
Q2.今回の改正で、よく基準日という言葉を耳にします。これは何ですか?
A2.ここでいう基準日とは原則として、入社日から6か月経過後の日のことです。4月1日入社であれば10月1日が基準日となり、この日に有給休暇が発生し、以後この日の到来ごとに付与することになります。今回の改正で年間5日の有給取得とは、この基準日から次の基準日(つまり1年間)の間で、5日を取得している必要があるということです。
Q3.入社日ごとにカウントせず、例えば4月1日で付与日を統一しているような場合は、基準日の考え方はどうなりますか?
A3.10日の有給休暇が発生する日は法定通り6か月経過後とし、その後4月1日で統一しているような場合ですと、基本的には4月1日が基準日となります。但し新入社員の場合のみ、最初は10月1日が基準日となり、4月1日に再度基準日が到来することとなります。
Q4.短時間パートにも5日を付与する義務がありますか?
A4.週30時間未満、かつ週4日以下のパートでも比例付与日数表により有給休暇があります。そのうち、10日以上の有給休暇が発生する一部の短時間パートには、5日付与の義務があります。具体的には、
週4日のパートの場合 3年6か月以上の方
週3日のパートの場合 5年6か月以上の方 のことです。これ以外の短時間パートに は5日付与の義務はありません。
Q5.比例付与の短時間パートの場合、前年繰越日数を加算して10日以上あれば、今回の5日付与義務の対象となるのでしょうか?
A5.繰越日数分は加算しません。本年度に10日発生したパートのみが対象となります。
Q6.会社が独自に作っている有給の特別休暇(慶弔休暇、誕生日休暇など)は、有給5日の中にカウントしていいですか?
A6.カウントすることはできません。従って有給休暇が5日に満たない場合は、特別休暇より有給休暇を優先して取得させる規定を設けることも対策の一つと考えます。
Q7.従業員自ら取得する場合でも、会社は別に5日の有給を付与する必要があるのですか?
A7.労働者からの請求や、計画的付与により取得した日数は5日から控除することができます。会社が時季指定しなければならないのは、5日に達していない従業員です。ですから既に5日の取得をしている従業員に対しては、時季指定することはできません。
Q8.有給休暇には当年度発生分と、前年繰越分があると聞きました。今回の5日というのはどちらから消化するのでしょうか?
A8.とにかく基準日から5日の消化がなされていれば、前年分や当年分を問わず、どちらでも良いというのが行政解釈となっています。但し、企業ごとの独自ルール(例えば当年分を先に消化してから繰り越し分を使用するなど)がある場合は、それに従うこととなります。
Q9.入社日ごとに有給休暇を管理している会社の場合、基準日がバラバラで管理が難しいのですが、統一基準日にして管理するのも抵抗があります。何か良い方法はないものでしょうか?
A9.厚労省では、以下のようなモデルを提示しています。
例 4月10日入社 本来の基準日10月10日 → 統一基準日10月1日
4月20日入社 本来の基準日10月20日 → 統一基準日10月1日
5月15日入社 本来の基準日11月15日 → 統一基準日11月1日
つまり、バラバラの日に入社しても、同一月に入社した基準日は、6か月後の月初(1日)に統一するというものです。この考え方に立てば、月初に限らず、さらに基準日を前倒しすることは可能と思われます。例えば8月のお盆休みに有給をくっつけたいと考えた場合、9月以降に基準日が到来する従業員は、その前の8月に付与した有給が5日強制付与分にカウントできないこととなりますが、基準日を8月1日とすれば、お盆に付与した有給もカウントすることが可能と考えられるからです。
Q10.会社が時季指定したにもかかわらず、従業員が拒否して出勤した場合、法違反になりますか?
A10.法違反となります。但しいきなりペナルティが課されるのは考え難く、まずは行政指導が行われます。従業員にもきちんと理解してもらい、希望も考慮しながら付与して行くことが望まれます。
Q11.会社が時季指定した日より前に、従業員が5日を消化した場合は、その後の時季指定日に与えなくともよいでしょうか?
A11.すでに5日を取得しておれば、法違反にはなりません。こういったケースに備えて、5日取得後は、会社の時季指定した有給休暇は無効となる規定をいれておくべきかと思われます。
Q12.罰則はあるのですか?
A12.違反した場合は、30万円以下の罰金に処される可能性があります。罰則は企業ごとではなく、1人1罪として扱われます。但し通常は是正勧告による行政指導が行われます。
Q13.今回の法改正を就業規則に盛り込む必要がありますか?
