5、派遣労働の法令違反と事業閉鎖

《これも労働者派遣法の規制が実際には機能していないことを示している。厚生労働省は、禁止業務への派遣や二重派遣などの法で禁止された行為がさっぱり跡を絶たないところから、この一月、大手派遣元に対し事業停止や業務改善命令を発するとともに、刑事告発を行った。》
《派遣労働は、もともと中間搾取の温床になるという観点から全面禁止であったものが、ビジネスニーズの拡大の結果、段階的に適法業務が拡大されてきたもので、法規制とビジネスの実態のギャップから適法業務と禁止業務の区分けの合理性と、二重派遣の場合の派遣先の行為に対する派遣元の責任追及について十分な説得力がない状況の下で、派遣先の行為に対する責任を派遣元に負わせることの妥当性が問題となる。(郷原伸郎)》
《これらの法令違反への対処は、むしろ派遣先に対する労働基準法、労働安全衛生法などの規制が十分に機能していれば足りるので、労働基準行政の機能不全のために、本来、第一次責任者ではない企業の事業所が閉鎖に追い込まれる結果、その揚げ句。現場で仕事を渇望する労働者の(法令違反すれすれで劣悪かもしれないが)貴重な雇用機会が奪われることにもなりかねない。(花見)》

※「派遣法違反」―請負会社が契約先に雇用する従業員を派遣し、契約先の指示を受けさせるもの。派遣元として請負会社が法違反。
「職安法違反=労働者供給事業」―雇用関係のない支配下の者を契約先に派遣するもの。送り手、受け手ともに法違反。


6、企業の責任追及より民主導のコンプライアンスを

《ここで求められているのは、個人や企業の法令違反の責任追及ではなく、法令違反の予防はもちろん、より広く社会的責任ある企業活動の展開のための企業関係者=ステークホルダーによる、CSRを含めたコンプライアンスの促進である。》(やや意味不分明で残念)
《われわれ労働関係者は、膨大なエネルギーや億単位の予算を、維持運営に膨大な経費を要し、あまり役に立たない箱物やあまり効果の期待できないような立法作業に費やすより、民の活力によるコンプライアンスの促進に力を注ぐべきだろう。》
《筆者が労働問題を学び始めたころの労働省には、われわれを集めて突拍子もないことを言い出して、結構それを実現するスケールの大きい方が何人かおられた。国が貧しかったころは、役人は心豊かだった、というのは老人の繰り言か?》


法令違反の責任追及は、後手後手なのでそれほど花見氏のいうほどのものでもない。予防についても、それができておれば問題はなかったわけで、これもまた後手後手。
民主導のコンプライアンス実効促進の方法として、花見氏は以下の者らの構成でイニシアチブを取ればよいのではと示唆されている。
「消費者、取引先、法律家、公認会計士、社会保険労務士、株主、経営者、従業員、労働組合」。国会議員(政府含む)や役所は実務的なセンスが致命的に欠如していると受け取ってもよいと思われる。それに続いて弊害として挙がってきてしまうのが学者なのだが‥‥。