07年12月06日
遺産分割
1 遺産分割は、遺産に属する物・権利の種類・性質・各相続人の年齢・職業・
心身の状態・生活の状況その他一切の事情を考慮してするように定められ
ています。
2 共同相続人は、被相続人が遺言で遺産分割を禁じた場合(相続開始時か
ら5年以内に限る)を除いて、いつでも遺産分割の協議をすることができます。
もっとも遺産分割の協議が調わないとか、協議をすることができないときは、
その分割を家庭裁判所に請求することができます。
3 問題点
(1) 共同相続人の協議によって遺産分割を禁止することができるでしょうか。
相続人が数人いる時には、相続財産は共有になっていますから、共同
相続人の協議によって遺産分割を禁止する時は、一種の共有物分割の
禁止であり、当事者間の合意によって有効に成立します。
また、当事者全員の合意があれば、当然その禁止の合意は解除するこ
とができます。
(2) では、遺産分割協議において、相続人の一人が負担した債務を履行しな
い場合に、「他の共同相続人」は協議を解除することができるでしょうか。
判例はできないとしています。遺産分割は、相続開始時に遡ってその効力
を生じるので、分割協議の解除を認めると再分割を余儀なくされ、法的安定
性を害するからです。
(3) 一方、判例は、既に成立している遺産分割協議を「共同相続人全員」の合意
によって解除し、改めて分割協議をすることができるとしています。
もっとも、これについては、(2)と同様に法的安定性を重視して、合意解除は
制限されるべきであるとする見解も有力です。
心身の状態・生活の状況その他一切の事情を考慮してするように定められ
ています。
2 共同相続人は、被相続人が遺言で遺産分割を禁じた場合(相続開始時か
ら5年以内に限る)を除いて、いつでも遺産分割の協議をすることができます。
もっとも遺産分割の協議が調わないとか、協議をすることができないときは、
その分割を家庭裁判所に請求することができます。
3 問題点
(1) 共同相続人の協議によって遺産分割を禁止することができるでしょうか。
相続人が数人いる時には、相続財産は共有になっていますから、共同
相続人の協議によって遺産分割を禁止する時は、一種の共有物分割の
禁止であり、当事者間の合意によって有効に成立します。
また、当事者全員の合意があれば、当然その禁止の合意は解除するこ
とができます。
(2) では、遺産分割協議において、相続人の一人が負担した債務を履行しな
い場合に、「他の共同相続人」は協議を解除することができるでしょうか。
判例はできないとしています。遺産分割は、相続開始時に遡ってその効力
を生じるので、分割協議の解除を認めると再分割を余儀なくされ、法的安定
性を害するからです。
(3) 一方、判例は、既に成立している遺産分割協議を「共同相続人全員」の合意
によって解除し、改めて分割協議をすることができるとしています。
もっとも、これについては、(2)と同様に法的安定性を重視して、合意解除は
制限されるべきであるとする見解も有力です。
07年12月05日
相続分2
1 被相続人は、遺言で、共同相続人の相続分を定めたり、あるいはこれを定める
ことを第三者に委託することができます。ただ、この場合、遺留分(以前の記事を
参照)に関する規定に違反することはできません。
ここで、遺留分を侵害する行為は、当然に無効となるのかが問題となります。
この点に関しては、遺留分を侵害する行為も当然には無効とならず、減殺請求
(遺留分を保留する権利)ができるだけであるとされていますから、遺留分を侵害
する相続分の指定も一応効果は生じ、減殺請求がされたときには、遺留分を侵害
する範囲でその効果が失われることになります。
cf. 兄弟姉妹以外の相続人の遺留分は、直系尊属のみが相続人である場合に
は、被相続人の財産の3分の1、それ以外の場合には2分の1とされています。
2 特別受益者(共同相続人の中で、被相続人から遺贈を受けたり、婚姻・養子縁組
のためあるいは生計の資本として贈与を受けた者)の相続分は、被相続人が相続
開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産と
みなし、法定相続分ないし遺言による指定相続分の中からその遺贈・贈与の価額
を控除した残額となります。
そして、遺贈・贈与の価額が、相続分の価額に等しかったり、これを超える時には
特別受益者はその相続分を受けることができません。
3 逆に、特別寄与者(共同相続人の中で、被相続人の事業に関する労務の提供・財
産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持・増
加について特別の寄与をした者)の相続分は、被相続人が相続開始時に有した財産
の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産
とみなし、法定相続分ないし指定相続分に寄与分を加えた額となります。
勿論、共同相続人の協議で寄与分の額が定まらないときには、家庭裁判所に寄与