A13.休暇に関する事項は絶対的記載事項であり、時季指定の対象となる従業員やその方法等について、必ず記載しなければなりません。
Q14.現在育児休業で休んでいる従業員が復帰した場合にも、5日付与の義務はありますか?
A14.結論的には除外規定がないので、育児休業など他の休暇制度から復帰した従業員にも、基準年度内に5日を消化させる必要があります。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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19年02月12日
新時代到来!!さあ、働き方改革元年です!!(2019.1月号)
新時代到来!!さあ、働き方改革元年です!!(2019.1月号)
皆様、あけましておめでとうございます。いよいよ2019年がスタートしました。特に今年は5月から新元号となり、時代の節目となる年です。
後世の日本人が平成を振り返ると、きっと暗い時代として記憶されることとなるのではないでしょうか?バブル景気の最高潮で始まった平成元年。しかしその2年後から崩壊現象が始まり、未曽有の金融危機、リストラが吹き荒れ、長い不況の時代を経験しました。経済指標では一時好況期もあったらしい?のですが、少なくとも関西圏で経済活動を行う我々にはその恩恵はほとんど実感のないものでした。
この間、日本の経済指標はみるみる低下し、中国の台頭も相まって、日本の国際的地位は相対的に下がりっぱなしでした。
平成5年年には非自民連立政権が誕生しましたが、1年と持たず、その後も連立を繰り返し、日本の政治は漂流を続けました。
災害が多かったものこの時代です。歴史上こんなに大きな地震が繰り返し起こった時代は珍しいでしょう。我々もLIVEで経験した平成7年の阪神淡路大震災、さらにそれを上回る平成23年の東日本大震災。ほかにも、熊本や大阪北部などでも大きな地震がありました。また記憶に新しい平成30年9月の台風21号は、関西にも甚大な被害をもたらしました。同年7月の西日本豪雨災害の記憶が冷めやらぬ間のことでした。まだその影響が方々で残っています。
昭和30年代から平成に入るまでの間、輝かしい歩みを続けてきた日本でしたが、平成に入るとその輝きを失い、漂流し続けた時代のように感じられます。
しかし、その平成も4月で終焉し、新しい時代がやって来ます。景気は気からとも言います。我々経営者が今までのどんよりした空気を吹き払い、次の新しい時代を先導して行かなければなりません。当面は東京オリンピック、大阪万博と大きな国家的目標もあり、また輝きを取り戻す舞台装置は整いつつあります。
私の専門分野である人事労務の分野におきましても、この2019年は時代の転換点となることが予想されます。4月より働き方改革関連法が順次スタートし、昭和的な働き方は許されない時代へ入ってゆきます。同じく4月からは外国人労働者が単純労働の現場に本格的に入ってきます。将来的に国のかたちを変えるターニングポイントとなるやもしれません。
ややもすれば中小企業は人事労務政策を経営課題として後回しにしてきた傾向があると考えています。経済資源が豊富でない中小企業においては、1に販売、2に資金繰り、3に節税対策といった具合で、どうしても人事労務は後塵を拝する傾向があったのです。
しかし新時代からは、経営課題のど真ん中で取り組んでゆく必要があります。そうしないと社員からも、求職者からも、行政からも三下り半を突きつけられる企業となり、退場を余儀なくされる可能性があるのです。
特に残業規制にみられるように、今までと同じ時間量で業績を上げることが出来なくなって行きます。経営者は稼働時間数が減ることで、売り上げダウンも止む無し!と考える人は少数派と考えられ、何としても業績を落とさずに経営を維持する方法を考えるようになるでしょう。これがとりもなおさず、今、国家目標ともなっている「労働生産性のアップ」に繋がることが期待されているのです。
2019年は働き方改革元年です。経営課題として逃げずに取り組んでゆきましょう。
2019年以降 人事労務関係で改正が予定されている主なものは以下の通りです。
1.有給休暇取得促進策(2019年4月施行 改正労働基準法)
有給休暇のうち、5日について毎年時季を指定して付与する義務が生じる。労働者が請求していなくとも、5日は取得させなければならない。
2.労働時間の状況を客観的に把握するよう、企業に義務づけ(2019年4月施行 改正労働安全衛生法)
今まで裁量労働制やみなし時間制の適用者、管理監督者は労働時間管理の枠外でしたが、こういった人たちも健康管理の観点から、適正な方法での労働時間管理の義務付け。
3.新たな外国人材受入れのための在留資格の創設(2019年4月施行 改正出入国管理法)
新たな在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設して、一定の産業分野において単純労働を受け入れ。
