電通事件において、原審である東京高裁は、長時間労働とうつ病との間の因果関係、及び、うつ病と自殺による死亡との因果関係を認めて、使用者の安全配慮義務違反による損害賠償を認容したが、自殺には、労働者の心因的要素等被害者側の事情も寄与しているとして、過失相殺の規定(民722条2項)を類推適用した。



 これに対して、最高裁は、雇用される労働者の性格や個性は多様であって、それが通常想定される範囲を外れるものでない限り、加重負担に寄与することを使用者は予想すべきであり、損害賠償の算定においても、このような性格などを心因的要因として斟酌すべきでないとして、破棄差し戻した。



 差し戻し審では、結局、1億6800万円の支払いと謝罪を内容とする和解が成立した。