義理と人情の狭間で悩むのは、任侠映画の世界だけではありません。経営者も事あるごとに義理を立てるか人情を重んじるかと悩み、選択を迫られ、時に判断ミスで自分の首を絞めたりします。
 商売で義理を欠けば致命的。片や人情は、自分の力量範囲なら事は丸く収まっても、力量を超えた人情はだれのためにもなりません。また、義理と人情だけでもやっかいというのに、さらに「袖の下」まで持ち出す人もいます。ある業界ではこれを「GNP」と呼ぶそうです。Gは義理。Nは人情。Pはプレゼント。いわゆる「できない営業マンの奥の手」です。
 そのような営業マンがお客様に勧めるのは、相手に必要な商品ではなく、自分に都合の良い商品です。だからといって作為があるわけでもなく、会社の方針に従順なだけのこ。 お客様から搾取することもない代わりに、お客様のニーズに合った商品を提供するだけの知識もキャリアもありません。だから「GNP」に頼るしかないのです。「たしかあのときお世話しましたよね」と過去の貸しを逆手にとり、「私を助けると思ってお願いしますよ」と人情に訴え、見え透いた手土産で恩を売るのが当たり前の時代もありました。 
 「GNP」でつながった関係が、後に破綻を来たした例はいくらでもあります。一方で優秀な営業マンは「商品」ではなく「自分」を売ると言われます。この人だから安心、この人なら任せたい、そんな「ひと対ひと」の営業は「GNP」の真逆です。しかも、義理や人情やプレゼントからスタートした関係ではないからこそ、いざという時に義理人情で助けてもらえたり、物で表す感謝の気持ちが顧客との関係を深めることに役立ったりもしま。
『三匹の子ブタ』という童話にたとえれば、「GNP商売」はワラや木の枝で建てた家のようなもの。強い風が吹いたら簡単に吹き飛んでしまう脆い商売の典型です。
 まっとうな商売をする人は「ひと対ひと」でレンガの家を構築していきましょう。