4.フレックスタイム制の拡充、及び勤務間インターバル制度の努力義務(2019年4月施行 改正労働基準法、及び労働時間等設定改善法)
労働時間の清算期間が1ヶ月以内から3か月以内に拡充、また勤務終了後から翌日の出社までに一定時間以上休息時間を確保する仕組みの努力義務。
5.時間外労働の上限規制の導入(2020年4月施行 改正労働基準法)
時間外労働の上限について、月45時間(年間360時間)となり、年6回までの特別条項をがある場合でも、単月100時間未満、複数月の平均は80時間かつ年間720間以内の限度を設定。運輸建設医療を除き、長時間労働が不可能となる。
6.同一労働同一賃金(2021年4月施行 改正パート労働法、労働契約法、労働者派遣法)
短時間労働者(パート)、有期雇用労働者、派遣労働者について、正規社員との不合理な格差を禁止するもの。賃金の支払い方や福利厚生において同等に処遇しなければならないケースも。すでに各待遇ごとの考え方を示したガイドラインが出ている。
7.割増賃金率のアップによる長時間労働抑制対策(2023年4月施行)
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が25%から50%に引き上げ。大企業では既に8年前から施行されており、中小企業の猶予措置が撤廃される。残業代の大幅アップ。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
皆様、あけましておめでとうございます。いよいよ2019年がスタートしました。特に今年は5月から新元号となり、時代の節目となる年です。
後世の日本人が平成を振り返ると、きっと暗い時代として記憶されることとなるのではないでしょうか?バブル景気の最高潮で始まった平成元年。しかしその2年後から崩壊現象が始まり、未曽有の金融危機、リストラが吹き荒れ、長い不況の時代を経験しました。経済指標では一時好況期もあったらしい?のですが、少なくとも関西圏で経済活動を行う我々にはその恩恵はほとんど実感のないものでした。
この間、日本の経済指標はみるみる低下し、中国の台頭も相まって、日本の国際的地位は相対的に下がりっぱなしでした。
平成5年年には非自民連立政権が誕生しましたが、1年と持たず、その後も連立を繰り返し、日本の政治は漂流を続けました。
災害が多かったものこの時代です。歴史上こんなに大きな地震が繰り返し起こった時代は珍しいでしょう。我々もLIVEで経験した平成7年の阪神淡路大震災、さらにそれを上回る平成23年の東日本大震災。ほかにも、熊本や大阪北部などでも大きな地震がありました。また記憶に新しい平成30年9月の台風21号は、関西にも甚大な被害をもたらしました。同年7月の西日本豪雨災害の記憶が冷めやらぬ間のことでした。まだその影響が方々で残っています。
昭和30年代から平成に入るまでの間、輝かしい歩みを続けてきた日本でしたが、平成に入るとその輝きを失い、漂流し続けた時代のように感じられます。
しかし、その平成も4月で終焉し、新しい時代がやって来ます。景気は気からとも言います。我々経営者が今までのどんよりした空気を吹き払い、次の新しい時代を先導して行かなければなりません。当面は東京オリンピック、大阪万博と大きな国家的目標もあり、また輝きを取り戻す舞台装置は整いつつあります。
私の専門分野である人事労務の分野におきましても、この2019年は時代の転換点となることが予想されます。4月より働き方改革関連法が順次スタートし、昭和的な働き方は許されない時代へ入ってゆきます。同じく4月からは外国人労働者が単純労働の現場に本格的に入ってきます。将来的に国のかたちを変えるターニングポイントとなるやもしれません。
ややもすれば中小企業は人事労務政策を経営課題として後回しにしてきた傾向があると考えています。経済資源が豊富でない中小企業においては、1に販売、2に資金繰り、3に節税対策といった具合で、どうしても人事労務は後塵を拝する傾向があったのです。
しかし新時代からは、経営課題のど真ん中で取り組んでゆく必要があります。そうしないと社員からも、求職者からも、行政からも三下り半を突きつけられる企業となり、退場を余儀なくされる可能性があるのです。
特に残業規制にみられるように、今までと同じ時間量で業績を上げることが出来なくなって行きます。経営者は稼働時間数が減ることで、売り上げダウンも止む無し!と考える人は少数派と考えられ、何としても業績を落とさずに経営を維持する方法を考えるようになるでしょう。これがとりもなおさず、今、国家目標ともなっている「労働生産性のアップ」に繋がることが期待されているのです。
2019年は働き方改革元年です。経営課題として逃げずに取り組んでゆきましょう。
2019年以降 人事労務関係で改正が予定されている主なものは以下の通りです。
1.有給休暇取得促進策(2019年4月施行 改正労働基準法)
有給休暇のうち、5日について毎年時季を指定して付与する義務が生じる。労働者が請求していなくとも、5日は取得させなければならない。