分審判の請求をすることができます。
ことを第三者に委託することができます。ただ、この場合、遺留分(以前の記事を
参照)に関する規定に違反することはできません。
ここで、遺留分を侵害する行為は、当然に無効となるのかが問題となります。
この点に関しては、遺留分を侵害する行為も当然には無効とならず、減殺請求
(遺留分を保留する権利)ができるだけであるとされていますから、遺留分を侵害
する相続分の指定も一応効果は生じ、減殺請求がされたときには、遺留分を侵害
する範囲でその効果が失われることになります。
cf. 兄弟姉妹以外の相続人の遺留分は、直系尊属のみが相続人である場合に
は、被相続人の財産の3分の1、それ以外の場合には2分の1とされています。
2 特別受益者(共同相続人の中で、被相続人から遺贈を受けたり、婚姻・養子縁組
のためあるいは生計の資本として贈与を受けた者)の相続分は、被相続人が相続
開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産と
みなし、法定相続分ないし遺言による指定相続分の中からその遺贈・贈与の価額
を控除した残額となります。
そして、遺贈・贈与の価額が、相続分の価額に等しかったり、これを超える時には
特別受益者はその相続分を受けることができません。
3 逆に、特別寄与者(共同相続人の中で、被相続人の事業に関する労務の提供・財
産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持・増
加について特別の寄与をした者)の相続分は、被相続人が相続開始時に有した財産
の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産
とみなし、法定相続分ないし指定相続分に寄与分を加えた額となります。
勿論、共同相続人の協議で寄与分の額が定まらないときには、家庭裁判所に寄与
分審判の請求をすることができます。
07年12月04日
相続分
「相続分」の意義は、条文によって異なりますが、ここでは「共同相続人が
相続財産上にもつ権利承継の割合」と考えておけばいいでしょう。
1 法律で定められた相続分(法定相続分)は次のようになります。これは被相続人
の遺言による指定がなかった場合に適用されます。
(1)子と配偶者が相続人であるときは、子2分の1・配偶者2分の1
(2)配偶者と直系尊属(父母・祖父母等)が相続人であるときは、配偶者3分の2・
直系尊属3分の1
(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者4ぶんの3・兄弟姉妹4分の1
2 子、直系尊属、兄弟姉妹が数人いるときは、各自の相続分は等しくなります。
ただし、嫡出でない子(夫婦関係にない女から出生した子)の相続分は、嫡出である
子の相続分の2分の1であり、また、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分
は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。
3 代襲相続人(以前の記事を参照)の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったも
のと同じです。したがって、代襲相続人が数人いるときには、その直系尊属がうけるべ
きであった部分について、1,2に従って相続分を定めることになります。
このことは、兄弟姉妹の子が代襲相続する場合も同じです。
相続財産上にもつ権利承継の割合」と考えておけばいいでしょう。
1 法律で定められた相続分(法定相続分)は次のようになります。これは被相続人
の遺言による指定がなかった場合に適用されます。
(1)子と配偶者が相続人であるときは、子2分の1・配偶者2分の1
(2)配偶者と直系尊属(父母・祖父母等)が相続人であるときは、配偶者3分の2・
直系尊属3分の1
(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者4ぶんの3・兄弟姉妹4分の1
2 子、直系尊属、兄弟姉妹が数人いるときは、各自の相続分は等しくなります。
ただし、嫡出でない子(夫婦関係にない女から出生した子)の相続分は、嫡出である
子の相続分の2分の1であり、また、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分
は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。
3 代襲相続人(以前の記事を参照)の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったも
のと同じです。したがって、代襲相続人が数人いるときには、その直系尊属がうけるべ
きであった部分について、1,2に従って相続分を定めることになります。
このことは、兄弟姉妹の子が代襲相続する場合も同じです。
07年12月03日
共同相続の効力
