1.法律家としての税理士
 税理士法第1条は、税理士は、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする旨規定している。同条で法律家であることを明記しているのは、独立した公正な立場と租税法令の納税義務の適正実現を図る税務の専門家ということである。要するに独立した租税法令に関する専門家、すなわち、租税法の法律家が税理士なのである。

2.税理士は税務監査人
税理士が職業会計人であることに異論はない。そこに税理士法第1条の租税法に関する法律家の地位が加わると、新しく税務監査人としての性格が明確となってこよう。
 したがって、会計業務は、企業会計業務と税務会計業務に分けることができるが、両者は、その本質を異にしている。前者は、株主等の投資家や会社債権者のために、会社の適正な内容を公開し企業の経営的成果を示して彼等を保護するのに対し、後者は租税法の公平負担の原則から規定された租税法令に基づいて適正な税務計算、申告がなされて納税者の納付すべき税額を確定させる会計処理である。そこに税務監査の必要が要請される。租税法の規定に基づいて適法に処理され、かつ、それらは、いずれも真実であることが証明されなければならない。これを第三者の立場から、適法性・準拠性・真実性が証明されてこそ、税務監査の目的が達成されるのである。この業務が税務監査人の役割なのである。

3.税理士法人と税理士法第1条
 税理士法は、税理士資格を個人に限っており、法人に資格を認めてはいない。しかし、現況の税理士事務所は、いわば単独の町医者ないし個人病院のようなものである。顧客はどのような税務相談でも対応してもらえると思っているが、しかし、今の租税法は、法人税、所得税、相続税、消費税、地方税、国際租税等多岐にわたっており、これら全部に対応できるかといえば甚だ困難である。最近、税理士に対する損害賠償請求訴訟が多いのも税理士の扱う税目の多さが原因の1つとも言えよう。そこで、税理士が税理士法第1条の法律家として関与先の納税義務者に十分対応していくためには、税目別の各専門とする税理士等を集めて総合病院化する必要がある。これが税理士法人なのである。
 会計監査法人はその業務の範囲 (※1)からして当該法人資格をもって税理士法人の設立はできないと解すべきである。
 税理士法人の設立は民法上の組合と異なって法人格をもつため主体性が明確となる。個人事務所の所長の事故などによるサービスの停滞、死亡による事業承継不能に対処でき、クライアントとの関係が継続できる。しかも、税理士業務の対象である租税は本質的に永久税主義を採用しており、将来にわたって継続性を建前とするのである(※2) 。また、税理士法人に所属する事務職員に対しても職業の安定「パラリーガル」としての作業分担が可能となる等、法人化することによる効用が大きく、税理士法第1条の使命遂行に一層の充実化が図られよう(※3) 。
文責:企業部

※1 公認会計士法代34条の5
※2 (憲法第84条)(田中二郎『租税法』第3版87頁・有斐閣刊)
※3 松澤 智「会報TKC平成12年1月号」

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