2.労働時間の状況を客観的に把握するよう、企業に義務づけ(2019年4月施行 改正労働安全衛生法)
今まで裁量労働制やみなし時間制の適用者、管理監督者は労働時間管理の枠外でしたが、こういった人たちも健康管理の観点から、適正な方法での労働時間管理の義務付け。
3.新たな外国人材受入れのための在留資格の創設(2019年4月施行 改正出入国管理法)
新たな在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設して、一定の産業分野において単純労働を受け入れ。
4.フレックスタイム制の拡充、及び勤務間インターバル制度の努力義務(2019年4月施行 改正労働基準法、及び労働時間等設定改善法)
労働時間の清算期間が1ヶ月以内から3か月以内に拡充、また勤務終了後から翌日の出社までに一定時間以上休息時間を確保する仕組みの努力義務。
5.時間外労働の上限規制の導入(2020年4月施行 改正労働基準法)
時間外労働の上限について、月45時間(年間360時間)となり、年6回までの特別条項をがある場合でも、単月100時間未満、複数月の平均は80時間かつ年間720間以内の限度を設定。運輸建設医療を除き、長時間労働が不可能となる。
6.同一労働同一賃金(2021年4月施行 改正パート労働法、労働契約法、労働者派遣法)
短時間労働者(パート)、有期雇用労働者、派遣労働者について、正規社員との不合理な格差を禁止するもの。賃金の支払い方や福利厚生において同等に処遇しなければならないケースも。すでに各待遇ごとの考え方を示したガイドラインが出ている。
7.割増賃金率のアップによる長時間労働抑制対策(2023年4月施行)
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が25%から50%に引き上げ。大企業では既に8年前から施行されており、中小企業の猶予措置が撤廃される。残業代の大幅アップ。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
外国人と共生する社会が到来か?平成終焉の先にある国のかたち、覚悟を求められる日本人(2018.12月号)
さて、この特別国会で、専門職種以外での外国人労働者の受け入れを解禁する、改正出入国管理法が大きな争点となっていますが、与党の力業により成立する見込みであり(11月29日現在)、2019年4月より施行される予定です。いままで技能実習や留学生という在留資格で、一部の単純労働系の職種に外国人を受け入れてきましたが、これを大規模に拡充しようとするものです。
一定の制約があることから政府はこれを移民政策ではないといっていますが、特定技能2号は実質的には家族を帯同して永住権も認められる方向であり、最初は少数でも、蟻の一穴となってどんどん増えて行く可能性が高いでしょう。
先の通常国会では、経済界が望んだ裁量労働制の拡充が、厚労省のデータ不備により廃案に追い込まれました。残業規制や有給付与義務、同一労働同一賃金など、労働側の望む法案が多く通り、経済界は実入り?が少なったことから、その穴埋めと言わんばかりの拙速さで、来年4月のスタートを目指しているようにも見えます。
確かに現在は、空前の人手不足。高齢者や女性の社会参加、労働生産性の向上、AIの台頭でいずれは収束されるであろう人手不足も、今は背に腹を替えられないといったところでしょうか。
ただ現在でも120万人を超える外国人が日本で働いており、例えばミナミの繁華街で飲食店に入ると、身近にそれらしい方々に出会う機会が多くなっているはずです。私共の社労士事務所において事務代行を受託させて頂いているクライアント先の賃金台帳を拝見すると、ここ数年で確実に「カタカナの名前」の従業員が激増していることを実感します。
こういった中で、日本の公的医療保険制度は、基本的に外国人を排除していません。彼らによって日本の健康保険制度が食い物にされているとの指摘があります、それもあってか、本年10月から、協会けんぽの扶養認定において、続柄や生計維持関係のチェックが厳しく行われるようになっています。
そのような指摘がある一方、世代間の仕送りシステムとなっている現行の年金制度を支えるためには、保険料を支払う現役世代を増やさなければ制度が持たず、彼ら外国人に年金制度を支える担い手になってもらわなければならないとの観測もあります。
治安に不安を覚える国民も多いことでしょう。生活習慣や考え方、文化や宗教の違いにより、要らぬ紛争や軋轢が心配されています。外国人が日本人の雇用を奪うという指摘もあります。日本人の待遇が下方向へ誘導されかねないとの懸念も出ています。
移民政策を受け入れてきた欧米諸外国では、移民問題が国を二分するような大論争テーマとなり、海外にはトランプ大統領に代表されるような移民を排斥する政治が受ける素地があります。
有史以来2千年にわたり、ほぼ純血主義で国を運営してきた島国、日本。どんどん血が混ざり合ってゆき、日本人のDNAが変質して行くのでしょか?