相続の一般的効力は、初回に記事にしましたので、今回は省略します。
1 相続人が数人いるときには、相続財産はその共有に属します。
したがって、各共同相続人は、共有物の全部についてその持分に応じた
使用をすることができる反面、他の共同相続人全員の同意を得なければ、
その共有物に変更を加えることができません。これは、遺産分割協議が
整うまでのことですね。
2 各共同相続人は、その相続分(次回記事にします)に応じて被相続人の
権利義務を承継します。
判例によれば、相続財産中の分割が可能な可分債権は法律上当然分割
され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継しますが、相続人は
遺産分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管して
いる他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払いを求める
ことはできません。
1 相続人が数人いるときには、相続財産はその共有に属します。
したがって、各共同相続人は、共有物の全部についてその持分に応じた
使用をすることができる反面、他の共同相続人全員の同意を得なければ、
その共有物に変更を加えることができません。これは、遺産分割協議が
整うまでのことですね。
2 各共同相続人は、その相続分(次回記事にします)に応じて被相続人の
権利義務を承継します。
判例によれば、相続財産中の分割が可能な可分債権は法律上当然分割
され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継しますが、相続人は
遺産分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管して
いる他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払いを求める
ことはできません。
07年11月30日
相続人3
本来相続人であるのに、相続権が奪われる制度として「廃除」があります。
1 相続人としての適格性を当然に否定されるほどの重大な事由はないが、
被相続人からみて推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)
に自分の財産を相続させたくないようなことが起こり得ます。
このような場合に、その推定相続人が第3順位の兄弟姉妹であれば、彼らには
遺留分(被相続人の一定の近親者に留保された相続財産の一定割合であり、
被相続人の生前処分又は死因処分によって奪うことができないもの)が認めら
れていないから、被相続人は生前の財産処分又は遺言によって、彼らに財産が
行かないようにすることができます。
しかし、推定相続人が直系卑属(子や孫)・直系尊属(父母や祖父母)あるいは
配偶者である場合には、これらの者に遺留分が認められているため、生前処分
や遺言によって相続の利益を全て奪ってしまうことはできません。
そこで、これらの者から相続権を奪うために設けられたのが、推定相続人の廃除
の制度です。
2 廃除原因は、(1)被相続人に対する虐待、(2)重大な侮辱を加えたこと、(3)推定
相続人にその他の著しい非行があったときです。
このような場合、被相続人は家庭裁判所にその推定相続人の廃除を請求すること
ができます。
3 この廃除は遺言によってもすることができるだけでなく、いつでも廃除の取消しを
家庭裁判所に請求することができます。
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1 相続人としての適格性を当然に否定されるほどの重大な事由はないが、
被相続人からみて推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)
に自分の財産を相続させたくないようなことが起こり得ます。
このような場合に、その推定相続人が第3順位の兄弟姉妹であれば、彼らには
遺留分(被相続人の一定の近親者に留保された相続財産の一定割合であり、
被相続人の生前処分又は死因処分によって奪うことができないもの)が認めら
れていないから、被相続人は生前の財産処分又は遺言によって、彼らに財産が
行かないようにすることができます。
しかし、推定相続人が直系卑属(子や孫)・直系尊属(父母や祖父母)あるいは
配偶者である場合には、これらの者に遺留分が認められているため、生前処分
や遺言によって相続の利益を全て奪ってしまうことはできません。
そこで、これらの者から相続権を奪うために設けられたのが、推定相続人の廃除
の制度です。
2 廃除原因は、(1)被相続人に対する虐待、(2)重大な侮辱を加えたこと、(3)推定
相続人にその他の著しい非行があったときです。
このような場合、被相続人は家庭裁判所にその推定相続人の廃除を請求すること
ができます。
3 この廃除は遺言によってもすることができるだけでなく、いつでも廃除の取消しを
家庭裁判所に請求することができます。