いずれにしても、今までの国のかたちが大きく変わるターニングポイントとなるかもしれません。外国人にも日本の風習や文化に柔軟に対応してもらうと共に、我々も彼らと共生することが欠かせないでしょう。これからの労務管理は、ますます複雑になって行くのは確実のようです。
平成の先にはどのような景色が待っているのでしょうか?
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
さて、この特別国会で、専門職種以外での外国人労働者の受け入れを解禁する、改正出入国管理法が大きな争点となっていますが、与党の力業により成立する見込みであり(11月29日現在)、2019年4月より施行される予定です。いままで技能実習や留学生という在留資格で、一部の単純労働系の職種に外国人を受け入れてきましたが、これを大規模に拡充しようとするものです。
一定の制約があることから政府はこれを移民政策ではないといっていますが、特定技能2号は実質的には家族を帯同して永住権も認められる方向であり、最初は少数でも、蟻の一穴となってどんどん増えて行く可能性が高いでしょう。
先の通常国会では、経済界が望んだ裁量労働制の拡充が、厚労省のデータ不備により廃案に追い込まれました。残業規制や有給付与義務、同一労働同一賃金など、労働側の望む法案が多く通り、経済界は実入り?が少なったことから、その穴埋めと言わんばかりの拙速さで、来年4月のスタートを目指しているようにも見えます。
確かに現在は、空前の人手不足。高齢者や女性の社会参加、労働生産性の向上、AIの台頭でいずれは収束されるであろう人手不足も、今は背に腹を替えられないといったところでしょうか。
ただ現在でも120万人を超える外国人が日本で働いており、例えばミナミの繁華街で飲食店に入ると、身近にそれらしい方々に出会う機会が多くなっているはずです。私共の社労士事務所において事務代行を受託させて頂いているクライアント先の賃金台帳を拝見すると、ここ数年で確実に「カタカナの名前」の従業員が激増していることを実感します。
こういった中で、日本の公的医療保険制度は、基本的に外国人を排除していません。彼らによって日本の健康保険制度が食い物にされているとの指摘があります、それもあってか、本年10月から、協会けんぽの扶養認定において、続柄や生計維持関係のチェックが厳しく行われるようになっています。
そのような指摘がある一方、世代間の仕送りシステムとなっている現行の年金制度を支えるためには、保険料を支払う現役世代を増やさなければ制度が持たず、彼ら外国人に年金制度を支える担い手になってもらわなければならないとの観測もあります。
治安に不安を覚える国民も多いことでしょう。生活習慣や考え方、文化や宗教の違いにより、要らぬ紛争や軋轢が心配されています。外国人が日本人の雇用を奪うという指摘もあります。日本人の待遇が下方向へ誘導されかねないとの懸念も出ています。
移民政策を受け入れてきた欧米諸外国では、移民問題が国を二分するような大論争テーマとなり、海外にはトランプ大統領に代表されるような移民を排斥する政治が受ける素地があります。
有史以来2千年にわたり、ほぼ純血主義で国を運営してきた島国、日本。どんどん血が混ざり合ってゆき、日本人のDNAが変質して行くのでしょか?
いずれにしても、今までの国のかたちが大きく変わるターニングポイントとなるかもしれません。外国人にも日本の風習や文化に柔軟に対応してもらうと共に、我々も彼らと共生することが欠かせないでしょう。これからの労務管理は、ますます複雑になって行くのは確実のようです。
平成の先にはどのような景色が待っているのでしょうか?
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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~2018.4月から 有給休暇の5日、強制付与迫る!!~
●企業は、如何に対策するべきか 多くの企業が本年12月までに検討する必要が (2018.11月号)
先の国会で成立した「働き方改革関連法」により、2019年4月1日以降、有給休暇を5日は必ず付与しなければならなくなりました。厳密には以下の方が対象となります。
◎4月1日以降に、年10日以上の有給休暇が発生している(週30時間以上で、6か月以上の継続勤務がある)
◎4月1日以降に、有給休暇の基準日※を迎えている
※基準日:今回の改正でこの基準日の考え方が非常に複雑になりましたが、おおよそ次の通りとなります。
◎入社日ごとにバラバラに有休を付与する原則的なカウントの会社の場合 →各自の入社後6か月経過した日(4月1日入社なら10月1日)
◎ある日をもって統一的に付与してしている場合 →当該統一的に付与することとした日(前倒しで10日与える場合はその日、最初は6か月経過後に与え2回目に統一する場合は2回目の日)
これらは罰則付きの法律であり、従業員から請求がなくとも、会社から有休休暇を取らさなければならない義務となるのです。個別に日を指定して、5日取得させることもできますが、一定規模以上の会社であれば、計画的付与にせざるを得ないでしょう。計画的付与とは、簡単に言えば年間休日計カレンダーの中に、部署別、班別などで分けたグループごとに、あらかじめ有給休暇を盛り込むやり方です。
一番真っ当な与え方は、現在の年間休日+5日の有給休暇とすることですが、昨今の人手不足の折、ただでさえカツカツの人員でこなしているといった場合、稼働日数が減ると経営上大きな負の影響が出る、という企業はどのようにしたら良いのでしょうか?
いくつかの対策を考えたいと思います。
1.休日増加コース(王道コース)
まずは、王道コースを検討すべきでしょう。先述の通り、現在の年間休日+5日の有給休暇ということで、一番オーソドックスなやり方であり、従業員の納得も得やすいでしょう。
2.休日減少コース(有給5日増との差し引き折半コース)
現行の年間休日を5日減らし、その代わり有給休暇を5日多めに付与するやり方です。
週40時間を達成するために必要な最低休日数を、5日以上、上回る休日を確保できている企業はこの対策が取れます。例えば1日8時間の会社は105日以上の休日が必要ですが、110日以上あるような場合です。
1の王道コースのように、稼働日数が5日減ると、直ちに業務に支障が出る場合は、この方法を検討することになります。この支障は会社からの事情だけでなく、従業員側にも当てはまることがあります。つまり、ぎりぎりの人数でやっとこさ、日々の業務を何とか回している従業員からすると、5日も休むと仕事が滞り却って迷惑!!、という場合です。
こういったケースでは、「余分に」付与している休日を労働日とし、そこに有給休暇を充てます。
例えば通常の企業は、お盆や年末年始において、カレンダー上は平日である日を休日としていますが、これらの日を労働日とし、計画的付与による有給休暇で代用させます。
仮に2018年のカレンダーによると、1月2,3,4日、12月31日は平日ですが、通常は休日にしているはずです。ここに有給休暇を充てれば4日は確保できることになり、あと1日はお盆へ回すというような感じです。
そしてこの本来休日である日を有給休暇に振り替える5日分を、従来の有給日数にプラスして有給休暇として与えます。例えば10日持っている人なら、15日とし、そのうち5日を年末年始とか、お盆に割り当てるものです。
こうすることで、年間の稼働日は今まで通り確保でき、しかも従業員に不利益を与えることはありません。
3.休日減少コース(仕方なしコーズ)
考え方は上記2とほとんど同じで、従来休日にしていた日に5日の有給休暇を割り当てるものなのですが、違うところは、有給日数を5日増としないことです。
年間稼働日数は確保できるのですが、従業員から見ると年間休日数が減少するという不利益変更にあたり、合意を得るか、すくなくとも納得してもらう必要があります。
4.トリッキーコース
週40時間を達成するために必要な最低休日数がギリギリの場合で、稼働日数が減ると業務が回らない場合にこの対策を考えます。
結論から言いますと、1日の所定労働時間を少し減らします。それにより法的に最低必要な年間休日数も減ることとなり、その減った休日分を有給休暇で代用します。
具体的には以下の通りです。
【現在】 【変更後】
1日の時間 必要年間休日 1日の時間(数分減) 必要年間休日(5日減)
8時間 105日 → 7時間51分 100日 + 5日年休=合計105日
7時間45分 96日 → 7時間36分 91日 + 5日年休=合計96日
7時間30分 87日 → 7時間21分 82日 + 5日年休=合計87日
よく見て頂いてお分かりのように、年間で社員が強制的に休む日数は、変更前と変更後で変わりません。週40時間制もクリアしています。そして給与ですが、今まで通り出します。理屈的には8時間の会社の場合、7時間51分になるが、給与は9分減らすことなく、元の8時間分として維持する、ということです。
実質的な不利益なほとんどないため、受け入れられやすいのではないかと考えています。
5.半日有給活用コース(少し無茶?コース)
これは稼働日数を減らすことはもとより、現状の勤務シフトをほとんど変更するのは不可能であるという極めて厳しい状況の場合に検討します。、
今回の5日強制付与につき、労働局から9月7日に行政通達が出ていますが、この5日という考え方に半日有給を組み込んでも構わないとの解釈が出ました。つまり極論すると、0.5日を10日消化させることも可能ということです。そうすると、半日はどうしても休みになりますが、1日穴が開くという事態は回避できます。
さらにその日に、4時間残業してもらえば、実質8時間労働が確保されることとなります。4時間分の追加支給は必要となりますが、25%の割り増しは必要ありません。
休暇を取るという、本来の趣旨を没却することになるため、なるべく最終手段とするべきですが・・・
6.蛇足(念のためコース)
上記いずれかの対策により、5日強制付与の義務を果たしてゆくこととなりますが、万が一、何らかの事情でその義務が当該年度において果たせなかったときの為に、年の為、以下のような規定を就業規則に盛り込んで置くことをお勧めします。
(特別休日の年強制付与年休への振り替え)
第00条 従業員は基準日から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得するものとする。但し当該基準年度において取得日数が不足している場合は、お盆、または年末年始の特別休日を強制付与年次有給休暇に振り替えて付与したものとみなす。
(特別休暇の取得順序)
第00条 慶弔休暇など法定の有給休暇に該当しない有給による特別休暇がある場合で、年5日の強制付与年次有給休暇の取得が未達である場合は、まず有給休暇を先に取得してからでないと、特別休暇を取得することはできない。
現在出ている情報の下で、考えられる対策は以上ですが、まだ、何か方法があるかもしれません。それが見つかれば、逐次、お伝えしてゆきたいと思います。
いずれにしても施行は2018年の4月からですが、実務上、1月起算で年間休日カレンダーを組む企業が多いため、本年12月までには道筋を検討しておく必要があり、あまり時間がないのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
●企業は、如何に対策するべきか 多くの企業が本年12月までに検討する必要が (2018.11月号)
先の国会で成立した「働き方改革関連法」により、2019年4月1日以降、有給休暇を5日は必ず付与しなければならなくなりました。厳密には以下の方が対象となります。
◎4月1日以降に、年10日以上の有給休暇が発生している(週30時間以上で、6か月以上の継続勤務がある)
◎4月1日以降に、有給休暇の基準日※を迎えている
※基準日:今回の改正でこの基準日の考え方が非常に複雑になりましたが、おおよそ次の通りとなります。
◎入社日ごとにバラバラに有休を付与する原則的なカウントの会社の場合 →各自の入社後6か月経過した日(4月1日入社なら10月1日)
◎ある日をもって統一的に付与してしている場合 →当該統一的に付与することとした日(前倒しで10日与える場合はその日、最初は6か月経過後に与え2回目に統一する場合は2回目の日)
これらは罰則付きの法律であり、従業員から請求がなくとも、会社から有休休暇を取らさなければならない義務となるのです。個別に日を指定して、5日取得させることもできますが、一定規模以上の会社であれば、計画的付与にせざるを得ないでしょう。計画的付与とは、簡単に言えば年間休日計カレンダーの中に、部署別、班別などで分けたグループごとに、あらかじめ有給休暇を盛り込むやり方です。
一番真っ当な与え方は、現在の年間休日+5日の有給休暇とすることですが、昨今の人手不足の折、ただでさえカツカツの人員でこなしているといった場合、稼働日数が減ると経営上大きな負の影響が出る、という企業はどのようにしたら良いのでしょうか?
いくつかの対策を考えたいと思います。
1.休日増加コース(王道コース)
まずは、王道コースを検討すべきでしょう。先述の通り、現在の年間休日+5日の有給休暇ということで、一番オーソドックスなやり方であり、従業員の納得も得やすいでしょう。
2.休日減少コース(有給5日増との差し引き折半コース)
現行の年間休日を5日減らし、その代わり有給休暇を5日多めに付与するやり方です。
週40時間を達成するために必要な最低休日数を、5日以上、上回る休日を確保できている企業はこの対策が取れます。例えば1日8時間の会社は105日以上の休日が必要ですが、110日以上あるような場合です。
1の王道コースのように、稼働日数が5日減ると、直ちに業務に支障が出る場合は、この方法を検討することになります。この支障は会社からの事情だけでなく、従業員側にも当てはまることがあります。つまり、ぎりぎりの人数でやっとこさ、日々の業務を何とか回している従業員からすると、5日も休むと仕事が滞り却って迷惑!!、という場合です。
こういったケースでは、「余分に」付与している休日を労働日とし、そこに有給休暇を充てます。
例えば通常の企業は、お盆や年末年始において、カレンダー上は平日である日を休日としていますが、これらの日を労働日とし、計画的付与による有給休暇で代用させます。
仮に2018年のカレンダーによると、1月2,3,4日、12月31日は平日ですが、通常は休日にしているはずです。ここに有給休暇を充てれば4日は確保できることになり、あと1日はお盆へ回すというような感じです。
そしてこの本来休日である日を有給休暇に振り替える5日分を、従来の有給日数にプラスして有給休暇として与えます。例えば10日持っている人なら、15日とし、そのうち5日を年末年始とか、お盆に割り当てるものです。
こうすることで、年間の稼働日は今まで通り確保でき、しかも従業員に不利益を与えることはありません。
3.休日減少コース(仕方なしコーズ)
考え方は上記2とほとんど同じで、従来休日にしていた日に5日の有給休暇を割り当てるものなのですが、違うところは、有給日数を5日増としないことです。
年間稼働日数は確保できるのですが、従業員から見ると年間休日数が減少するという不利益変更にあたり、合意を得るか、すくなくとも納得してもらう必要があります。
4.トリッキーコース
週40時間を達成するために必要な最低休日数がギリギリの場合で、稼働日数が減ると業務が回らない場合にこの対策を考えます。
結論から言いますと、1日の所定労働時間を少し減らします。それにより法的に最低必要な年間休日数も減ることとなり、その減った休日分を有給休暇で代用します。
具体的には以下の通りです。
【現在】 【変更後】
1日の時間 必要年間休日 1日の時間(数分減) 必要年間休日(5日減)
8時間 105日 → 7時間51分 100日 + 5日年休=合計105日
7時間45分 96日 → 7時間36分 91日 + 5日年休=合計96日
7時間30分 87日 → 7時間21分 82日 + 5日年休=合計87日
よく見て頂いてお分かりのように、年間で社員が強制的に休む日数は、変更前と変更後で変わりません。週40時間制もクリアしています。そして給与ですが、今まで通り出します。理屈的には8時間の会社の場合、7時間51分になるが、給与は9分減らすことなく、元の8時間分として維持する、ということです。
実質的な不利益なほとんどないため、受け入れられやすいのではないかと考えています。
5.半日有給活用コース(少し無茶?コース)
これは稼働日数を減らすことはもとより、現状の勤務シフトをほとんど変更するのは不可能であるという極めて厳しい状況の場合に検討します。、
今回の5日強制付与につき、労働局から9月7日に行政通達が出ていますが、この5日という考え方に半日有給を組み込んでも構わないとの解釈が出ました。つまり極論すると、0.5日を10日消化させることも可能ということです。そうすると、半日はどうしても休みになりますが、1日穴が開くという事態は回避できます。
さらにその日に、4時間残業してもらえば、実質8時間労働が確保されることとなります。4時間分の追加支給は必要となりますが、25%の割り増しは必要ありません。
休暇を取るという、本来の趣旨を没却することになるため、なるべく最終手段とするべきですが・・・
6.蛇足(念のためコース)
上記いずれかの対策により、5日強制付与の義務を果たしてゆくこととなりますが、万が一、何らかの事情でその義務が当該年度において果たせなかったときの為に、年の為、以下のような規定を就業規則に盛り込んで置くことをお勧めします。
(特別休日の年強制付与年休への振り替え)
第00条 従業員は基準日から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得するものとする。但し当該基準年度において取得日数が不足している場合は、お盆、または年末年始の特別休日を強制付与年次有給休暇に振り替えて付与したものとみなす。
(特別休暇の取得順序)
第00条 慶弔休暇など法定の有給休暇に該当しない有給による特別休暇がある場合で、年5日の強制付与年次有給休暇の取得が未達である場合は、まず有給休暇を先に取得してからでないと、特別休暇を取得することはできない。
現在出ている情報の下で、考えられる対策は以上ですが、まだ、何か方法があるかもしれません。それが見つかれば、逐次、お伝えしてゆきたいと思います。
いずれにしても施行は2018年の4月からですが、実務上、1月起算で年間休日カレンダーを組む企業が多いため、本年12月までには道筋を検討しておく必要があり、あまり時間がないのです。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com